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ISOとは?主な規格一覧とデメリット、認証取得の方法をわかりやすく解説

作成者: カミナシ編集部|2020.11.29

ISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)とは、スイスのジュネーブに本部を置く非政府機関・非営利組織です。ISOが定める世界共通の標準規格(ISO規格)を取得することで、製品・サービスの品質が向上し、顧客からの信頼度や売上UPに繋げられます。

 

しかし、ISOに対する認識が薄いまま取得に向けて動き出しても、時間や費用面で余計なコストが掛かり、業務改善に伴う現場の負担も大きくなるでしょう。

 

本記事では、ISOに関する基礎知識やメリット・デメリット、ISO取得までの流れを解説します。製品やサービスの品質を継続的に向上させ、事業拡大を図りたい方は、ぜひ参考にしてください。

 

ISO・ISO規格とは

ISOとは、1947年にスイスで設立された非営利組織のことで、同じ品質の製品やサービスを世界中で提供するために、国際的な規格となるISO規格を制定しています。

 

ISOの目的は、製品やサービスに関する各国共通の規格を設けて標準化を進め、国際取引をスムーズに行うことです。ISOの加盟国は2023年時点で169か国となっており、日本からは経済産業省が事務局を務める日本産業標準調査会(JISC:Japanese Industrial Standards Committee、旧:日本工業標準調査会)が加盟しています。

 

ISOが定めるISO規格は「ISO7010」や「ISO9001」のように、製品・サービスや規格の内容ごとに番号が割り振られているのが特徴です。

 

ISO規格を取得すると、自社の製品・サービスが国際的な基準に達していることの証明になり、信頼獲得や売上増加に繋がります。ただし、ISO規格を取得するためには、要求事項を満たしているかを判断する審査を通過しなければなりません。

ISO規格はモノ規格とマネジメント規格の2種類から成り立つ

ISO規格はモノ規格とマネジメントシステム規格の2種類に大きく分けられます。

 

モノ規格とは、製品の品質や性能に関する規格です。身近な例としては、以下の製品が挙げられます。

 

  • 非常口のマーク(ISO7010)
  • ネジ(ISO68)
  • クレジットカードのサイズ(ISO/IEC7810)
  • 衣服のサイズ表記(ISO3636、ISO3637など)
  • 写真のフィルム感度(ISO5800)

 

モノ規格がなければ、クレジットカードのサイズが異なるために国際取引が成立しなかったり、ネジの規格が合わず外国製品を使えなかったりするなどの問題が生じます。しかしISOが定めたモノ規格(製品に関する国際的な基準)に沿って、各企業が製品を作れば、全世界で一定の品質や性能が保たれます。

 

一方でマネジメントシステム規格とは、企業における品質管理や環境活動など社内の仕組みに関する規格です。マネジメントシステム規格には、主に品質向上や業務効率化に必要なルールや手順が定められています。

 

ISOのマネジメントシステム規格を取得すると、企業が国際基準の経営体制を構築していることを証明できるため、国内外の信頼や競争力を高められます。また、ISO規格に沿ったマネジメントシステムを導入・運用することで、製品やサービスの品質や性能を継続的に伸ばせるでしょう。

ISO規格の種類/主な規格一覧

主なISO規格(マネジメント規格)の名称や対象とするもの、企画の目的を一覧にしました。中でも、品質マネジメントシステム(ISO9001)と環境マネジメントシステム(ISO14001)の2つは汎用性が高いため、様々な企業で取得が進んでいます。

 

ISO規格

名称

対象

目的

ISO9001

品質マネジメントシステム

製品・サービスの品質を継続的に向上させる組織運営について

一貫した製品・サービスの提供と顧客満足の向上

ISO14001

環境マネジメントシステム

組織が取り巻く活動における環境リスクの分析・低減について

企業・組織の自主的な環境活動を推進

ISO/IEC27001

情報セキュリティマネジメントシステム

情報の機密性・完全性・可用性を適切に管理するためのセキュリティ対策について

情報漏洩や不正アクセスなどのリスクから情報を保護

ISO22000

食品安全マネジメントシステム

HACCP(食品安全管理のガイドライン)に基づく食品衛生管理手法について

食品安全のリスク低減や安全な食品の提供

ISO/IEC27017

クラウドサービスセキュリティマネジメントシステム

クラウドサービスにおける情報セキュリティについて

個人情報を保護するクラウドセキュリティの強化

ISO22301

事業継続マネジメントシステム

企業・組織を継続するための事業計画について

非常事態の発生時も事業を継続・早期復旧できる体制の構築

ISO/IEC17025

試験所および校正機関のマネジメントシステム

試験所・校正機関における製品や部品、材料などの測定・校正について

試験所・校正機関のける測定や校正の信頼性を担保

ISO50001

エネルギーマネジメントシステム

エネルギーパフォーマンスの継続的改善に向けた業務運営について

エネルギーコストや温室効果ガスの排出量を削減

ISO39001

道路交通安全マネジメントシステム

道路交通安全を継続的に管理するための体制について

道路交通事故の発生による死者や重症者の撲滅

ISO13485

医療機器の品質マネジメントシステム

医療機器に関する国際的な法令の遵守について

医療機器の安全性と品質維持

ISO55001

アセットマネジメントシステム

企業や組織にとって価値のある資産(社会インフラ・土地・設備など)の効率的な管理や運営について

中長期的な視点における最大の資産価値の創造

ISO21001

教育組織マネジメントシステム

学習塾や予備校などの教育組織における学習サービスの提供について

利用者のニーズを把握し、高度かつ公平な教育を提供

主なISO規格とその対象、詳細の一覧

 

ISO規格の取得を検討する際は、上記を参考に規格ごとの違いを把握した上で、顧客の要求や自社の目的に合ったものを選ぶことが必要です。

 

ISO規格取得のメリット

ISO規格を取得するメリットは、主に以下の2点です。

 

  • 国際的な規格を取得することによる信頼向上&売上UPの可能性
  • 規格の取得・運用に伴い、自社製品の品質向上

 

ISO規格の取得によって国際基準に適合した企業だと認められることで、社会的信頼が高まり品質・売上UPにも大きく寄与します。

国際的な規格を取得することによる信頼向上&売上UPの可能性

国際的な規格であるISO規格は、公共事業の入札時における制限になったり、加点の対象になったりします。また、国内の大手企業や海外企業などでは、ISO規格の取得を取引の条件として掲げる場合もあります。

 

そのためISO規格を取得して、企業としての価値を証明できると、新規取引先開拓や既存顧客から信頼され、売上UPが期待できます。

 

実際に、カメヤ食品株式会社では食品安全マネジメントシステム(ISO22000)を取得し、海外への展開を徐々に進めています。同社では国内の人口減少や高齢化に伴い、海外進出を目指していましたが、そのためには企業や製品の信頼を高める必要がありました。そこで、海外企業に安心して取引してもらうために、ISO規格の一つであるISO22000の取得に踏み切りました。ISO規格の取得後は顧客に商品を求められる機会が増え、順調に売上も伸ばしています。

規格の取得・運用に伴い、自社製品の品質向上

ISO規格には、それぞれの目的を達成するために遵守する「要求事項」が定められています。そして、ISO規格を取得するためには要求事項を満たし、審査を通過する必要があります。ISO規格の取得後も定期的な審査があるため、規格を持ち続けるにはシステムを運用しながら継続的に要求事項を満たし、日々改善しなければなりません。

 

このようにISO規格を取得し、運用するには、要求事項に沿って継続的な見直しや改善をしなければいけません。その結果、品質の維持、向上に繋がります。

 

ISO規格の要求事項は、主にPDCAサイクルをもとに構成されています。PDCAサイクルとは、Plan(計画)からDo(計画の実施)、Check(実施状況の確認・評価)、Action(改善)を繰り返すことです。

 

ISO規格の取得、運用のためにはPDCAサイクルを回し、品質向上に努める必要があるので、継続的な品質改善と業務効率化にも繋がります。その結果、常に良質な製品やサービスを提供できるようになり、顧客満足度の向上にもなります。

ISO規格取得のデメリット

ISO規格取得には様々な面でメリットがある一方、以下のデメリットも存在します。

 

  • 時間や労力、費用などのコストが必然的に掛かる
  • ISO規格の取得後すぐに目に見える成果が起こるわけではない

 

長期的に見ると、ISO規格を取得することで、品質向上や高品質の証明により新規取引先獲得や海外展開が進み、高い費用対効果を得られますが、一時的に大きなコストが掛かる点は理解しておきましょう。

時間や労力、費用などのコストが必然的に掛かる

規格の種類や企業規模によっても異なりますが、ISO規格の取得には一定の時間や労力、費用が必然的に掛かってしまいます。そのため、ISO規格を取得する際は、どれだけのコストが必要になるか把握し、事前に見通しを立てておきましょう。

 

一般的に、ISO規格の取得にかかる期間は6〜12ヶ月程度といわれています。これは単純に審査を受けるだけでなく、ISO規格取得について従業員に説明し、新しい業務マニュアルを社内に浸透させる必要があるためです。

 

また、ISO規格を取得する際は、審査に向けて品質管理マニュアルや業務手順書、経営方針に関する書類を作成しなければなりません。新たなマネジメントシステムの構築後も、運用結果について内部監査を実施し、報告書を作成します。担当者は通常業務に加えてシステムの管理も行わなければならないため、負担は大きくなるでしょう。

 

ISO規格の審査を受ける時は、認証機関に支払う審査費用も必要です。審査費用は認証機関によっても異なりますが、相場は30万円〜100万円ほどになります。さらに、ISO規格の取得後は年1〜2回の定期審査、3年おきに実施する更新審査を有料で受ける必要があります。審査費用は取得時にかかる金額の三分の一から三分の二程度ですが、認証を維持するための運用コストとして定期的に発生します。

 

またISO規格の取得に向けて、外部のコンサルタントにシステムの構築や助言を依頼すると、おおよそ年間50〜100万円が必要になります。

 

このように、ISO規格取得では様々なコストが掛かります。ISO規格を取得する際は、必要になる人員や費用をあらかじめ整理し、取得後に得られる成果も見据えた上で計画的に実施しましょう。

ISO規格の取得後すぐに目に見える成果が起こるわけではない

ISO規格の取得後は、すぐ目に見える成果が起こるわけではない点にも注意が必要です。

 

ISO規格を取得するために行う取り組みや改善は、製品・サービスそのものを著しく変えるものではありません。そのため、ISO規格の取得直後に新規取引先や海外進出が決まるとは限りません。ISO規格を取得してもすぐに期待通りの成果は得られない可能性もあります。しかし、ISO規格取得に向けた業務改善によって、内部から徐々に効果が出てくるのは間違いありません。

 

まず大きく変わるのは、従業員の意識です。ISOの基準に沿って、製品やサービスを提供するようになるので、各従業員の品質に関する意識が変わり、現場での作業に統一感が出て、業務標準化・品質の均質化に繋がります。



ISO規格取得はコストが掛かる上に即時的な効果は見込めませんが、継続的に業務の見直しと改善を繰り返すことで、従業員の意識改革や品質向上、新規取引先の確保など様々な効果が出てきます。

 

できる限り早く成果を出したい場合は、ISO規格の取得後にプレスリリースで発信したり、名刺にロゴを入れたりして外部にアピールしましょう。

ISOを取得するまでの流れと定期審査

ISO規格を取得するためには、各国の認定機関が認めた認証機関(審査機関)による審査を受けて、認証を得る必要があります。

 

認定機関とは、ISO規格の認証機関を認定する組織のことです。各国の認定機関は、IAF(International Accreditation Forum:国際認定機関フォーラム)に加盟しています。IAFに加盟している日本の認定機関は、日本適合性認定協会(JAB)と情報マネジメントシステム認定センター(ISMS-AC)の2つです。

 

IAFとは、製品・サービスなどの適合性を評価する国際機関です。IAFでは、各国の認定機関が互いに評価し、双方の認定業務が同じであることを認める国際相互認証協定(MLA:MultiLateral recognition Arrangement)を締結しています。

 

企業が認証機関の審査を受け、ISO規格を取得するまでの流れは以下の通りです。

 

  1. 取得するISO規格、製品と範囲の決定
  2. 要求事項に沿った業務の見直しと改善、書類の作成
  3. 文書審査(第一弾審査)と実地調査(第二弾審査)
  4. ISO規格取得後、定期審査(サーベイランス審査)と更新審査

 

合格できなければ審査の受け直しが必要になる場合もあるため、ポイントを押さえて入念に準備を進めましょう。

1.取得するISO規格を決め、製品と範囲を決定する

まず、取得するISO規格を決めましょう。この時、ISO規格取得の目的を明確にしておくと、後に決める製品や範囲を検討しやすくなります。ISO規格を取得する目的の具体例は以下の通りです。

 

  • 顧客のニーズに応える(ISO規格の取得が取引条件など)
  • 公共事業の入札条件を満たす
  • 競合他社との差別化を図る
  • 品質の向上や安定を目指す

 

取得するISO規格が決まったら、次は規格の対象となる製品や範囲を検討します。ISO規格は、企業が管理する全ての業務や製品に限らず、一部分、工場単位などでも、認証取得の対象とすることが可能です。

 

ISO規格の取得範囲によってコストや審査期間も変わるため、企業全体としてISO規格を取得したいのか、支店や工場、特定の製品だけでも良いのかを慎重に吟味しましょう。

2.要求事項に沿った業務の見直しと改善、書類の作成

次に取得するISO規格の要求事項に沿った業務の見直しと改善、必要書類の作成を行います。

 

業務を見直す際には、まず始めにISO規格取得について従業員向けに説明会を開きましょう。目的や意図を説明しないまま、唐突に業務の見直しや改善をすると、現場の混乱や反発を招く可能性があるためです。ISO規格の取得や取得後の運営には従業員の協力が欠かせません。ISO取得に前向きな意識を持たせるためにも、目的や意図を従業員に伝えましょう。

 

要求事項に沿った業務の見直しと改善をする際は、現在の業務を洗い出し、課題や改善点を見つけます。その後、要求事項を満たすための改善策を検討し、マニュアルや業務手順書を作成してマネジメントシステムを構築しましょう。

 

この時、要求事項を満たすために業務内容を大きく変えると、社内全体の負担が増えてしまう可能性があります。経営体制を見直す際は、要求事項に現在の業務を当てはめ、足りないルールや書類を追加したり、不要な作業工程を削減したりすることで、余計な労力を掛けずに業務改善を推進できます。

 

新システムの構築後は、実際に現場で運用しながら定期的に内部監査を行い、取得する規格との整合性を高めましょう。

3.文書審査(一次審査)と現地調査(二次審査)

マネジメントシステムを問題なく運用できるようになったら、認証機関による文書審査(一次審査)と現地調査(二次審査)を受けます。

 

文書審査では、マネジメントシステムの構築時に作成した書類や、規格ごとに作成が求められている文書を審査します。審査時のチェックポイントは、作成文書がISO規格に合致しているか、大きな矛盾はないかなどです。

 

現地調査では、文書審査で確認したマニュアル通りにシステムが運用されているかを審査します。審査方法は認証機関によって多少異なりますが、基本的には現場の視察や管理責任者・担当者に対する質問などです。現地調査に合格すると登録申請が可能になり、申請が下りればISO規格を取得したことを外部に証明できます。

 

審査時に不適合と指摘された場合は、マネジメントシステムの再構築や業務の是正をしなければなりません。

 

認証機関に指摘される内容は「重大な不適合」と「軽微な不適合」の2種類です。重大な不適合と判断された場合は組織体制を再度見直し、審査を受け直す必要があります。軽微な不適合であれば、審査後2週間〜1ヶ月以内に改善することでISO規格を取得できます。

 

不適合の指摘を受けると社内の負担は増えてしまいますが、業務効率化や品質向上に必要な助言であるため、真摯に受け止め改善しましょう。

4.ISO規格取得後、定期審査(サーベイランス審査)と更新審査

ISO規格の取得後は、年1〜2回実施される定期審査(サーベイランス審査)を受けることになります。定期審査では、ISO規格の取得時に構築したマネジメントシステムが継続的に運用できているかを確認します。

 

また、ISO規格には3年の有効期間があるため、期限が切れる前に更新審査を受ける必要があります。更新審査では、マネジメントシステム全体がISO規格に適合しているか、現場で有効に機能しているかを審査します。

 

新たに発生した課題を放置せず、PDCAサイクルを回して改善を重ねているかどうかも審査ポイントの一つです。

 

更新審査で不適合と判断され、是正処置が規格の有効期限に間に合わなかった場合は、再び登録審査からやり直すことになるため注意しましょう。

 

 

自社に必要なISO規格の取得で信頼確保と売上向上へ

ISO規格とは、製品やサービスに関する国際的な規格です。企業がISO規格を取得すると、信頼向上や取引機会の拡大など様々な成果を得られる可能性があります。

 

ただし、ISO規格の取得にはコストがかかり、取得後もすぐに成果が出るわけではありません。それでも、継続的に業務の見直しや改善をすることで、徐々に効果を発揮し、中長期的な視点では高い費用対効果を得られるでしょう。

 

ISO規格を取得する際は、審査に合格することだけを目標にせず、業務の効率化や品質の向上、事業拡大など自社の目的を常に意識することが大切です。業務上の課題を放置せず、自社の目的達成に向けて見直しや改善を重ねることで、結果的に売上を大きく伸ばせます。