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製造業で重要な受け入れ検査とは?目的や確認項目、精度を高める4つのコツを紹介

作成者: カミナシ編集部|2024.08.20

受け入れ検査とは、原材料や資材が運び入れられた時に行う規格や品質のチェックのことです。製造工程に入る前の納品段階で検査し、不適合品を排除することで不良品の発生を防ぎます。

 

受け入れ検査は製品の品質向上や、不良品発生に伴う労力とコストの削減などに役立ちます。しかし、検査が適切に行われ、確実に記録が残されていなければ、受け入れ検査の効果はあまり期待できません。

 

本記事では、受け入れ検査の方法と目的を解説するとともに、受け入れ検査を効果的に実施するためのポイントを紹介します。受け入れ検査の有効性を高め、自社製品の品質を向上させたい方はぜひ参考にしてください。

受け入れ検査とは

受け入れ検査とは、工場へ納品された原材料や資材に対して行う検査のことです。工場で生産する製品が食品かそれ以外かによって、受け入れ検査でチェックする項目や検査を行う意図は異なります。

 

食品製造業における受け入れ検査では、納品された原材料が指定した規格どおりのものか、衛生状態に問題はないか、異物が混入していないか、腐敗していないか、包装状態は適切かなどをチェックします。受け入れ検査により、原材料由来の食中毒や異物混入などの食品事故を防止することが狙いです。

 

一方で、機械製造業における受け入れ検査は、納品された原材料や資材が指定した規格に沿っているか、破損や変形、変色などの不具合はないか、包装状態は適切かといった項目を確認するものです。機械製造業では、製造工程に移る前に不良品を排除して、製造物の品質を確保するために受け入れ検査を実施します。

 

また受け入れ検査は、最終製品の原産地表示、原材料の賞味(消費)期限、および問題が生じたときのロット追跡(トレーサビリティ)の確実性を高める重要な記録になります。

 

例えば、製造した食品で食中毒や異物混入などの事故が発生した場合、受け入れ検査にて原材料のロットを確認できていれば、事故の原因究明がスムーズに行えます。反対に、ロットが不明なものを受け入れていたり、ロットを記録に残していなかったりすると、事故の原因究明に時間を要し、被害の拡大や企業の信頼低下につながりかねません。

 

基準に満たない納品物を排除し、トレーサビリティの有効性を高めるために、受け入れ検査は重要です。したがって、受け入れ検査では適切な方法で確認するとともに、検査内容を確実に記録することが求められます。

受け入れ検査を行う目的

受け入れ検査を行う主な目的は、以下のとおりです。

 

  • 製品の品質を担保する
  • 労働力とコストを削減する
  • 仕入れ先との関係を強化する

 

受け入れ検査により、指定した規格に合わないものや品質に問題があるものなどを排除できれば、製造後に不良品が発生するリスクを低減できます。消費者のもとに不良品が渡る確率が低くなるため、顧客満足度の向上にもつながります。

 

さらに、一貫して高品質な製品を提供し続けることで企業と顧客の間に信頼関係を築ければ、リピート利用により売上もアップするでしょう。

 

また、製造工程で不良品が発生すると、不良品を良品に修正する作業が必要です。修正しても良品に戻らない場合、不良品の製造や修正に費やした労力は無駄になります。加えて、出荷後に製品の不具合が判明すれば、顧客からのクレームや返品への対応も求められます。

 

このような不良品の修正作業やクレーム、返品対応には多大なコストも掛かります。受け入れ検査により製造工程に移る前に規格外の原材料を排除できれば、これらの対応に掛かる労働力やコストを削減できます。品質管理における「品質は工程で作る」は、原材料の受け入れ工程から始まっています。

 

受け入れ検査は、原材料や資材の仕入れ先との関係強化にも寄与します。受け入れ検査での評価を仕入れ先に伝えると、仕入れ先は納品物の品質を改善させる手がかりを得られます。原材料や資材の品質が高まれば、最終製品の質も向上し、仕入れ先との関係性はより強固なものになります。

受け入れ検査の方法

受け入れ検査の主な方法には、「全数検査」と「抜取検査」の2つがあります。これらの検査方法について、次から詳しく解説します。

全数検査

全数検査とは、納品物のすべてに対して不具合はないかを確認する検査方法です。製造に使用するすべての原材料や資材を検査するため、時間や労働力が必要です。しかし、全数検査は、不適格な納品物を確実に排除ができるため、原料の不具合に起因する不良品の発生を最小限に抑えられるメリットもあります。

 

そのため全数検査は、以下の場合に実施されることが多いです。

 

  • 不良品による影響が甚大な場合
  • 費用対効果が高い場合
  • 手間が掛からない場合
  • 不良品の発生率が高い場合

 

不良品の発生が命に関わる医療機器や自動車の安全装置、航空機の部品など、高い安全性が求められる製品の場合は、不適合品を確実に除去できる全数検査が実施されます。

 

また、売値が高額な製品では労働力やコストに見合うリターンが期待できるため、全数検査が行われるケースがあります。加えて、不良品によるクレームや返品対応などに必要なコストが全数検査に掛かる費用を上回る場合も、全数検査が実施されることがあります。

 

簡素な構造で目視でも簡単に検査できるものや、機械を使用して容易に検査できるものも全数検査に向いています。

 

食品製造において、原材料への金属類やガラス片などの混入を防ぐために、金属探知機やX線検査装置による全数検査が行われるのもその一例です。金属探知機やX線検査装置を使用する場合は、その機器が確実に作動しているかの確認も併せて行いましょう。

 

さらに、製品の品質が不安定で不良品の発生率が高い場合も、全数検査が行われます。そのほか、新しい原材料や資材に切り替えるときも、全数検査の実施が推奨されます。近年では、AIシステムの導入などにより検査の自動化が進んでおり、労力や時間、コストが掛かる全数検査のデメリットが徐々に解消されつつあります。

抜取検査

抜取検査とは、納品された原材料や資材の一部のみを選び出して確認する検査方法です。抜取ものを標本やサンプルなどと呼びます。一定の個数が基準を満たすのであれば、全体も問題ないとみなす統計的な考え方をベースにしています。

 

抜取検査は時間や労働力、コストを抑えながら検査できることがメリットです。しかし、すべての原材料や資材を確認しないため、納品物に不適合品が混入した場合は不良品が発生するリスクがあります。

 

抜取検査は、以下の場合に適しています。

 

  • 破壊試験が必要な場合
  • 検査項目が多い場合
  • 検査に掛かる時間・労働力・費用の削減が優先される場合
  • 不良品の発生がある程度許容される場合

 

耐久性の検査など、納品物の破壊を伴う検査(破壊試験)が必要な場合、全数検査は不可能であるため、抜取検査が適しています。

 

また、受け入れ検査時に確認すべき項目が多いものは、全数検査を実施すると膨大な労力と時間が掛かってしまうので、生産効率を落とさないために抜取検査が実施されます。

 

1個あたりの単価が安い製品など、全数検査では時間や労働力、費用が見合わないと判断されるときも抜取検査が行われます。さらに、大量生産される消耗品や消費者の健康への影響が少ない製品も、不良品の発生よりもコストや効率性を優先して抜取検査が選ばれます。

 

抜取検査で、すべての不適格品を排除することは不可能です。しかし、不良品発生のリスクはできる限り抑えなければなりません。したがって、精度の高い抜取検査を行うためには、対象となるサンプルの選択方法や検査基準の設定が重要です。

受け入れ検査の精度を高める4つのコツ

受け入れ検査を実施しても効果が感じられない場合や、検査の有効性を高めたい場合は、検査方法を見直すとよいでしょう。ここからは、受け入れ検査の精度を高める4つのコツを解説します。

1.受け入れ検査の項目は、基本+原材料の特性に合ったものにする

 

受け入れ検査で確認すべき項目は、基本項目に加えて、原材料や資材の特性に合うものを設定しましょう。受け入れ検査の基本項目は、以下のとおりです。

 

  • 記入者
  • 納品された原材料名
  • 納入者
  • 納入日時
  • 数量
  • ロットナンバー

 

基本項目の中でも数量は単位も含めて確認することが大切です。記録表に「10」と書かれていても、10個と10ケースでは大きな差があります。◯箱、◯袋など、納品物に適する単位で記録するように項目を設定しましょう。

 

さらに、納品物の特性に合わせて確認すべき検査項目を設定しましょう。たとえば、生鮮食品なら見た目やにおいなどを五感を使ってチェック(官能検査)して、腐敗などの異常がないか確認することが必要です。適切な温度管理で輸送されているか確かめるために表面温度をチェックし、賞味/消費期限も忘れず確認しましょう。

 

場合によっては食中毒を発生させる微生物の検査や、水分量・pH・塩分・糖度などの検査を行うこともあります。このように、不良品発生のリスクを抑えるためには何をチェックすべきか、納品物の特性に合わせて十分に検討して検査項目を設定しましょう。

2.記録漏れが発生しないような仕組み作りをする

受け入れ検査を実施したら、必ず検査内容を記録に残しましょう。検査記録が残っていなければ、不良品発生時のトレーサビリティが正常に機能せず、原因究明に時間が掛かり、不良品の大量発生につながるおそれがあります。

 

受け入れ検査の記録漏れを防ぐには、仕組み作りが大切です。記録漏れを防ぐ方法の一つに、記録されていないことを通知できるツールやシステムの活用が挙げられます。

 

紙の用紙に手書きで記入するのが、従来の受け入れ検査の記録方法です。しかし近年は、検査結果を記録できるさまざまなデジタルツールや専用システムが普及しています。これらのツールやシステムのなかには通知設定が可能なものもあるため、上手に活用すると記録漏れが防げます。

 

さらに検査項目を必要最低限に絞ることも効果的です。検査項目が多すぎると、項目の確認漏れが生じていても気付かない可能性があります。検査項目をできる限り少なくすることで記入者の負担を減らし、集中力の低下などによる記録漏れを防げます。

 

受け入れ検査記録のダブルチェックも有効です。記録の記入者ではない別の人が記録を確認すれば、記入漏れを防げます。しかし、ダブルチェックに手間を掛ける分、ほかの重要な業務に割く時間が少なくなります。

3.受け入れ時の状態が一目でわかるように写真で記録する

受け入れ時の状態を後から確認できるように、写真で記録することも効果的です。納品物の外観や包装に問題がある場合、テキストで記録に残すのは簡単ではありません。写真で記録すると、後で誰が見ても納品物の状態を判別できるようになります。

 

写真を用いた記録は、専用ツールの利用が便利です。社用カメラなどで撮影すると、ほかの写真に紛れて必要な写真を見つけるのに時間が掛かったり、うっかり削除したりすることがあります。しかし専用ツールを利用すれば、指定の保管場所にまとめて保存できるので、特定の記録を容易に見つけ出せます。

 

問題が生じた納品物はほとんどのケースで仕入れ先に返品するため、手元に残りません。その場合も、写真で記録していれば問題が発生した事実を自社に残せます。さらに、新入社員の教育において納品物に生じる問題の事例を提示する際に、受け入れ検査時の写真を見せるなどの活用方法もあります。

4.誰が記録を取ってもわかりやすくなるように選択肢を選ぶ形式にする

記録表への記入方法は、選択式がおすすめです。もしも、コメントを自由に記入できる方式であれば、「良」や「問題なし」、「◯」などさまざまな書き方で記入される可能性があります。記入方法が異なると、後から記録表を見た際に問題が生じていたか否かがすぐに判断できません。

 

また、自由記入式では文字が乱雑で読み取りにくい場合もあります。不良品の発生時に記録を見返しても、何が記入してあるのか読み取れなければ意味がありません。しかし、あらかじめ用意した選択肢を選ぶ形式であれば、誰が記録しても検査結果が一目瞭然です。選択式であれば、忙しい業務中でも手早く記録できるメリットもあります。

 

確実に受け入れ検査を実施して、不適合品を製造しない仕組みを作ろう

受け入れ検査とは、納品された原材料や資材に対して行う検査のことです。納品物の規格や品質を確認して基準に満たないものを排除し、原材料由来の不良品の発生を防ぎます。製品の品質が向上すれば、顧客満足度や企業の信頼性アップにつながります。

 

また、不良品発生に付随する労働力やコストの削減に役立つことも、受け入れ検査のメリットです。受け入れ検査の結果を仕入れ先にフィードバックすれば納品物の品質が高まり、仕入れ先との関係性も強まるでしょう。

 

さらに、受け入れ検査の記録を残していれば、万が一不良品が発生した場合でもトレーサビリティが機能して、すばやい原因究明につながります。そのためには、誰でも簡単に記入できて後から見返しやすい記録方式の採用が大切であり、記録漏れを防ぐ仕組み作りも求められます。

 

受け入れ検査を適切に実施して確実に記録を残すことで、不良品の発生を可能な限り抑えましょう。受け容れ検査を確実に行い、記録漏れをなくすために紙の帳票のデジタル化を検討してみてはいかがでしょうか?以下からカミナシの資料をダウンロードいただけます。