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課題達成型QCストーリーとは?攻め所や方策立案などの具体的な進め方を紹介

作成者: カミナシ編集部|2024.09.17

 

 

QCストーリーとは、品質管理における問題や課題を合理的に解決へ導くためのプロセスです。特に「課題達成型QCストーリー」は、理想的な状態を目指すためのプロセスを指します。課題達成型QCストーリーは明確な手順が示されており、その手順に従って進めると効率的な目標達成が可能です。

 

本記事では、課題達成型QCストーリーの概要とその具体的な進め方を解説します。課題達成型QCストーリーを導入して自社製品の品質を向上させたい、自社の問題解決能力を高めたいと考えている方はぜひ参考にしてください。

課題達成型QCストーリーとは

課題達成型QCストーリーとは、課題に対する攻め所を見つけて目標を設定し、これまでのやり方とは異なるアプローチで理想とする姿(ありたい姿)を目指す方法です。

 

ここで挙げている課題とは、理想とする姿になるために解消・解決しなければいけないこと(=現状との差分)を指します。根本的な原因をなくすために解消することや、好ましくない結果(事態や状況)の解決をすることで、理想する姿に近づく/なることができます。

課題達成型QCストーリーと問題解決型QCストーリーの違い

課題達成型QCストーリーと問題解決型QCストーリーは、目標達成に向けた方策を講じて理想とする姿(ありたい姿)を目指すのか、現在生じている問題について対策を立て、あるべき姿を目指すのかという点が違います。

 

問題解決型QCストーリーとは、すでに発生している問題に対して調査・分析を行い、原因を突き止めて対策を立てることで解決へと導く手法です。

 

例えば、不良品の発生率が昨年よりも高いことが問題である場合、不良品の発生率を低減するための原因を突き止めて、それを解消するための方法を見つけ、実行、結果の振り返りをするのが問題解決型QCストーリーです。

 

 

 

一方で、課題達成型QCストーリーは、理想とする姿となれるような目標を設定して方針や計画を立て、従来の方法とは異なるアプローチで目標達成を目指す手法です。

 

例えば、作業の効率化を目標としたときに、現在かかっている作業時間と理想とする作業時間の差分を把握し、いくつかある攻め所(改善点)を明らかにして、もっとも影響度の高い改善策を実施、振り返りを行うのが課題達成型QCストーリーです。

 

課題達成型QCストーリーの目標達成は緊急性を伴わず、長期的に取り組まれるケースがほとんどです。課題達成型QCストーリーは、ゼロ地点にある状態をプラス(ありたい姿)へ導く手法といえます。

 

▶ QCストーリーの概要は以下の記事で詳細に解説しています。

【図解あり】QCストーリーとは?3つの型と進め方をわかりやすく解説

課題達成型QCストーリーの具体的な進め方

課題達成型QCストーリーには8つのステップがあり、これらのステップに順に取り組むことで目標の達成を目指します。ここからは、8つのステップそれぞれについて詳しく解説します。

1.テーマの設定

テーマの設定とは、取り組むべき課題を洗い出すことです。ここで提示される課題は、企業や組織の成長につながるものであることが望まれます。

 

テーマを設定する際、まずはデータを収集して現状を把握し、さまざまな面から検討して課題を洗い出しましょう。そして、集めた課題に対して緊急性や重要性の高さなどを評価し、優先順位を決めて取り組むテーマを設定します。

 

注意すべきは、具体性のあるテーマにすることです。例えば、「不良品を減らす」では具体性に欠けるため、「主力製品である〇〇(製品名)の不良品発生率を◯%低減する」や「包装工程での不良品率を◯%に低減する」とすると、メンバー同士で共通認識を持ちやすくなります。

 

加えて、テーマを設定した理由や背景も記録に残しておくと、テーマに対する理解が深まり、目的意識も明確になるでしょう。

2.攻め所と目標の設定

攻め所の設定とは、テーマに対するアプローチの方向性を決めることです。アプローチの方向性を決めるには、まず理想とする姿(ありたい姿)を設定し、現状の姿と理想の姿を比較して差分(ギャップ)を把握します。その差分をもとに、策を講じるべき方向性を検討します。

 

このとき、複数人で議論して多角的な視点からアプローチの方向性を検討することがおすすめです。例えば、「包装工程での不良品率を◯%に低減する」というテーマでも、製造手順の効率化、人員の適正配置、検品精度の向上などさまざまなアプローチがあります。特性要因図などを用いて、幅広い視点で考え、より効果的なアプローチが見つけましょう。

 

また、方向性を決める際は、課題達成に寄与できる可能性が高いものを選ぶことがポイントです。

 

アプローチすべき方向性が定まれば、具体的な目標に落とし込みます。目標の設定では、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように・どれだけ・いくら)を意識することが大切です。数値を含めた具体的な目標を設定すると、取り組みの効果が明確になり、評価しやすくなります。

 

例えば、パッケージの不良品発生率を改善したい場合、「パッケージへの封入工程の見直しと定期的な社員教育により、6ヶ月以内に不良品発生率を6%から3%に低減する」のように具体的な目標を設定しましょう。この目標に対して不良品発生率が2%まで低減したなら、目標を達成できたとすぐに判断できます。

3.方策の立案

方策の立案とは、ステップ2の「攻め所と目標の設定」で定めた目標を達成するための方策を立てることです。方策を立てるときは、ブレーンストーミングなどを行い、できる限り多くのアイデアを出すことがポイントです。

 

取り組んでいた方策で目標達成が見込めない場合、あらかじめ複数のアイデアを出していれば、次に効果が期待できそうな方策へスムーズに移行できます。まずは多くのアイデアを列挙し、そのあとで目標との関連性の高さに着目して絞り込みましょう。

 

また、目標達成に対する効果が高いと思われる方策から取り組むことが大切です。このときに、すぐに実施できるものや取り組みやすいものなどから手をつけると、効果が低く目標達成が困難な場合があります。そのため、方策のアイデアは一点を深く掘り下げるのではなく、さまざまな角度から提案するとよいでしょう。

 

例えば、包装工程での不良品発生を防ぐには、包装資材の保管方法や取り扱い方の見直し、包装機械の精度向上、従業員の教育、検品の強化など数多くの方法があります。できるだけ多くの方策を挙げ、高い効果が期待できるものから取り組みましょう。

4.成功シナリオの追求

成功シナリオの追求とは、ステップ3の「方策の立案」で効果が高いとされた方策の中から、実際に取り組むためのシナリオ(具体的な実行案)を検討することです。このステップでは、選んだ方策を実施するための現実的な方法を考えます。そのため、職場環境や人員などの制約条件も加味して考えることが大切です。

 

検討したシナリオは、期待される効果を数値で予測し、実施した場合の障害や悪影響を見越して事前防止策も検討します。さらにシナリオのメリット・デメリットも考慮して、実施する成功シナリオを決定します。

 

成功シナリオを決める際は、期待される効果の大きさ、障害や悪影響の程度、メリット・デメリット、実現性、コストなどから総合的に判断することが大切です。

 

例えば、食品製造における「製品の保存性を高めるために包装を改善する」というシナリオでは、延長できる賞味期限の日数が期待される効果といえます。包装材にかかるコストの増加がデメリットですが、賞味期限の延長による顧客満足度の向上というメリットが得られます。これらを総合的に評価して、実施するシナリオを決めましょう。

 

成功シナリオの選定は、項目ごとに得点を付けて考えるのがおすすめです。効果、障害、実現性などの項目を設定し、それぞれに×(0点)、△(1点)、◯(2点)、◎(3点)と点数を付けます。×が1個でも付いたシナリオは不採用とし、総得点が高いシナリオから採用すると、取り組みの成功率を高められるでしょう。

5.成功シナリオの実施

成功シナリオの実施とは、選定したシナリオに現場で取り組むことです。シナリオをもとに計画を立て、内容を現場の従業員へ事前に落とし込んでから取り組みます。

 

シナリオを実施する際は現場の状況をメンバーに逐次報告し、進捗を共有しましょう。メンバー全員が状況を把握できていれば、トラブル発生時も迅速な対応が可能です。また、上司への報告も忘れずに行ないましょう。

6.効果の確認

効果の確認とは、成功シナリオを実施した結果とステップ2で設定した目標と比較し、達成度合いを確認することです。目標達成に至らなければ、原因を分析して成功シナリオを見直す必要があります。場合によっては方策や目標設定、攻め所の設定までさかのぼって検討し直しましょう。

 

目標が達成できなくても問題はありません。重要なのは、PDCAサイクルを活用して改善を続けることです。

 

なお、シナリオを実施した効果は数値以外に現れている場合があります。例えば、製造工程が効率化されたことで従業員の負担が軽減された、従業員の衛生管理への意識が高まり清掃が徹底されるようになったなどの効果が見られるかもしれません。

 

数値以外の効果に目を向けると、QC活動に継続的に取り組もうとするメンバーの意欲向上につながります。さらに、目標達成に直接影響しない効果でも、広い視野で考えると品質の向上に寄与しているといえるでしょう。

7.標準化と管理の定着

標準化と管理の定着とは、一定の効果が認められた方策を現場に浸透させることです。目標に対して効果がある方策が判明しても、その取り組みを継続できず、もとの状態に戻ってしまっては意味がありません。効果的な方策を標準化し、現場の業務に定着させましょう。

 

標準化の具体的な方法は、まず方策を取り入れた作業手順書やマニュアルを作成します。さらに、方策が効果を発揮していることを確認するための管理方法も定めます。標準化の体制が整ったら、現場の従業員や管理者に新しい手順書やマニュアル、管理方法を説明して周知徹底しましょう。従業員への教育やトレーニングを行うのも効果的です。

 

現場での運用を開始したあとも、継続して取り組まれているか、効果がきちんと発揮されているかを確認してください。

8.振り返りと反省

振り返りと反省とは、QC活動全体を省みて、次の活動に活かすためによかった点や改善すべき点などを明らかにすることです。メンバー全員が集まり、活動の各プロセスのつながりを振り返り、改善が必要な事柄については対策を検討します。

 

例えば、標準化のプロセスで従業員への定着に手間取ったのであれば、マニュアルの形式を見直す、現場でのトレーニングを実施するなどの改善案が考えられます。次のQC活動がよりよいものになるよう、反省をもとにPDCAサイクルを回しましょう。

課題達成型QCストーリーを使って、自社の強みを最大限活かそう

QCストーリーとは、品質管理における問題解決を目指すプロセスです。特に、理想とする姿(ありたい姿)に向かうために方策を検討し、目標達成を目指すプロセスを課題達成型QCストーリーと呼びます。

 

課題達成型QCストーリーには8つのステップがあり、このステップを順に踏むことで効率的かつ合理的に目標を達成できます。さらに、QCストーリー全体を通してPDCAサイクルを回すと、企業や組織の課題解決能力も高まるでしょう。

 

課題達成型QCストーリーは、品質管理のレベルアップに高い効果が期待できる取り組みです。的確な攻め所や目標を設定し、成功シナリオを追求して標準化までつなげ、自社の強みを最大化させましょう。