ヒヤリハットという言葉は、建設製造現場や、医療や福祉、介護以外の業界ではあまりなじみのない言葉です。また、これらの業界に属していても耳にしたことがない場合があるでしょう。しかし、これらの業界内では大事故を防ぐために必要な概念として広まっています。
そこで、今回はヒヤリハットの定義や業界別の事例、ヒヤリハットを防ぐための対策等について解説していきましょう。
そもそも、ヒヤリハットとはどういう意味でしょうか。まずはヒヤリハットの定義や種類について解説していきましょう。
ヒヤリハットとは、「ヒヤリとする」「ハッとする」という2つの言葉をかけ合わせていて、どちらも、人がミスをする直前に感じる感覚を表す言葉。
ヒヤリハットは、事故に至る可能性がある出来事を事前に「見つける」ことで、事故を未然に防ぐことができるものです。
労働災害における経験側の1つとして「ハインリッヒの法則」というものがあります。これは、1つの重大事故の裏には29の小さな事故があり、その裏にはさらに300の異常が存在すると言う経験則です。
ヒヤリハットは、この中の「300の異常」に分類され、ヒヤリハットを減らすことが事故を減らすことにつながると定義されています。
ヒヤリハットには、職業や職種により様々な種類があります。建設業や製造業の場合は、「墜落・転落・激突・挟まれ・巻き込まれ」といったヒヤリハットが代表的です。また、医療や保育、介護の現場では、
といったヒヤリハットの事例があります。これらは、大事に至っていないものの、事故に直結してもおかしくないため、それぞれの業界のヒヤリハットを把握し、事故を起こさないような対策が必要です。
ヒヤリハットの種類は、業界によって異なります。ここでは、業界特有のヒヤリハットがある介護や医療・看護分野、保育現場でのヒヤリハットを紹介していきましょう。
介護業界の場合、体や耳が不自由な高齢者と向き合う仕事が多いため、主に利用者との意思疎通のミスや移動などの介助の場合の不注意がヒヤリハットのケースになり得ます。
医療現場や介護分野でのヒヤリハットは、薬の取り扱いミスや、患者の誤認などが挙げられます。医療分野でのミスは人命や健康被害に直結するため、特に注意が必要です。
保育現場は乳幼児を相手にしているため、医療現場と同じように小さなミスが人命や健康に影響を与える可能性があるため、注意が必要な業界の一つです。
ヒヤリハットをなくすためには、どのような対策を取れば良いでしょうか。ここでは、ヒヤリハットを減らしていくための対策について解説していきましょう。
ヒヤリハットを防ぐためには、発生したヒヤリハット事例を正確に把握しておくことが重要です。事例は原因分析や対策に必要なため、どれだけ多くのヒヤリハット事例を収集できるかが現場や組織の安全性向上のカギといえるでしょう。
ヒヤリハットの報告者はヒヤリハットを起こした本人になるケースが多いため、ヒヤリハットの報告をして叱責するような職場環境では多くの事例は収集できません。
叱責されるのを恐れてヒヤリハットが隠蔽されてしまう可能性があるので、ヒヤリハットの発生を悪いことと捉えて、ヒヤリハットを起こした本人を叱責する風潮は改めていきましょう。
「ヒヤリハット報告書」の作成も、ヒヤリハットの防止には有効です。ヒヤリハット報告書はヒヤリハットの原因を分析し、改善するための報告書なので、分析しやすいように誰が書いても同じような報告になるように定型的にしておく必要があるでしょう。
また、報告書の作成に時間がかかりすぎる書式では、書くのが面倒だという理由からヒヤリハットの報告が上がりにくくなります。報告書を用意する場合には、状況を的確に把握する最低限の分量で、誰にでも状況が理解できる書式を意識しておきましょう。
報告書において最も重要なのは「いつ」「どこで」「誰が」「誰に」「どうしたのか」という5W1Hの形式にしておき、できるだけ状況説明には数値を用いるように意思統一をしておくことが重要です。
ヒヤリハット報告書は、全体的な傾向を分析するためにも、一つひとつの事例を振り返り、解決策をディスカッションするなど、様々な方法で利用できます。職場にヒヤリハット報告書が導入されていない場合には、ぜひ導入を進めていきましょう。
ヒヤリハットは「ヒヤリとした」「ハッとした」という、事故の前兆を予知したときに起こる心理状況を言葉に表した危険予知の概念です。
誰でも仕事でヒヤリとした経験はあるでしょうが、ヒヤリとした経験を可視化することで、大事故を未然に防ぐことができます。
職場でヒヤリハットの概念がまだ普及していない場合や、これまでヒヤリハットを知らなかった場合には、ぜひヒヤリハットを意識し、事故を未然に防ぐ働き方を心がけていきましょう。