飲食店のHACCP導入を5つのステップで分かりやすく解説

2020年~2021年までに義務化が決まったHACCPの導入。

この記事では、そんなHACCP導入の義務化に向けて、HACCPの基本知識や考え方、実際に飲食店ではどのように導入すれば良いのかをステップごとに、簡単に分かるように解説していきます!

また、具体的なHACCP導入のステップを今すぐ知りたいという方は、こちらから読み進めて下さい。

2020年までにHACCP導入の義務化

飲食の仕事に携わる方であれば、ほとんどの方が知っていることと思いますが2018年6月13日に「食品衛生法等の一部を改正する法律」が公布されました。

その内容とは、簡単に説明すると「2020年までに、飲食に携わる事業者はHACCPを導入して下さい」という、HACCP導入の義務化を決定するものです。

1年間の経過措置期間があるため、実質は2021年までに導入をすれば良いということになりますが、早めに対応しておく方が賢明です。

そもそもHACCPとは?

HACCP導入を進める前に、そもそもHACCPとはなにか?を改めて復習しておきましょう。

HACCPの概要

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HACCPとは、食品の提供を安全におこなうことを目的とし、徹底した食品衛生管理をおこなうためのルールの1つです。

 

HACCPという言葉は、「Hazard(危害)」「 Analysis(分析)」「Critical(重要な)」 「Control(管理)」「Point(点)」という5つの単語の頭文字を組み合わせたもので、日本語では「危害分析重要管理点」と直訳されます。

HACCP導入で何をしなければいけないのかというと、単語の通りに危害要因(ハザード)を分析し、重要な工程(点)を管理することが必要になってきます。

7原則12手順とは?

HACCPの導入は具体的に7原則12手順で進められます。

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  • HACCPチームを編成する
  • 食品の説明・記述(安定性、賞味期限、包装、流通形態)
  • 製品の使用方法を確認する
  • 製造工程一覧図(フローチャート)の作成
  • 製造工程一覧図の現場での検証
  • 危害要因を分析する (原則1)
  • 必須管理点(CCP)を設定する (原則2)
  • 許容限界(クリティカルリミット; CL)を確立する (原則3)
  • CCP の測定(モニタリング)方法を確立する (原則4)
  • 許容限界から逸脱があった場合の是正措置を確立する (原則5)
  • 検証方法の手段を確立する (原則6)
  • 記録をつけ、文書化を行い、それを保管するシステムを確立する (原則7)

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HACCPの考え方としては「制度をつくったら終わり」というものではなく、上記の7の原則を基に、12の手順に沿って繰り返し行い、改善していくというのが正しいものになります。

 

なぜHACCPを導入する必要が?

これまではHACCP導入を義務化していなかった日本ですが、なぜ急に導入の義務化が決まったのでしょうか?

HACCPは、もともと1960年代にアメリカで生まれた食品衛生管理方法なのですが、時間の経過とともに、多くの国で共通の食品衛生管理方法として認識されていきました。

いわゆる「食の安全のための国際基準」です。

日本も2021年にはオリンピックを控えており、今では多方面でのグローバル化が進んでいます。

「食の安全」も例に漏れず、その結果HACCP導入の義務化が決定したのです。

HACCPを導入しなければいけない飲食店は?

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さて、これまではHACCPについて基本的な知識、考え方などを解説してきました。

では、実際にHACCPを導入しなければいけない飲食店はどのようなお店なのでしょうか?

基本的には製造~販売に関わる全ての事業

まずは、厚生労働省が発表した法案でHACCPに関係するものを見てみましょう。

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2.HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化

原則として、すべての食品等事業者に、一般衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施を求める。ただし、規模や業種等を考慮した一定の営業者については、取り扱う食品の特性等に応じた衛生管理とする。

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と、上記のように発表されています。

「原則として、すべての食品等事業者に、一般衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施を求める」と記述してある通り、基本的には製造~販売、食品の提供を行うすべての事業者にHACCP導入が義務化されたのです。

基準Aと基準B

ですが、その一方で、「規模や業種等を考慮した一定の営業者については、取り扱う食品の特性等に応じた衛生管理とする」という記述もあります。

これは、「従業員数」や「販売目的」によってはHACCP導入の義務化は適応されませんよ、ということを示しています。

この線引きを明確にするために、HACCPの導入が義務化される「基準A」と、例外である「基準B」が存在しています。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

基準Aが適用される飲食店

基準Aが適用される飲食店は、従業員数が50人以上のお店となります。

また、と畜場、食鳥処理場なども基準Aが適用されます。

基準Aの事業者は、先ほど紹介した「HACCPの7原則12手順」すべて則った衛生管理を進めていく必要があります。

基準Bが適用される飲食店

その一方で、上記に当てはまらない飲食店、従業員数が50人未満のお店に関しては、「7原則12手順」のすべてに則った衛生管理は義務化されていません。

家族で経営しているお店、個人経営のお店などは、ほとんどの場合この基準Bが適用されると考えて問題ないでしょう。

ですが、だからと言って今まで通りの営業でよいのかというとそれも違います。

あくまで、「7原則12手順」のすべてに則った衛生管理が義務化されていないだけで、HACCPの考え方に基づく衛生管理は行わなければいけません。

基準Bは、基準Aよりも少し規制の緩いものという認識が正しいでしょう。

では、次からは具体的に基準Aと基準Bの場合で、飲食店はどのようにHACCP導入を進めればよいのかを解説していきます。

HACCP導入は認証制度ではない!

HACCP導入のステップを解説する前に、1つだけ注意するべきポイントがあります。

それは「HACCPの導入は義務化されたが、決して認証制度ではない」ということです。

もう少し簡単に説明すると「HACCPを実践すること」と「HACCPを第三社機関に認証してもらうこと」は別物であり、今回の法改正ではどのような事業者であっても第三社機関にHACCPの認証をしてもらう必要はないということです。

そのため、あくまで「私たちのお店は、しっかりとHACCPを導入していますよ」ということを、書類(管理計画書)で示すことができれば問題ありません。

HACCPを導入する飲食店の手引書

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基準Aが適用される飲食店は、まずはHACCPの7原則12手順に沿って導入準備をする必要があります。

7原則12手順の詳細や導入を進める中でステップごとに何をしなければいけないのかを見ていきましょう。

1.「7原則12手順」を実践する

まずは、HACCPの7原則12手順を実践していきます。

1.HACCPチームを編成する

製品を作るために必要なすべての情報が集まるように、各部門から担当者を集めます。

2.製品の説明・記述

製品がどのようなものかを洗い出し、製品説明書を作成します。

製品の名称から始まり、原材料、特製(Aw、ph等)、包装の材質や形態、消費期限や賞

味期限などすべてを記述します。

3.製品の使用方法を確認する

誰がどのように食べるのか(消費者と調理方法)を書き出します。

例:一般の人がそのまま食べる、高齢者が加熱して食べる等

4.製造工程一覧図の作成

原材料、製造工程を一覧で記述する。

5.製造工程一覧図の現場での検証

製造の中で、工程一覧図に製造されているかを現場で再度確認。

もし、製造工程が変わっていれば、4の一覧図を書き換える。

6.危害要因を分析する

4の一覧図を基に、それぞれに潜む危害要因(ハザード)を洗い出す。

7.必須管理点(CCP)を設定する

6で出した危害要因(ハザード)を管理するための、重要な管理点を決定する。

CCPについてはこちら

8.許容限界を確立する

7で決定した管理点の基準値と限度(温度や時間などCCPに応じたもの)を確立する。

9.モニタリング方法(CCPの測定方法)を確立する

8を測定するために、どのような方法を用いるかを決定する。

10.許容限界から逸脱があった場合の是正措置を確立する

モニタリングした際に、許容限界を逸脱した場合の対応を確立する。

例:製品を廃棄する、再加熱する等

11.検証方法の手段を確立する

設定したことが守られているかを確認する。

12.記録をつけ、文書化を行い、それを保管するシステムを確立する

記録~書類作成~保管までを確実に行える体制を確立する。

2.「7原則12手順」に則った、書類を準備する

上記に記述した7原則12手順がすべてが行われていることを証明できる書類、CCPを記録する書類(自主点検チェックリスト)を準備します。

必要により、施設の平面図なども準備します。

3.書類を基に、実際に施設で検証し記録する(自主点検)

CCPを記録する書類を基に、施設でそれがしっかり守れているのかの自主点検を行います。

4.保健所等に申請書類を提出する

自主点検を行った後に、問題がなければそれを各地域の定める保健所等に提出します。

原則、申請書類に決まったフォーマット等はありませんが、書類内容や書類形式が分からない場合は保健所等に問い合わせておきましょう。

5.食品衛生監視員による現地調査

申請後、各地域の保健所から食品衛生監視員が派遣され、申請通りに施設が機能しているかの現地調査が行われます。

6.HACCP導入確認済証の配布

食品衛生監視員による現地調査を経て、現地での問題等がないと判断されればHACCP導入の確認済証が配布されます。

基準Bでも導入の流れは一緒

上の項目で、HACCP導入の流れを解説しましたが、基本的には基準Bが採用される飲食店も同じ流れとなります。

一般社団法人日本食品添加物協会のガイドラインには以下のような記述があります。

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(2)前略… 項目に沿って、出来るところから衛生管理計画書の作成に取り掛かる。

(3)計画書作成にあたり、実施可能な計画を設定し、まずは定着させる。

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基準Bを採用する飲食店も、可能な限り基準Aと同じレベルでのHACCP導入を進めましょう。

まとめ

この記事では、2020年までの義務化が決定されているHACCP導入について、基本的な知識や考え方、実際にHACCPを導入する5つのステップを解説しました。

初めてのことで戸惑う方も多いでしょうが、ぜひ本記事を参考に進めて下さい。

 

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