ISOは、世界レベルで同じ品質のものを提供することを目的とした国際的な基準です。ISOを取得することにより、顧客から信頼を得られたり高品質の商品を作る手順を明確化できたりします。実際のところ、ISOの取得に関心を抱く企業は少なくありません。
しかし、ISOを取得するためにはどれほどの費用や労力がかかるのか気になるでしょう。そこでこの記事では、ISOとは何か具体的に説明したうえで必要な費用やメリットについてまとめます。
ISOとは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)の略称です。ISOが制定した規格を「ISO規格」と呼び、世界中で同じ品質・同じレベルのものを提供できることを目指す国際的な基準とされています。
ISOは、スイスのジュネーブに本部を置いていますが、制定や改定については参加国である日本を含む世界162カ国(2018年時点)の投票によって決まるため、国際的な基準として認められているのでしょう。
ISO規格に基づいたものは、非常口のマークやカードのサイズ、ネジなどです。また、ISOは組織の品質活動や環境活動を管理するための仕組みについても制定しています。
品質マネジメントや環境マネジメントと呼ばれ、世界中で広く認知されているのでどこかで聞き覚えがあるかもしれません。品質マネジメントや環境マネジメントについては後ほど詳しく解説しましょう。
ISOを取得している企業は、公益財団法人である日本適合性認定協会のサイトにてチェックできます。具体的にはアサヒ株式会社やJR東日本コンサルタンツ株式会社、阪和電設株式会社などがISO 9001を取得中(2020年時点)です。
マネジメントシステムとは、経営目標を達成するための仕組みやルールのことです。本来は企業が独自に定めてよいものですが、ISOが提示した要求事項に従った企業はISO認証を取得できます。
マネジメントシステム規格はさまざまありますが、とりわけ広く認知されているのが「ISO 9001(品質マネジメントシステム規格)」と「ISO 14001(環境マネジメントシステム規格)」です。どのような規格なのか、説明していきましょう。
ISO 9001(品質マネジメントシステム規格)は、一貫した製品やサービスを提供して顧客満足を向上させることを目的とした国際規格です。
業種や業態を問わず、あらゆる組織が取得でき、業務の効率化や組織体制の強化を図ったり、法令順守の推進を行ったりします。
ISO 14001(環境マネジメントシステム規格)は、社会経済的ニーズに応えながら環境のことを配慮し、変化する環境状況に上手く対応する組織の枠組みに関する国際規格です。こちらも業種や業態を問わずに、あらゆる組織が利用および取得をしています。
環境リスクの低減による、企業価値の向上や省エネルギーによるコスト削減などの効果があるため、企業にとっても有益です。
ISOの取得に興味が出てきた人がいるかもしれません。これからISOを取得する担当者は、どのようなステップを踏めばよいのでしょうか?
大きく分けると、ISOについて一から学んで自社で取得するケースとISOコンサルタントを利用するケースが挙げられます。一般的に推奨されているのは、ISOコンサルタントを利用するケースですが、それぞれどのような特徴があるのかお伝えしましょう。
自社でISOを取得する場合、自社にISOに関する知見を持ち合わせている人材がいれば問題ないかもしれませんが、一から学んで取得するとなると大変苦労するでしょう。実際のところ、無駄の多いISOを生み出してしまうことがあります。
また、他業務と並行して行うことが多いと思いますが、難易度の高い仕事ですのでさまざまな支障が生じることもあるでしょう。
一方、ISOコンサルタントを利用する場合、専門家がその企業にとってベストなマネジメントシステムを構築してくれます。ISOコンサルタントにかかる費用の目安は月5万円からが一般的です。
ただし、ISOコンサルタントの選び方は注意しなければいけません。平たく言えば、よいコンサルタントを選ぶ必要があります。ISOコンサルタントは、自社の規模や業種に合ったアドバイスをしてくれる実績を持ったところを選びましょう。
審査に合格してISOを取得できても、構築したシステムが自社に合わなければ運用に苦戦します。効果的なシステムを構築することが大事です。
ISOを取得するためには、ISO審査機関による審査とそれにかかる費用が発生します。無料では取得できません。それでは、具体的な審査や費用について解説します。
ISOの取得審査費用としては、ISO登録料や文書審査料、現地審査料があり、規模によって異なりますが、かかる費用は30~100万円ほどが相場です。ただし、工場といった審査対象の場所によっては、プラスアルファで審査員の交通費と宿泊費がかかることがあります。
それに加えて、ISOコンサルタントを利用するなら依頼料がかかるので、中小企業にとっては大きな出費となるため気をつけましょう。
ISOには、1年ごとにきちんと運用ができているかチェックする定期審査があります。定期審査にかかる費用は、取得審査費用の1/3~2/3ほどが妥当なところです。
また、3年ごとにISO認証の更新審査を受けます。かかる費用は、企業の規模や業種によって異なりますが、取得審査費用の2/3ほどになることが多いです。
ISO認証を更新するメリットとしては、月日が経ってほころびが生じてきたマネジメントシステムを再構築できることが挙げられます。社会状況や自社内での変化などによって対応しなければいけないこともあるでしょう。
さらに、3年に一度の更新審査は、従業員の意識を変えるチャンスともいえます。日々の業務が忙しくて後回しにされがちなマネジメントシステムについて、今一度考えてみるよい機会です。
また、ISO認証を更新し続けることで、ホームページや名刺などでISO認証マークを示し続けることができます。当然のことながら、更新をやめてしまうと、ISO認証をはく奪されてしまうので注意しましょう。
以前まであったISO認証がなくなっていると「何かあったのだろうか?」と勘繰る顧客もいるかもしれませんので、そもそもISOを取得するかは熟考すべきことだといえます。
ISOの取得に関しては、主に企業がある場所を示す「地理的範囲」と「提供する製品やサービス」の適用範囲を決められます。
例えば、全国に製造工場を保有している企業の場合、すべての工場でISO認証を取得するのは費用も労力もかさみますが、一部の工場のみを適用範囲とすることが可能です。
また、さらに絞り込むなら、A工場で製造している製品Bのみ適用範囲とすることもできます。コスト面を考慮して適切な適用範囲を見定めたいところです。
「ISO取得には費用や労力がかかるな」とためらう気持ちが出てくる人もいるかもしれませんが、いくつかのメリットがあるのでISOを取得している企業は多いです。そのメリットをお伝えします。
ISOの大きなメリットとして、PDCAサイクルの仕組みを作って回せることが挙げられます。PDCAサイクルとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)を繰り返し行うことです。
組織としてのルールを明確に決めてそのルールを守ることで作業の標準化を行います。時間や作業工程の無駄を省くきっかけになるでしょう。誰が作っても同じ高品質の製品やサービスを提供します。
また、作業工程やルールが明確であれば、仮に顧客からの問い合わせやクレームがあっても適切に対処できるのではないでしょうか。ルールが存在しない、あるいは存在しても守られていない無秩序な組織は壊れやすいです。
ISOを取得すると、ISO認証マークをホームページや名刺に付けられるので公に知られることになります。ISOを取得することで顧客からの信頼を得られることがあるでしょう。営業がしやすくなったということもあるようです。
さまざまある企業の中には、ISOを取得していない企業とは取引を行わないというところもあるようです。ISOを取得していないことにより、新規顧客の獲得機会を逃すことになるのは大きな損失だといえるでしょう。
ISOは国際規格ですので、国内外問わずにアピールできます。これから海外進出を目指そうとしている企業にとっては、メリットが大きいのではないでしょうか。
企業は、変動することが多い人員について考えなければいけません。誰が作っても高品質の製品やサービスを実現するための手順を明確化するのです。
工場では、正社員ではなく派遣社員やアルバイトが作業を行っていることも多いでしょう。そういった人員が入れ替わる可能性が高い業務であっても、高品質を維持できないと安定した供給は難しいです。高品質の製品やサービスを作る正しい手順を浸透させるメリットがあります。
何かトラブルが起こったとき、責任の所在があいまいで、過失の押し付け合いになることもあります。部下に責任を押し付けるという行為が起こることもあるでしょう。
ISOには、業務の責任や権限を明確にするメリットがあります。作業ルールを詳細に定めているからこそ、誰の管理下にあるか判断できるのです。責任が明確化すると社員の不信感を軽減させ、一人ひとりの責任感を向上させます。
ISOは、世界中で取得されている国際規格で、取得するメリットが存分にあります。とりわけ、国際的な取引をスムーズに行うためには何かしらの規格があるとよいでしょう。
たしかに、費用や労力がかかりますが、時にはISOコンサルタントの力を借りてISO取得を検討してみてはいかがでしょうか。