よく見るJIS規格とは一体何なのか?概要や制定の流れについて

 

JIS規格というのをご存知でしょうか。一度は見たことあるとは思いますが、具体的にどのようなものかまで知っている人は少ないでしょう。そこでこの記事では、よく見かけるJIS規格の基本情報はもちろんのこと、歴史やJIS規格制定の流れなどについて紹介します。

 

JIS規格とはどのようなものか?

 

まずは今回の記事の本題である、JIS規格の基礎的な部分から見ていきましょう。何気ないところに表示されているJIS規格ですが、実際どのような意味が込められているのでしょうか。

 

JIS規格というのは、日本の産業製品に関する規格や測定法などを定めた日本独自の国家規格のこと。JISというのは日本産業規格(Japanese Industrial Standards)の略称であり、さまざまな製品に関する規格が設けられています。以前は日本工業規格と呼ばれていましたが、2019年7月1日に法改正の影響で名称が日本産業規格へと変更されました。

どうして規格が必要なのか?

そもそも、規格が必要な理由は何なのでしょうか。トイレットペーパーを例に挙げると、規格がなければサイズや筒の大きさもバラバラになってしまいます。そうなれば、自宅や会社のトイレに設置しにくくなり、使いにくいと思うでしょう。しかし、現在のように規格があればすべて統一され、どんなメーカーのトイレットペーパーでも設置しやすくなります。このように、規格を設けることで製品の統一化及び単純化を図るのです。なお、トイレットペーパーのサイズ幅はJIS規格によって114mmと定められています。

JIS規格の主な製品

JIS規格で定められている製品は数多くあります。具体的には前述したトイレットペーパーはもちろんのこと、鉛筆や乾電池、バイクのヘルメットなど。さまざまな製品があることから、あなたの自宅でもJIS規格の製品がいくつも見つかるでしょう。また、JIS規格は製品だけではなく、文字コードやプログラムコードなどの情報処理やサービスも含められています。

 

なお、JIS規格の製品にはマークが付いていることをご存知でしょうか。3種類のマークがあり、鉱工業品用・加工技術用・特定側面用に分かれます。最後の特定側面用に関しては、性能や安全性といった特定の側面に対してのものです。意外にも多くの製品にマークが付けられているため、気になる方は自宅でJISマークの製品を探してみると良いでしょう。

認証取得までの期間と費用

JIS規格を取得するためには、ある程度の期間と費用が必要です。期間は製品によって異なりますが、一般的には3〜4ヶ月。認証対象工場が海外にある場合や長期間の製品試験が求められる場合などは、長期的になりやすいです。費用は関しては、規格と条件次第。そのため、まずは一般財団法人の日本品質保証機構に問い合わせてどのくらいかかるのか見積もってもらう必要があります。

ISOとの関連性

JISとISOはどちらも製品に関する規格を定める組織名を略したものであり、簡単に説明すると規模が異なります。JISは日本の国家規格ですが、ISOは国際的な規格です。主な規格としては、ISO9000シリーズやISO/IEC27000シリーズなど。例えば、よく非常口で見かける細長い緑のマークは、ISO7010として国際的に規定されています。なお日本では、1995年に発効された貿易の技術的障害に関する協定によって、ISOに準ずることが定められました。

 

ISO自体は、スイスのジュネーブに本部がある組織です。1926年に設立された万国規格統一協会を前身としており、日本を含む162の機関が加盟。会員団体・通信団体・購読団体というカテゴリーに分かれており、権限が異なります。例えば、日本やアメリカ、イギリスなどが含まれる会員団体には総会での議決権がありますが、それ以外の団体にはありません。

 

JISの歴史

 

上記で基本的な情報を知った上で、次はJISの歴史を見ていきましょう。一体どのような流れでJISが誕生したのでしょうか。JISへの理解を深めるためにも、ぜひ読んでみましょう。

原点は工業品規格統一調査会

JISの原点を探るためには、明治時代まで遡らなくてはなりません。当時は民間団体が工業規格を定めていましたが、1921年に工業品規格統一調査会を勅令によって設置。活動自体もしっかりと行っており、1941年までに520件もの日本標準規格を制定しました。

 

その後、1939年から1945年までの間だけ臨時日本標準規格が900件以上を制定。ただし、品質よりも物資の有効利用が重視されており、制定手続きを簡素化して規格の制定を促進するという狙いがありました。また、航空機の規格として1938年に日本航空機規格が設けられましたが、これは外部への秘匿性が理由とされています。

戦後は工業標準調査会へ

第二次世界大戦が終わった翌年である1946年に、工業品統一調査会が廃止。その代わりとして誕生した組織が工業標準調査会です。これまでの規格を見直し、新たな日本規格を制定。文語体から口語体に変更され、1949年まで活動しました。その後、工業標準化法によって工業標準調査会が廃止され、日本工業標準調査会を設置。その年に最初の日本工業規格が制定されました。

2019年の法改正で日本産業規格に

2018年には、工業標準化法の改正を含む新たな法律が可決成立されました。そのことから翌年の2019年に、規格名が日本産業規格に変更。また、日本工業標準調査会も日本産業標準調査会へと変更し、データやサービスも規格として含まれるようになりました。ただし、英語表記は変更されず、JISのままです。

JISの制定はどのような流れなのか?

 

最後に紹介するのは、JISが制定されるまでの流れです。JIS認証を取得する際には3〜4ヶ月かかりますが、そのJISが制定される場合はどのように進められていくのでしょうか。

まずは原案作成

最初に行うことは、原案の作成です。そもそも、JIS制定の手続きは主務大臣の意思または利害関係人もしくは認定産業標準作成機関の申し出によって開始されます。これをクリアできれば、主務大臣または主務大臣から委託を受けた人が原案を作成。もちろん、原案を作成する際には事前の調査や研究も行います。

 

なお、主任大臣というのは環境大臣・経済産業大臣・厚生労働大臣・国土交通大臣・総務大臣・農林水産大臣・文部科学大臣・内閣総理大臣です。

制定するかどうか審議

無事に提出されれば、制定するかどうか審議が始まります。標準部会のもとに設置された専門委員会が原案の審議と議決を実施。ただし、認定機関がJIS案を作成する場合は審議会への付議が不要であり、申出とJIS案の審議のみです。

審議をクリアできれば制定へ

無事に議決されれば、主任大臣が制定してその旨を公示。その際は、官報に名称と番号、および制定年月日を掲載します。なお、ここまで紹介した流れは産業標準化法施行規則に基づいて行われるもの。勝手に進めて制定することはできません。

まとめ

 

今回は、JIS規格の基本的な情報や歴史などについて紹介しました。JISについてほとんど知らなかった方も、最後まで読んだことである程度把握できたのではないでしょうか。この情報は仕事にも活用できるため、ぜひ忘れずに覚えてもらえると幸いです。

 

 

 

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