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HACCPとFSSC22000の違いは?各認証の目的と構成要素をわかりやすく解説

作成者: カミナシ編集部|2024.05.27

食品製造業に従事している場合、一般的にHACCP認証の取得はされているかと思います。さらに新規取引先の拡大や既存顧客からの要求で、国際的にも通用する食品安全に関する認証「FSSC22000」の取得を検討している方もいるでしょう。

しかし、FSSC22000とはなにかやHACCPと具体的に何が違うのか、取得のための手順などわからないかと思います。そこでこの記事では、FSSC22000の概要やHACCPとの違い、取得までの流れをわかりやすくまとめました。

 

FSSC22000とは

FSSCとは、オランダの食品安全認証財団である「The Foundation of Food Safety Certification」が開発した食品安全のための認証規格です。

 

その中でも、FSSC22000(Food Safety System Certification 22000)は、「ISO22000(HACCPやISO9001、前提条件プログラム(PRP:Prerequisite Programalysis)」と、製品の安全を担保するためのFSSC22000が定める「追加要求事項」「ISO/TS 22002-1(食品製造)」、「ISO/TS 22002-4(容器宝蔵製造)」から構成されている食品安全のための規格です。

 

FSSC22000とISO22000、前提条件プログラムの関係性

画像引用元:FSSC 22000(食品安全)|日本品質保証機構

 

FSSC22000を取得できる企業は以下の8分野に含まれる事業者です。

 

  1. 畜産・水産
  2. 食品製造
  3. 食品包装及び包装材の製造
  4. ケータリング
  5. 動物の飼料製造
  6. 流通
  7. 輸送及び保管サービスの提供
  8. 生化学製品の製造

 

またFSSC22000は、食品企業、国際機関、認証機関、学術機関など、食品安全の専門家が集まりベルギーで設立された非営利組織GFSI(Global Food Safety Initiative:国際食品安全イニシアティブ)にも承認された認証規格の一つです。

 

GFSIは世界中に存在する食品安全マネジメントシステム規格の中で適合する規格を承認し、食品安全のグローバル規格の標準化を図っています。食品安全への関心の高まりから、食品製造サプライヤーには必須の基準となりつつあります。

 

日本でFSSC22000を取得している企業は世界全体の認証取得数3万3911件(2024年5月時点)のうち3321件となっており、世界全体の約10%を占めていることになります。その中には、キッコーマンやキユーピー、森永乳業、日本水産(ニッスイグループ)など、大手食品製造企業の多くが含まれています。

 

参考:FSSC|Public Register

FSSC22000とHACCPの違い

FSSC22000とHACCPは共に食品の安全性を確保するための管理システムですが、適用範囲と構成要素が異なります。HACCPは製造工程に特化したものであり、FSSC22000は食品サプライチェーン全体を管理するものです。

 

また、構成要素として、HACCPは7つの原則による管理ですが、FSSC22000は3つの要素(ISO22000(HACCPの7原則に基づくリスク管理を含む)+前提条件プログラム(PRP)+FSSC22000の追加要求事項)から成り立ちます。

 

FSSCは、HACCPをベースに作られた国際規格ですが、HACCPをバージョンアップしたものではないので注意しましょう。

 

 

HACCP

FSSC22000

目的

商品ごとに製造工程における生物的・化学的・物理的危害要因を特定、分析し、健康被害を起こさないように排除/許容レベルまでの低減をすること

食品の安全性を包括的に管理するもので、HACCPで行う製造工程での管理と、特定業種における衛生管理基準や手順の整備、フードディフェンス(意図的な汚染防止)やフードフラウド(食品詐欺)などの製造から流通までを含む全工程で適用される

構成要素

「7つの原則」

①危害要因の分析

②重要管理点の特定

③重要管理点の設定基準の確率

④重要管理点のモニタリング

⑤是正措置の実施

⑥検証と確認

⑦記録の保持

「大きく分けて2要素」

①ISO22000(HACCP+ISO9001(品質マネジメントシステム)+前提条件プログラム(PRP)+オペレーション前提条件プログラム(O-PRP)+回収(リコール))
②追加要求事項、ISO/TS 22002-1もしくはISO/TS 22002-4 

汎用性

運用する国や業種によって異なる

世界共通

審査対象

商品ごと

※ 認証機関により異なる

生産される仕組み

※ 基準が明確

FSSC22000とHACCPの違い

 

FSSCの追加要求事項は、主に以下のような項目があります。

 

  • 製品のラベリング
  • 食品防御(フードディフェンス)
  • 食品偽装の軽減
  • ロゴの使用
  • 保管及び倉庫管理
  • サービスの管理及び購買材料(共通部分)
  • サービスの管理及び購買材料(カテゴリ別部分)
  • アレルゲンの管理
  • 環境モニタリング
  • 製品の処方
  • 転送及び配達
  • 交差汚染を防止するためのハザード管理及び対策 など

参考:FSSC 22000(食品安全)|日本品質保証機構

FSSC22000を取得するメリット

FSSC22000を取得することで、食品を製造している企業の信頼性が増し、新規の取引先が増えたり、今まで以上に安全性が高められたりします。

取引先の拡大が期待できる

世界でFSSC22000を取得している企業は、日本企業の10倍に及びます。海外企業においては、FSSC22000を取得していることが取引要件になっていることも多くあります。そのため、FSSC22000を取得していることにより、海外企業との取引要件を満たし、取引先拡大が期待できるようになります。

 

海外への輸出する際に、FSSC22000は求められるようになる規格の1つなので、国外に取引を拡大したい場合は、取得を検討しても良いでしょう。

 

また、取引要件でなくても、FSSC22000の取得は、自社製品の安全性を証明することになるので、信用も積めます。

HACCPやISO22000よりも食品の安全性を高められる

FSSC22000を取得することで食品安全性の観点が高められるようになります。そのためHACCPやISO22000のみを取得している企業よりも自社の食品安全に対する取り組みを他社に論理的に説明できるようになります。

 

さらにFSSC22000の取得によりその企業の信頼性が高まることで、二者監査の必要がなくなったり、監査項目が少なくなったりする副次的な効果があります。

 

FSSC22000の取得の流れ

FSSC22000を取得するためには、以下の3つのステップを1年〜1年半程度の期間をかけて構築し、認証機関の審査を受けて認証を取得します。

 

  1. システム構築・運用
  2. 認証取得
  3. システム運用・認証維持

 

なお国内には、JSA-SOL(日本規格協会ソリューションズ株式会社 審査登録事業部)や、JICQA(日本検査キューエイ株式会社)、JIA-QA Center(一般財団法人 日本ガス機器検査協会 QAセンター)をなど日本適合性認定協会が認定しているFSSC22000の認証機関は9つあります。

 

参考:JABに認定された適合性評価機関|日本適合性認定協会

 

FSSC22000を取得しようと考えている企業の担当者は、これらの認証機関が開催している研修やセミナー、説明会などを受講するとよいでしょう。

1.システム構築・運用

FSSC22000を取得するまでには、以下のような4つの手順を踏む必要があります。

 

  1. 現状分析・スケジュール確認
  2. キックオフ・教育訓練
  3. 食品安全システムの構築
  4. 運用・教育

 

1-1.現状分析・スケジュール確認

まず初めに自社の現状分析を行い、FSSC22000の要求事項と自社の取り組みを比較します。その上で文書の整備や設備の新規導入や運用方法の見直しを行い、基本方針やスケジュールを策定します。まずは、現状の手順書や記録の構築状態を確認して、その差分を埋めることから始めるのがポイントです。

1-2.キックオフ・教育訓練

FSSC22000の運用は、食品安全担当者だけでは困難を極めます。そのため、現場を巻き込んでいくかがポイントとなります。FSSC22000自体の解説を行っていくほか、FSSC22000の必要性を訴える教育や経営者からの提言なども必要です。

1-3.食品安全システムの構築

追加要求事項要求事項に書いてある文書類に自社で使用している文書を紐づけ、従業員に分かりやすい食品安全システムにしていきます。コンサルタントや講師派遣研修を利用することで、事務局の負担軽減ができるので、適宜検討しましょう。

 

1-4.運用・教育 

文書類やルールの整備が完了したらFSSC22000の運用を始めていきます。運用にあたって、再度教育が必要になることもあるので、研修の日程なども考えて余裕をもったスケジュールでを組みましょう。

2.認証取得

次に内部監査員を選定し、実際に自社でFSSC22000のシステムを運用して内部監査を行います。そのためには事前に、外部講習の受講などの要件を定めた内部監査員資格を自社の従業員が取得しておく必要があります。

 

内部監査員の役割は、自社で決めたルールや文書が運用されているかどうか、改めてチェックを行い、もしルールからの逸脱や運用が守られていないことがあれば、原因を追究して是正することです。その結果を、マネジメントレビューのインプット情報として利用していきます。

 

内部監査やマネジメントレビューまで完了すると、FSSC22000のPDCAサイクルが一通り終わったことになり、審査機関から登録審査を受けられるようになります。

 

なお登録審査は、ファーストステージとセカンドステージに分かれています。ファーストステージでは、マネジメントシステム構築状況の確認やセカンドステージ審査のための情報収集を行います。

 

セカンドステージでは、適用範囲すべてを対象にマネジメントシステムの実施状況を評価して、規格への適合性を評価していきます。

3.システム運用・認証維持

FSSC22000の認証の有効期限は3年間です。もし登録審査に受かったとしても、1年目と2年目に定期審査があり、3年目に更新審査が行われます。

 

なお定期審査のうち第1回目は「食品安全の取り組みは定常的に行われるべきという考え方から非通知で行われます。

 

また国際基準のISOは8年程度で改定されるのに対して、FSSC22000の追加要求事項は1~2年で追加されることも珍しくありません。そこで新しい追加要求事項が発表されているかどうか、常に情報を収集していくことが必要です。

FSSC22000を取得して食品の安全性を高めよう

FSSC22000は、安心安全な食品を消費者まで届けるための食品衛生への取り組みのための仕組みを定義している規格です。HACCPやISO22000の手法を取り入れ、食品の安全性を高めるためのバージョンアップが常に続けられています。

 

ガイダンスを遵守した運用は必要になりますが、取引先や消費者との信頼関係を築くために現在では多くの企業がFSSC22000を導入しています。自社食品の安全性を高め、その取り組みを対外的にもアピールしたいと考えているのであれば、FSSC22000の取得をぜひ検討しましょう。

 

FSSC22000はHACCPやISO22000を取得するよりも難易度が高いものがありますが、HACCPよりも厳格に食品の安全性を守っていくことができるようになるほか、国際規格ですので海外との取引の際の信頼性につながり、取引先の拡大が期待できるようになります。

 

衛生管理の記録はタブレットで記入するようにし文書管理をデジタル化していくことで、記録方法の教育の手間や抜け漏れ、逸脱防止に繋がります。