国際的に通用する規格である「ISO」。ISOに認定されることは企業にとって「安心の企業」であることの証明になります。ISOの認定を受けるには、厳しい審査に通過しなければなりません。では一体どのような流れで審査が行われ、どのように認定取得を目指すのでしょうか?
スイスのジュネーブに本部をおく非政府機関の略称である「ISO」。製品やサービスに一定の規格を設けている機関です。認定されるための審査を説明する前に、ここではISOの発足についてや目指す目的、よく似たHACCPとの違い、更新審査と維持審査の違いについて説明します。
ISO(別名、国際標準化機構)は1947年2月にロンドンで発足されました。その歴史は長く、前身である「万国規格統一協会」まで遡ると90年以上にも及びます。
現在では世界で165の機関が加盟しており、日本の日本産業標準調査会(JISC)もそのひとつ。また加盟できる機関は1カ国につき1機関のみと定められています(2014年現在)。
ISOの活動は、特定のマークや製品サイズの国際規格を定めることがメイン。製品だけでなく、組織の品質や環境活動を管理する仕組みについての制定を行います。
国際間の取引を円滑にするため、さまざまな製品やサービスに一定の規格を設けているのがISOです。その目的は、世界中で同じ品質やレベルのものを提供すること。明確な基準をつくることによって、よりスムーズな国際間での取引が可能です。
特に非常口などのマークとその意味を世界共通にすることで、どこの国へ行っても意味が通じ、混乱を防ぐことができます。また製品に関しては、消費者が購買先を評価する基準にもなるでしょう。環境保全を目的とした「14001」などもあり、世界共通の基準で環境保護のための活動を行えるのです。
ISOとよく似たものに「HACCP」があります。こちらも国際基準を定める機関であるため、違いがわからないという方もいるのではないでしょうか?ISOとHACCPの最も異なる点は、定める規格の範囲。ISOがマークや農業、医薬品など多岐に渡るのに対し、HACCPは食品の製造や加工のみと規格する範囲が限られています。
他の相違点は、認定においての確認項目です。ISOは、どこの認定団体においても同一の確認項目があるのに対し、HACCPは認定団体によって項目に差があります。
ISO認定は、認定されたらおしまいというものではありません。ISOの認定には3年という有効期限があります。定期的に「更新審査」と「維持審査」を受け、認定の維持が必要です。ここでは更新審査と維持審査の違いについて説明します。
更新審査は3年に一度。初回の登録審査とほぼ同じ内容の審査を受けなければなりません。維持審査は年に1〜2回の頻度で行われます。初回の維持審査では、登録審査時に指摘した点が改善されているかなどを確認。ISOの認定が正しく機能していることをチェックします。
ここからは、ISO認定を受けるため必要な審査内容についての紹介です。チェックされる項目や審査に落ちてしまうポイント、効率的な対策方法の説明をします。チェック項目に沿った対策をしっかりと行いISO認定を受けてください。
ISOには目的別に複数の種類があり、それぞれチェックされる項目が異なります。そのため一概にこの点をチェックされるとは言い切れません。
前提として、何のためにISO認定を得たいのかが明確である必要があります。審査の際にも事前準備の際にもこの点が重要となるでしょう。
そしてISO認定の目的は「次世代に経営をつなげたい」「経営システムを導入したい」といった前向きな内容であることが望ましいです。全ての作業がこの目的に付随する対策を行っていきましょう。
次にISOの審査に落ちてしまうポイントを説明します。逆に言えば、この点さえクリアしていれば認定を得られる可能性は高くなるでしょう。審査に落ちる基準は以下の4つ。
・審査費用を支払わない
・内部監査が不十分
・マネジメントレビューを実施していない
・不適合や指摘を受けても改善が見られない
※目安は2週間以内
まとめると、払うべき費用を支払い、問題に対して早急に対処する、内部でもしっかりと体制を整えてレビューを怠らない、ということになります。企業として当たり前のことをしっかり行えているかが重要です。
ISO認定を受けるためには、さまざまな準備が必要となるでしょう。多くの企業が、ISO審査のために準備に時間をかけ、できるだけ指摘される点をなくそうと考えます。
しかし、頑張って指摘箇所をなくそうと試みても、残念ながらほとんどの企業で審査の際に指摘は受けます。
ただし、指摘を受けたことがマイナスとなって、審査に落ちるということはほとんどありません。重要なのは指摘箇所を迅速に改善すること。そのため指摘を受けない努力よりも、指摘を受けてから改善していく方法が効率的です。
ISO認定を受けるまでの流れを審査準備・本審査・認定後に分けて説明します。いつ、どのようなことが必要なのか、全体の流れを把握することで、スケジュールの調整や効率のよい段取りなどを考えられるでしょう。準備などは通常業務の間に行うので、短時間で効果的に行ってください。
ISO認定を目指すとなった場合、審査準備として初めに行うのは、認定範囲の特定です。企業全体で認定を得る場合もありますが、一部の事業だけ認定を受ける場合もあるでしょう。複数の事業や拠点がある場合は、どの事業や拠点を対象とするのか特定します。そしてスケジュール策定を行い、全体の予定を把握。
その後、組織体制を明確にします。経営層を明確にしたうえで、推進責任者を選定。推進責任者が現状の業務を洗い出し、各ISOの規格要求事項(チェック項目)とのギャップを分析します。ギャップ部分を仕組み化し、運用。内部監査を行い改善が出来ているか確認します。確認結果のレビューをしたら審査準備は完了です。
審査準備が完了したらいよいよ本審査。初めに書類審査を行い、ISOに基づき決めた仕組みが規格と合致しているか、ズレはないか確認します。このとき、次のステージ(第2段階の審査)に進む準備が整っているかも確認されるでしょう。
書類審査に通過したら、第2段階の審査。ISOの要求に沿った運用がされているかをチェックします。この時点で不適合指摘を受けた際には、速やかに改善を目指しましょう。その後第2段階の審査を通過すると、晴れてISO認定を受けられ、登録証が授与されます。
序盤でも説明しましたが、認定後にも定期的な審査を受ける必要があります。認定時に行われていた運用が正しくできているか、確認するための更新審査と維持審査を受けてください。
繰り返しになりますが、3年に1回の更新審査と年に1〜2回の維持審査を受け続けることで、ISO認定企業となります。せっかく認定されたのに失効になってしまったということがないよう、ISOから通知が届いた際にはしっかりと対策を行ってください。
ISO認定のための審査を行う機関は複数あります。審査機関にも得意不得意なジャンルがあり、それは機関によってさまざま。貴社が獲得したいISOの種類と審査機関の得意ジャンルが合致しておらず、見当違いな指摘を受けたというケースもあります。この場合、審査機関の変更はできるのでしょうか?
更新審査のタイミングでは審査機関を変更することができます。審査機関によって得意ジャンルと不得意ジャンルがある他にも、どの程度マネジメントシステムを審査するのかも、機関によってまちまち。また審査の際、外部で雇っているコンサルタントの立ち会いを許可している機関と許可していない機関もあります。
初回の登録審査の時点で、ピッタリの機関に依頼できれば問題ありませんが、初めてISO認定を取得するという場合は難しいでしょう。更新審査は、審査機関を見直すタイミングでもあります。
審査機関を選定する際には、まず審査機関自体が認定を受けているかどうかチェックしてく
ださい。認定を受けていない審査機関もあり、そのような機関は客観性や公平性が欠けている場合が多いです。
次に、認定を受けている機関であっても、どのジャンルの認定を受けているかチェックしましょう。認定を受けているジャンルがその機関の「得意ジャンル」と言えます。貴社が取得したいジャンルで認定を受けている審査機関を選んでください。ある程度候補が揃ったら、実際に面談してみるのがおすすめです。
ISOとは企業の経営システムに関する認定であるイメージが強いですが、飲食店におけるISOもあります。顧客に安心して食事ができることを保証する意味でも、一般企業だけでなく飲食店もISO認定を目指すべきでしょう。
飲食店が取得したいISOは「ISO22000」。フードチェーンに関する全ての企業が対象です。「ISO22000」は2020年6月に日本でも義務化されたHACCPの内容を網羅し、そのうえマネジメントシステムの要素が加味されています。
飲食店がISO22000の認定を受けることには、以下のようなメリットがあるので、ぜひ認定取得を目指しましょう。
・食品の安全な提供に対するリスク軽減
・業務の効率化や組織体制の強化が狙える
・業務継承を円滑にできる
・海外企業を含む取引要件の達成
・企業価値の向上
ISO認定を受けるための審査内容や流れ、対策方法について説明しました。認定を受けられれば、消費者に対してより安全な企業であることをアピールできます。
事前準備はもちろん、2回にわたる審査や更新審査、維持審査など、認定を得るまでには時間がかかります。しかしその分、業務自体の効率化や企業の信頼性を上げる効果も期待できるでしょう。ぜひ全体の流れを把握し適切な対策を行い、ISOの認定を得てください。