カミナシブログ

QCサークル活動とは?歴史やメリット、効果的な進め方を解説

作成者: カミナシ編集部|2024.04.04

QCサークル活動は、品質管理の手法を活用して職場の問題解決を図る活動です。1960年代に日本で誕生したQCサークルは今や世界中の企業や組織で導入され、品質改善や業務効率化に大きな成果を上げています。

 

QCサークル活動ではメンバーが協力して現場の問題を発見し、その原因に対して解決策を立案・実施し、効果を確認します。この一連のプロセスを通じてメンバーの問題解決力が向上し、コミュニケーションが活性化されるなど多くのメリットが得られます。

 

この記事では、全国10,000件を超える現場DXを支援してきた「カミナシ」がQCサークル活動について分かりやすく解説します。製造現場での効果的な進め方や具体例を示しながら紹介していきます。

 

  • 「QCサークル活動は聞いたことあるけど効果あるのかな……」
  • 「現場に対してどう説明すればスムーズに進められるかな……」

 

そんな方はこの記事を読んでいただければ悩みを解消できます。QCサークル活動を取り入れれば職場環境が改善するだけでなく、従業員の能力向上にもつながります。

 

QCサークル活動とは

QCサークル活動のQCはQuality Controlの略で、日本語では「品質管理」に関する活動です。

 

QCサークル活動は、製造現場で働く従業員をいくつかのチームに分けて品質改善について意見を出し合い、より良い現場体制にしていく活動のことを指します。例えば、ある工程で使いにくい設備があったとすると「どうすればもっと使いやすくなるか」をチームに分かれて考えるイメージです。

一般的には10人程度の小集団でおこない、一人ひとりにリーダーや書記、タイムキーパーなどの役割を与えるのも特徴です。QCサークル活動の本質は現場で見つけた課題を解決することですが、従業員の問題解決力や論理的思考力を鍛えるためにも役立ちます。

QCサークル活動の歴史

QCサークル活動は日本から海外に広まっていった活動であることをご存じでしょうか?

 

米国出身でニューヨーク大学の教授をしていたE.W.Deming氏が1950年に日本で品質管理の講義を実施しました。そこで得られた品質管理の考え方や統計的手法をもとに、日本独自の改良が加えられて生まれたのがQCサークル活動の始まりといわれています。その後、1963年には第一回QCサークル大会がおこなわれ、1982年〜1994年には年間10万人を超える大会参加者数に増えました。

 

またカイゼン活動で有名なトヨタ自動車では、生産台数の増加に伴う品質問題の表面化により、品質管理を強化したTQC(=Total Quality Control)を1961年に導入しました。TQCは各階層の従業員に展開されていき、1964年には現場の作業者が参加するQCサークル活動が始まりました。TQCを導入したことにより自動車1台あたりの不具合数は半分以下にまで減少し、品質保証の確立に大きく貢献しています。

 

QCサークル活動は日本国内の製造現場で磨かれていき、今では世界80以上の国や地域で「改善」を世界共通言語として浸透させるにいたっているのです。

QCサークル活動は時代遅れ?

職場の環境改善に効果的なQCサークル活動ですが、活動への義務感を持ってしまう人もいるかと思います。本来の目的である課題を見つけて改善する活動ではなく「上司に言われたから」「ノルマが課されているから」などのネガティブなイメージも多いです。参加を強制されてしまうのは今の時代に合っていないかもしれません。

 

また改善するのが難しい課題を短期間で解決しようとしたときに、効果が得られないこともQCサークル活動に対して嫌なイメージを持ってしまう要因といわれています。QC活動を実施してからその効果が出るまでには時間がかかる場合があり、短期間で効果を感じられないので活動が意味ないと感じてしまうことも多いでしょう。

 

しかし、QCサークル活動は正しくおこなうことでしっかりと効果が出せるものです。活動発表に対して時間が取れないのであれば資料をテンプレート化したり、テーマの難易度に合った活動期間を設定したりすることで有意義なものになります。実際にQCサークル活動は日本だけでなく80以上の国々で導入されており、製造現場以外にも病院や地方自治体などでも広がりを見せています。

 

このように、QCサークル活動は時代遅れなものではなく、品質改善を可能にするツールとして重要なものです。

QCサークル活動のメリットとデメリット

QCサークル活動は、品質管理の手法を活用して職場の改善を進める小集団活動です。現場の従業員が主体となって問題解決に取り組むことでさまざまなメリットが得られる一方、デメリットも存在します。ここでは、QCサークル活動のメリットとデメリットを整理し、効果的な運営のポイントを解説します。

QCサークル活動を成功させるには、管理層のリーダーシップとメンバーの自発的な参加が不可欠です。活動の目的を明確にし適切な目標設定とフォローをおこなうことが、活動を継続させるコツといえます。職場の問題を改善してより働きやすい環境にしていくためにも、QCサークル活動をおこなう意味や効果を知っておきましょう。

QCサークル活動のメリット

QCサークル活動のおもなメリットは以下の3つです。

 

  • 現場の問題点を見える化できる
  • 問題解決力が向上する
  • チームワークが良くなり仕事に対する意欲が高まる

 

まず効果を感じられるのが現場の問題点の見える化です。QCサークル活動では現場の問題点に対して、必要なデータを集めてグラフや図に落とし込み分析できるようにします。分析する過程でこれまでは感覚的に改善が必要と考えていた課題が「具体的に何を改善すれば良いか分かるようになる」のです。

 

また、QCサークル活動は従業員の問題解決力の向上にも役立ちます。現場の作業は一定の工程を繰り返す場合が多いので、なかなか問題を解決する機会がありません。そのため、QCサークル活動を通して「問題の分析から対策立案、効果の検証のサイクルを学ぶ」ことが問題解決力の向上につながるのです。

 

ほかにもチームワークが良くなり仕事に対する意欲が高まるのもQCサークル活動のメリットです。現場での作業は1つの工程に各作業員が割り振られるので、チームで1つの目標を達成する仕事とは少し違います。QCサークル活動をおこなうなかで、業務で関わることが少ないメンバーと協力することが「1つの目標にチームで取り組む経験」につながります。

QCサークル活動のデメリット

品質管理のために重要なQCサークル活動ですが、活動するうえでのデメリットもいくつかあります。

 

  • 成果を発表するための活動になりやすい
  • 目標が達成できない場合にモチベーションが下がる
  • 業務が忙しいと活動に費やす時間が負担になる

 

QCサークル活動の目的があいまいな場合に多いのが、成果を発表するのが目的になってしまう点です。とくに職場内で取り組むテーマの数や達成率を掲げていると、簡単に解決できるテーマを選んでとりあえず発表する流れができてしまいます。こうなると本来のQCサークル活動の意義である業務の改善が図れず、ただ資料を作って発表することがゴールになってしまうのです。

 

またQCサークル活動の効果を測定するためには数値目標などが必要ですが、目標を達成できない場合にモチベーションの低下が懸念されます。QCサークル活動をおこなったからといって大きな改善が期待できるとも限りません。高い目標ばかり設定してしまうと達成感を得られずに、モチベーションが下がってしまうので注意しましょう。

 

本来の業務が忙しい場合もQCサークル活動を実施することがデメリットになる可能性があります。業務を改善して働きやすい職場にするはずが、過度な残業や負担が発生してしまっては意味がありません。負担を軽減するにはチームの中で役割分担を見直したり、資料作成を少なくしたりする工夫が必要です。

QCサークル活動の効果的な進め方

職場でQCサークル活動をやってみたけど、なかなかうまく進まないという方もいらっしゃるかもしれません。QCサークル活動を効果的に進めるには、以下の2点を意識すると従業員のやる気も向上します。

 

  • やらされ感のない目的の持たせ方
  • 管理層の適切なフォローや評価

 

ここではQCサークル活動を効果的に進めるために役立つQCストーリーについて、8つのステップに分けて解説していきます。

QCストーリーとは

問題解決型QCストーリーは、現場の中ですでに起こっている問題に対して原因を見つけて解決していくアプローチで進めます。例えば「部品が見分けづらい」「機械を使っていてけがをしそう」など、問題を解決しないと生産性が下がってしまうものを改善する流れが基本です。一般的な現場の問題の多くは、この問題解決QCストーリーに沿って取り組むことで短時間で成果が出るといわれています。

もう一つの課題達成型QCストーリーは、これまでのやり方では改善できないような新規の問題に取り組むアプローチ方法です。現状の生産性をさらに上げようとする場合に用いられる手法で、近い将来のありたい状態に向けて問題を解決していきます。問題解決QCストーリーと違い未来を見据えて行動する必要があるので、より難易度の高いアプローチといえます。

QCストーリーの内容を解説

ここでは現場のQCサークル活動で基本となる「問題解決型QCストーリー」の8ステップについて解説します。8つのステップをまとめると、以下の表のとおりです。

 

 

テーマの選定:改善テーマを選ぶ際は現場の課題や経営方針、顧客ニーズを踏まえることが重要です。メンバー全員で議論してテーマを明確化しましょう。

現状の把握:現状をデータで把握し、あるべき姿とのギャップを特定します。現状把握には、パレート図、ヒストグラムなどの統計的手法を活用しましょう。

 

目標の設定:達成すべき目標は具体的な数値で設定し、いつまでに実現するのかを明確にしましょう。

活動計画の作成:目標達成に向けて、誰が、いつ、何をするのかを明確にした計画を立てます。スケジュールや役割分担、必要な資源などを盛り込んだ実行計画を作成したうえで、関係者で合意して確実に実行できるようにしましょう。

要因の分析:問題の原因を探るためには特性要因図などのツールを活用すると真因を突き止めやすくなり、対策を立案する際に役立ちます。要因分析では、4M(人、施設・設備、製品・材料、方法)の観点から多角的に分析を行います。

 

対策の立案と実施:要因分析で得られた知見をもとに、対策案を検討します。実現可能性やコスト、リスクを考慮し、最適な対策を選択しましょう。対策の実施に際しては、関係部署との調整や教育・訓練も必要になります。

効果の確認:対策の前後でデータを比較して効果を定量的に評価します。目標に対する達成度を確認し、必要であれば軌道修正しましょう。効果が不十分な場合は、要因分析に戻って再検討することも大切です。

標準化と管理の定着:効果が確認された対策は、標準化して全員で共有します。作業手順書やマニュアルを整備し、確実に実践できるようルール化しましょう。管理方法を確立し、定着を図ることが継続的な改善につながります。

QCサークル活動の事例

QCサークル活動の概要や進め方を解説してきましたが「自社でQCサークル活動をおこなっても効果を上げられるかな……」と不安に感じている方もいるかもしれません。

 

実際にQCサークル活動は「これをやれば大丈夫!」というものではなく、それぞれの会社ごとに課題も違うため対策も変わってきます。そのため他社での事例を参考にしつつ、社内のメンバーで自社の状況に合った形で進めていく必要があります。

ここではカミナシが携わったQCサークル活動の事例を紹介します。自社に導入することを想定してみて参考にしてください。

QCサークル活動で紙の帳票をデジタル化した事例

 

世界的自動車メーカーやデバイスメーカーに製品を供給する株式会社太洋工作所は、帳票の管理にかかる人員やコストに頭を悩ませていました。今まで帳票がすべて紙だったので、求められたデータの提出や書類の保管に時間を要していたからです。この問題の解決につながったのが、太洋工作所で40年以上にわたって半年ごとのペースで開催されている全社QCサークル活動です。

 

太洋工作所では2022年1月にデジタル化施策を担うISOデジタル推進部を発足し、紙の帳票のデジタル化に取り組み始めました。ITツールの導入により品質管理のペーパーレス化を目指していろいろなツールを検討した結果、操作方法やUIがシンプルなカミナシに出会い、現場への本格導入を決めました。実際にシステムを利用する製造現場からは戸惑いがありつつも、使い方のレクチャーを実施しながら123枚/月の紙の帳票をデジタル化することに成功。この成功事例を起点にほかのラインや工場にもカミナシの有効性が伝わり、現在では太洋工作所の28ライン以外にも生産管理やデジタル本部でも活用が進んでいます。

 

太洋工作所ではカミナシを導入したことによりペーパーレス化が出来ただけでなく、顧客からの信頼の高まりも感じていると言います。以前は監査などの際に紙の帳票から必要な実績を提出していたのが、タブレット上で検索して提示するだけで済むからです。ほかにも品質管理の観点で、リアルタイムに記録内容を確認できることや作業の標準化などもカミナシ導入後の効果として感じているようです。

まとめ

QCサークル活動は、現場の従業員が主体となって品質改善や業務効率化に取り組む小集団活動です。

 

問題解決を図ることで品質向上やコスト削減、生産性向上といったメリットが得られる一方、活動時間の確保や形骸化のリスクといった課題もあります。

 

QCサークル活動を成功させるには、適切な目標設定とフォローをおこない活動を継続させることが重要なポイントです。