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HACCP対応の食品工場とは?取得のポイントをわかりやすく解説

作成者: カミナシ編集部|2024.01.23

HACCPとは食品事故を未然に防ぐための衛生管理手法です。

 

2021年6月にHACCP導入が義務付けられたことを受けて、これから導入を検討する事業者も増えています。では、HACCPに対応した食品工場にするにはどうすればよいでしょうか。

 

今回は、HACCP対応の食品工場にするためのポイントを中心に、HACCPの基本的な説明から導入状況を解説します。加えて第三者認証を取得する流れや導入コストを抑える方法も紹介しますので、HACCP導入を検討する企業はぜひ参考にしてください。

HACCP対応の食品工場とは?

HACCP(ハサップ)とは、Hazard Analysis and Critical Control Pointの略で、日本語では「危害要因分析重要管理点」と言います。原料の受け入れから製造、出荷までのすべての製造工程において、食中毒や異物混入などの食品事故につながる要因を低減・除去する衛生管理手法です。


食品の製造では、食中毒菌や金属片、ガラス片、昆虫といった危害要因により食品が汚染される可能性があります。HACCP対応工場は、これらの危害要因を低減しHACCPを取得した工場を指します。

ここでは、HACCP取得のために確認しておくべき

 

  • 工場の立地
  • 施設の構造と配置
  • 空調と換気
  • 従業員の教育

 

の4つのポイントを解説します。

工場の立地

食品工場では周囲の環境によって発生する危害要因があるため、工場の立地条件を考慮することが大切です。

 

以下が主に考慮すべきチェックポイントになります。

 

  • 製品に悪影響を与える場所が近くにないか
  • 悪臭や煙、塵埃の発生源がなく、不潔な環境から離れているか
  • そ族や昆虫が発生しやすい場所から離れているか
  • 天災による影響を受けやすい場合から離れているか

 

 

新しく工場を建てる場合、周辺に廃棄物処理場や化学薬品工場があれば、異臭や汚水が流れ込む可能性があるため、立地条件には適していません。

 

もし、すでに工場の立地条件が悪いのであれば、汚染を防ぐ手段を検証します。たとえば、昆虫が発生しやすい場所として、「手入れをしていない植栽」「水はけが悪い道路」「ゴミが放置された場所」が代表的です。

 

これらの要因を防ぐために、施設の周辺環境を定期的に清掃し、衛生状態を守ることが求められます。水はけの悪い箇所があれば道路を舗装するなどの対策をとりましょう。

施設の構造と配置

工場の内部では異物による汚染をなくすためゾーニングが必要です。ゾーニングとは、清潔度が同じ作業部屋をグループ化してレイアウトを計画することを指します。

まず、作業場は清潔作業区域、準清潔作業区域、汚染作業区域に分けられます。清潔作業区域には食品の充填・包装室、殺菌・冷却室などが当たり、最終製品として微生物の制御が求められる場所です。準清潔作業区域は原料の前処理や調合をする部屋、段ボールなどの外包装を行う部屋などが該当します。そして、汚染作業区域は原料の受け入れ室や倉庫、事務所などです。

 

(出展:HACCP関連情報データベース)

 

食品工場は製造工程によって清潔度が異なるため、これらのゾーニングを意識するようにしましょう。また、「物」「人」は複数の作業部屋を移動するため、動線を考えることも重要。なるべく物と人が交差しないように設計しなければなりません。

たとえば、汚染作業区域で作業をしていた人が清潔作業区域に立ち入らないように、作業部屋を出入りする時のルートが交差しないように考慮します。

施設の構造としては壁や床、窓なども清掃しやすいように設計しましょう。食品を取り扱う場所で清掃不良があれば製品の汚染につながるからです。多くの食品工場の床は、排水を行いやすいように排水口に向かって適度な勾配がついています。

空調と換気

食品工場では、製造や製品の貯蔵に適した温度・湿度があるため空調も重要です。業種や工程によって最適な温度・湿度は異なり、空調設備もそれぞれの温湿度条件によって選択するようにしましょう。

空調の外気の吸気口には、昆虫等の侵入や塵埃が入ってこないようにフィルターを付けるようにします。送風側の吹き出し口には、HEPAフィルターと呼ばれる中性能フィルターまたは高性能フィルターを設置しましょう。HEPAフィルターがあることで、空気中のゴミやホコリを除去できます。

また、排気と吸気のバランスにも気をつけることが大切です。空気の流れは清潔作業区域→準清潔作業区域→汚染作業区域→屋外となるように清潔作業区域は陽圧にしておきます。陽圧にしておくことで、昆虫等が清潔作業区域に侵入しづらくなるからです。条件によって室内の圧力を陽圧か陰圧にする第1種換気か、常に陽圧にする第2種換気と呼ばれる換気方式を導入すれば、空気の流れや換気を適切に行うことができます。

従業員の教育

HACCP対応工場では施設の構造といったハード面だけでなく、従業員の教育といったソフト面も整える必要があります。工場の清潔さは日々の清掃によって維持できるため、従業員の教育と衛生管理のルールを作成することが大切です。

 

衛生管理のルールは、HACCPを機能させる「一般的衛生管理プログラム」を基本とし、その中身は以下のとおりです。

 

  1. 施設設備・機械器具の衛生管理
  2. 施設設備・機械器具の保守点検
  3. 従業員の衛生管理
  4. 従業員の教育訓練
  5. そ族昆虫の防除
  6. 食品等の衛生的な取り扱い
  7. 排水及び廃棄物の衛生管理
  8. 使用水の衛生管理
  9. 苦情返品対応、緊急時対応、回収プログラム
  10. 自主検査 

 

 

一般的衛生管理プログラムをもとにルールを作成すると同時に、それらをきちんと守れるように従業員に周知徹底を図りましょう。たとえば従業員の衛生管理の項目では、身だしなみが重要です。「帽子から毛髪を出さない」「鼻を出さないようにマスクをする」などの当たり前のことを徹底します。

 

基本的には整理・整頓・清潔・清掃・しつけの5Sを意識するとよいでしょう。5Sを身につけることで、工場や機械設備の清掃から、用具の整理整頓を行えるようになり、衛生状態を維持することが可能です。

 

また、HACCPでは製造時や清掃の記録も重要。原料を受け入れた時の記録から始まり、加熱や調合、殺菌といった製造時、機械や用具を洗浄した時の記録を残すようにします。

 

HACCP取得までの流れと障壁

HACCPに対応した食品工場を構築する場合には、業界団体や地方自治体などが設けている三者認証を取得しましょう。

HACCP認証を取得できれば、衛生管理について一定の基準に達していることを証明できるため、自社のアピールにつながるからです。ここでは、取得までの流れと障壁について解説します。

HACCP取得までの一般的な流れ

HACCP取得までの流れは認証団体によって異なりますが、一般的な流れは以下の通りです。

1.HACCPチームの立ち上げ

HACCP認証を取得するための担当チームを立ち上げ、自社が取得することを表明します。

2.HACCPの理解

担当チーム、または従業員全員でHACCPの勉強を行います。HACCPのメリットや導入方法を知ることで、取得をスムーズにできます。

HACCPの7原則とは?3.一般的衛生プログラムの検討

HACCPの土台になる一般的衛生プログラムを作成します。HACCPを有効に機能させるために、一般的衛生プログラムは欠かせない要素です。施設設備の清掃箇所や方法、頻度、記録方法など、詳細にマニュアルを作ります。

4.作業標準手順(SOP)の作成

機械設備の操作手順を決めた作業標準手順(SOP)は、製品の品質と安全を守るうえで重要なものです。手順や目的、適用範囲を記した規定書を作成します。

5.衛生標準作業手順書(SSOP)の作成

食品衛生で重要視されているのが衛生標準作業手順書(SSOP)です。製造機器や関連設備を衛生的に管理し、異物混入などから製品を守ることを目的にしています。具体的には、機械の分解や洗浄方法を規定書にしますが、パッキンなどの樹脂部品と金属部品とでは洗浄方法が異なる点に注意が必要です。

6.HACCPプランの作成

HACCPの7原則をもとにHACCPプランを作成します。

 

▶️HACCPの7原則とは?

7.記録と保存方法の設定

HACCPを運用するために、記録やその保存方法などを設定します。

8.問題対応マニュアルの作成

クレーム処理の対応方法やリコールの手順書などを作成します。

9.HACCPマニュアルの作成

全従業員がHACCPを守れるようにマニュアルを作成します。

10.製品安全データシートの作成

食品工場では、機械の洗浄等で化学薬品を取り扱うことがあります。化学薬品の性質を理解し、安全に使うために取扱説明書として製品安全データシートを作成しましょう。

11.HACCP認証の事前審査

コンサルティングによって事前審査を行います。

12.HACCP認証の本審査

第三者認証機関によって本審査を行います。

HACCP対応の工場の現状

年々増加するHACCP導入の割合

どのくらいの食品業者がHACCPを導入しているのでしょうか。農林水産省による『食品製造業におけるHACCPに沿った衛生管理の導入状況実態調査結果』では、HACCPの導入状況が載っています。

(出展:農林水産省)

 

令和3年10月1日時点での食品製造業における導入割合は、「すべて又は一部の工場・工程(ライン)で導入している」と回答する事業所が61.9%でした。これは前年度に比べて19%以上増加しています。

 

直近3年間を見ても、義務化をきっかけにしてHACCPを導入する事業者は年々増加傾向にあります。令和元年は22.5%でしたが、令和2年は42.7%、そして令和3年が61.9%です。今後導入予定と回答している事業者も32.8%います。

導入の障壁は金銭的問題

『食品製造業におけるHACCPに沿った衛生管理の導入状況実態調査』では、導入に当たっての障壁は金銭的問題であることが分かります。

 

導入済みや検討中の事業者の中で、「施設・設備の整備に係る資金」が問題だと答えた事業者は全体の43.0%にのぼります。

HACCPの導入が未定と答えた事業者は、未定の理由としてコンサルタントや認証手数料などの「HACCP導入までに係る費用」(47.0%)と「HACCP導入後に係るモニタリングや記録管理コスト」(35.4%)を挙げています。

中小製造業は金銭的な負担が重くなりがちですが、実はコストを抑えながらHACCPを導入することは可能です。続いて導入の障壁を解決する手段について見ていきましょう。

HACCP取得の障壁を解決するには

HACCP認証を取得する障壁は主に金銭的問題であることが調査からも分かります。では、その問題を解決するにはどうすればよいでしょうか。コストを抑える方法について紹介します。

コンサルティング会社などを使わずに導入しコストを最小限にする

HACCP認証を取得する場合、審査費用がかかります。一例としてHACCP認証協会の審査費用は下記です。

 

 

審査登録費

〈新規審査〉

〈更新審査〉

中間審査

1年毎

(サーベランス)

・総合衛生管理

HACCP認証

(CODEX-HACCP)

300,000円(2年毎)

200,000円

・新調理

HACCP認証

(CODEX-HACCP)

300,000円(2年毎)

200,000円

・小規模施設

HACCP認証

(外食・レストランHACCP)

150,000円(1年毎)

 

食品製造業向けの「総合衛生管理HACCP認証」の審査費用は最低で300,000円です。加えて認証取得には多くの場合でコンサルティング会社を利用します。しかし、コンサルティング費用は少なくとも数十万円はかかり、中小の製造業には審査費用や設備投資にプラスしてコンサルティング費用も負担するのは厳しいでしょう。

自社だけで認証取得する場合には、HACCPに対する適切な知識と自己評価が大切です。北海道のHACCP認証では自己評価の基準として評価調書を用意しており、8段階中7段階以上の評価を獲得していれば申請可能です。そういった基準を参考に自社の現在の立ち位置を知るとよいでしょう。

デジタルツールを用いて管理コストを最小限にする

HACCP認証は取得時の初期費用だけでなく、導入後の運用コストも無視できません。HACCPを運用するためには、日々のモニタリングと、製造記録書や点検表などのチェックが必要ですが、紙での記録は抜け漏れや記載ミス、承認にかかる手間など多くのコストがネックになるでしょう。先述のように「HACCP導入後に係るモニタリングや記録管理コスト」を理由に導入を迷う事業者もいます。

しかし、モニタリングや記録を紙ではなく、デジタルツールを用いれば管理コストを最小限に抑えることが可能。たとえばタブレットを使うことによって、現場の製造記録などをデジタル化します。紙からタブレット端末による記録管理に変えることで、管理コストや保管コストが低減できるのです。

たとえば、群馬ミート株式会社は、紙のチェックシートで行っていた健康チェックや検品記録、細菌検査、拭取り検査、落下菌検査などの作業記録をタブレットでデジタル化。これにより年間に換算すれば10,000枚以上の用紙削減効果と、チェックシートの仕分けやファイリング、Excelへのデータ転記作業などの業務効率化が実現できました。

HACCP導入によって記録管理はより重要になりますが、管理コスト、保管コストの削減はデジタルツールで実現できるでしょう。

まとめ

 HACCPは基本的な衛生管理に加えて、重要管理点を設定することで食品事故を未然に防ぐ衛生管理手法です。義務化になったことで多くの事業者がHACCPを導入しており、HACCPに対応した食品工場にするケースも増えています。HACCP対応工場にするには「工場の立地」「施設の構造」「空調と換気」「従業員の教育」が重要な項目です。

また調査では第三者認証を取得するケースも増加傾向ですが、一部の事業者は導入にかかる費用や運用コストを理由に導入をためらっているのも事実。

認証取得のコストを抑えるには、コンサルを利用せず自社だけで取得を目指す方法があります。導入後のモニタリングや記録にかかる管理コストについては、紙ではなくデジタルによるペーパーレス化を推進することで低減できるでしょう。