なぜなぜ分析とは?失敗しないための効率的なやり方を使用事例を使って解説

突然ですが、自動車業界を中心に取り入れられている「なぜなぜ分析」はご存知でしょうか?自動車業界だけでなく多くの製造業に取り入れられ、IT業界でも問題解決手法として試されています。

 

「なぜなぜ分析」は事象の解決や改善に向け問題の原因を探る方法のための手法ですが、これを取り入れることにより、以下のような効果が期待できます。

 

  • 発生した事象の根本原因を特定する
  • 何度も掘り下げることで、真の原因を見つけ出す
  • 事象の改善策を導き出す
  • 事象が再発しないようにする

 

この記事では、全国10,000箇所を超える現場DXを支援してきた「カミナシ」が「なぜなぜ分析」について分かりやすく解説します。「なぜなぜ分析」の概要や目的だけでなく、「なぜなぜ分析」失敗する原因や効率的なやり方についても紹介していきます。
 
「製造業の仕事をしているけれども、問題解決のやり方がよく分からない……」
「発生した、問題となる事象がはっきりしない……」
「『なぜなぜ分析』をしても失敗してしまう……」
 
このように悩まれている方はぜひ最後までご覧ください。

なぜなぜ分析とは

なぜなぜ分析とは、もともとトヨタ自動車が考えだしたトラブルの原因を究明する方法です。

「なぜ」という問い掛けを繰り返すことで、根本的な原因を探っていく分析手法です。製造過程で生まれてくる事象の真の原因を究明して再発防止を立てることを目的として、トヨタ自動車で生み出されました。

 

「なぜこの事象が起きたのか」という「なぜ」という問いかけを何度も繰り返すことで事象の真の原因を見つけ出し、解決策や再発を防止する方法を導き出していく考え方です。

トヨタ自動車の生産方式における「なぜなぜ分析」は、5回の「なぜ?」を繰り返して原因究明につなげていきます。そのため海外での製造現場では、5つのWhy(なぜ?)を問いかけていく「5Whys」と呼ばれています。

なぜなぜ分析を行う重要性

もし、なんらかの事象が起こったときに、根本的な問題解決をせず、その場しのぎでその事象を処置してしまえば、その事象が再発する可能性があります。同じ事象により会社としての損失を生んでしまうこととなります。

 

何度も同じ問題が発生してしまうことは、製造現場の生産効率を下げ会社の売上を下げてしまうことにつながります。「なぜなぜ分析」を行うことで同じ事象を発生させていかないことは、会社の経営を行っていく上でも大きな重要性を持つのです。

なぜなぜ分析が失敗する原因とは?

せっかく「なぜなぜ分析」を行ったとしても、事象の解決に至るような原因にうまくたどり着けないことや、個人が責められる結果へと導かれてしまうなど、うまくいかない結果に終わることもあります。

本来「なぜなぜ分析」は簡単に分析でき、コストをかけずに事象の解決につなげていく手法です。しかしこのように「なぜなぜ分析」が失敗する原因にはどのような理由があるのでしょうか。ここでは「なぜなぜ分析」でよく発生する失敗事例を紹介していきます。

問題となる事象がはっきりしない

「なぜなぜ分析」を行って事象の解決に導いていくには、正確な課題を設定し、そのときどきで異なる「なぜなぜ分析」の目的を明確にしていくことが大事です。正確な課題を設定しなければ「なぜなぜ分析」は機能しないからです。以下の流れに沿って、問題となる事象を明確化していきましょう。

 

  1. 事象に関連する課題を洗い出す
  2. 問題となる課題を絞っていく
  3. 「なぜなぜ分析」を行う課題を選定する

 

事象の内容から課題を洗い出すときには、できるだけ多くの問題点をリストアップしていきます。なお、その問題点をリストアップする際には、事象をそのまま課題にしないようにすることです。事象を起こした人や場所、職種などを入れながら、具体的に表記をしていくようにします。

個人の事象として捉えてしまう

「なぜなぜ分析」では、発生した事象を個人の事象と捉えてしまうことは避けるようにしましょう。「なぜなぜ分析」では個人に原因を求めるのではなく組織としての問題点を見つけ出すことで、今後の効果的な改善策につなげていくからです。

個人の責任や個人の能力を問題にすることは問題解決につながっていきません。個人の事象として捉えてしまうことは問題解決に逆効果であるだけでなく、不当な個人攻撃やパワーハラスメントにつながる可能性があるからです。

トヨタ自動車の生産方式には「人を責めずに仕組みを責めろ」という言葉があります。事象が発生したときには個人の責任ではなく、そのシステムやプロセスの仕組みに問題があるという考え方です。問題を起こす原因究明をシステムやプロセスの仕組みに見いだすことにより、根本的な解決策を見つけられるのです。

なぜなぜ分析の効率的なやり方

なぜなぜ分析を効率的に進めていくには、手順があります。「なぜなぜ分析」において「なぜ?」を繰り返していくとき、どの「なぜ?」にフォーカスしていくのかは、分析する人の経験とひらめきが大切です。的外れのところにフォーカスしてしまうと、「なぜなぜ分析」もあらぬ方向へ進んでしまうことになります。

 

そこでここからは、「なぜなぜ分析」の代表的な分析方法を解説していきます。大切なのは、事象の真の原因を見つけて根本的な対策を行うことです。そのためには、分析の手法にはこだわりません。ここに書いていることはあくまで、参考程度にとどめるようにしましょう。

 

事故の事象

なぜ1

なぜ2

なぜ3

なぜ4

なぜ5

真の原因

対策

               
               
               
               

起こった事象を把握する

作業者が起こした事象のことを具体的に把握します。たとえば作業者が、「材料のAと材料のBを間違えてしまった」という事象が発生したとします。

 

そこで「なぜなぜシート」の登場です。シートの一覧にはまず「事故の事象」欄に具体的な事故の内容である「材料AとBを間違えて投入した」と記入します。

ヒアリングをする

次に「なぜなぜ分析シート」の「なぜ」欄を埋めていきます。とはいえ、具体的にどのような作業をしたのかがわからないと「なぜ」欄を埋めることは難しいものです。具体的な作業内容が分からずに記入してしまうと、推論や推察による記載となってしまいます。

「なぜなぜ分析シート」には実際に発生した事実だけを書きだして埋めていくことが問題の解決につながります。そこで実際の作業者に対して、事象を起こした状況や内容などをヒアリングします。

ヒアリングの結果になぜ?をする

事象が発生したときの作業の一連の流れをヒアリングして書き出していきます。そこで、事象を発生させた作業者に対して、どんな動きをしたのかを現場で1つずつ振り返っていきます。

そのヒアリングの結果に対して「なぜ?」の欄を加え、その「なぜ?」に対する疑問文を書き加えます。

なぜ?の理由を考える

次に、その作業に対して「なぜ?」と思った理由を考えます。

なぜの理由を対策する

その次に「なぜ?」の理由に対する対策を自分で考えて記入します。これが「なぜなぜ分析シート」の対策につながります。

 

作業内容

ヒアリング内容

なぜ?

なぜ?の理由

なぜ?の理由への対策

材料Aの名称が書かれたシートを見る

材料の名称を見て、赤いラベルが思い浮かんだ

なぜ赤いラベルだと思ったのか?

何度も運んでいたため、赤いラベルを覚えていた

記憶に頼らないようにする

保管棚で材料Aを探す

赤いラベルの材料を探した

なぜラベルの色で探したのか?

ラベルの色の方が探しやすい

ラベルの色でも探しやすいようにする

材料Aを運搬する

材料Aの近くにある材料Bを運んだ

なぜ材料Aと材料Bは同じラベルの色なのか?

AとBは元々ラベルの色が赤だった

材料ごとにラベルの色の指定する

なぜなぜ分析シートに当てはめる

「作業の内容」「ヒアリングの結果」「なぜ?」「なぜ?の理由」「なぜ?の理由に対する対策」を「なぜなぜ分析シート」に当てはめていきます。

 

事故の事象

なぜ1

なぜ2

なぜ3

なぜ4

なぜ5

真の原因

対策

材料AとBを間違えて投入した

赤いラベルのBを選んだ 材料の名前を見なかった 赤いラベルの材料を探した AとBは同じ赤いラベルだった 新しく調達した材料Bのラベルも赤だった 新しく調達した材料Bのラベルも赤だったこと 材料ごとにラベルの色の指定する

なぜなぜシートをチェックする

最後に「なぜなぜ分析シート」に記入した文章が日本語として間違えてないかどうか、チェックしていきます。たとえば、「なぜ1」から「なぜ2」の文章に「~から」を入れてみて日本語の文章としてスムーズにつながるかどうかを確認します。

また、「なぜ2」から「なぜ1」の文章に対しても「~ので」と入れてみて日本語の文章としてスムーズにつながっていれば「なぜなぜ分析シート」は問題無いといえるでしょう。

なぜなぜ分析の使用例

ここからは、「なぜなぜ分析」の使用例を2つ紹介します。

 

ここでは「なぜなぜ分析」の基本にのっとり、5回の「なぜ?」を繰り返して原因究明につなげていきますが、5回という回数が絶対というわけではありません。

 

繰り返し「なぜ」を問いかけることが重要となりますので、5回という回数にとらわれ過ぎず、問題の根本原因を見つけるまで、「なぜ」を繰り返すようにしましょう。

自動車業界での使用例

自動車業界の製造工場において梱包資材を間違えたという事象に対して、「なぜなぜ分析」で問題解決につながる「なぜ」を問いかけます。

 

  • なぜ1:作業者は別の工場から異動してきたばかりで、輸出用と国内用で別の梱包資材があることを知らなかったから
  • なぜ2:輸出専用梱包資材があることをリーダーが教えていなかったから
  • なぜ3:作業者が輸出専用資材で梱包しなくて良いと判断したから
  • なぜ4:リーダーが忙しそうにしていたために確認できなかったから
  • なぜ5:作業終了後にチェックする体制を整えていなかったから

 

この事象の解決策として、梱包資材に関するマニュアルを整えたほか、作業が終了するまでリーダーが最終的な確認を行うことを決めました。

物流業界での使用例

次に、配送業務で届ける荷物の遅延が発生したという事象に対して、「なぜなぜ分析」で問題解決につながる「なぜ」を問いかけてみます。

 

  • なぜ1:ドライバーが荷物を積み忘れたから
  • なぜ2:常に荷物が置いてある場所と異なる場所に荷物が置いてあったから
  • なぜ3:新入社員が間違えて異なる場所に荷物を置いたから
  • なぜ4:荷物の置き場所をしらないのに、先輩社員に確認できなかったから
  • なぜ5:先輩社員が忙しそうにしていたため聞くことができなかったから

 

この事象の解決策として、アルバイトやパート社員を含む全社員に対して、新入社員への対応マニュアルを作成したほか、わからないことは何でも相談できる社風作りをしていくことを決めました。

まとめ

「なぜ、その事象が起こったのか?」「それはなぜか?」と5回の「なぜ」を繰り返すことで、一般的には根本的な原因にたどり着くことができます。なぜなぜ分析を行うことで、発生した事象のさまざまな背景や因果関係が見えてくるのです。

なぜなぜ分析は、多くの製造現場でミスや労働災害をなくし改善していくために行われているだけでなく、生産性向上としても活用されています。「なぜ」という問い掛けを繰り返すことで、根本的な原因を探り、現場の改善に繋げていきましょう。

 

 

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