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IATFとは?認証に必要な5つのコアツールと取得の流れを解説

作成者: カミナシ編集部|2024.03.26

自動車業界で品質マネジメントについて学んでいると、IATFという言葉を目にすることが多いではないでしょうか。

 

IATFは簡単にいうと、自動車部品や材料に関する品質を保証するために、認証制度を設けてサプライヤーに認証取得を促している組織のことです。IATFの認証を取得するメリットは以下のようなものがあります。

 

  • 不具合の発生を未然に防げる
  • 品質の継続的な改善が期待できる
  • サプライヤーとして信頼される

 

この記事では、全国10,000箇所以上を超える現場DXを支援してきた「カミナシ」がIATFについて分かりやすく解説します。認証制度IATF16949の要求事項や必要な5つのコアツールのほかにも、実際に認証を取得してから維持するまでの流れについても紹介していきます。

 

  • 「社内でIATFの話が出たけどついていけない……」
  • 「IATFの認証取得を考えているけど何をすれば良いのか分からない……」

 

そんな方はこの記事を読んでIATFについて一緒に学んでいきましょう。IATFに関する知識を現場に取り入れていくことで製品の品質向上や不具合の発生を防止し、取引先からも信頼される可能性が高まります。

IATFとは

はじめに、IATFとはそもそも何かを説明します。

 

IATFはInternational Automotive Task Forceの頭文字であり、日本語では「国際自動車産業特別委員会」と呼ばれています。欧米の自動車メーカーや自動車産業団体により運営されており、世界中の顧客に対して品質の良い自動車を提供するために結成された組織です。

 

IATFのメンバーは、以下のメーカー・産業団体で構成されています。

 

自動車メーカー

自動車産業団体

BMW(独)

AIAG(米)

Ford Motor(米)

ANFIA(伊)

Geely(中)

FIEV(仏)

General Motors(米)

SMMT(英)

IVECO(伊)

VDA(独)

Jaguar Land Rover(英)

 

Mercedes-Benz(独)

 

Renault(仏)

 

Stellantis ex FCA、PSA(伊、仏)

 

Volkswagen(独)

 

Volvo(瑞)

 

 

IATFの対象となる組織は、自動車(乗用車、バス、トラック、二輪車)に関係する製品や部品を提供するサプライチェーン全体です。IATFのメンバーである自動車メーカーは、IATFの認証制度「IATF16949」に登録されたサプライヤーから部品や材料を調達してきます。

 

注意点として、日本国内の自動車メーカーはIATFの運営に携わっていません。IATFの認証制度を採用しているのはあくまで欧米の自動車メーカーや自動車産業団体であることを覚えておきましょう。

 

IATF16949とは

ITAF16949とは「自動車業界の品質マネジメントに関する国際規格」です。

 

具体的にいうと、自動車メーカーが自動車部品を調達するときに基準としている規格であり、この基準を満たしている部品を使うことで品質の良い製品を顧客に提供できます。

IATF16949には認証制度が存在し、IATFから承認を得た第三者機関がサプライヤーを「IATF承認取得・維持ルール」にもとづいて審査します。そして、IATFに所属している自動車メーカーに部品を納入するサプライヤーは、部品や材料の品質維持のためにもIATF16949の認証取得を求められる仕組みになっているのです。

取得のメリット

IATF16949の要求事項を満たして認証を取得するメリットは、おもに以下のようなものがあります。

 

  • 不具合の発生を未然に防げる
  • 品質の継続的な改善が期待できる
  • サプライヤーとして信頼される

 

IATF16949の認証は第三者機関によって審査されるので、製造工程における危険や不具合発生の原因を見つけやすくなります。また、IATF16949では厳格な品質管理の項目を定めており、要求事項をクリアすることで製品の品質向上や工程の効率化が狙えるのも大きなメリットです。

 

ほかにも、多くの自動車メーカーがIATF16949を規格として採用していることから、認証取得することが品質保証に関する信頼の証にもなります。

IATF16949要求事項

IATF16949の要求事項は、大きくの3つの要求事項から構成されています。

 

 

ベースとなるISO9001の要求事項の上に自動車産業固有の要求事項があり、さらにその上に顧客である自動車メーカーが独自に要求する項目(CSR)が加わります。

ISO9001の要求事項

ISO9001とは、自動車業界に限らず顧客満足度を高めるために用いられる品質マネジメントの国際規格です。規格の内容は組織マネジメントに関する以下の7項目で構成されており、規格を満たすことで業務効率の改善や組織体制の強化を達成できるようになっています。

 

また、ISO9001はPDCAサイクルに当てはめて活用され、継続的な品質マネジメントの改善に役立ちます。このように、自動車業界が設定しているIATF16949では、製造業の品質マネジメントのベースであるISO9001を基準として要求事項を定めているのです。

自動車産業固有の要求事項

IATF16949では、ベースとなるISO9001を満たしたうえで自動車業界に特化した要求事項を追加で定めています。

 

ISO9001の要求事項が127であるのに対して、IATF16949になると280ほどと2倍以上の要求事項を満たす必要があります。また、IATF16949の認証をおこなう第三者機関もIATFから厳しく監視されており、甘い判定をしていると審査資格を剥奪される可能性もあるのでISO以上に厳しい審査といわれています。

具体的なIATF16949の要求事項としては「自動車の設計・開発に関わる車体の安全性や車体材料、車載機器などに関するもの」が加わります。これらの要求事項を満たすことで、自動車としての安全性や品質を担保できるのです。

顧客固有の要求事項(CSR)

顧客固有の要求事項とは「部品や材料を納入する自動車メーカーが独自に定めている要求」のことを指します。IATF16949では顧客志向の基本理念があり、第三者機関による審査でも顧客固有の要求事項が重要視されています。そのため、IATF16949で規定されていない要求に関してもクリアする必要があるのです。

 

自動車メーカー固有の要求事項は、各メーカーの公式サイトなどを通じて公開されています。また、以下に示すメーカーの顧客固有の要求事項(CSR)はIATFの公式サイトで一般公開されているので、より理解を深めたい方はご参照ください。

 

  • BMW
  • Ford Motor
  • Geely
  • General Motors
  • IVECO
  • Mercedes-Benz
  • Renault
  • Stellantis ex FCA、PSA
  • Volkswagen

IATF16949に必要な5つのコアツール

IATF16949は自動車メーカーの品質に重点をおいた規格となっています。この規格を満たすためには、以下の5つのコアツールの活用が不可欠です。

 

  • PPAP
  • APQP
  • FMEA
  • MSA
  • SPC

 

ここではコアツールの内容を解説し、IATF16949との関係性について紹介していきます。

PPAP

PPAP(Production Part Approval Process)とは日本語で「生産部品承認プロセス」と呼ばれ、外部サプライヤーから購入する部品や材料を承認する手続きのことを指します。PPAPを満たすということは、自動車メーカーから提出される設計図面や仕様書にもとづき、要求を満たす製品を製造する能力をサプライヤーが持っていることを意味します。

APQP

APQP(Advanced Product Quality Planning and Control Plan)は「先行製品品質計画」と訳され、顧客の求めている製品を開発するための指針のことを指します。APQPでは、新しく製品を開発するときに顧客満足度や品質向上を意識した計画の立案が重要です。APQPを効果的に活用することでIATF16949の要求事項を効率的に満たせます。

FMEA

FMEA(Potential Failure Mode and Effects Analysis)とは「故障モード影響解析」を指し、製品や製造工程において潜在的に隠れている問題をあらかじめ対策しておくために用いられる手法のことです。IATF16949では製品の品質マネジメントが重要なポイントとなっています。そのため、FMEAにより事前に課題を洗い出しておくことが、不具合の発生を予防し品質改善につながります。

MSA

MSA(Measurement System Analysis)は日本語で「測定システム解析」と訳され、測定における計測器の精度や作業者によるばらつきを把握し、製品の測定に適しているか評価する手法を指します。MSAを活用して製造工程における測定誤差やばらつきを小さくすることが、IATF16949の品質マネジメントを満たすのに役立ちます。

SPC

SPC(Statistical Process Control)は「統計的工程管理」と呼ばれており、製造工程におけるさまざまなデータを集め、統計学的に処理して不良品を出さないようにする手法のことです。定期的なデータ収集から製造工程で発生している異常な状態を検知できるので、IATF16949で定められている品質向上に活用されています。

 

IATF16949認証取得から維持の流れ

IATF16949の認証は取得したいからといって簡単に取れるものではありません。大きく分けて「体制・システム構築」「認証取得」「認証維持に向けた運用」の3つのステップで進められます。入念な準備と認証を維持するための運用が重要です。

体制・システム構築

認証取得に向けてまず取り組むべきなのは、IATF16949を受けるための社内体制やシステムを構築することです。IATF16949に関する情報収集をおこない、コアツールの理解や品質マネジメント方針の決定、組織の教育などの計画を立てます。その計画にもとづきシステムを運用し、活動の分析・評価、システムの見直しを継続的に実施していきます。

 

また、認証取得に関して不明な点は事前相談をおこない、第三者機関から見て社内システムがIATF16949に適しているかの確認も進めておきましょう。社内システムの構築ができたら、認証取得のための審査登録や契約書を取り交わします。

認証取得

認証を取得するための登録審査は「書類審査が中心のファーストステージ」と「適用範囲のすべてを対象としたセカンドステージ」に分かれています。

ファーストステージ審査でおこなわれるのは、品質マネジメントシステムの構築状況の確認やセカンドステージ審査に向けた情報収集です。担当審査員がセカンドステージ審査の準備が整っていると判断した場合、ファーストステージ審査から90日以内にセカンドステージの登録審査が実施されます。

セカンドステージ審査では、実際に品質マネジメントシステムの実施状況や各種要求事項への適合性をチェックします。登録審査の内容をふまえてセカンドステージ審査終了から120日以内に審査判定会で登録の可否が審議され、登録可と判定された場合に3年間有効な登録証が発行されます。

認証維持に向けた運用

IATF16949の認証は、認証取得してからも定期的な審査がおこなわれる点に注意が必要です。具体的には「セカンドステージ審査が終わってから約1年間隔で定期審査」が発生します。定期審査や更新審査では、品質マネジメントシステムが継続して要求事項を満たしているかを見られます。認証取得時だけマネジメントシステムを運用してその後の継続をしていないと、IATFの審査機関から認証取得にふさわしくないといわれてしまうのです。

認証を取得してから認証を維持するためには、継続的にPDCAサイクルを回してマネジメントシステムを改善していくことが重要です。定期的な審査で認証を維持している会社は品質マネジメントに対する信頼性が認められるので、認証取得後の運用も考えて計画を立てていきましょう。

主な認証機関と特徴

IATF16949の取得を目指す場合、最初に審査してもらう認証機関を決めてマネジメントシステムの構築を進めるのがおすすめです。ここでは、主な認証機関6つとそれぞれの特徴を解説しますので参考にしてください。

 

SGSジャパン

審査の厳しさに定評あり。審査を受ける会社ごとに審査プロセスをチューニングしてくれるのが特徴。

ビューローベリタスジャパン

認証を取得するまでの対応力やサポート体制が評価されている。

TÜV SÜD

審査に対する技術力や審査員の経験値が高い。品質向上に向けた指導をしてくれる。

LRQAジャパン

独自のアプローチが特徴。ビジネス指向のアプローチで経営戦略を含めた審査をおこなっている。

DNV GL

ビジネスの成功と社会的な影響力のバランスを保つためのサポートをしてくれる。

日本品質保証機構(JQA)

日本に拠点を置く認証機関。各業界のISO規格を審査しており、信頼と実績が豊富である。

内部監査の方法

IATF16949の認証取得や維持に際して、内部監査が機能しているかも重要なポイントです。内部監査の方法として重視されているものに「自動車産業プロセスアプローチ」があります。自動車産業プロセスアプローチではプロセスの分析にタートル図を用いて、インプット(顧客ニーズ)とアウトプット(満たされた顧客ニーズ)にもとづきマネジメントシステムの評価をおこないます。

 

 

上記のタートル図では、評価するプロセスに必要な「物的資源」「人的資源」「運用方法」「評価指標」をそれぞれ明確にします。そのうえで、内部監査時に顧客ニーズにもとづいてプロセスの分析をおこない、アウトプットである満たされた顧客ニーズになっているかを確認していくのです。

IATF16949のデータ保管期間

IATF16949のデータ保管に関しては「要求事項7.5.3.2.1:記録の保管」に記載されています。

 

データ保管期間は各社によって異なりますが、基本的には10年以上の保管が義務付けられている場合が多いです。例えば、Mercedes-Benzではサプライヤー向けに発行しているCSRのなかで「サプライヤーは文書を15年間保管し、要求があれば提出しなければならない」と定めています。IATF16949を取得する場合は、要求事項を満たすだけでなくデータの保管も必要になってくることを理解しておきましょう。

まとめ

IATF16949の認証を取得するためには多くの要求事項を満たす必要がありますが、そのぶん認証取得していると品質マネジメントの高い会社として見てもらえます。認証取得には事前の計画立てや認証機関の選定が重要なので、自社の製造プロセスに合った方法を見つけましょう。

 

カミナシであればタブレットの記録による現場の作業の標準化が可能なので、認証審査で求められるような品質マネジメントシステムを簡単に実施できます。また、作業データをクラウド管理できるので、急にデータの提出を求められても安心です。

 

  • 「現場の作業を標準化して誰でも同じ作業ができるようにしたい……」
  • 「保管が必要な資料のデータ化を進めたい……」

 

こんなお悩みを抱えている方は、一度資料をダウンロードしてみてください。また、具体的な作業の効率化や導入をお考えの方は、カミナシまでお気軽にご相談ください。