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【事例あり】製造業で生産性を向上させる方法まとめ。ツールや現場を巻き込むコツも紹介

作成者: カミナシ編集部|2024.10.01

 

製造業は、人手・人材の不足やコスト高など、多くの課題を抱えています。それらを解決して国際的な競争力の強化や利益増加を目指すには、生産性の向上が不可欠です。

 

この記事では、製造業における生産性の意味や生産性向上を目指す背景、生産性が低い要因、具体的に生産性を向上させる方法について解説します。

製造業における生産性とは

一般的に生産性とは、経営資源の投入によって得られる成果物の割合を示す指標です。製造業においての生産性は、従業員1人当たりの生産量、労働時間1時間当たりの生産量や従業員1人あたりの生産量などを用いる労働生産性を指します。

 

なお、労働生産性のほかに生産性を測る指標として、投入した資本から計算する資本生産性などの指標もあります。また、成果物を量で判断する物的生産性と、生み出された付加価値を用いる付加価値生産性という区分もあります。

 

以下は、物的生産性の種類と求め方をまとめたものです。付加価値生産性については、生産量を付加価値額に読み替えてください。

 

生産性の種類

具体例

労働生産性

従業員1人当たりの生産量(生産量/労働者数)

労働時間1時間当たりの生産量(生産量/労働者数×労働時間)

資本生産性/設備生産性

投下した資本や設備、土地などに対する生産量の割合(生産量/資本)

原材料生産性

投入した原材料に対する生産量の割合(生産量/原材料投入量)

全要素生産性(TFP)

労働・資本・原材料などすべての要素に対する生産量の割合(生産量/合成投入量(労働+資本+原材料等))

生産性の種類と具体例

 

なお、生産性向上に関わる概念に、業務効率化や業務改善があります。業務効率化は、業務改善のひとつであり、業務効率化は生産性向上を目指すための手法になります。それぞれの定義と具体例は以下のとおりです。

 

用語

定義

具体例

業務改善

業務上の問題や課題を解決し、業務フローを改善すること

・不良品率の高い製造工程を見直し、品質改善を図る

・在庫の回転率を上げるために、在庫管理システムを導入する

業務効率化

業務改善の一つで、業務のムリ・ムダ・ムラを減らして合理化を図り、生産性向上を目指すための活動

・点検票や日報をデジタル化して書類作成の手間を省く

・異常を通知するシステムの導入で監視業務を自動化する

生産性と混同されやすい、業務改善と業務効率化の違い

製造業で生産性向上が求められる背景

製造業で生産性向上が求められる背景には、次の3つが挙げられます。

 

  • 人手・人材不足を解消するため
  • 国際的な競争力を上昇させるため
  • コスト削減と利益増加につながるため

人手・人材不足への解消のため

製造業では、労働者の数が足りない人手不足と、企業内で技術を有する労働者が足りない人材不足の両方の課題を抱えています。

 

人手不足・人材不足の原因となる大きな要因が、労働人口の減少です。国立社会保障・人口問題研究所が発表した日本の将来推計人口(令和5年推計)によると、2020年時点で7,509万人だった生産年齢人口(15~64歳)は、2032年で7,000万人を、2062年で5,000万人を下回ると予測されています。少子高齢化の進行により、将来的にはさらに労働者の確保が困難になることが予測されています。

 

また、厚生労働省が発表している「一般職業紹介状況」(令和6年7月)の有効求人倍率を見ると、製造業(生産工程従事者)は1.5で、全体の倍率1.17よりも高水準であることからも、人材採用が難しいことがわかります。

 

そのため、製造業では人手不足・人材不足を解消するために、生産性を向上させ、従業員1人当たりの生産量を増やし、空いた時間で他の必要な作業ができる環境を作る必要があります。

 

参考:一般職業紹介状況(令和6年7月分)について|厚生労働省

世界と比べ低い労働生産性なので、国際的な競争力を上昇させるため

2023年に発表された労働生産性の国際比較2023によると、2022年の日本の時間あたりの労働生産性は52.3ドルで、OECD加盟38カ国中30位となっています。

 

製造業の労働生産性について見てみると、2021年の日本では94,155 ドルで、加盟主要34ヵ国中18位となっています。2000年はトップだったので大きく後退していることがわかります。特に2015年以降は大きく順位を下げ、低迷が続いています。

 

画像引用元:労働生産性の国際比較2023|公益財団法人 日本生産本部

 

世界と比べて労働生産性が低い水準にあると、国の競争力の低下を招き、国際市場での地位低下や交易条件の悪化にも繋がります。

 

また、世界経済がグローバル化するなか、海外事業を進めることができず、企業を成長させられなくなるリスクもあります。将来的に労働生産性が低いままであると、企業の存続にも関わってきます。

コスト削減と利益増加につながるため

人手不足や国際的な競争力を高めるために生産性向上に取り組むべきですが、生産性の向上は企業として大切なコスト削減と利益増加にも繋がります。

 

生産性を高めることで従来よりも少ない労働力や資源で同じ成果物を得られるようになり、コスト削減に繋がります。生産工程が見直されることによって不適合品の発生率が少なくなることも期待でき、自然と利益率も増加するでしょう。

製造業の生産性が低い要因

製造業の生産性が低い要因は、以下のようなものが挙げられます。

 

  • 現場で作業をする従業員の作業ミスや漏れ、属人化が発生している
  • コミュニケーション不足から、連携が取れていない
  • 足元の作業を優先するため、業務の標準化が図れていない
  • 作業内容や在庫などの管理が行き届いていない

 

生産性が低い要因を理解することで、適切な対策が取れます。まずは主な要因を把握し、自社に当てはまるものがないか確認しましょう。

現場で作業をする従業員の作業ミスや漏れ、属人化が発生している

人手不足や同一作業の繰り返しから作業ミスや漏れが発生すると、その修正が必要になるため、生産性が下がります。

 

また、製造業のなかには業務が複雑になるものもあります。対応できる専門的な技術を持った人が限られていたり、技術継承がうまく進んでいなかったりすることも課題です。特定の人がいないと進まない作業が発生することでも、生産性が低下します。

コミュニケーション不足から、連携が取れていない

製造業は、企画や設計、原材料の受け入れ、各製造工程、検査、出荷など多くの人が関わっています。しかし製造現場では、騒音で会話が聞き取りにくい、作業場間が離れていて部門間のやり取りが十分ではないなど、コミュニケーションに関する課題が多くあります。

 

各部門間や管理者との連携が取れていないと、不適合品の発生に繋がります。不適合品の発生を最小限に留めるには、各部門間の連携や管理者のチェックが重要ですが、コミュニケーション不足のために、連携がうまく働いていないケースも少なくありません。

足元の作業を優先するため、業務の標準化が図れていない

製造業においては、日々の作業を止めずに決められた製造量を作り切るのが重要です。万が一機械や設備、人員不足などで予定していた作業量がこなせなくなってしまうと、計画にずれが生じ、そのズレを補填するためにさらに後日調整が必要になります。そのため、足元で発生する作業を最優先に考えなければなりません。

 

その結果、やったほうが良いとわかっていても、業務の標準化や改善に動き出せず、一向に生産性向上につながらないケースがあることも要因の一つです。

作業内容や在庫などの管理が行き届いていない

慢性的な人手不足が続いていると、日々の作業内容や在庫などを確認・管理する時間を設けるのが難しくなります。記録は取っているものの、何か問題が発生したときや問い合わせがあった際にのみ確認するだけで、改善につながる振り返りや分析を行っていない現場も多いでしょう。

 

製造業において生産性の低下をもたらすのは、業務と在庫のムダです。改善を進めるには、加工、在庫、不良・手直し、手持ち、作りすぎ、動作、運搬の7つのムダをなくすことを考える必要があります。

 

しかし、作業や在庫の管理が行き届いておらず、問題点の洗い出しができていなければ、有効な施策を考えることも、実行することもできません。

最適な人員配置や機械・設備が用意できていない

生産性は従業員一人あたりの生産量、労働時間1時間あたりの生産量などを表すため、作業する人や使用する機械・設備も生産性に大きく影響を与えます。

 

例えば、作業に不慣れな新入社員とこの道20年のベテラン社員が同じ作業を行えば、その差は顕著に表れます。

 

完璧なマニュアルが準備され、誰が行っても同じ時間で一定の品質のものができあがる状態が保てていれば、同じ生産性を維持できます。すべての作業で同じレベルを維持するのは難しいかもしれませんが、全作業の内、一定の割合は標準化をしておかないと生産性は改善されません。

【事例あり】製造業で生産性向上に繋がる3つの取り組み

生産性向上に取り組むために、具体的にどのような施策を進めていくかを検討するには、類似業種の事例を参考にすると効率的です。ここからは、製造業の生産性向上に繋がる取り組みを3つ紹介します。

1.チェックシートの電子化で、記録の抜け漏れ防止とデータの一元管理

日常管理で使用しているチェックシート(記録表)の電子化を進めれば、現場で記録する際の抜け漏れをなくしたり、管理者が確認する工数の削減をしたりできます。その結果、全体的な生産性向上に繋がります。

 

電子化されたチェックシートでは、記録時に通知を送ったり、抜けている箇所をわかりやすく表示したりできる機能があるため、抜け漏れの防止に有効です。また、管理者は必要なデータにすぐアクセスでき、記録を探す時間も削減できます。

 

品質管理に紙のチェックシートを利用していたある食肉加工業者、群馬ミートでは、シートのファイリングや仕分け、検査結果のExcel転記などを実施していました。しかし、データの分析にかけられる時間がなく、有効活用できていませんでした。

 

また、HACCP対応のために確認項目が増え、記入ミスや記入漏れが発生し、チェック側にも負担となっていました。そこでチェックシートの電子化を進めました。

 

電子化によって、品質管理部でのチェックシートの仕分けやファイリング、Excelへのデータ転記作業を省略できるようになり、1日約1時間の業務削減に繋がりました。さらに、紙のチェックシートで発生していた記入ミスや漏れはゼロになり、チェックシートの確認業務も効率化できました。その他にも用紙・ラベル削減によるコスト削減効果も得られています。具体的な取り組みは、以下の資料をダウンロードすることでご覧いただけます。

 

2.各業務の見直しと業務標準化

生産性を向上させるためには、生産性低下の要因となる業務について見直し、業務の標準化を図ることも有効です。従業員からヒアリングしたり、日常の記録などの定量的なデータを活用したりして、各業務を見直しましょう。

 

このとき、ムリやムダを省くために、業務自体に意味があるのか、何のためにその業務を行うかを再考することがポイントです。

 

また、記録から時間の掛かっている作業をあぶり出して生産性低下の要因を特定し、改善するのも効果的です。現場で働く従業員を巻き込んで問題点を明らかにし、特性要因図や連関図などを用いて要因を特定しましょう。

 

  • 特性要因図:結果に対する要因の整理や特定を行う図
  • 連関図:結果に対する複数の要因の関係性を明らかにする

3.従業員教育のための勉強会や研修の実施

システムの導入や業務整理をするだけではなく、従業員自身の知識や意識を向上させる取り組みも生産性の改善に繋がります。

 

社内コミュニケーションを円滑にするためには、伝え方や話し方、他者との関わり方に関する研修が役立ちます。また、従業員のモチベーションを高めるためには、コーチングを取り入れるのも良いでしょう。

 

業務効率を改善するには、技術や品質管理に関する勉強会などが有効です。生産性の低下や労働災害の防止につながる、ヒューマンエラー防止研修もおすすめです。

生産性向上には目標の設定と問題点の洗い出しからスタートしよう

生産性を向上させるには、システム導入や業務改善、従業員教育などの手法があります。自社の課題を解決するためには、なぜ行うのかの理由や目指すべき姿である目標を先に設定し、それに適する手法を考えていくことがポイントです。

 

まずは問題点を洗い出し、重点的に取り組むべきことを決め、生産性向上を成功させましょう。