【図解あり】フローダイアグラムとは?作り方やフローチャートとの違いを解説

 

 

製造業やIT・ソフトウェア開発、建設、医療・介護などで使われるフローダイアグラムとは、製造に必要なすべての工程を並べ、作業の流れを一覧にした図表です。フローダイアグラムを作成することで、製造工程で起こり得る食品危害の予測や分析が容易になります。

 

本記事では、食品製造業におけるフローダイアグラムの作り方を各ステップごとに詳しく解説します。HACCPに沿った衛生管理や品質管理にフローダイアグラムを活用したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

フローダイアグラムとは

一般的なフローダイアグラムとは、システムやプロセスの流れを視覚的に表現した図表のことです。英語のflow (流れ)とdiagram(図形、図表、図式)を組み合わせた言葉であり、製品工程一覧図とも呼ばれます。フローダイアグラムのメリットは、文字による説明では理解しにくい内容を、図として表すことで視覚的に分かりやすくできる点です。

 

フローダイアグラムは、製造業やIT・ソフトウェア開発、建設、医療・介護など、さまざまな業界で使用されています。とくに食品製造においては、フローダイアグラムは主にHACCPに沿った衛生管理やISO22000取得時に必要とされるハザード分析に用いられています。

 

フローダイアグラムが利用される目的は、原材料の受け入れから製品の出荷までの全工程を図表に落とし込むことで、ハザード分析を確実かつ正確に行えるようにするためです。

 

フローダイアグラムと似たものとして、フローチャートがあります。英語のchartの意味は「図表」であり、フローダイアグラムとフローチャートはどちらも作業の流れを示す図表といえます。ただし、記載されている情報のクオリティに違いがあります。

 

フローダイアグラムは、基本的に四角形のみを使用して図表を作成し、流れの把握に重点が置かれることが特徴です。一方で、フローチャートでは楕円やひし形などの図形も使用し、それぞれの図形に意味を持たせて、より具体的にプロセスを説明することがあります。

 

どちらも作業の流れを表す図表として使われていますが、食品製造ではフローダイアグラムが利用されることが多くあります。

食品製造業におけるフローダイアグラムの作り方(書き方)

ここからは、食品製造業におけるフローダイアグラムの作成方法を紹介します。

 

概要を簡単に説明すると、まず図表に縦軸と横軸を取り、縦軸に受け入れから出荷までの作業工程、横軸に原材料や包装材などの使用物を記載します。

 

次に各工程と使用物を矢印でつなぎ、工程の前後関係を明確にします。各工程で使用する装置や管理基準もあわせて記載し、最後に、工程順に通し番号を振れば完成です。以下はサラダのフローダイアグラム作成例です。

 

flow-diagram-salad01

サラダのフローダイアグラム

 

スーパーやコンビニなどで売られているサラダの製造工程のフローダイアグラム

 

次から各ステップごとに、食品製造業で使用するフローダイアグラムの作成方法を「サラダ」の製造を例にして詳しく解説します。

1.作業工程を全て書き出し、縦軸へ順番ごとに並べる

フローダイアグラムで表したい作業プロセスについて、原材料や資材の受け入れから製品の出荷までに必要な工程をすべて書き出します。図表に縦軸と横軸を取り、縦軸に先程書き出した工程を上から下へ順番に並べましょう。

 

flow-diagram-salad03作業工程を縦軸に全て書き出す

 

食品製造における工程は、受け入れ、保管、下処理、計量、加熱、冷却、盛り付け、包装、出荷などが挙げられます。ただし、あまり詳細に記載すると図が複雑になり、かえって分かりにくくなってしまいます。皮むきとカットを「下処理」と表すなど、同じ場所で行う工程は一つにまとめてもよいでしょう。

 

例えば、食品工場におけるサラダの製造に必要な工程は、受け入れ、保管、洗浄、殺菌、カット、盛り付け、出荷などがあります。ただし、保管は受け入れ後の原材料の保管と、水洗・カット後の保管、さらには盛り付け後、出荷までの製品の保管の三つがあります。その場合はどちらも記載しましょう。

 

また、レタスやトマトなど生鮮食品は冷蔵、ツナ缶やコーン缶などは常温で保存します。この際も冷蔵保管、常温保管と分けて記載しましょう。

2.製造に必要なものを洗い出し、横軸へ記入する

製造に必要な原材料、添加物、包装材をすべて洗い出し、配合量が多いものから配合する順に並ぶように、図表の横軸へ左から右に記載しましょう。

 

flow-diagram-salad04

製品に必要なものを横軸に書き出す

 

原材料や必要資材があまりに多いと、図が複雑になってしまうことがあります。その場合も「生食用野菜」「調味料」など使用工程が同じものをまとめて、詳細はかっこ書きで補足するとよいでしょう。

 

例えば、サラダの材料にはレタス、きゅうり、トマト、ブロッコリー、コーン、ツナ、ハム、ドレッシングなどがあります。包装に使用する容器やふたを止めるテープも必要です。原材料や資材が多くなるようであれば、レタス、きゅうり、トマトを「生食用野菜」、コーンとツナを「缶詰類」とまとめると分かりやすくなります。

3.各工程を矢印でつなぎ、関係性がわかるようにする

製造する工程順になるように、各工程と原材料、資材を矢印でつなぎます。

 

flow-diagram-salad05

作業工程を矢印でつなぎ、関係性を明らかにする

 

フローダイアグラムをエクセルやスプレッドシートで作成する場合、矢印が交差すると図表が分かりにくくなることがあります。セルの配置を調整したり、矢印のスタイルを点線や破線に変えたりして、見やすくなるように工夫しましょう。

 

矢印を1箇所に集約できるように、基本となる工程を図表の左側に置くこともポイントです。例えば、サラダを製造する工程であれば、洗浄や殺菌、カットなど、工程が多い生食用野菜を図表の左側に配置すると、見やすい図になるでしょう。

4.使用する機械や設備、管理基準を記入する

各工程で使用する装置や道具、機器を図表に書き加えます。また、工程の管理基準も記載しましょう。

 

装置や道具、機器とは、殺菌に使用する「次亜塩素酸ナトリウム」などです。包丁やまな板などすべての道具を書き出すと図表が分かりにくくなるため、食品危害に関係するもののみ記載します。また、工程の管理基準とは、「200ppm5分間」や「中心温度75℃、1分以上」、「中心温度10℃以下、60分以内」など食品事故を防ぐための判断基準のことです。

 

flow-diagram-salad06

使用する機械や設備、管理基準を記入する

 

保管方法については、図表の左側に配置した基本となる工程のさらに左に「冷蔵10℃以下」や「冷凍-15℃以下」などとまとめて記載すると、図表が見やすくなります。原材料と製品の保管場所が異なる場合、「原材料用冷蔵庫」や「製品用冷蔵庫」などと記載してもよいでしょう。

5.作業工程の順番がわかるように通し番号を振る

図表内の各工程に通し番号を振ります。万が一、食品危害が発生した場合、番号順に原因を分析すると迅速に問題を特定できます。番号は原則として、図表の一番上の列からはじめ、左から右に振りましょう。

 

flow-diagram-salad07

作業工程の順番を記載する

6.作成したフローダイアグラムと現場を比較し、抜け漏れがないか確認する

フローダイアグラムを作成したら現場に持ち込み、実際の作業と照らし合わせ、図表に抜け漏れがないか確認します。

 

現場での確認では、抜けている製造工程はないか、工程同士のつながりに間違いはないかをチェックしましょう。加えて、製造に使用する装置や道具、機器、管理基準に誤りがないかも確認します。

 

さらに、各工程で発生し得るリスクや衛生管理上の注意点も確認しておきましょう。例えば、汚染区域と清潔区域のゾーニングがあいまいになりやすいことや、調理場の温度や湿度が上がりやすいなどの気になる点を記録に残しておくと、食品危害が発生した際に原因を特定しやすくなるかもしれません。ただし、この情報までフローダイアグラムに記載すると図表が見にくくなってしまうため、フローダイアグラムとは別で記録しておくのがおすすめです。

 

flow-diagram-salad08

各工程で発生し得るリスクや衛生管理上の注意点も確認し、別紙に記載する

 

また、現場での作業と照らし合わせ、フローダイアグラムに新たな工程を加えたり配置を変更したりした場合は、あわせて通し番号も振り直しましょう。

7.定期的な見直しと改善

フローダイアグラムは作成して終わりではありません。定期的に見直しを加え、改善を続けてください。

 

現場で時間がかかっている作業や効率が悪い作業があれば適宜見直し、工程が変更された場合はフローダイアグラムも更新して、最新情報を反映させるように心掛けましょう。

正確なフローダイアグラムを作成し、的確な品質・衛生管理を実践しよう

フローダイアグラムを作成する目的は、HACCPやISO22000で必要になるハザード分析を適切に進めるためです。したがってフローダイアグラムには、誰が見ても作業工程や管理基準が理解できるような分かりやすさが求められます。

 

図表を見ただけで作業工程の流れや重要管理点を把握できるように、工程や数字を具体的かつ正確に記載しましょう。

 

フローダイアグラムを作成すれば、危害発生の可能性が高い工程が明確になります。フローダイアグラムの作成は目的ではなく、あくまで手段の一つです。正確なフローダイアグラムを作成し、食品事故の発生を防ぐ基盤を作り上げましょう。

 

paperless-sidebar-cta-1

カテゴリから探す