タートル図とは?プロセスアプローチとの関係と作成方法を解説
2020.09.23
2024.07.01更新
タートル図はプロセスアプローチに用いられる図のことで、製品やサービスの生産活動における全ての工程(プロセス)を可視化する手法です。
ISO9001などの国際的な品質管理に関する認証を取得する場合には、生産工程をプロセスプローチによって可視化し、適切な管理が行われていることを証明する必要があります。
今回は、プロセスアプローチに必要なタートル図の概要やタートル図の作成に必要な要素について解説していきましょう。
タートル図とはプロセスアプローチの手法
まずはタートル図とプロセスアプローチについて解説していきましょう。
タートル図とは
タートル図とはプロセスアプローチで用いられる図のことで、製品の製造工程(プロセス)を整理するために用いられます。
製造業の分野では、製品を作るための原材料の入手や設計図面の作成、実際の工場での製造業務や品質管理、検査や流通先への納品等のさまざまな工程の繰り返しによって生産活動が進められていくのが一般的です。
タートル図は、製品が入荷してから出荷されるまでの工程を図にするため、どのプロセスに課題があるのか、どの工程にコストや人材が投入されているかが一目で理解できます。
プロセスアプローチとは
タートル図を理解する上で欠かせないのがプロセスアプローチの概念です。プロセスアプローチとは、組織の目的達成のために必要となるさまざまな工程(プロセス)を可視化し、すべてのプロセスが最適に機能しているかを調査、分析する手法のこと。
プロセスごとに最適な手順を踏んでいるかを調査し、より高品質で生産性の高い組織作りを行うための方法を導き出します。
例として料理を見てみましょう。料理を作るためには膨大なプロセスを経ているため、生産活動と類似しています。材料をどこで買ってくるか、食材の下準備をどの食材から、どんな方法で行うか、野菜を切るタイミングや加熱するタイミングはいつが最適かなど、一つひとつのプロセスに求められる技術や必要な資源について考える必要があるからです。
生産現場でも、部品を加工するプロセスを全体工程の中でどこに配置すると最適なのか、部品を組み立てるためにはどれだけのリソースを割くべきかなど、多くの検討事項があるでしょう。
一つひとつの工程がさらに小さなプロセスによって形成されており、それらすべてを総合して分析し、より効率的な方法で生産プロセスを改善していくのがプロセスアプローチです。
ISO9001とプロセスアプローチ
ISO9001は品質管理に関する国際基準です。ISO9001の認証を受けるためにはタートル図の作成とあわせてプロセスアプローチについて理解する必要があります。
ISO9001は品質管理の国際認証
ISO9001は品質管理に関する国際認証です。品質管理とは、「要求された品質水準を満たす製品を製造するための仕組み」を意味しています。
ISO9001は国際認証であるため、取得すると世界で通用するレベルの品質で製品やサービスを提供していることが客観的に証明可能です。
▶︎ISO9001とは?認証取得までの流れを簡単にわかりやすく解説
ISO9001にはプロセスアプローチが必要
多くの企業にとって、自社の提供する製品やサービスの品質が高いことを証明できればビジネスにおいて有利に働くことは間違いありません。多くの企業がISO9001などの品質管理に関する国際認証の取得を目指しているのは、品質証明と同時に企業価値を高めるためです。
ISO9001は品質管理の国際認証として世界で最も標準的な基準ですが、ISO9001を取得するには、プロセスアプローチによって生産過程が適正であると証明する必要があります。
プロセスアプローチは他の認証でも使用
プロセスアプローチが用いられるのは、ISO9001だけではありません。他にもISO14001やIATF16949、ISMS/ISO27001など、他の国際的な認証でも必要な手法です。
これらの認証は、プロセスアプローチによって工程ごとに必要なプロセスを可視化することで、要件を満たしているかどうかを判断します。 このように、プロセスプローチは国際的な認証を受けるための重要な要素であり、品質を客観的に証明する有効な手段であるといえるでしょう。
タートル図に記入する3要素
タートル図を作成する場合、図の中には大きく3つの要素を記載していきます。それぞれの要素について紹介していきましょう。
タートル図のインプット
タートル図を作成するためにまず必要なのが、「インプット」です。インプットとは、主に顧客からのニーズや仕様、製造に必要な原材料といった意味で用いられますが、工程を細分化している場合、前の工程でのアウトプット(成果物)もインプットに該当します。
インプットを記入する場合には、
- 生産計画(毎月の生産予定数)
- 原材料
- 仕様や設計図
- 顧客からの要望事項
といった情報や、
- 作業責任者と作業者(人)
- 使用機材や整備状況(機械)
- 原材料(材料)
- 製造方法(方法)
といった、後述する4Mに関する情報を記載していきます。
タートル図のアウトプット
アウトプットは、インプットをもとに作成した仕事の成果(結果)。アウトプット先は、基本的には次の工程で、最終工程の場合は顧客になります。
アウトプットは成果物と共に、
- 製品の概要
- 製造記録(製造日・製造者・使用した材料や機械装置)
- 製品の品質情報
といった情報を記載していきます。
タートル図のインプット4M
タートル図のインプット4Mとはインプットに記載すべき4つの要素のことです。Man(人)、Machine(機械)、Material(材料)、Method(方法)の4つのMの頭文字を取って4Mと呼ばれており、それぞれの要素には以下のような意味があります。
・人
最初に挙げられる要素は工程に関わる「人」です。工程に関わる人員をリスト化し、それぞれが必要な教育を受けているか、どんな技能を持っているかを記載します。
・機械
2番目の要素は「機械」です。工程で使用する機械に関する情報をリスト化しましょう。内容としては、機械の種類や名称、金型や部品名、製造年月、点検記録や使用する電気や水などを記録します。
・材料
3番目の要素は「材料」です。製造工程で使用する材料の情報をリスト化。内容としては、材料の種類や素材、製造日や仕入れ先、検査結果などを記録します。
・方法
4番目の要素は「方法」です。仕事を進める方法をリスト化します。具体的には作業手順や作業条件(装置の設定)、検査基準(検査手順や判定方法)などを記録します。
タートル図作成のポイント
タートル図を作成する場合、どんな点に注意して作成すれば良いでしょうか。ここで、タートル図を作成する場合のポイントを紹介していきます。
タートル図のフォーマットに沿って作成
タートル図を作成する場合にはフォーマットに沿って記載するのが一般的です。タートル図は、「インプット」「製造プロセス」「アウトプット」のプロセスを軸に、必要な要素を記載していきます。また、プロセスに必要な4Mも記載していきます。
フォーマットに記載する項目が社内でこれまで規定されていなかった場合には、このタイミングで取り入れていきましょう。
評価指標と評価基準も決めておく
タートル図を作成する場合、組織が目指す評価指標や評価基準を決める必要があります。これは、プロセスアプローチによって適切な成果が得られたのかを検証する必要があるからです。
まずは組織の目的を決め、目的を達成するための評価指標や基準を設定します。各プロセスはプロセスごとに評価指標と評価基準を定めてモニタリング。定期的にプロセスが適切に遂行されているかをチェックしましょう。
まとめ
タートル図は、プロセスアプローチを実施するために欠かせません。タートル図を作成することで生産活動が可視化され、各プロセスにおいてどんな成果や課題があるのかを客観的に判断できるようになります。
タートル図を作成する場合にはフォーマットに従って記載していくため、まずはフォーマットを入手して実際の生産現場の状況に即して記入していきましょう。
プロセスアプローチを適切に実施するためには、タートル図を理解しておく必要があります。ぜひ、正しくポイントを理解してタートル図を作成していきましょう。
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