ISOとは、スイスのジュネーブに本部を置く国際標準化機構(International Organization for Standardization)の略称です。国際的に通用する規格を制定しています。なかでも、ISO9000シリーズは品質マネジメントシステムに関する国際規格群です。今回は、ISO9000シリーズの各規格や導入の目的・効果について解説します。製品やサービスの品質を向上させたい方にとって必見の内容です。
ISO規格は、国際的な取引をスムーズにするための基準。その内容は、2014年時点での参加国である日本を含む世界165ヵ国の投票によって決められています。身近なものでいうと、非常口のマークやカードのサイズなどがありますが、ISO規格の中でもISO9000シリーズのことはご存じでしょうか。ISO9000シリーズの概要を解説します。
ISO9000シリーズとは、ISOが定めた品質マネジメントシステムに関する国際規格群のことです。この規格に基づいて製品やサービスを作ると、自社内で品質管理の仕組みを自己評価したり、第三者が品質マネジメントの状況を審査したりできます。ISO9000シリーズが求める品質マネジメントシステムは、明確な方針・責任・権限のもとで業務プロセスを文書化し、それらを継続的に実行・改善するものです。
顧客に安心・安全な製品やサービスを提供するためには、最終チェックだけおこなえばよいというものではありません。材料の調達や製造の過程などが適切におこなわれているかチェックしなければいけないでしょう。世界的に通用する品質マネジメントシステムの基準がISO9000シリーズです。
さて、品質マネジメントシステムという言葉が出ていますが、その意味はご存じでしょうか。品質マネジメントシステムとは、品質に関して組織を指揮し、管理するためのマネジメントシステムで、QMS(Quality Management System)と呼ばれることもあります。品質マネジメントシステムでは、PDCAサイクルを回すことで継続的に改善することが重要です。顧客が期待するレベルの品質を維持することで顧客満足度を上げられるでしょう。高い顧客満足度を継続できなければ経営し続けられません。品質マネジメントシステムは、会社経営にとって必要不可欠な観点です。
ISO9000シリーズは、5つのISO規格の総称です。なかでも重要なのが、要求事項を規定しているISO9001です。ISO9001に軸をおいて、それぞれの役割を解説します。
ISO9000-1は、品質マネジメントシステムにおける基本や用語などを規定しているものです。ISO9000シリーズの特徴は、企業の品質についての方針を定め、品質に関わる責任と権限を明確にし、それらを文書化するところ。そして、現場が文書化した通りに実行していることを記録して証明することで顧客が求める品質を担保していることをいつでも開示できるようにします。その基本や用語をまとめているのが、ISO9000-1です。
ISO9001は、品質マネジメントシステムの構築や運用をするための要求事項を規定しているもの。最も普及しているマネジメントシステム規格であり、世界で170ヵ国以上、100万以上の組織が利用しています。一貫した製品・サービスの提供と顧客満足度の向上を要求事項としてまとめているため、詳しくみていきましょう。
ISOにおける要求事項とは、ISO認証を取得した企業が実行すべき基本要件です。ISO9001では、品質マネジメントシステムの構築・運用に欠かせない要素として下記の7項目が定められています。
なかでも、2015年の規格改定で変わった点に注目しましょう。リスクマネジメントの要求が新たに追加されました。考えられる不安要素やチャンスを想定し、それらに対してどのように取り組むかということを定める必要があります。リスクを避けるだけでなく、企業にとってプラスの機会をどのように活かすのか考えなければいけません。
また、各作業はどの部品を材料にしておこない、結果としてどのようなものができるのかということを明文化することが求められています。プロセスの情報は都度管理しつつ定期的に評価をおこない、改善しなければいけません。プロセスの明文化と改善は、製品やサービスの品質を左右する根本的な要素です。
▶︎ISO9001とは?認証取得までの流れを簡単にわかりやすく解説
ISO9002は、品質やサービスにおける品質保証モデル。1994年版では存在していましたが、2000年の改定によって現在のISO9001に吸収されました。
ISO9003は、最終チェックだけで問題ないとみなされた製品・サービスにのみ該当する規格です。設計や製造、使用方法などが長期間にわたって確立されているため、例外的に最終チェックのみでよいとされています。ISO9003も、2000年の改定によってISO9001に吸収されました。
ISO9004-1は、品質マネジメントシステムのパフォーマンスを改善するための規格です。ISO9001は、製品・サービスの品質管理に重きを置いているのに対し、ISO9004は組織の品質経営について書かれています。しかし、ISO9004-1はあくまで指針を示すものであり、認証規格ではありません。ISO9004とISO9001は一緒に使用することを推奨しています。
ここで、ISO9000シリーズを導入する目的や効果について触れます。どのようなメリットを享受できるのでしょうか。
まず、注目したいのが社会的信頼の獲得です。第三者に客観的な事実を示せるため、顧客からの信頼を得やすくなります。なかには、ISO認証を取引する必須条件として掲げている企業もあるでしょう。とりわけ、取引実績が少ない企業にとって、ISO9000シリーズの取得は権威を示す証となります。導入するために費用や労力がかかりますが、それに見合う効果は十分にあるでしょう。
また、ISO9000シリーズを導入するためには、作業手順の明確化をおこなうため、問題点の発見や解決につなげられます。作業員の入れ替わりが多い仕事であっても、同じような生産性を上げることが可能でしょう。
ISO9000シリーズに限らず、ISOは認証され続けることが重要です。一度取得したのにもかかわらず、失ってしまえば信頼が揺らぐことになるでしょう。継続的な努力を怠らないような体制を築く原動力となります。
ISO9000シリーズは、製品・サービスにおいて正しく実施されるべき品質マネジメントシステムを構築・運用するための規格です。継続的な品質改善をおこなっておくことで社会的信頼を獲得し、問題点の発見や解決を図れます。
必要であれば、ISO9001認証の取得を検討してみてはいかがでしょうか。たしかにコストや労力がかかりますが、得られる効果は大きいです。また、規格内容の変更がおこなわれることがあるため、常に最新の情報チェックするようにしましょう。