HACCPは食品業界で働く上では知っておくべきものです。ただ、単純に知っておくだけで良いわけではなく、考え方や手法なども理解しておかなければなりません。
そこで今回は、HACCPの基本情報を押さえた上で、管理基準に対する考え方や逸脱があった場合の対処法について紹介します。HACCPについて詳しく知りたい方や管理基準に関しての知識を深めたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
いきなり管理基準の説明をする前に、まずはHACCPの基本情報を把握しておきましょう。先に把握しておかなければ、この後に紹介する管理基準の考え方への理解を深められません。だからこそ、すでに知っている方も、改めてこの項目でHACCPに関する基礎的な部分を再確認しておきましょう。
そもそもHACCPというのは、Hazard Analysis and Critical Control Pointの略称であり、日本語に訳すと危害要因分析重要管理点となります。
内容としては、製品を製造する上での工程で生じる危害を分析し、工程を管理することによって除去あるいは低減させ、衛生的な管理を維持していく手法のこと。もともとは、アメリカで宇宙での食事の安全性を確保する目的からスタートしたものですが、現在では国際的なものへと発展しています。
なお、HACCPは導入が義務付けられたものであり、食品販売業や食料品製造業、メーカーなどは必ず取り入れなければなりません。もともとは義務化されていませんでしたが、法律の改正によって2020年6月にHACCP義務化が始まりました。
読んでいる方の中には「HACCP」と「ISO22000」が同じようなものに思えるかもしれません。確かにどちらも食品の安全を守る上では大切なものですが、全く同じではないので注意しましょう。
HACCPは上記したように、製品を製造する上での管理手法ですが、ISO22000は食品安全マネジメントシステムに関する国際的な規格です。ただ、ISO22000の内部にHACCPの考え方が含まれているため、もしISO22000の導入を検討しているのであれば、HACCPに対する知識も持っておくと良いでしょう。
HACCPを知る上では、専門用語への知識も欠かせません。主な言葉としては、ハザードやクリティカルコントロールポイント、GMPなど。ハザードは危害要因のことであり、生物的・化学的・物理的という3種類に分かれます。
クリティカルコントロールポイントは日本語に訳すと重要管理点。危害要因を継続的にモニタリングできるだけではなく、管理もできる点のことを指します。最後のGMPは、Good manufacturing practiceの略称。日本語に約すと適正製造基準となり、日本では医薬品等の品質管理基準に対することとなっています。
HACCPは国際的な手法であるため、日本以外の国でも採用されています。ただ、多くの国が日本よりも先に義務化しており、具体的に挙げるならばアメリカや韓国など。中国やインドの場合は、輸出する食品に対してHACCPが義務付けられています。
HACCPには、7原則12手順というものが設けられています。このことがHACCPを導入する上では押さえておくべきポイントであり、どのように導入すれば良いのかという道筋となるのです。そのため、これからHACCPを導入しようと考えている方は、必ず読んでおきましょう。
なお、項目の最後ではHACCPがこれまでの衛生管理と違うポイントについて紹介しています。「HACCPって以前の衛生管理と同じでは?」と思う方は、ぜひこちらもチェックしてみてください。
HACCPの原則は、「危害要因分析の実施」や「モニタリング方法の設定」、「記録と保存方法の設定」など7つあります。
危害要因分析やモニタリングといった専門用語もありますが、これらはHACCPを進めていく上で欠かせないもの。知らない方は、事前にどのような意味なのかチェックした上で、原則の内容を確認してみましょう。
HACCPの12原則としては、「HACCPのチーム編成」や「製品説明書の作成」、「製造工程一覧図の現場確認」など。
上記で紹介した7原則も12手順の中に含まれていますが、後半に位置しているため、原則を進めるためには手順1から5までを進めなくてはなりません。だからこそ、手順をおろそかにせず、きちんと最初から最後まで取り組むようにしましょう。
HACCP7原則12基準がこれまでの衛生管理と違うところは、検査における内容です。これまでの衛生管理は、完成した製品をランダムに抜き打ちで選ぶ検査でチェックしていましたが、これだと不良品が発見されないまま市場へ流通してしまう恐れがあります。
一方でHACCP7原則12手順は完成品を確認するのではなく、製造工程を確認して管理する手法です。以前の方法よりも効率よく衛生管理ができるため、HACCP7原則12基準のほうが優れていると言えます。
HACCPの管理基準は、危害要因を除去する上での工程で大切な管理点を管理する際の基準定数のことを指します。管理する上での数値は定量的なものであるほうが望ましいとされており、その理由は多くの人が管理しやすくなるため。あいまいだとどこまでが良いのか分からなくなってしまい、きちんと管理できなくなってしまいます。
HACCPを導入した上で、管理基準からの逸脱があった場合にはどのような対応をすれば良いのでしょうか。万が一に備えてスムーズに行動できるためにも、最後の項目では、逸脱した際の対処法や是正措置への考え方などを紹介します。
管理基準から逸脱した場合の対処法は、原則の1つ「管理基準逸脱時の是正措置の設定」にてまとめられています。
「管理基準逸脱時の是正措置の設定」というのは、モニタリングを行った際に管理基準からの逸脱が判明した場合、原因を特定する方法や工程の正常化、問題となった製品に対する排除方法といった問題の解決策を決定するというもの。スムーズに対応するためにも、事前に対処法をどうするのかそれぞれ決めておく必要が求められています。
逸脱への是正措置は、文章にまとめながら決めていきましょう。まとめておけば、効率よく報告できます。まとめる内容としては、問題があった製品名や逸脱した日時と内容、逸脱した製品に対する措置内容などです。
是正措置を実際に行う際は、担当者選びが重要です。きちんとHACCPや管理基準についての知識を持っていない人が担当者になってしまうと、万が一が起きた際に対応ができない恐れがあります。
一方で、知識をしっかりと持っている上に判断能力が高い担当者であれば、迅速な判断ができるでしょう。
今回の記事では、HACCPの基本情報や管理基準の考え方、逸脱した場合の対処法などについて紹介しました。HACCPは日本でも義務化された衛生管理の手法であり、これまでの衛生管理と比べて優れています。
ただし、この記事で紹介したような管理基準といった知識を持っていなければ、きちんとした対応ができません。だからこそ、この記事だけではなく、他の記事も読んでHACCPへの知識を深めていきましょう。