HACCPの7原則とは?義務化された経緯や導入するメリットを解説

従来は、一部の食品に対してのみ導入が義務付けられていたHACCPですが、2020年6月からは食に関連する全分野での導入が決定しました。

 

HACCPを導入するには、衛生管理手法の軸となる7原則に対応することが必要です。そこで、今回はHACCPの導入に欠かせない7原則について分かりやすく解説します。

 

HACCPとは?

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食品を製造・加工する場合の安全確保に対する管理手法である「HACCP」。食品製造・加工のどの工程で異物混入や食中毒の発生リスクがあるかを予測、分析して、食品製造に関するトラブルを未然に防ぐことを目的としています。

 

そんなHACCPは2020年6月より義務化がスタート。ここでは、その経緯やきっかけを解説します。

HACCPが導入された経緯

HACCPの概念が提唱されたのは1960年代のアメリカで、人類を宇宙に送り出すことを計画していた「アポロ計画」にルーツがあります。宇宙で宇宙食の欠陥が発覚しても交換はできません。

 

また、宇宙飛行士が食中毒などによって体調不良になってしまうと宇宙開発計画にも大きく支障をきたすことから、宇宙食は徹底した品質管理のもとで製造することが求められました。

 

そこで、この食品の製造管理の仕組みにアメリカ食品医薬品局が注目。1973年に缶詰食品の製造においてHACCPが導入されたのをきっかけに、食品製造分野で大きく広まっていきました。

HACCPが義務化したきっかけ

過去に大規模な食中毒事件が発生したことが、HACCPが義務化された経緯になります。日本では1996年から「総合衛生管理製造過程承認制度」によってHACCPが導入。

 

当初は乳・乳製品、食肉加工製品など対象となる食品の製造・加工過程においての導入が食品衛生法で定められていました。

 

しかし、2000年に総合衛生管理製造過程の認証施設において患者数が13,000人を超える大規模な食中毒事件が発生したことをきっかけに制度が見直されることに。特定の事業者だけでなく、食品を取り扱う全事業者にHACCPの導入が決定されました。

コンサルにグローバル化に向け安全性をアピール

グローバル化が進む現在、人や物だけでなく食品の輸出入も活発になっています。HACCPは食品の衛生管理に関する国際的な基準であるため、海外との食品取引においても適正な管理体制下で食品が製造されていることが証明できるのです。

 

日本には東京オリンピックの開催により、より多くの外国人の来日が期待されています。HACCPにより、日本で製造される食品は国際的な基準によって安全性が確保されているということを海外に向けてもアピールできるのです。

義務化を無視したらどうなる?

HACCPの義務化における明確な罰則が明記されているわけではありません。しかし、HACCPの義務化が進むなか、多くの企業で導入されることが予測されます。

 

そのため、HACCPを導入していないことが外部に漏れると、企業のイメージが落ちてしまうのです。その結果、取引先や消費者の信頼がなくなり売上に影響することが考えられます。

 

HACCPの7原則

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食品の製造や加工に関わる事業者がHACCPを導入するためには、7つの原則を検討・対策を実施する必要があります。ここでは、HACCP導入に必要な7原則について紹介していきましょう。

原則1 危害要因分析の実施

食品製造の過程において、どの工程に危害要因があるかを分析します。危険要害とは、健康に悪影響を与える可能性があるリスクのことで、危険要害を列挙して対策を検討することが必要です。

原則2 重要管理点の決定

CCPとは重要管理点(Critical Control Point)の略で、衛生管理手法における食品リスクを取り除くために最も管理すべきポイントのことです。原則2の工程では、そのポイントを決定します。

原則3 管理基準の設定

CCPを決定したら、温度や時間、速度など管理すべき基準値を設定します。この際に設定する基準値は、科学的な根拠に基づいた管理基準であることが求められるので注意しましょう。

原則4 モニタリング方法の設定

原則3で設定した管理基準を設定したら、基準を満たしているか確認するたにモニタリング方法を決定。温度計や速度計、各種センサーなどを用いてモニタリングを開始します。

原則5 改善措置の設定

原則4のモニタリングで基準を満たしていなかった場合に、どのように改善措置を取るかを決定。問題が発生した場合の対処法や原因の特定方法、問題となった製品の排除方法などを決めします。

原則6 検証方法の設定

原則6では、HACCPによって設定された製造管理や衛生管理が手順通りに実施されているかを工程ごとに検証。検証担当者と検証頻度を決定し、策定されたHACCPが有効に機能しているかを定期的にチェックします。

原則7 記録と保存方法の設定

製造工程や衛生管理の記録はHACCPが有効に機能していることを証明するために必要です。特に問題が生じた場合には製造工程や衛生管理に改善の余地がないか原因を追求する必要があるため、記録方法と保管方法についても決定。

 

日々の作業記録やモニタリング、検証記録など、さまざまなデータを記録して適切な方法で保存します。

HACCPを導入するメリット

さまざまなプロセスを経て実施されるHACCPですが、企業が導入するメリットはなんでしょうか。ここでHACCP導入のメリットについて解説します。

衛生管理が適切である証明ができる

HACCPは食品衛生管理に関する国際基準です。認証取得は義務ではありませんが、HACCPの認証を受けることで衛生管理が適切に実施されていると客観的に証明できます。

 

HACCPは大手企業を中心に導入が進んでいるため、大手企業と取引を希望する場合には取得しておくと有利に働くことも。また、企業としての管理体制が充実していることが証明できるため、取引先だけでなく顧客に対しても食の安全性をアピールできます。

衛生管理の意識が改善されリスクが減少

HACCP導入の過程で、さまざまな工程に危害要因があることを従業員は理解することができます。また、モニタリングや検証の担当者など各工程で役割を担う従業員が増えることで、衛生管理に関する意識が全体的に高められることが大きなメリットです。

 

また、注意すべきポイントが明確化されることで、従業員の意識改革にもつながり、事故のリスク減少も期待できます。

不具合が起きても迅速に対応できる

各工程で役割を担う従業員が配置されるため、万が一、予期せぬ問題や不具合が起きても迅速に対応することができます。

 

すぐに問題や不具合に対応することで、業務が一時的に停止するなどの2次災害も防ぐことができるのです。その後の業務に支障をきたすことなく再開できるため、リスク回避につながることは間違いありません。

まとめ

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HACCPは、食品衛生管理に関する国際基準です。認証取得は義務ではないものの、認証を受けることで適切な衛生管理のもとで食品が製造・加工されていることが公式的に証明できます。

 

食の安全が叫ばれる昨今、食中毒などのトラブル発生は企業の存続を左右する重大なリスクです。このようなリスクを防ぎ、従業員の意識改革を促すためにも、積極的にHACCPの導入に取り組むことが望ましいでしょう。

 

 

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