食品関連会社では、今後はHACCPでの検査を取り入れることになっています。しかし今までも食の安全を守るためにさまざまな方法で対策を講じていたでしょう。HACCPと従来検査はなにが違うのでしょうか?
今回は従来の検査方法との対応方法との違いや、取り入れることでのメリットなどを解説します。あわせて、HACCPの製品管理のやり方である7原則12手順がどういったものかもチェックしましょう。
まずはHACCPと従来検査それぞれの検査方法について確認していきます。2つの管理に関する考え方や検査方式を知ることで、それぞれの違いをチェックしていきましょう。
従来検査の考え方やその検査方式から紹介します。
従来検査では、「施設自体の清潔性」が食品製造においてとくに重要視されていました。施設自体やその施設で働く人々を清潔にして製造する環境を整えることで、安心な食品が作れるという考え方です。衛生面を管理することによって虫の混入事故や髪の毛が入ってしまうなど、ある程度のトラブルは防止できます。
従来検査の場合には、「抜き取り検査方式」で品質を確認します。抜き取り検査方式とは、できあがって出荷段階の状態になった商品の中から、たくさん製造した商品のうち一部だけを検査に回す方式です。ランダムに抜き取って商品の品質を確認する検査のため、全体的に異常がないかどうかを判断する際には効果があります。しかし商品すべてを見ているわけではないため、その際に抜き取って検査したもの以外に品質が悪いものが混じっていてもわかりません。
安全性を保障できないものが混じっていてそのまま出荷された場合、問題がおきると正常な商品までまとめて回収・処分が必要となっていました。
HACCP方式での検査の仕方や考え方も解説します。
HACCPの場合、仕入れをしてから出荷するまでのすべての工程において管理を徹底することによって、安心安全な食べ物を製造できるという考え方をしています。その上で、食品の製造・加工段階のうちどんな部分に危険要因・リスクがあるのかを分析し、発生する恐れのある微生物や異物などについて考えるのです。そして、リスクをできる限り排除するために、食品の製造・加工段階の中でも重要となる工程の設定をおこないます。
例えば殺菌処理を確実に実施するために、何分間以上何℃以上の状態でいたらいいのかなどを設定しておくということ。リスクマネジメントのために大切な工程を洗い出して、しっかりと管理するシステムを作っておくことで、安全性を高めようという考え方です。
HACCPの検査方式では、「継続的な監視や記録をおこなう手法」を取ります。ずっと、もしくは高い頻度でチェックをし続けて、設定しておいた重要工程のやりかたとの相違がないかどうかを確認するのです。
センサーなどを使い状態を確認し、もしも決められた基準に満たない商品があれば除外します。ずっと管理しているため、品質が良くない商品があればすぐに排除できることがメリットです。
HACCPの対応方法を取り入れることによるメリットも確認していきましょう。
HACCPを取り入れる最大のメリットは、「安全性へのリスクが減少すること」です。HACCPを導入することで今まで以上に検査をおこなうようになるため、食中毒などの予防やリスクの軽減にも役立ちます。商品全体の品質を上げることになり、品質のばらつきがなくなるのでクレームの防止や信頼性の向上にもなるでしょう。
HACCP方式への対応によって、「何かあった場合にも原因がわかりやすいこと」もメリットのひとつです。抜き取り検査の場合だとすぐには検査できないため不良を確認するのに時間がかかります。また改善方法を考える際も、どこを直せば良いのかもわかりにくいものでした。
HACCPではさまざまな工程を管理し、どの工程でどんな対応をしていたかがわかることで、どの部分で不良となったのかがわかります。その分、改善方法がスムーズに理解できるようになるのです。
HACCPを導入すると、「食品の輸出ができるようになること」もメリットでしょう。海外ではHACCPへの対応が当たり前になっています。そのため、HACCPの対応ができていないものについては、食品の衛生管理がきちんとしていないものとして安全性を疑問視され、輸出を受け入れてもらえなくなっているのです。
HACCP方式の対応をすることで信頼性が増し、海外への輸出ができるようになります。海外には巨大なマーケットがあるため、輸出の選択肢があることは大きなメリットといえるでしょう。
HACCPを導入するのであれば、決められた手順に沿って食品を製造していくことが重要となります。この決められた手順というのが「HACCPの7原則12手順」です。
手順1:HACCP対応チームの結成
各部門の担当者が集まり、すべての製品の情報がわかるようにしておきましょう。HACCPに詳しい人がいなければ書籍などを参考にしたり、外部の有識者に頼ったりするのもおすすめです。
手順2:自社で作っている製品の特徴をリストアップ
商品の名称や種類・原材料・添加物・pH値など商品の特性・賞味期限・保存方法などを書き出しましょう。
手順3:商品をどう食べるかやその相手などを確認
商品は加熱して食べるものなのか、それを食べる人は老人なのか子供なのか、幅広い客層に向けた商品なのかなどを書き出します。
手順4:製造工程や施設設備、作業手順などを図に表す
どのように商品を製造しているのか、作り方を図面にします。
手順5:書き出した製造工程が合っているかを現場で確認
手順が変わっていた部分などがないかチェックします。
手順6:危害要因の分析
微生物や菌、化学物質など、健康に危害を加えるリスクがどこにあるかを分析します。
手順7:重要管理点を決める
加熱処理をしっかりする、冷却をおこなうなど、危険要因を予防できる工程を確認します。
手順8:管理基準の設定
重要管理点にあわせて、どのように管理をしたらいいかを設定します。何℃以上で加熱をするかなど、実際の対応の基準です。
手順9:モニタリングの設定
目視確認や温度計などで、管理基準通りになっているかをチェックします。
手順10:改善措置の設定
もしも管理基準を外れてしまったらどうするかを決めておきます。
手順11:検証方法の設定
有効的な手が打てるプランになっているかをチェックします。
手順12:現場での記録と維持・管理
実際にHACCPの仕組みを取り入れて、現場でチェックした内容を記録し続けます。
12種類ある手順の中でも、手順5までは微生物や菌などによるリスクを確認し、自社の現状を把握するためのもの。手順6以降の内容がHACCPの7原則と呼ばれており、リスクマネジメントのためにとくに重要な作業です。
今回はHACCPと従来検査との違いとは何かや、HACCPを取り入れるメリットなどを紹介しました。従来も食の安全のために検査などをしていたものの、それでも食の安全をおびやかすようなケースもおきています。防止のためにHACCPの導入を推奨していたけれどあまり効果がなかったため、HACCPの義務化に踏み切ったという流れがあるのです。
HACCPは食に対するリスク軽減がよく考えられているシステムのため、取り入れることで効果的にリスクマネジメントができます。HACCPの導入を前向きにとらえ、新しい体制の構築を進めていきましょう。