CBM(状態基準保全)とは?メリットやTBM,BDMとの違いを解説

CBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)とは、予防保全の一種で製造業などの現場で、設備の現在の状態をリアルタイムで監視し、そのデータをもとに保全の必要性を判断する保全方式です。予防保全の中でも、データを用いた判断になるので、デジタル化が進む現代で注目されています。

 

しかし、他の予防保全(TBMやRBM、RCM)や事後保全(BDM)との違いやCBMのメリットなどをきちんと理解しないと効果的には作用しません。

 

そのためこの記事では、CBMの概要や注目されている背景、他の保全との違い、CBMを導入するメリットを解説します。自社工場の設備管理をされている方は是非参考にしてみてください。

CBM(Condition Based Maintenance)とは

CBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)とは、予防保全の一種で製造業などの現場で、設備の現在の状態をリアルタイムで監視し、そのデータをもとに保全の必要性を判断する保全方式です。CBMにより、故障予防と効率的な保全スケジューリングが可能となり、不要な保全作業の削減や、突然の設備故障による停止時間の短縮が期待できます。

 

そもそも保全は、設備の適切な機能を維持し、故障を予防するために行われます。主に「予防保全」と「事後保全」に大別され、それぞれ保全の効果とコストが異なります。

 

予防保全は、設備が故障する前に計画的に保全活動を実施し、故障の可能性を低減させる手法です。

CBM以外の予防保全と事後保全

予防保全はさらに、時間基準(TBM:Time Based Maintenance)でおこなうものと、状態基準(CBM:Condition Based Maintenance)でおこなうものと、故障のリスク基準(RBM:Risk Based Maintenance)でおこなうもの、故障のパターン基準(RCM:Reliability Centered Maintenance)で信頼できる保全方式を決めるものの4種類があります。

 

保全の種類 基準 詳細
TBM(Time Based Maintenance) 時間 設備の稼働時間や運転サイクルに基づいて保全を行う
CBM(Condition Based Maintenance) 状態 設備のモニタリングを通じて得られるデータを基に保全を行うかを判断
RBM(Risk Based Maintenance) 故障リスク 設備の故障リスクを評価し、そのリスクが許容範囲内に留まるように保全計画を立てる
RCM(Reliability Centered Maintenance) 故障パターン 各設備の故障の影響度や原因を詳細に分析し、それに基づいて故障が発生しやすい箇所の保全を行う
BDM(Breakdown Maintenance) 問題発生後 設備やシステムが故障または性能低下を起こした後に行う

予防保全と事後保全の分類

 

予防保全の中のTBM (Time Based Maintenance:時間基準保全)とは、設備の稼働時間や運転サイクルに基づいて保全を行う方法です。この手法では、メーカーの推奨する保全間隔や過去のデータに基づき、一定の周期で保全活動を実施します。

 

例えば、食品加工工場の包装機械のメンテナンスでは、あらかじめ定めた時間が経過する事に検査とメンテナンスを実施します。具体的には、ベアリングの潤滑やモーターのブラシの状態をチェックし、必要に応じて部品を交換します。

 

TBMは、計画的で予測可能な保全作業ですが、実際の設備の状態とは無関係に実施されるため、過剰または不足する保全活動が発生するリスクがあります。

 

CBM (Condition Based Maintenance:状態基準保全)では、設備のモニタリングを通じて得られるデータを基に、具体的な保全活動が必要かを判断します。

 

振動分析、温度監視、油質分析など、多様なセンシング技術を活用して設備の状態を評価し、特定の値を超えた場合にのみ保全作業を行います。CBMは無駄な保全作業を削減し、設備の利用可能性を最大化するために非常に効果的です。

 

RBM (Risk Based Maintenance:故障のリスク基準保全)は、設備の故障リスクを評価し、そのリスクが許容範囲内に留まるように保全計画を立てる手法です。

 

故障が発生した場合の安全上のリスクや生産への影響、修理コストを考慮して、最もリスクの高い設備から優先的に保全作業を行います。資源を最も必要とする場所に集中することができ、全体の運用コスト削減につながります。

 

例えば、化学工場の反応器のメンテナンスでは、高圧や高温で動作する反応器の場合、故障が発生すると化学物質の漏れや爆発の危険があります。そのようなリスクの高い部品に対して、頻繁な検査と事前の保守が行います。

 

予防保全の4つ目、RCM (Reliability Centered Maintenance:故障のパターン基準保全)は、各設備の故障の影響度や故障の原因を詳細に分析し、それに基づいて故障が発生しやすい箇所の保全活動を計画します。RCMは、設備の重要度と脆弱性を理解し、保全リソースを最適に配分するために有用です。

 

例えば、自動車製造ラインのロボットアームのメンテナンスでは、部品の摩耗が生産停止を引き起こさないよう定期的な交換や精密検査を行います。精密検査を行い、部品の早期交換することによって、予期しないダウンタイムを防ぎます。

 

これらの保全方式をどれか一つだけではなく、適切に組み合わせることで、製造現場の効率を大幅に向上させられます。各手法の選択には、設備の種類や使用条件、故障の影響、運用コストなどを考慮する必要があります。

 

もし予防保全で防止できなかった場合は、事後保全で対応します。事後保全(BDM:Breakdown Maintenance)は、設備やシステムが故障または性能低下を起こした後に行われる保全方法です。設備が故障するまで保全を実施しないため、リアクティブ(反応的)な保全戦略として位置付けられます。

 

事後保全は、保全計画の立てられていない小規模事業や、非常に古い設備を使用している場合によく見られます。

事後保全ではなく、予防保全を導入する企業が多くなってきている背景

事後保全の最大の特徴は、故障が発生するまで何も行わないことです。これは、予防保全とは対照的であり、設備の故障が明確になった後で初めて対応策を講じます。事後保全が適用されるのは、予算制約が厳しかったり、生産ラインの中でも優先度の低い機械であったりする場合が多いです。

 

事後保全では投資が少なくて済む可能性がありますが、さまざまな問題点があります。

 

例えば、事後保全では、故障が発生した後で初めて必要な部品やリソースの確保を行うため、修理に必要な部品がすぐに入手できない場合があります。これにより、修理開始までの時間が遅れ、設備のダウンタイムが不必要に長引くことがあります。部品の入手待ちで生産活動が停滞し、企業の業績に直接的な悪影響を及ぼします。 

 

また、事後保全は故障が明らかになるまで保全を行わないため、設備の劣化が進行していることが多く、予定していたよりも修理や交換に高額なコストがかかることもあります。小さな問題が放置されることで大きな故障に発展し、結果として予算を超える修理費用が発生する場合があります。

 

予防保全は、データ取得や分析技術の進歩により精度と効率が向上しており、特に時間軸で確認作業ができるTBM(時間基準の予防保全)と、基準を明確であれば、判定がつくCBM(状態基準の予防保全)の二つが注目されています。

 

TBM(時間基準の予防保全)は、定められた時間や稼働サイクルに基づいて設備の保全作業を行うので、比較的簡単に実施でき、定期的なチェックによって設備の状態を一定の水準で維持することが可能です。

 

CBM(状態基準の予防保全)は、実際の設備の状態をリアルタイムでモニタリングし、特定の条件と一致した時点で保全作業を行うので、不要な保全作業を避け、メンテナンスコストの削減と設備の稼働率の向上が期待できます。

 

将来的には、データ取得と分析がさらに進化し、故障のリスク基準(RBM)や故障のパターン基準(RCM)など、より高度な保全の活用も進むことでしょう。

CBMのメリット

CBMを導入することで、機械の故障による稼働停止を防ぎ、安定的な生産を確保することができます。そのため定期的な保守により機械設備の寿命を延ばし、不要な部品交換や修理、購入が減少するため、全体的なコストが削減されます。さらに、保全作業が効率化されることで保全担当者の負担も軽減されます。

メリット1.機械の稼働停止を防ぎ、安定的な生産が可能

CBMは、設備の状態を継続的に監視し、予測データに基づいて保全作業を行います。故障が発生する前に適切な介入が可能となるので、TBMやBDMのような機械が故障してからの対応に比べて、多くの利点があります。

 

時間基準の予防保全(TBM)や事後保全(BDM)では、機械の故障が発生した後に初めて対応が行われます。そのため、機械が故障している間、その設備は使用不能となり、生産活動が減少または停止します。これにより、計画されていた生産スケジュールが遅れ、売上の機会損失が発生します。

 

さらに、故障が発生した場合、修理に必要な部品の調達や、新たな機械を導入するまでの期間が不確定になります。これにより、生産再開のタイミングの予測が困難となり、生産停止期間のさらなる延長を招くことになります。

 

しかし、CBMを実施することで、これらの問題を効果的に解決できます。まずCBMでは、設備の状態をリアルタイムでモニタリングし、異常が発生する兆候を早期に検出します。これにより、故障が発生する前に保全作業を行い、稼働停止を未然に防ぐことが可能です。

 

さらに、CBMによる保全作業により、生産スケジュールの調整が容易となり、必要な部品を事前に調達することで、修理や保全作業の待ち時間を最小限に抑えることができます。

 

このようにして、CBMは設備の稼働停止を防ぎながら安定した生産を支援し、生産効率の向上、コスト削減、そして売上の安定化を実現します。

メリット2.機械設備の寿命を長期化

CBMによる定期的な保全作業は、設備の劣化を未然に防ぎ、重大な損傷に至る前に適切な対処ができるので、設備の寿命を長期化させます。

 

CBMは設備から得られるデータ(温度、振動、圧力など)をリアルタイムで分析し、異常が生じ始めた初期段階で検出することにより、小さな問題が大きな故障へと進行するのを防ぎます。

 

さらに、設備の実際の使用状況と条件に基づいて保全作業の最適なタイミングを特定し、過剰な保全作業を避けつつ、設備が必要とする時にのみ介入することが可能です。

 

故障の兆候を早期に捉えることで、必要な部品だけを交換し、全体の機械の健全性を維持します。これにより、不要な部品交換を避け、コストを抑えながら設備全体の効率と寿命を最大化させます。

メリット3.不要な部品交換や修理、購入がなくなり、コスト削減へ

CBMでは、設備から得られる振動データ、温度、圧力などの情報をリアルタイムで解析し、設備の健康状態を正確に把握します。このデータに基づき、保全が実際に必要なタイミングや、必要な保全作業の種類を判断できるので、不要な部品交換や修理、購入がなくなります。

 

さらには、新たな機器や設備の購入に関連するコストやトラブルへの対応コストの削減も期待できます。

 

CBMにより故障リスクが低減されると、故障や停止に対する緊急対応が必要な場面が減少します。これは、故障時に発生するオーバータイムの支払いや、緊急部品調達のための追加費用など、予期せぬ支出を減らす効果があります。

メリット4.保全担当者の負担軽減

CBMでは、設備のリアルタイムデータを利用して、故障の兆候を早期に捉え、必要な時にのみ介入することになります。そのため、保全担当者は余計なメンテナンスに時間を割かずに済みます。

 

また、計画的に決まった保全作業をすればいいので、重大な問題が生じなければ、経験が少ない保全担当者でも対応が可能となります。これにより、緊急対応に追われることなく、計画的な保全作業を行うことができ、作業の質を上げるとともに、時間管理が容易になります。

CBMの導入で安定的な稼働と設備保全の標準化を目指そう

CBMを導入することで、設備のリアルタイム監視とデータ分析により予測可能な故障を未然に防ぎ、生産効率を向上させることが分かりました。

 

CBMは、保全作業の標準化と運用効率の向上を促進し、不要なメンテナンスを避けることでコストを削減します。さらに、状態監視システムや分析ツールの導入は初期投資が必要ですが、設備の効率的な管理と長期的なコスト削減を考えると検討しても良いかもしれません。

 

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