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HACCPとは?一般衛生管理との違いや未導入による影響を解説

作成者: カミナシ編集部|2021.01.07

2020年6月より義務化がスタートしたHACCP。未導入の場合は、HACCPの導入に向けて準備を進める企業も多いことでしょう。

 

ただ、HACCP導入の準備を進める中で、一般衛生管理の違いについて疑問を抱く人も少なくありません。

 

そこで今回は、HACCPと一般衛生管理の違いについて分かりやすく解説します。また、HACCPの認証取得までにかかる費用や日数も紹介しているので、未導入の場合はぜひ参考にしてください。

HACCPとは?一般衛生管理の違い

HACCPと一般衛生管理は、どんな点に違いがあるのでしょうか。HACCPの概要を説明したうえで、一般衛生管理との違いについて解説します。

HACCPとは

Hazard(危害)・Analysis(分析)・Critical(重要)・Control(管理)・Point(点)の頭文字から由来するHACCPは、消費者や取引先に安心安全の製品やサービスを提供するための衛生管理手法のことをいいます。

 

HACCPは、すべての作業工程を管理することで、危険要因を減らすことが大きな目的です。

 

そんなHACCPの手法は、Hazard(危害)・Analysis(分析)を含む「危害分析」と、Critical(重要)・Control(管理)・Point(点)を含む「重要管理点」に大きく2つにグループ分けして呼ばれています。

 

危害分析とは、食品を仕入れから出荷する段階までの危険要因を特定して徹底的に管理するのが特徴。この段階での危険要因は、微生物や異物混入が考えられます。

 

一方、重要管理点は、各工程における管理基準を明確にして、重点的に管理する必要がある工程を特定するのが主な役割です。

 

また、HACCPは、製造工程を管理するため「7原則12手順」といわれるガイドラインを設けています。

 

これらの手順や原則に沿って製造を進めることにより、食品衛生の基準を維持して危険要因を未然に回避することができるのです。

HACCPと一般衛生管理の違い

そもそも一般衛生管理とは、食品の製造工程に関わるすべての人が実施する必要がある衛生管理のことです。

 

一般衛生管理では、食品の仕入れから出荷まで衛生的な状態が保たれているか、廃棄物は適切に管理されているかなど、全10項目の管理手法が定められています。

 

そんな一般衛生管理は食品製造工程に携わるすべての人が対象になるため、HACCPを構築するうえで一般衛生管理がしっかり実施されていることが大前提。

 

その結果、般衛生管理が実施できていない企業はHACCPの構築は行うことができないということになります。

 

HACCPの導入は、一般衛生管理システムの土台があってこそ構築できるものです。まずは、仕入れや製造工程において一般衛生管理システムがしっかり構築できているか確認してみましょう。

 

HACCPを導入するメリット

HACCPを導入して得られる効果が分からない人も多いのではないでしょうか。ここからは、HACCPを導入するメリットを紹介します。

従業員の意識向上につながる

HACCPを導入することで各工程における業務の見える化が進むため、無駄な作業を削って従業員の負担が軽くすることができます。

 

また、今まで何となく行っていた業務もHACCP導入により合理的に理解できるようになるので、衛生管理における従業員の意識の向上が期待できるでしょう。

 

従業員一人ひとりの意識が向上すれば徹底した衛生管理を行えるので、食品トラブルも軽減させることができるのです。

 

実際にHACCP導入の実態調査によると、約8割の企業が「従業員の意識が向上した」と答えています。それほどHACCP導入は、従業員に大きな影響を与えているのです。

衛生管理について根拠的に説明できる

企業独自の衛生管理を行っている場合、取引先など外部の人に説明するとき説得力のない説明になっていることも少なくありません。

 

うまく説明できないのは、衛生管理の取り組みに対して認識の違いがあったり明確な根拠がなかったりするからです。その結果、自信を持って外部に説明することができず案件を逃すことも。

 

HACCPを導入すれば、HACCPのガイドラインである手順や原則に沿った衛生管理を行うので、根拠を持って説明できるようになります。

 

また、衛生管理の取り組みに関する従業員の認識の差も解消されるのも大きなメリットだといえるでしょう。

問題が起きても迅速に対応できる

HACCPの導入により危害要因を最小限に抑えることができますが、もし万が一問題や不具合が起こっても迅速に対応できます。

 

なぜなら、HACCP導入時に各工程においてどのような危害が発生するかを想定しているので、万が一問題や不具合が起こってもすぐに対応することができるのです。

 

また、各工程ごとに管理しているため、どの工程で問題や不具合が起こっているのかも明確になります。

 

問題や不具合による業務の停止も最小限に抑えられるので、業務における2次被害も防ぐことができるのです。その結果、その後の業務にも支障を来たすことなく作業を進められます。

HACCPの未導入による影響は?

HACCPは、2020年6月より食品企業における完全義務化となりました。猶予期間はあるもののHACCPの導入が済んでいない場合は、罰則を受けることも。ここでは、HACCPの未導入による影響について解説します。

保健所の指導が入る可能性がある

すでにHACCPの義務化が開始されていますが、2021年5月まで猶予期間が設けられています。猶予期間がある理由は、HACCPの導入はすぐに行えるものではないからです。

 

ただ、もし猶予期間を超えてもHACCPが導入できていない場合は、罰則を受けるのか気になるところでしょう。実は、HACCP未導入による明確な罰則は明記されていません。

 

ただし、営業許可証を取得するときに保健所のチェックがあるため、その際にHACCP未導入の事実が明確になります。その結果、営業許可を受けられないこともあるのです。

企業イメージの低下につながる

HACCPの未導入は、企業のイメージ低下につながることは間違いありません。HACCPの義務化が求められているにもかかわらず、導入していない企業は消費者や取引先にマイナスイメージしかならないのです。

 

今後企業のHACCP導入は、普及していくことが予測されます。その中で、HACCPを導入していない企業は、悪目立ちする恐れがあるのです。

 

そのことが一般的に公表されれば、取引先の信頼を失うだけでなく消費者との信頼関係が崩れ、売上が著しく低下することも考えられます。それが継続すれば、企業の縮小も避けられないかもしれません。

HACCPを導入する際の前準備

これからHACCPの導入する企業に向けて、実際に導入する際の前準備を説明します。HACCPをスムーズに構築するうえで重要な工程になるので、しっかりチェックしましょう。

従業員の知識レベルを把握する

HACCPに関する従業員の知識がどのくらいあるのか確認しましょう。従業員のHACCPの知識量によっては、コンサルタントに依頼するかの判断基準にもなるはずです。

 

コンサルタントを入れると費用がかかるため躊躇する企業も多いですが、無駄な時間をかけずにスムーズに構築できることは大きなメリットになります。

 

従業員にHACCPに関する知識がない場合は、コンサルタントの依頼も検討してみましょう。

文書化されている資料を確認する

HACCPを導入する際、ゼロから構築する必要はありません。すでに構築している一般衛生管理のシステムを土台にして構築することもできます。

 

そのため、一般衛生管理のシステムにおけるマニュアルや記録を確認しましょう。それらの資料を活用すれば、時間の短縮になるはずです。

導入を完了させる期日を決める

今からHACCPの導入を進めるとき、猶予期間までに確実にシステム構築を完了させなければいけません。

 

そのため、HACCPの導入を完了させる期日を決めることが大切です。ゴール設定ができれば、今すべきことが明確になります。着実に、かつ効率的にHACCPを導入させられるでしょう。

HACCPに関するよくある質問

ここからは、HACCPの認証取得でよくある質問をまとめました。HACCPに関する疑問や不安を解消して、認証取得を進めましょう。

認証取得にかかる費用はどのくらい?

HACCPを「導入すること」と「認証を取得すること」は大きく異なります。認証を取得するには、第三者機関の審査が必須で審査員が関与することになるのです。

 

ただ、認証を受けることで、信頼度も変わってくるため取得を検討する企業も少なくありません。そんなHACCPの認証取得には、数十万円必要になることを認識しておきましょう。

認証取得までにかかる期間は?

認証取得には、HACCPの導入が欠かせません。前準備からシステムを導入し、第三者期間による認証を受けるまでは数カ月必要だと考えておいたほうがよいでしょう。

 

ただし、HACCPの導入に時間がかかることもあるので、早めに準備に取り掛かることが大切です。

HACCPとISO22000の違いって?

HACCPに関する質問で多いのが、HACCPとISO22000の違いについてです。

 

HACCPが食品を安全に管理する衛生管理手法である一方、ISO22000は国際規格の一つで食品安全管理を実践するためのマネジメントシステムになります。

 

この2つの大きな違いは、第三者機関による審査が必要かどうかです。HACCPは導入のみでも問題ありませんが、ISO22000は必ず審査を受ける必要があることを覚えておきましょう。

まとめ

HACCPの義務化が開始されたことにより、導入を進める企業は少なくありません。

 

ただ、HACCPの導入には一般衛生管理のシステム導入が大前提になっているため、まずはそれらが構築されているか確認することが大切です。

 

十分に構築されていない場合は、まずは一般衛生管理から改善することが望ましいでしょう。