2018年(平成30年)6月に、食品衛生法の一部改正が公布されました。
この改正がいつから始まるのかは、厚生労働省の発表した書類によると項目ごとに少しばらつきがあるようです。
まずは、改正の7つの概要を知り、次にそれぞれの中身や試行期日などを見ていきましょう。
また、最後には今回の食品衛生法改正の最大のトピックスともいえるHACCP導入についても詳しく紹介します。
今回の食品衛生法改正では、概要として7つの項目が明記されています。
下記が、その7つの概要です。
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1.広域的な食中毒事案への対策強化
2.HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化
3.特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集
4.国際整合的な食品用器具・容器包装の衛生規制の整備
5.営業許可制度の見直し、営業届出制度の創設
6.食品リコール情報の報告制度の創設
7.その他(乳製品・水産食品の衛生証明書の添付等の輸入要件化、自治体等の食品輸出関係事務に係る規定の創設等)
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やはり今回の改正の大きなトピックスは、項目2に記述されているHACCPでしょう。
これにより、導入の進め方や営業許可業種の見直しといった頭を悩ませる事柄が増えそうです。
また、この他に注目すべきトピックスとしては、項目4による「ポジティブリスト制度」、項目6による「食品リコール(自主回収)」などが挙げられそうです。
ここからは、それぞれをもっと詳しく見ていきましょう。
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*厚生労働省より*
1.広域的な食中毒事案への対策強化
国や都道府県等が、広域的な食中毒事案の発生や拡大防止等のため、相互に連携や協力を行うこととするとともに、厚生労働大臣が、関係者で構成する広域連携協議会を設置し、緊急を要する場合には、当該協議会を活用し、対応に努めることとする。
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上記を「分かりやすく」簡潔に解説すると、
「今までの法では、広域で発生した食中毒事案を取りまとめる組織が存在しないが故に、早期探知・早期対応ができなかったから、取りまとめる組織を設置します」ということになります。
この組織は、厚生労働省や地方の厚生局、保健所の人で構成されるため、この法改正に関しては、食品製造や食品提供に従事する方にはあまり関係のないものとなります。
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*厚生労働省より*
2.HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化
原則として、すべての食品等事業者に、一般衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施を求める。ただし、規模や業種等を考慮した一定の営業者については、取り扱う食品の特性等に応じた衛生管理とする。
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HACCPとは何かについてはこちらの記事をご覧下さい。
HACCPとは?導入方法や注意点、罰則をわかりやすく解説
上記を端的に解説すると、
「製造~販売までの食品製造や食品提供に従事する組織は原則『HACCP』という衛生管理手法を用いて下さい」ということです。
また、HACCPの導入は2020年(措置期間も含めると2021年)までに義務化しなければいけません。
ですが、一部の食品事業者はHACCP導入が緩和される場合もあります。
HACCPの導入を進めていくなかで、事業者は「基準A」と「基準B」という2つの対象に区分されます。
このうち、基準Bの対象であれば、HACCP導入が緩和されます。
基準Bの対象は以下のような事業者です。
例えば、個人や家族で経営している飲食店などは従業員数が50名未満の場合がほとんどなので、基準Bが採用されます。
では、HACCPの導入はどのように進めれば良いのでしょうか?
これは、基準A、基準Bに関わらずHACCPの「7原則12手順」に従って進める必要があります。
HACCP 7原則12手順
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基本的には、上記に記した7原則12手順が行われていることを証明できる書類(管理計画)を準備し、それを各保健所等に提出、食品衛生監視員による現地調査を経てHACCP導入が認められるという流れになります。
具体的にどのような書類が必要になるのかは「飲食店のHACCP導入を5つのステップで分かりやすく解説」の記事をご覧下さい。
また、HACCP導入の義務化に伴って、営業許可業種の見直しも行われます。
2021年(令和3年)6月より手続き等が必要となる見通しです。
厚生労働省の発表によると、ポイントは大きく2つになります。
①食中毒等のリスクや過去の発生状況等を踏まえて、業種を再編
②営業許可を、原則一施設一許可とする
例えば、漬物製造業、水産製品製造業、液卵製造業、食品の小分け業といった、今までは認められていなかった新たな許可業種が新設されました。
その一方で、食中毒等のリスクが低いと考えられる一部の許可業種は届出へ移行されました。
こちらも文章の通りですが、理解しやすいように実際の例を挙げてみましょう。
(改正前)菓子製造業と飲食店営業→(改正後)菓子製造業
(改正前)清涼飲料水製造業と乳製品製造業→(改正後)清涼飲料水製造業
このように、今までは一つの施設で複数の営業許可を取る必要がありましたが、一つの許可業種で取り扱うことができる食品の範囲が拡大することで、一施設一許可での営業が可能となりました。
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*厚生労働省より*
3.特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集
健康被害の発生を未然に防止する見地から、特別の注意を必要とする成分等を含む食品について、事業者から行政への健康被害情報の届出を求める。
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こちらは、厚生労働省が定める特別な注意が必要なものを含む食品が原因で、消費者の健康を損ねる被害が発生した場合には、そのことを事業者から行政へ情報を届けることを義務化しているということです。
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*厚生労働省より*
4.国際整合的な食品用器具・容器包装の衛生規制の整備
食品用器具・容器包装について、安全性を評価した物質のみ使用可能とするポジティブリスト制度の導入等を行う。
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この法改正では、食品用器具・容器包装の物質に制限が設けられることになりました。
「ポジティブリスト制度」という言葉がポイントになります。
法改正後は、これを基準に、食品用器具・容器包装に本当に安全なものが使用されているかをチェックされます。
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*厚生労働省より*
5.営業許可制度の見直し、営業届出制度の創設
実態に応じた営業許可業種への見直しや、現行の営業許可業種(政令で定める34業種)以外の事業者の届出制の創設を行う。
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これは、先ほどのHACCP導入についてお話しした営業許可業種の見直しのことを指しています。
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*厚生労働省より*
6.食品リコール情報の報告制度の創設
営業者が自主回収を行う場合に、自治体へ報告する仕組みの構築を行う。
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この法改正により、事業者が食品リコール(自主回収)を行う際の、行政への報告が義務化されました。
上記は2021年6月より施行されます。
こういった食品リコール(自主回収)は、今までは各都道府県等の条例により定まっている場合もありましたが、今回の法改正を受けて内閣府令に基づく対応となるため、より一層の食品リコールを想定した準備が必要となります。
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*厚生労働省より*
7.その他
乳製品・水産食品の衛生証明書の添付等の輸入要件化、自治体等の食品輸出関係事務に係る規定の創設等
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また、上記の6つの法改正意外にも、「輸入食品の安全証明」を行わなければならないことなども決まりました。
販売者にとっては、衛生証明書発行といった手間は増えてしまいますが、消費者にとってはより安心して輸入食品を楽しめることになるでしょう。
この記事では、2018年(平成30年)6月に交付された、食品衛生法の一部改正について解説しました。
HACCP導入やポジティブリスト制度といった大きなトピックスもあり、事業者は早急な対応が求められることでしょう。ぜひ、この記事なども参考にしながら準備を進めて下さいね。