外食業における特定技能とは?即戦力の外国人労働者を雇用する方法を紹介

外食業は深刻な人材不足に悩まされており、飲食店の8割が人材不足というデータもあるほど。このような状況を踏まえ、2019年に創設されたのが特定技能の在留資格です。

 

この記事では、外食業における特定技能の詳細や、即戦力になる外国人労働者を雇用する方法を紹介します。

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外食業において特定技能がもうけられた背景

 

特定技能の在留資格を持つ外国人労働者を雇用できるのは、特定産業分野の14種類です。その一つが外食業。ここでは、外食業において特定技能がもうけられた背景はどのようなものなのか見ていきましょう。

特に人材不足が深刻な外食業界

外食業の人手不足は深刻で、国は生産性の向上や国内人材の確保などの取り組みを実施するものの、このままでは人手不足が解消されないと予測しています。

 

外食業の有効求人倍率は全産業の平均に比べて極めて高い状態。2023年には290,000人の不足が見込まれています。

 

特定産業分野では介護業に次ぐ高い数字で、このような深刻な事態を少しでも改善するために創設されたのが、特定技能の在留資格を持つ外国人労働者の受け入れです。

外国人材の受け入れ状況

現在、外食業で働く外国人労働者は約184,000人で、永住者を除いて7割近くが留学生などの資格外活動です。

 

今後待たれる特定技能の在留資格を持つ外国人労働者の受け入れは、2919年から5年間で53,000人を予定。先述したように外食業の人材不足は290,000人という数字が挙げられており、外国人労働者の受け入れと生産性の向上などの取り組みを行なっても、不足を補うことは難しいと言えそうです。

求められる人材

外食業に求められる人材は、専門性・技能を生かし即戦力として従事できる外国人です。

 

また、農林水産省は必要とされる人材について「食品衛生に配慮した飲⾷物の取扱い、調理および給仕にいたる⼀連の業務を担い、管理することができる知識・技能を有する⼈材」とし、2020年義務化されたHACCPに基づく食品衛生について正しい知識を身につけるなどの必要とされる知識・技能を挙げています。

外食業における特定技能の資格で受け入れる外国人労働者の条件

 

特定技能の資格を取得するには、2つの方法があります。

技能水準と日本語能力水準の試験に合格した者

1つ目は、技能水準と日本語水準の試験に合格することです。

 

  • 技能試験:外食業技能測定試験
  • 日本語試験:日本語能力試験(JPLT)N4以上

 

外食業技能測定試験は衛生管理、飲食物調理、接客全般の項目に分かれ、学科と実技の試験が行われます。日本語試験は日常生活や業務に支障のないくらいの日本語能力があるかを確認するための試験です。

「医療・福祉施設給⾷製造」の第2号技能実習を修了した者

2つ目は、技能実習生からの移行です。「医療・福祉施設給食製造」の第2号技能実習を修了した者は、無試験で外食業における特定技能の資格を取得できます。

 

技能実習修了生は、外食業の業務で必要とされる一定の専門性・技能があり、即戦力になれる知識や経験をもっていると評価されるからです。

 

こちらの技能実習は2018年に職種追加されたため、現時点(2020年9月)では、修了者はまだいません。しかし、特定技能の資格を取得する外国人労働者は技能実習からの移行が多く、外食業でも今後の増加が期待できるでしょう。

外食業における特定技能の資格を持つ外国人労働者が従事できる業務

 

外食業における特定技能の資格を持つ外国人労働者は、雇用されたあと具体的にどのような業務に従事できるのでしょうか?従事できる業務、できない業務について紹介しましょう。

飲食物調理や接客などの業務

外国人労働者は、外食業全般の業務に従事することができます。具体的には、飲食物の調理や接客、店舗管理などです。

 

さらに、付随的業務を行うのも問題はありません。付随的業務には店舗での物品の販売や、店舗で売るものの原材料になる農林⽔産物などの⽣産などが挙げられます。

 

ただし、付随業務はあくまで主たる業務を行う前提のため、清掃や皿洗いだけに従事するなど、調理や接客をまったく行わないことは許されません。

従事できない業務

一方、外国人労働者は⾵俗営業法に規定する「⾵俗営業」「性⾵俗関連特殊営業」を営む営業所には就労できません。また、同法に規定する「接待」を行うのも禁止されています。

雇用主の要件と採用までの流れ

 

外食業における特定技能の資格を取得した外国人労働者は、どの事業者でも雇用できるわけではなく、受け入れる雇用主には条件があります。ここでは雇用主の条件と、外国人労働者を採用するまでの流れについて見ていきましょう。

受入れ機関になる条件

外国人労働者を雇う企業や個人事業主などを「受入れ機関」と呼び、一定の条件と義務が課せられています。

 

  1. 「外食分野における特定技能協議会」に加入する
  2. 直接雇用が原則で、報酬は日本人と同等以上など雇用契約が適切であること
  3. 5年以内に出入国・労働法令違反がないなど、受入れ機関自体が適切であること
  4. 外国人が理解できる言語で支援するなど、適切な支援体制が整っていること
  5. 日本語教育、住居確保など適切な支援計画を作成していること

 

「外食分野における特定技能協議会」とは農林水産省が外食業分野と共同で設置したもので、特定技能の在留資格を持つ外国人労働者の円滑な受け入れのために作られた組織です。

 

外国人労働者を受け入れる事業者は、最初の受け入れから4ヶ月以内に必ず外食業分野特定技能協議会に加入することが必要になります。

 

さらに、雇用主は次の義務を果たさなければなりません。

  1. 報酬を適切に支払うなど、雇用契約を確実に履行する
  2. 支援計画を策定し、支援を適切に実施する
  3. 出入国在留管理庁への各種届出を行う

「支援計画の策定」と「ビザの申請」を行う

採用するまでの流れは、基本的に日本人の場合と変わりません。募集を行い、採用になれば雇用契約を締結します。その後に「1号特定技能外国人支援計画」を作成。写しを外国人労働者に交付します。

 

支援計画は、受け入れ機関である雇用主が行うべき次にあげる9つの支援について具体的に記載するものです。

 

  • 外国人労働者が理解できる言語により入国前の生活ガイダンスの提供
  • 入国時の空港等への送迎
  • 保証人になるなど住宅確保に向けた支援の実施
  • 在留中の生活オリエンテーションの実施
  • 生活のための日本語習得の支援
  • 外国人労働者の相談や苦情への対応
  • 履行しなければならない各種行政手続についての情報提供
  • 日本人との交流の促進に係る支援
  • 外国人が理由なく雇用契約を解除される場合に他の雇用契約を結ぶための支援

 

支援計画の策定とともに、ビザの申請もおこないます。取得には1ヶ月半程度かかり、取得後に策定した支援を開始。その後、就労開始という流れになります。

登録支援機関への委託も可能

支援計画の策定と実施は、すべて登録支援機関に委託することもできます。登録支援機関とは、雇用主から委託を受け、外国人労働者への支援を実施する組織です。

 

支援機関になっているのは業界団体や法人、社会保険労務士などさまざま。支援を委託することで、雇用主は外国人労働者の支援を実施する義務を免れることができます。

まとめ

 

深刻な人材不足に悩む外食業にとって、特定技能の在留資格を持つ外国人労働者の受け入れは朗報です。

 

ただし、受け入れ人数は不足人数を十分に満たすとは言えません。新型コロナウイルスの影響もあり、法律施行後の受け入れ数も伸び悩んでいます。今後、制度の体制が整い、特定技能の資格を取得した外国人労働者が少しでも多く増えることが期待されるでしょう。

 

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