認証を取得する目的、得られるメリットとは?
ISO9001の認証を取得する目的やそれによって得られるメリットとはどんなものでしょうか?複数の目的・メリットがあるため、それぞれ紹介していきます。
一定レベル以上の品質の維持
まずはISO9001の主な目的といえる、「一定レベル以上の品質が維持できること」です。品質管理のためのマネジメントシステムがしっかりとすることで、品質を落としてしまうような要因をなくしていくことができます。
会社としての信頼性の向上
取引先や顧客など、さまざまな人から見たときに「会社としての信頼性が向上できること」も、この規格の大きなメリットです。「認証取得をするように取引先から求められた」、「官公庁案件の入札加点となるため」、「新規取引先開拓のため」など、信頼性の向上を目的として取得を目指す企業は多いでしょう。
一定水準以上のレベルの品物がこれからもずっと提供できると第三者機関によって証明されることで、周りの人々からは「しっかりした会社だ」という印象を持ってもらえます。また、品質の保証や改善の能力があること、さらには経営管理の基盤についても十分であることを示すことができるのです。
この信頼性の向上は企業において、営業などの活動でもプラスに働きます。あまり知られていない会社であっても、「ISOの認証を持っている」というだけで安心感が持てるもの。これは、ISO自体が国際的に信頼されている機関であるからです。認証を取得することで、国際的な標準になっているような規格を作っている機関に認められている会社ということになるため、企業自体のブランディングにも役立ちます。
顧客満足度が上がる
「顧客満足度が上がる」というのもISO9001を取得することで受けられるメリットです。ISOを取得し、企業の信頼性が増すことで、良い会社のサービスを受け、良い商品を使えているのだ、という満足感に繋がります。
またISO9001を取得することで、品質の保証のほか、顧客を重視している姿勢を確認が可能です。顧客本位を実践できている企業であると周知できることで、より良い関係性の構築に繋がります。
作業時間や品質が統一化される
また「作業時間や品質の統一化ができる」というのもメリットのひとつです。さまざまな業務についてそれぞれにマニュアルを作成して、全員が同じやり方をすることで、できあがった商品・サービスの品質が揃います。すごく早く作業をおこなっていた人や丁寧な仕上がりができていた人のやり方を参考に、全員に取り入れられる作業マニュアルを作ることで、全体的な作業時間も早くなり、品質も同じにできるのです。
作業の手順が明確でフォローもしやすくなる
作業のマニュアルが作られていない場合、一人ひとりの作業の仕方についてはその業務を担当している人にしかわかりません。マニュアルを作ることで、「作業の手順が明確になること」さらに「なにを手伝えるのかわかり、フォローもしやすくなること」というメリットがあります。
1人しかわからないような作業をしていると、該当の人が急に休んだり、退職してしまったりしたときに困るものです。仕事の方法も、その人がうまく仕事をする上でおこなっていたノウハウも分からなくなってしまいます。そうならないためにも、作業の手順が明確にしておくことが重要です。
新人教育がやりやすくなる
ISO9001のメリットは研修時にもあります。マニュアルがはっきりしていることで、「新人教育がやりやすくなること」です。通常多くの経験を積んだ社員にしか新人の教育ができなかったものが、マニュアルがあることで現場のスタッフからでも伝えやすくなります。
新人にとっても、「聞く人によって違うことを教えられる」ということがなくなり、理解しやすくなるのです。早く即戦力となってもらえることも、メリットだといえるでしょう。
取得後、形骸化していないかのチェックポイント
たくさんのメリットがあるISO9001ですが、認証をせっかく取得したのにうまくいかせていない企業もあります。
ここからは、取得後の企業を対象に、この規格が形骸化してしまっていないかのチェックポイントを紹介します。これから取得を目指している企業の人も、認証後どうすればいいのかのイメージをつかむために確認していきましょう。
手順書や内部審査は機能しているか
まずは「手順書は機能しているかどうか」です。先述のとおり、ISO9001では業務全般の作業のマニュアルを書いた手順書を作ります。しかし、マネジメントシステムの運営をしていくと、そのうちマニュアルに書いた内容とは違うやり方に変わったり、違う品物を作らなければいけなくなったりといった変化が起きるものです。
このときに毎回きちんと手順書を見直していればいいのですが、「あとで直そう」と思ってしまうこともあります。そうすると、「手順書は古いから参考にならない」となってしまい、形骸化してしまうのです。
「内部審査は機能しているかどうか」も重要なチェックポイント。審査が認証の更新を目的としたものになってしまっていると、改善に向けたチェックができず、せっかくのマネジメントシステムが機能しなくなってしまいます。
内部・外部審査での指摘を改善しているか
「内部審査や外部審査での指摘を改善しているか」も重要なチェックポイントです。ISOの取得をすると定期的に審査を受けることになり、内部審査や外部審査でさまざまな指摘を受けます。
しかしその指摘をそのままにしていては「せっかくISO9001を取得したのにマネジメントシステムがうまく働かない」という状態に。外部からの目線を入れて改善していくチャンスです。指摘を真摯に受け止め、改善していくことでシステムをいかし、より良い企業にしていきましょう。
改善に向けた取り組みのポイント
企業の改善に向けた取り組みのポイントを紹介します。
内部監査で顧客満足度向上を意識する
内部監査では、定期的に社内の各部署をチェックしています。手順書で決められているマニュアルが、そのとおりおこなわれているかどうかを関連している部署すべてで調査をして、なんらかの問題点が見つかった場合には改善する、という監査が実施されているのです。
この監査のときにただ手順書通りかをチェックをするだけではなく、「顧客満足度が向上するような仕事ができているか」を意識すると、より企業のブラッシュアップに役立ちます。顧客が満足できるかどうかを求めていくことで、顧客に選ばれる企業になり、収益性も高めていくことが可能です。
ISO9001は柔軟に対応できる規格であり、それぞれの企業に合ったシステム構築ができるようになっています。顧客満足度向上を意識してチェックをしていき、より使いやすく自社のためになるシステムにしていきましょう。
マネジメントレビューを活用する
企業の改善のためには、マネジメントレビューを活用することも取り組むうえでの重要なポイントです。マネジメントレビューとは、「経営者などの企業のトップによる監査に関する話し合い」のこと。内部監査などを受けて今の企業の方針を見直し、今後どのようにしていくかを議論するためにあります。
しかし、実際の企業ではこの目的が理解されにくく、うまく活用できていないことも。ほかの業務もあるためなかなかやりづらいという部分もあるかもしれませんが、しっかりとマネジメントレビューを活用して、企業の改善に取り組みましょう。
PDCAサイクル
PDCAサイクルをしっかりと回していくことも、取り組みの重要なポイント。PDCAサイクルとは、計画を立ててそれを実行し、実行した内容のチェックをして、マネジメントシステムのパフォーマンスが継続的に改善できるよう処置をし、それをもとにまた計画を立てるという循環のことです。
この循環がうまくいくとどんどん良い方向に企業が発展するでしょう。計画がうまくいったのかしっかりチェックをして、よいサイクルにしていくことが大事です。
まとめ
今回はISO9001を取得する目的やメリット、企業活動に役立てるためのポイントなどを紹介しました。ISO9001はキッチリ決まったシステムではなく、ある程度その企業ごとに合わせて対応ができます。PDCAサイクルやマネジメントレビューなどポイントを押さえて、より良い企業にしていきましょう。