2019年から新設された「特定技能」という在留資格で働く外国人は2020年(令和2年)3月時点で日本国内に3,987人います。一方、1993年から創設された「技能実習」という制度を利用する外国人は2019年(令和1年)10月時点で日本国内に38万3,978人おり、その多さに驚かれるでしょう。今回は、特定技能と技能実習の違いや技能実習から特定技能への移行、外国人労働者の受け入れについて解説します。外国人労働者を雇いたいのなら知っておくとよい情報をまとめました。
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特定技能と技能実習はたびたび混同されることがあります。しかし、似て非なるもののため、その概要を解説しましょう。
特定技能は、日本国内における生産年齢人口の減少による深刻な人手不足を補うべく、外国から即戦力の人材を集めるために創設されました。あくまでも即戦力として期待されているので日本で働くうえで必要な知識や経験を有する外国人のみが対象です。技能や日本語の能力を試験で測定することもあります。
技能実習は、日本の技術や知識を発展途上国といった外国に移転することで国家発展に協力するために創設されました。目的は、先進国の1つである日本が主導して技術習得の機会を外国人に提供することで、国際社会にて良好な関係を築くというものです。そのため、労働力調整のために技能実習生が活用されることは意に反します。
特定技能と技能実習の概要を解説したところで、さらにその違いを明らかにしていきましょう。そもそもの目的が異なるため、相違点も多くなります。
制度の目的に関しては前述した通りです。特定技能は日本国内における深刻な人手不足を補うための労働力確保が目的で、技能実習は日本の技術や知識を発展途上を中心とした外国に広めて国際貢献をすることが目的という違いがあります。
特定技能と技能実習では就業可能な業種や職種が異なります。とりわけ従来は飲食業において外国人労働者を雇うことは難しいものでした。現在、飲食業で働いている外国人は留学や家族滞在資格者であることが多いという特徴があります。しかし、特定技能によって正社員として外国人労働者を雇用しやすくなりました。
特定技能は就労資格であるため同一職種であれば転職が可能です。その一方で、技能実習はそもそも目的が就労ではなく実習であるため、転職という概念が存在しません。ただし、在籍している企業が倒産したり技能実習2号から3号へ移行したりした場合には転籍が可能です。
妻帯者であれば本人だけではなく家族が滞在できるかというポイントが重要になってくるでしょう。「技術・人文知識・国際業務」といった専門資格では家族滞在が認められています。
しかし、特定技能1号や技能実習では認められていません。ただし、建設や造船・船舶工業にあたる特定技能2号では家族滞在が可能とされているため、かなり対象職種・分野が限られていますが、そのチャンスを得ようとする外国人もいます。
特定技能と技能実習では受け入れ人数にも違いがあります。特定技能では目的が人手不足の解消であり、建設業といった一部を除いては受け入れ人数に制限がありません。その一方で、技能実習の目的は技術や知識の伝承のため、適切に指導が行える範囲という受け入れ人数の制限があります。
特定技能は即戦力を求めているため技能や日本語に関する能力を求められ、ときには試験を受けることもあるという制度です。一定の水準をクリアしているので、初めて外国人を雇う企業にとっては受け入れやすくなったという意見もあります。
しかし、技能実習は介護分野を除き、試験制度は導入されませんでした。来日後に1~2カ月ほど研修を受けて実習を開始するのが一般的です。日本語が流暢ではないまま来日する外国人も少なくありませんでした。コミュニケーションが図りにくく、技能実習生にとっても孤独を感じやすいという問題が生じることもあったようです。
原則として特定技能は対象となる業種ごとに定められている特定技能試験と日本語能力試験の2つをクリアする必要があります。しかし、技能実習生に関しては技能実習2号までを良好に修了すれば試験を受験しなくてもよいことになっています。
そのため、技能実習生を引き続き雇用し続ける企業が増えてきました。ただし、技能実習1号は特定技能への移行ができず、技能実習3号は技能実習計画の満了(見込み含む)が必要です。技能実習の何号かという点に注意しなければいけません。
技能実習生の頃から受け入れていると外国人の人柄や適性なども考慮できるという利点があります。長期的な付き合いをして初めてわかる魅力もあるでしょう。
外国人の受け入れに積極的な企業が増えてきました。技能実習から特定技能へ移行できるので、特定技能だけではなく技能実習生を受け入れる企業も少なくありません。特定技能と技能実習のいずれを選択すべきか悩んだときに参考にしてほしいことも合わせて解説しましょう。
まず、特定技能外国人を受け入れる方法ですが、基本的には求人募集を出して直接申し込みをしてきた場合や民間の職業紹介事業者による求職のあっせんを利用してきた場合に受け入れ機関と特別技能希望の外国人との間で雇用契約の締結をします。
ただし、技能実習2号から移行した場合は引き続いて雇用する流れが一般的です。いずれにせよ、雇用契約の締結をした後、在留資格が与えられて就労開始となります。
次に、技能実習生を受け入れる方法は日本の監理団体を利用するケースがほとんどです。外国の送出機関は技能実習生を募集して、日本の企業とマッチしたら監理団体へ引き渡すことになっています。
監理団体とは、技能実習生の生活を支援する機関で、主な役割は受け入れ企業が作成した技能実習計画の審査や計画の実施についての監理です。さらに、必要な場合は指導の実施も行います。日本には約2,900もの監理団体があるので技能実習生を受け入れる機会は少なくありません。
さて、企業は外国人を受け入れる際、特定技能と技能実習のいずれを選択すべきか悩むかもしれません。そもそも制度の目的が異なるので比較しにくいところもあるのですが、コスト面に着目しましょう。
技能実習生を受け入れるためには監理団体へ費用を支払うことになります。しかし、特定技能ではこのような費用は必要ありません。
また、特定技能は即戦力であるため、より多くの経営者の需要に応えられるのではないでしょうか。特定産業分野は14分野に限られていますが、企業の人手不足を解消するために外国人労働者を雇うという選択肢を考えてみてもよいでしょう。
今回は、特定技能と技能実習の違いや技能実習から特定技能への移行、外国人労働者の受け入れについて解説しました。そもそもの制度の目的が異なるところに注意してください。たしかに日本人労働者を雇うよりも複雑な面が多いですが、外国人労働者ならではの利点もあります。企業にとって最適な人材を確保するために幅広い視野を持つとよいでしょう。