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製造業で動画マニュアルを活用するには?メリットや欠点、導入費用、代表的なツールを紹介

作成者: カミナシ編集部|2024.11.28

製造業の現場では、長年の経験と勘に基づくKKD(勘・経験・度胸)が、暗黙知を持っているベテランに頼らざるを得ない状況があります。熟練工が持つ微妙な調整技術や目視での品質判断など、言葉では表現しづらい暗黙知が高品質な製品づくりに寄与しています。

 

しかし、こうした経験のあるベテラン従業員への依存は、製造現場に大きなリスクをもたらします。

 

万が一、予期せぬ病気での休職や定年退職で、突然その技術が失われてしまうと、生産性が著しく低下して品質にも影響が出かねません。そのため技術を後世に受け継いでいくことが製造業では求められています。また、外国人労働者の増加により、言語の壁を超えた技術伝承の必要性も高まっています。

 

本記事では、そうした製造現場の課題を解決する手段として注目を集める動画マニュアルについて詳しく解説します。暗黙知の可視化手法やわかりやすく・伝わる動画をマニュアルを作るコツ、従業員に使ってもらうための工夫まで、製造部門のリーダーの方々に向けて実践的な情報をまとめました。

 

製造業で動画マニュアルが必要な3つの理由

製造業において、動画マニュアルは、事業継続のための必須アイテムと言えます。具体的な理由は以下の3つが挙げられます。

 

  1. ベテランの暗黙知(経験や感覚など)を継承し、事業の存続や成長につなげるため
  2. バラツキの防止/品質の均質化による生産性向上のため
  3. ミスやトラブルを防止し、生産停止やクレーム発生防止のため

 

これらの理由から、多くの製造企業が動画マニュアルの導入を進めています。以下で詳しく解説します。

1.ベテランの暗黙知(経験や感覚など)を継承し、事業の存続や成長につなげるため

製造現場には、マニュアルには書き表せない職人技とも呼べる暗黙知が数多く存在します。例えば、製品の品質チェック時の微妙な色味や質感の判断、機械調整時の締め付けの力加減、異常を示す機械の振動や音の違いなどです。これらの技能は、ベテラン社員が長年の経験を通じて体得してきた感覚的なノウハウです。

 

このような暗黙知が継承しづらい理由は、言語化することが極めて困難なためです。「いつもより少し強めに」や「ここはコツがいる」といった表現では、具体的な力加減や微妙なニュアンスを正確に伝えることができません。また、ベテラン従業員の方も「どうすれば良いかは分かるが、なぜそうするのかは説明が難しい」と思っている方も多いといいます。

 

言葉では表しにくいが、製造にとっては大切な技術が失われてしまうと、品質の低下や生産効率の悪化、さらには重大な不良品の発生にもつながってしまいます。特に、製品の差別化が技能に依存している場合、競争力の維持に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

 

しかし、動画マニュアルであれば、これらの暗黙知を効果的に継承できます。例えば、ベテランの手の動きや目線の動かし方を作業者目線で撮影することで、微細な動作の違いまで可視化できます。

 

また、作業時の音声も録音できるため、異常音の特徴なども正確に伝えることが可能です。作業のポイントをベテラン従業員が口頭で補足説明を加えることで、より深い理解を促せます。

2.バラツキの防止/品質の均質化による生産性向上のため

製造現場での品質のバラツキは、さまざまな要因から発生します。作業者による手順の解釈の違い、教える側の説明方法の違い、さらには作業環境や時間帯による集中力の変化などです。

 

特に新人とベテランの間では、同じマニュアルを見ても作業の精度に大きな差が生じやすい状況があります。

 

このような品質のバラツキは、深刻な問題を引き起こす可能性があります。取引先からすれば、たとえ99個が良品でも1個に不具合があれば、全ロットの信頼性を疑うことになりかねません。消費者からすると、商品の質が悪いとブランドイメージの低下や競合他社への乗り換えを検討することもあります。

 

動画マニュアルを用いて、全ての作業者が同じ作業することで、手順の認識違いや解釈の違いを最小限に抑えられます。例えば、「適度な力で」という曖昧な表現ではなく、実際の動作を見て真似ることで、誰でも同じレベルの作業が可能になります。

 

さらに、動画マニュアルは作業効率の向上にも大きく貢献します。従来のように、分からないことがあれば先輩に聞くとなると、質問する側も教える側も作業を中断せざるを得ません。

 

動画マニュアルがあれば、作業者は必要な時に何度でも確認でき、上司や先輩を探して質問する時間も不要になります。教える側の作業中断も減少し、工場全体の生産性向上につながります。

3.ミスやトラブルを防止し、生産停止やクレーム発生防止のため

製造現場では、紙のマニュアルや口頭での作業指示が原因で、重大なトラブルが発生するケースが少なくありません。

 

例えば、マニュアルの記載内容が不十分であったり、口頭での説明が曖昧だったりすることで、重要な手順が抜け落ちてしまうことがあります。特に複雑な工程や安全確認が必要な作業では、些細な伝達漏れが深刻な問題につながる可能性があります。

 

こうしたミスは、時として企業経営を脅かす重大な事態を引き起こします。作業者の安全確保の観点であれば、誤った手順による労働災害のリスクがあります。品質面では、不良品の発生による取引先からの信頼低下、最悪の場合は取引停止という事態も考えられます。

 

さらに、製品の不具合や問題が市場で発覚した場合、SNSでの拡散などにより、長年かけて築いてきたブランド価値が一瞬にして損なわれる可能性もあります。

 

動画マニュアルは、こうしたリスクを大幅に低減する効果があります。作業の細かな手順や安全確認のポイントを視覚的に示すことで、作業に不慣れな従業員でも、確実に正しい手順を実行できます。特に危険を伴う作業や品質に直結する重要工程では、動画による詳細な手順確認が、事故やミスの防止に大きく貢献します。その結果、作業者の安全確保、製品品質の安定化、さらには生産ラインの安定稼働が実現できます。

製造業では「技術伝承」を上手くできるかが事業成長のポイント

近年、IT業界では革新的なアイデアがあれば、わずか数年で急成長するユニコーン企業が生まれています。新しいビジネスモデルやサービスによって、一気に市場シェアを獲得することも可能です。

 

一方、製造業(ものづくり産業)では、事業の成長パターンが大きく異なります。製造業では、高品質な製品を安定的に供給し続けること、不良品を出さずに生産性を向上させること、そして何より、誰が作業しても同じ品質の製品を製造できる業務の標準化が重要になります。これは一朝一夕には実現できず、長年の経験と技術の蓄積が必要です。

 

しかし、労働政策研究・研修機構によるものづくり産業における技能継承の現状と課題に関する調査結果によると、調査対象企業の53.8%が「あまりうまくいっていない(47.1%)」や「うまくいっていない(6.7%)」と回答しており、多くの企業が技術伝承に苦心している実態が浮き彫りになっています。

 

特に深刻なのは、技能継承の重要性は認識されているにもかかわらず、効果的な対策が打てていない点です。2024年以降、団塊世代の大量退職がさらに加速する中、この課題への対応は急務です。

 

今後の日本の製造業において、この技術伝承の成否が、企業の競争力を大きく左右すると言えます。グローバル競争が激化する中、日本のものづくりの強みである高い技術力と品質管理能力を次世代に確実に引き継いでいけるかどうかが、事業成長の重要なカギを握っています。このような状況の中で注目されているのが、視覚的に情報が伝えられる動画マニュアルです。

 

わかりやすく・伝わる動画マニュアルの作るコツ

効果的な動画マニュアルを作成するためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。

 

  1. 作業者目線や作業の全体がわかる画角(撮影時の角度)にする
  2. 尺を短く、1分以内に収める
  3. 読み上げとテロップ(テキスト)を入れる
  4. 鮮明な画質で撮影した動画を使う
  5. 動画の構成を事前に考え、撮影・編集を行う
  6. NGパターンも動画マニュアルで紹介する

 

以下では6つのポイントについて、具体的な実践方法と注意点を詳しく解説します。これらを押さえることで、誰もが理解しやすい、効果的な動画マニュアルを作成できます。

1.作業者目線や作業の全体がわかる画角(撮影時の角度)にする

効果的な動画マニュアルを作成するには、実際に作業を行う人の視点に立った撮影が不可欠です。作業者が実際に目にする角度や、作業の全体像が把握できる位置からの撮影を心がけましょう。これにより、動画を見る人が直感的に作業内容を理解し、すぐに実践できる環境が整います。

 

撮影時の画角は、作業内容や使用する機械設備によって適切に選択する必要があります。例えば、縦型の製造装置を使用する作業や、上下の動きが多い組立作業では縦長の画角が適しています。

 

一方、ライン作業や横方向の移動が多い作業では、横長の画角で撮影することで、作業の流れを分かりやすく伝えられます。

 

実際の作業現場での視認性に直結するため、撮影時の画角が重要になります。不適切な角度で撮影された動画では、実作業時に機械や作業者自身の影が邪魔になり、重要な動作が見えなくなってしまう可能性があります。

 

また、動画と実際の作業位置の視点が大きく異なると、作業者が混乱し、ミスを誘発する原因になります。

 

適切な画角で撮影された動画マニュアルがあれば、作業者は動画で見た通りの位置から作業を確認でき、スムーズに作業を進められます。これにより、作業の習得時間が短縮され、ミスのない正確な作業の実現につながります。

2.尺を短く、1分以内に収める

動画マニュアルを作成する際は、一つの工程を1分以内に収めることを意識しましょう。複雑な作業工程の場合は、工程を複数の小さなステップに分割し、それぞれを1分以内の動画にまとめるのがおすすめです。例えば、「部品の取り付け」や「調整」、「検査」といった具合に区切ることで、必要な情報を簡潔に伝えられます。

 

一般的に、人は1分を超える動画になると集中力が低下し始め、重要な情報を見落としやすくなるため、短い時間で伝えることが大切です。

 

特に製造現場では、作業の合間に動画を確認することが多いため、短時間で必要な情報を得られることが求められます。また、長い動画は必要な箇所を探すのに時間がかかり、作業効率の低下にもつながります。

 

動画を1分以内に収めることで、作業者が必要な情報を素早く見つけられたり、集中力を保ったまま内容を把握できたりするメリットがあります。また、短時間での確認が可能なため、作業の中断時間を最小限に抑えられる、繰り返し視聴しやすく確実な理解につながるなどの効果もあります。

3.読み上げとテロップ(テキスト)を入れる

動画マニュアルの制作では、映像だけでなく、音声による読み上げとテロップの両方を組み合わせることが重要です。

 

音声では作業の要点や注意点を分かりやすく説明し、同時にテロップで重要なポイントを強調します。例えば「組み立てが終わったタイミングで必ずネジの緩みが無いかを確認」といった注意点は、音声で伝えながら画面上にも表示することで、より確実に情報が伝わります。

 

人間は、視覚と聴覚の両方から情報を得ることで、理解度と記憶の定着率が大きく向上します。また、騒音の多い現場ではテロップがあるとわかりやすくなります。

 

さらに、外国人作業者向けには、多言語でのテロップを追加することで、言語の壁を越えた技術伝承も可能になります。

 

テロップと読み上げを適切に組み合わせることで、情報の二重確認による確実な理解や作業環境に応じた柔軟な情報取得が可能になります。

4.鮮明な画質で撮影した動画を使う

動画マニュアル作成において、鮮明な画質での撮影は重要なポイントです。鮮明な画質の動画は、必ずしも高価な一眼レフカメラなどの専門機材を必要とするわけではありません。

 

現在発売されている標準的なスマートフォンのカメラでも、適切に撮影すれば十分な品質を確保できます。重要なのは、ピンボケや白飛びを防ぎ、作業の細部まで明確に視認できる映像を撮影することです。

 

撮影時は、カメラの固定が特に重要です。三脚を使用するのが理想的ですが、作業台や棚にスマートフォンを固定するだけでも、手持ち撮影と比べて格段に安定した映像が得られます。また適切な明るさの確保も大切で、作業場所の照明を工夫することで、影の影響を最小限に抑えられます。

 

作業の安全性と正確性に直結するため、鮮明な画質にこだわるとよいでしょう。例えば、部品の取り付け方向やネジの締め具合など、細かな作業のポイントが不明瞭であると、作業ミスや品質トラブルの原因となりかねません。

 

適切な画質で撮影された動画マニュアルには、以下のような効果があります。

 

  • 作業の細部まで確実に確認できる
  • 誤認識や見間違いによるミスを防止できる
  • 繰り返し視聴しても目の疲れが少ない

5.動画の構成を事前に考え、撮影・編集を行う

効果的な動画マニュアルを作成するには、撮影前に明確な構成を立てることが重要です。基本的な構成として、まずマニュアルの概要説明から始め、具体的な作業手順を段階的に示し、重要な注意点を解説し、最後に次工程への連携を示すのが良いでしょう。

 

特に製造現場では、この順序立てた情報の提示が、作業の正確な理解と実行につながります。

 

情報の抜け漏れを防ぎ、効率的な撮影・編集を実現するために、事前に構成を考えるるのが理想です。その場の思いつきで撮影すると、重要な手順の説明不足や、必要以上に冗長な内容になってしまうことがあります。

 

また撮り直しが必要になった場合も、明確な構成があれば、該当部分のみを効率的に再撮影することができます。どのような構成にしようか迷った場合は、以下のような構成を基本として考えましょう。

 

  • マニュアルの内容紹介(作業の目的と概要)
  • 作業手順の段階的な説明
    • 作業方法1
    • 作業方法2
    • 作業方法3
  • 各工程での重要な注意点
    • 注意点1
    • 注意点2
  • 次工程との関連性の説明

 

このように構成を整理して制作することで、必要な情報が漏れなく含まれ、作業の流れが論理的で分かりやすい動画マニュアルが出来上がります。また作業全体の中での各工程の位置づけが明確になるだけでなく、次工程への円滑な引き継ぎが可能になります。

6.NGパターンも動画マニュアルで紹介する

動画マニュアルでは、正しい作業手順の紹介だけでなく、よくあるミスや避けるべき作業方法(NGパターン)も収録することが重要です。

 

例えば、「この角度で締めると部品が破損する」や「この向きで組み付けると後工程で問題が発生する」のような具体的なNGパターンとその結果起こる不具合とともに示すことで、より実践的な理解を促すことができます。

 

正しい方法だけでなく、間違った方法とその結果を具体的に示すことで、なぜその作業手順が重要なのかを深く理解できます。また、製造現場では些細なミスが重大な品質問題につながる可能性があるため、予めリスクを認識しておくことが重要です。

 

NGパターンを適切に示すことで、以下のような効果が期待できます。

 

  • よくある失敗を未然に防止できる
  • 作業の重要ポイントがより明確になる
  • 作業者が自身の作業を客観的にチェックできる

確実に使ってもらうための導入方法や工夫

動画マニュアルを作成しても、従業員が実際に活用しなければ、その効果を発揮することはできません。そこで重要になるのが効果的な導入と運用の仕組みづくりです。具体的には以下の3つです。

 

  1. 動画マニュアルができたことの周知、見るための時間を必ず設ける
  2. いつでもすぐに見られる環境にする
  3. 作業内容が変わった際は動画マニュアルをアップデートする

 

以下では、これらの具体的な実施方法について詳しく解説します。

動画マニュアルができたことの周知、見るための時間を必ず設ける

動画マニュアルの導入を成功させるためには、単にマニュアルを作成するだけでなく、その存在と活用方法を確実に周知することが重要です。朝礼や定例ミーティングの場で説明を行い、実際の視聴時間を業務スケジュールに組み込むことをおすすめします。

 

マニュアルを見る時間を設ける理由として、作業者は日々の生産目標達成に追われており、自主的に時間を見つけて動画マニュアルを視聴することは難しい状況にあるためです。時間があるときに見ておいてもらうとすると、誰も見ない形骸化したマニュアルになってしまう可能性が高まります。

 

明確な時間と場を設けることで、全従業員が確実に内容を理解でき、質問や疑問点をその場で解決できます。結果として、動画マニュアルの効果を最大限に引き出すことが可能になります。

いつでもすぐに見られる環境にする

動画マニュアルの効果を最大限に引き出すには、作業者がいつでも、どこでも、すぐに必要な情報にアクセスできる環境を整備することが重要です。そのためには、以下の三つの要素を適切に整備する必要があります。

 

  1. インターネット環境の確保
  2. デバイスを適切な位置へ配置
  3. 保管場所の統一とわかりやすい分類

 

まず、安定したインターネット環境の確保です。製造現場の特性上、建物の構造や機械設備の影響でWi-Fi接続が不安定になりやすい場所があります。そのため、電波の死角をなくすためのアクセスポイントの適切な配置や、有線LANの併用など、確実な接続環境を整備しましょう。万が一、インターネット環境が整えられない場合は、デバイスにダウンロードして、いつでも見られるようにするなどの対応が必要です。

 

視聴デバイスの適切な配置も重要な要素の一つです。作業場所ごとにタブレット端末を設置したり、作業者が携帯できるスマートフォンを支給したりするなど、作業の特性に応じた機器の選定と配置が必要です。特に、防塵・防水機能を備えた産業用タブレットの活用も検討すると良いでしょう。

 

さらに、動画マニュアルの保管場所の統一と分かりやすい分類も重要です。具体的には、工程別のフォルダ分けや作業難易度による分類、検索しやすいファイル名の付け方などです。可能であれば、QRコードによる該当動画へのアクセス方法も整備すると、より動画マニュアルが現場で真に活用される有用なツールとなります。

作業内容が変わった際は動画マニュアルをアップデートする

製造現場では、生産性向上や品質改善のため、作業手順が随時更新されていきます。そのため、動画マニュアルも作業内容の変更に合わせて、迅速にアップデートすることが重要です。

 

具体的には、設備の更新や工程の改善、新しい品質基準の導入など、作業に影響を与える変更があった場合は、必ず動画マニュアルの更新しましょう。

 

動画マニュアルの更新は、古い情報による作業ミスを防ぐために必要です。例えば、設備の操作方法が変更されているにもかかわらず、古い手順の動画が残っていると、誤った操作により機械の故障や不良品の発生につながる可能性があります。

 

また、品質基準が変更された場合、古いマニュアルに基づく作業では、顧客要求を満たせない製品が生産されてしまう恐れもあります。

 

こうした管理体制を整えることで、常に最新の正しい作業手順が共有され、作業ミスや品質トラブルを防止できます。また工程改善の効果を最大限に引き出せるだけでなく、従業員の混乱を防ぎ、スムーズな作業の実現につながります。

製造業で動画マニュアルを作成・管理・配信する方法

動画マニュアルの作成・管理・配信方法は、大きく分けて2つの方法があります。それぞれに特徴があり、自社の状況に応じて最適な方法を選択することが重要です。

 

  1. 自社内で動画マニュアルを作成し、管理・配信
  2. 動画マニュアル制作会社へ依頼して作成し、管理・配信

 

以下では、それぞれの手法の詳細やメリット・デメリットについて具体的に解説します。

自社内で動画マニュアルを作成し、管理・配信

自社内で動画マニュアルを作成・運用する場合、いくつかのメリットとデメリットがあります。

 

まず、大きなメリットとしてコストの最適化が挙げられます。スマートフォンやタブレットなど、既存の機材を活用できるため、初期投資を抑えられます。また外注費用も発生せず、必要な分だけ制作できるため、予算管理が容易です。

 

次に、迅速な対応が可能という利点があります。作業手順の変更があった際に即座に更新でき、現場での気づきや改善点をすぐに反映できます。これにより、常に最新かつ正確な情報を提供することが可能です。

 

さらに、現場の実態に即した内容を制作できることも大きな強みです。実際の作業者の視点で撮影でき、現場特有の専門用語やノウハウを適切に反映できます。また社内の文化や慣習を考慮した、より実践的な内容にすることも可能です。

 

一方で、デメリットとして、動画マニュアルの質に差が出る可能性があります。撮影や編集の技術に個人差があるため、画質が不安定になったり、見づらい編集になったりする可能性があります。また担当者の業務負荷が増加し、撮影・編集のスキル習得も必要となります。さらに、制作時間の確保も課題となるでしょう。

 

このデメリットは、動画マニュアルを作成するツール次第で解消が可能です。例えば、音声から自動で字幕(テロップ)を入れてくれる機能があるものや、自動言語翻訳機能のあるものを使えば、外国人従業員への対応も迅速にできます。多少、費用は掛かりますが、完全外注にするよりも遥かにコストを削減できます。

 

これらのメリット・デメリットを総合的に判断し、社内のリソースや技術力、運用体制の整備状況を考慮した上で、決定することをおすすめします。

 

動画マニュアル制作会社へ依頼して作成し、管理・配信

専門の制作会社に動画マニュアルの作成・運用を依頼する場合の特徴について、メリットとデメリットも紹介します。

 

メリットとしてまず挙げられるのが、高品質な動画マニュアルの制作が可能な点です。プロの撮影機材と編集技術により、安定した画質と見やすい映像を実現できます。また照明や音声収録など、細部まで配慮された本格的な制作により、より分かりやすい教材となります。

 

また制作のノウハウを活用できることも大きな利点です。数多くの製造現場での制作実績を持つ専門会社は、効果的な構成や表現方法を熟知しています。字幕挿入や音声の調整などもスピード感もって取り組めるのも良い点です。

 

運用面でも、専用の配信プラットフォームやセキュリティ管理など、充実したサポートを受けられます。視聴履歴の管理や、デバイス間での同期など、より高度な機能も利用できます。

 

一方でデメリットとしては、コストが挙げられます。プロの技術と設備を活用するため、自社制作と比べて費用が高額になります。また、内容の更新や修正が必要な場合も、その都度費用が発生します。

 

さらに、制作までの時間や修正に時間がかかることも課題です。撮影の日程調整や編集作業に時間を要するため、急な作業変更への即応が難しくなります。また細かな修正の都度、外部に依頼する手間も発生します。

 

このように、専門会社への依頼には、品質と手間のトレードオフが存在します。導入を検討する際は、自社の予算規模や求める品質水準、更新頻度などを総合的に判断することが重要です。

動画マニュアル導入での費用対効果

動画マニュアルの導入を検討する際、コストと得られる効果を具体的な数字で把握することが重要です。以下に、導入パターン別のコストと削減できる費用の例(1カ月間)を記載しました。以下は10分程度の動画マニュアル1本あたりで試算したものです。



パターン

初期費用

制作コスト(動画1本)

運用コスト(1カ月)

自社作成

(無料ソフト)

0円

(既存機材を活用)

約2万円 ※1

1~2千円

(ストレージ費用)

自社作成

(有料ツール)

10~15万円 ※3

約1.4万円 ※2

1~2万円(月間利用料)

制作会社委託

0~30万円 ※4

15~30万円

3~5万円(月間利用料)

導入パターン別コスト試算

※1 担当者の作業時間(撮影5h+編集5h)×時給2,000円で計算

※2 担当者の作業時間(撮影5h+編集2h)×時給2,000円で計算

※3 編集ソフト、三脚、マイクなどの機材費用

※4 契約内容により初期費用は変動



項目

削減額(概算)

詳細

不適合品の削減

30~50万円

不良率1%改善×月産10,000個

×個当たり損失3,000-5,000円

教育時間の短縮

4~8万円

従業員の指導時間削減(10~20h/月)

×時給2,000円×(教える側+教わる側)

生産性向上

30万円

作業効率5%向上×作業者20名×月給30万円

削減できる費用の試算例(月間)

 

このように、初期費用と運用コストは導入方法によって大きく異なりますが、得られる効果も相応に期待できます。特に、不適合品の削減や教育時間の短縮など、間接的なコスト削減効果は大きく、導入から半年程度で初期投資の回収が見込めるケースも多くあります。

動画マニュアルを活用して、技術伝承をし、生産性を高めよう

製造業における動画マニュアルの活用は、事業継続のための必須の取り組みとなっています。動画マニュアルは、ベテラン社員の持つ暗黙知の継承、品質の均一化、ヒューマンエラーの防止など、多くの課題を解決する有効なツールになります。

 

効果的な動画マニュアルを作成するポイントは、作業者目線での撮影、1分以内の簡潔な内容、音声とテロップの併用、鮮明な画質の確保、事前の構成検討、NGパターンの収録などが挙げられます。これらを意識することで、誰もが理解しやすく、実践的なマニュアルを作成できます。

 

また、導入を成功させるためには、従業員が確実に活用できる環境づくりが重要です。視聴時間の確保、アクセスしやすい環境の整備、内容の定期的なアップデートなど、運用面での工夫も欠かせません。

 

今後、熟練工の退職や外国人労働者の増加など、製造現場を取り巻く環境はますます変化していきます。この変化に対応し、競争力を維持・向上させていくためには、動画マニュアルを活用した確実な技術伝承の仕組みづくりが不可欠です。

 

まずは小規模なテスト導入から始め、効果を確認しながら段階的に展開していくことをおすすめします。