4Mという言葉を知っていても、具体的にどのように活用すれば良いのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。品質管理の担当になったばかりの方や現場を管理している方は、4Mに対する理解や活用方法に頭を悩ませているかもしれません。
4Mとは、製品の品質を決める「人(Man)」、「機械(Machine)」、「材料(Material)」、「方法(Method)」の4要素で、それぞれの頭文字を取ったものです。4つの要素が適切に管理されることで製品品質の維持・向上が期待できます。また、製品や製造プロセスに関する変更を管理する「4M変更管理」を活用すると、品質や生産性の維持、向上が見込めます。
本記事では、4Mの基本概念から4Mから派生した「5M+1E」や「6M」、現場での活用方法までを分かりやすく解説していきます。4Mを理解し、自社の品質管理に活かしてみてください。
4Mとは、製品の品質を決める「人(Man)」、「機械(Machine)」、「材料(Material)」、「方法(Method)」の4要素で、それぞれの頭文字を取ったものです。製造業の品質管理では、4Mの観点で分析や改善を進めるのが重要です。
製品を作る際は4つの要素が相互に関連し合い、製品の品質が決まります。4Mのそれぞれの要素を適切に管理し、バランスを取ることが品質管理で重要です。
4Mの中で、Man(人)には、従業員のスキル、経験、モチベーション、人員配置などがあります。
従業員の役割は、製造工程における作業の遂行、品質管理、機械の操作や保守など多岐にわたります。各従業員が自身の役割を十分に理解し、責任を持って職務を遂行することが重要です。
従業員の能力を最大限に引き出すためには、適切なトレーニングと教育が欠かせません。製造業界は絶えず進化しており、新たな技術や手法が導入されています。従業員が変化に適応してスキルを向上させることは、企業の競争力を保つ上で不可欠です。
品質向上のためにスキルアップはもちろん必要ですが、ヒューマンエラーによって品質を損なわないために教育も大切です。作業手順の理解や品質管理の重要性の認識、安全意識の向上などを目的とした教育を定期的に実施することが求められます。
Man(人)の変化が起こりやすいタイミングは、新入社員の配属や派遣、パートの入れ替わりや生産ラインの変更に伴う人員追加・削減などがあります。
変化が起こるタイミングでは十分なトレーニングと教育を行い、スムーズな移行を図ることが重要です。
4Mの中のMachine(機械)には、生産設備の選択や運用、メンテナンス、働く環境の整備などが含まれ、製品の品質や生産効率に大きな影響を与えます。
生産設備は、製品の種類や生産量に応じて適切に選択する必要があるだけでなく、定期的なメンテナンスをおこない、機械の性能を維持することが重要です。定期的なメンテナンスを行うことで故障や不具合を未然に防ぎ、生産ラインの停止を最小限に抑えることが可能です。
さらに、作業がしやすい環境を整えることも重要な要素です。機械のレイアウトを最適化し、従業員の動線を考慮することで、作業効率の向上と疲労の軽減につながります。
また、近年ではIoTやAIの活用が製造業に大きな変革をもたらしています。インターネットを介した機械同士の通信やデータ解析によって、生産プロセスの監視、制御、最適化が可能になりました。リアルタイムでデータを収集・分析することで、異常の早期発見や予知保全が実現します。他にも、AIを活用した自動化や品質検査の高度化も進んでいます。
ただし、新しい機会や技術の導入には、十分な準備が必要です。特に、設備の変更や生産ラインの変更などの際には、機械の操作方法や保守手順の習得に時間を要します。
そのため、事前に受け入れ体制やマニュアル整備などをおこなう計画を立てて、余裕を持ったスケジュールで機械や技術を導入しましょう。もし問題が発生しても、対応できるような時間を取っておき、慌てることなく対応できると良いでしょう。
4Mの中のMaterial(材料)は、製品の品質を直接左右する重要な要素です。製品の品質は使用する素材に大きく依存するため、素材の選択と調達には細心の注意を払う必要があります。
素材の品質管理においては、仕入れ先の選定、検査体制の整備、品質基準の設定などがポイントとなります。安定した品質の素材を確保するためには、信頼できる仕入れ先との長期的な関係構築が不可欠です。また、入荷した素材の検査を徹底し、品質基準を満たさない素材を排除することで、製品の品質を維持できます。
さらに、素材の供給管理も重要な課題です。生産計画に基づいた適切な在庫管理をおこない、必要な素材を過不足なく調達することが求められます。リードタイムや輸送コストなども考慮し、効率的な調達体制を構築する必要があります。
近年では、持続可能性や環境への配慮も素材選択の重要な基準となっています。再生可能な素材や環境負荷の少ない素材の使用、リサイクル素材の活用などを通じて、企業の社会的責任を果たすことが求められます。
最後に素材の選択と調達においては、長期的な視点を持つことも大切です。一回限りの調達ではなく、継続的に安定した品質の素材を調達できるようにするためには、コスト面や環境面での配慮が欠かせません。
また、素材の価格変動やサプライチェーンの混乱などにも備え、複数の仕入れ先を確保するなどのリスク管理も必要です。
Material(材料)に変化が起こりやすいタイミングとしては、新製品の開発や生産量の増減、仕入れ先の変更などがあります。変化に対応するためには、柔軟な調達体制の構築と、関係部門間の緊密な連携を進めましょう。
4Mの中のMethod(方法)は、製造工程における作業手順や手法に関する要素です。作業の方法を標準化してマニュアル化することで、属人的な差異を排除し、誰が作業をおこなっても一定の品質を確保できます。
作業の標準化には、作業手順を明確化したり、作業時間の設定したり、品質基準の設けたりする必要があります。これらを内容をまとめたマニュアルを整備し、従業員への教育・訓練を徹底することがポイントになります。マニュアルは定期的に見直し、改善を加えることで、より効率的で安全な作業方法を確立できます。
またMethod(方法)を整えることは、従業員の安全確保の面でも重要な役割を果たします。作業手順を明確にし、安全装置の使用を徹底することで、労働災害のリスクを最小限に抑えられます。ます。
さらには、生産形態の選択も、Method(方法)に含まれます。見込み生産、受注生産、混合生産など、製品の特性や市場の需要に応じて最適な生産形態を選択しましょう。また、在庫管理の手法や、生産計画の立案方法なども、生産効率や品質に大きな影響を与えます。
Method(方法)に変化が起こりやすいタイミングとして、新製品の生産開始、既存製品の改良、生産量の増減、設備の変更などがあります。変化に対応するためには、作業手順の見直しや、マニュアルの更新が必要となります。
5M+1Eは、4M(人、機械、材料、方法)に「検査・測定(Measurement)」と「環境(Environment)」を加えたものです。
検査・測定(Measurement)は、製品の品質や生産工程の効率を定量的に評価するために必要な指標であり、製品の寸法、重量、強度などを測定し、規格との適合性を確認します。
検査・測定(Measurement)を効果的に実施するためには、適切な測定機器の選定と校正、検査基準の設定、検査員の教育・訓練が重要です。また、収集したデータを活用するためには、統計的手法を用いた分析や品質管理図などの可視化ツールの活用が有効です。
環境(Environment)は、作業環境の整備に関する要素のことを指します。例えば、温度変化によって膨張・収縮しやすい金属や湿度変化によって腐食しやすい材料などは、環境を整えておかないと製品のバラツキが起きやすくなります。
環境(Environment)を考慮するには、適切な温度、湿度、照明、換気などを維持して製品のバラツキを抑えることが重要になってきます。
5M+1Eの要素を適切に管理することで、高品質な製品を効率的に生産し、持続可能な製造を実現できるでしょう。
6Mは、4M(人、機械、材料、方法に「マネジメント(Management)」を加えたものです。マネジメント(Management)とは、製造業における管理・運営に関する要素を指します
例えば、生産計画の立案や実行、スケジューリング、品質管理、在庫管理、リスク管理など、製造業のあらゆる側面に関わる管理業務があります。
生産計画の立案では、受注量や在庫量、生産能力などを考慮し、最適な生産スケジュールを作成し、計画の進捗状況に応じて修正を加えることが重要です。
品質管理においては、品質基準の設定、検査体制の整備、品質データの分析などを通じて、製品の品質を維持・向上させます。
在庫管理は、適正な在庫量を維持し、在庫切れや過剰在庫を防ぐための重要な業務であり、需要予測に基づいた発注や、在庫の可視化、在庫回転率の向上などが重要です。
また、リスク管理では自然災害によるサプライチェーンへの影響や市場の変動などのリスクを識別し、その影響を最小限に抑えるための対策を講じる必要があります。
マネジメント(Management)において、リーダーや統括者の役割も非常に重要になってきます。意思決定の迅速性と適切さが製造業の競争力を左右するため、生産現場の状況を的確に把握し、課題を早期に発見・解決する能力が、リーダーや統括者には求められます。また、部門間の調整や、社内外とのコミュニケーションもマネジメントにおいて重要な役割を果たすと言えます。
もしも製造業の現場で事故が発生した場合、冷静に状況を分析して原因を究明することが重要です。4Mに沿って分析をおこなうことで、事故の原因を体系的に整理して効果的な対策が打て、同様の事故の再発を防げるでしょう。
ここでは「いくつかの製品が合格基準を満たしていなかった場合」を想定して、4M分析をおこなってみましょう。トラブルの原因をまとめると、以下の表のようになります。
4M |
想定される原因 |
原因から考えられる重要なこと |
Man(人) |
・作業員の技能不足 ・作業手順の理解不足 ・疲労や体調不良による集中力の低下 |
作業員の技能や理解度、体調管理 |
Machine(機械) |
・設備の故障や不具合 ・メンテナンス不足による性能低下 ・設備の老朽化 |
設備の保全と更新 |
Material(材料) |
・材料の品質のばらつき ・材料の仕様変更 ・不適切な材料の使用 |
材料の品質管理と適切な選定 |
Method(方法) |
・作業手順の不備 ・検査基準の不適切さ ・品質管理方法の不備 |
作業手順と品質管理方法の適切な設定と運用 |
いくつかの製品が合格基準を満たしていなかった場合の4M分析
事故の原因が判明したら、4M変更管理のプロセスに従って改善策を実施していきます。最終的には、変更の内容と結果を記録して関係者に周知することで、再発防止と継続的な改善をおこなっていきましょう。
4M変更管理(4M変化点管理)とは、製造業において製品や製造プロセスに関する変更を管理するための手法です。4Mの各要素(Man、Machine、Material、Method)に着目し、それぞれの変更点を識別、評価、管理することで、品質や生産性への影響を最小限に抑えることを目的としています。
製造業では、製品の設計変更、生産方法の改良、材料の変更などが頻繁におこなわれます。このような変更は品質や生産性の向上を目的としていますが同時にリスクも伴うため、4M変更管理では、それぞれの変更を体系的に管理するためのプロセスを定義します。
各4Mで起こり得る「変更点」と「対処方法」の例を以下にまとめました。
4M |
変更点 |
対処方法 |
Man(人) |
検査員の変更、ローテーション変更、退職、休暇 |
マニュアルや作業報告書の作成、人員増加 |
Machine(機械) |
設備の更新、レイアウト変更、メンテナンス方法の変更 |
作業手順の見直し、教育訓練の実施 |
Material(材料) |
仕入れ先の変更、材料の仕様変更、在庫管理方法の変更 |
検査基準の見直し、代替材料の評価 |
Method(方法) |
作業手順の変更、検査方法の変更、生産管理方式の変更 |
マニュアルの更新、品質管理図の適用 |
4Mの変更点と対処方法の例
4M変更管理を適切に実施することで、製造業の品質と生産性の向上を実現できます。変更に伴うリスクを最小限に抑えつつ、継続的な改善を推進しましょう。
▶ 4M変更の目的や変更時に注意点、通知義務について詳しく解説した記事はこちら
4M変更とは?理由や注意点、通知義務の有無、事故防止対策を紹介
4M変更管理を正しく現場で活用すると、品質や生産性を維持もしくは向上させれます。4M変更管理を製造業の品質と生産性向上に活用するためには、以下の2つの取り組みが重要です。
どちらも品質管理の観点で非常に重要なポイントなので、自社で4M変更管理を定着させるためにもしっかりとチェックしておきましょう。
4M(人、機械、材料、方法)は時間とともに変化することが多いため、定期的に4Mの視点で作業方法を見直すことが重要です。人の出入りは絶えずあり、機械も経年変化によって必要な対応が違ってきます。具体的には、以下のようなタイミングで4Mの見直しをおこなうことが効果的でしょう。
このように、1度きりではなく定期的に作業方法を見直すことで、変化した4Mを適正な状況に戻すことが可能です。4Mの定期的な見直しを通じて、製造業の品質と生産性の継続的な向上を実現していきましょう。
4M変更管理においては変更の記録と情報共有は非常に重要ですが、紙ベースの記録方法の場合は、いくつかの課題があります。
まず、紙の記録では変更情報を瞬時に共有することが難しく、関係者間で情報の齟齬が生じるかもしれません。また、複数の変更がおこなわれた場合、どの情報が最新なのかを判断するのが難しくなります。さらに、紙の記録では記録する際に手書きの文字の読み間違いや、記入漏れなどが発生する可能性もあります。
4M変更管理では、人、機械、材料、方法に関する情報を関係者全員が正確に理解し、共有することが事故防止につながります。そのためには、全員が同じ情報を見られるようにすることが重要です。そのため、4M変更管理の記録やミスが起こりやすい箇所でデジタル化を進めることを検討してみてもいいでしょう。デジタル化により期待できるメリットは、以下のとおりです。
情報共有の迅速化と正確性の向上を図るために、4M変更管理の記録やミスが起こりやすい箇所でデジタル化を進めるのも一つの有効な手段でしょう。
本記事では、製造業の品質管理において重要な概念である4M(Man、Machine、Material、Method)について解説しました。4Mとは、製品の品質を決める「人(Man)」、「機械(Machine)」、「材料(Material)」、「方法(Method)」の4要素でそれぞれの頭文字を取ったものです。
4Mの変更を適切に管理し、関係者全員で情報を共有することが、事故の防止と品質の維持に不可欠です。また、4Mをベースにした「5M+1E(4M+Measurement・Environment)」や「6M(4M+Manegement)」を取り入れることで、さらなる品質向上や効率化を図れます。
4M変更管理を効果的に活かすためには、定期的に4Mの視点で作業方法を見直し、改善の機会を見出すことが重要です。また、4M変更管理の記録やミスが起こりやすい箇所でデジタル化を進めるのも、情報共有の迅速化と正確性の向上に貢献してくれるでしょう。
4Mの視点で現状の業務を見直すことで、改善のポイントが見えてくるはずです。4Mの概念を活用し、業務の効率化と標準化に取り組んでみましょう。