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HACCP関連の資格は主に5種類!取得までの期間や費用、正式名称まとめ

作成者: カミナシ編集部|2020.11.01

2021年6月より、すべての食品事業者に対してHACCPに沿った衛生管理が義務化されました。義務化に伴い、HACCPについて詳しく知りたい、スムーズに導入・運用できるスキルを身に付けたいと考える方も増えています。そのようなニーズに応えて、HACCPに関連したさまざまな資格が登場しています。

 

この記事では5つのHACCP資格を取り上げて、資格の詳細や取得のメリットを解説します。あわせてHACCP義務化と資格、認証の関係についても解説するので、HACCPに関する資格取得を検討している方は参考にしてください。

HACCPに関する資格は?

HACCPに関する資格には、主に次の5種類があります。

 

資格名

提供団体

費用

取得までの期間

詳細

HACCP管理者資格

日本食品保蔵科学会

ワークショップ参加費用20,000円+認定審査費用8,000円(別途学会会費が必要)

約6ヶ月

HACCP 管理者としての知識と技術を向上できる

HACCPリーダー(食品安全管理技術者)

一般財団法人日本要員認証協会

申請料5,500円+年間登録料11,000円(別途研修受講料が必要)

約3ヶ月

(実務経験期間は除く)

組織の中心となりHACCPを構築し、衛生管理システムを運営できる

HACCP普及指導員

公益社団法人日本食品衛生協会

研修参加費用30,800円

(別途登録手数料が必要)

6ヶ月以上

HACCPに関する知識を有し、HACCPを構築・検証できる

HACCPコーディネーター

日本HACCPトレーニングセンター

ワークショップ参加費用+認定登録費用60,700円

約1週間

(事前学習〜研修)

HACCPを計画・運用・検証できる

食品衛生責任者

各都道府県市の食品衛生協会

講習会参加費用 約10,000円

1日

食品関連施設での配置が義務付けられている

参考:HACCP管理者資格 新規取得手順|一般社団法人 日本食品保蔵科学会
参考:HACCPリーダー|一般財団法人 日本要員認証協会

参考:HACCP普及指導員|公益社団法人 日本食品衛生協会
参考:HACCPコーディネーターとは?|日本HACCPトレーニングセンター
参考:食品衛生にかかわる資格|公益社団法人 日本食品衛生協会

 

上記の資格はそれぞれ、かかる費用や時間、資格の認定団体が異なります。資格取得には講習の受講やワークショップへの参加が必要であり、試験が課されることもあります。資格取得を検討している場合は内容をよく比較して、適切なものを選択しましょう。

 

HACCP管理者資格

HACCP管理者資格は、HACCP管理者の知識と技術の向上を目的に、日本食品保蔵科学会により設立された資格制度です。

 

資格を取得するには、大学などで規定科目の単位を取得し、3日間に渡るワークショップを受講し、資格の提供団体である日本食品保蔵科学会の会員であること、「基礎科目認定」と「HACCPワークショップ認定」の2段階の認定をクリアすることが条件です。そのため、HACCPに関連した資格の中でもより実践的なものといえます。

 

4年間の有効期限があることも、HACCP管理者資格の特徴です。資格の更新には講義の受講と試験の合格が必須であり、定期的な知識のアップデートに役立つでしょう。

 

資格取得の過程で、食品の安全と品質管理に関する専門的な知識とスキルが身に付きます。特にワークショップでは、製造現場でのHACCPプラン作成やグループ討議などのカリキュラムが組まれています。

 

現場ですぐに活かせる力が身に付くため、食品製造現場でHACCPの導入や運用に関わる人に向けた資格といえるでしょう。

 

HACCP管理者資格は、食品安全管理の専門知識を持ち合わせていることを証明できるものになります。安全性の高い食品製造を行っていると、第三者機関により認められることになるため、消費者や取引先企業からの信頼を得やすくなります。

 

さらに食品業界でのキャリアアップや転職を考えている人にとっては、食品安全管理に関する知識とスキルをアピールできるものになるでしょう。

 

参考:HACCP管理者資格 新規取得手順|一般社団法人 日本食品保蔵科学会

HACCPリーダー(食品安全管理技術者)

HACCPリーダー(食品安全管理技術者)は、組織の中心となり、HACCPの構築やその衛生管理システムの運営を行える者に与えられる資格です。一般財団法人日本要員認証協会が資格を認証しています。資格取得には、3日間に渡る講習の受講と試験に加えて、一定期間以上の実務経験が必要です。そのため、HACCPリーダーは取得難易度が高い資格といえます。

 

3日間の講習では食品安全に関わる知識はもちろん、世界的標準規格であるCODEXに基づくHACCPや、ISO22000におけるHACCPの役割まで幅広い内容を学べます。ISO22000の認証を取得している事業者や、今後の認証取得を検討している事業者にとっては、HACCPとの関わりを学べる機会になるでしょう。

 

HACCPリーダーの資格取得には、HACCPやISO22000などの食品安全マネジメントシステムに関わる実務経験が必要です。さらに講習では、内部監査の運営管理やリスク対応、審査・内部監査で不適合となった場合の是正処置の対応についても学べます。そのためHACCPリーダーは、企業組織のなかでチームを率いてHACCPの導入と運用を進める管理者や監督者、マネージャーなどが取得すべき資格といえます。

 

HACCPリーダー資格の有効期限は3年です。資格の更新には、食品安全やHACCPに関する研修への参加など、継続的に専門能力の開発に取り組んでいる実績を提出することが求められます。したがってHACCPリーダーには、自ら研鑽を積み重ねようとする意識も必要とされます。

 

HACCPリーダーの資格は、組織の中で先頭に立ち、HACCPを構築・運営できる能力の証明になるものです。とくに取引先企業に対して、専門知識に基づき高いレベルでHACCPを運用しているアピールになるでしょう。

 

参考:HACCPリーダー|一般財団法人 日本要員認証協会

HACCP普及指導員

HACCP普及指導員は、公益社団法人日本食品衛生協会が認定する資格です。HACCPに関する知識を有し、HACCPの構築や検証を行える者に与えられます。

 

HACCP普及指導員の資格は、厚生労働省によるHACCP制度化の動向を踏まえて、2016年にスタートしました。そのためHACCP義務化に伴い、事業者が知るべきことや取り組むべきことなどを盛り込んだ、現場に即した資格であるとされています。

 

HACCP普及指導員は名称が示す通り、指導に重きを置いた資格です。HACCP普及指導員を取得した者は、中小事業者を対象としたHACCPの導入・運用を的確にサポートする能力があるとみなされます。HACCP導入の指導や助言のために、認証団体からHACCP普及指導員の資格を持つ者が派遣されることもあります。

 

HACCP普及指導員の取得が推奨されるのは、学んだ知識を自社のHACCPへの取り組みに役立てたい人だけではありません。HACCPなど食品安全管理に関するコンサルティングを中心にキャリアを構築したいと考えている人も、取得すべき資格といえます。

 

HACCP普及指導員の資格は「HACCP指導者養成研修」を受講修了し、申請すると取得可能です。しかし「HACCP指導者養成研修」を受講するには、事前に「基礎研修」と「HACCP導入研修」、「一般的衛生管理研修」、「HACCP妥当性確認・検証研修」を修了している必要があります。資格取得に試験はないものの、段階的に数々の研修を受ける必要があるため、資格取得までにかなりの時間を要するでしょう。

 

「HACCP指導者養成研修」では事前にeラーニングを受講し、2日間のWeb研修またはオフラインの集合研修を受けて修了します。研修修了後、HACCP普及指導員に登録する流れになりますが、HACCP導入事業者への指導や助言、研修会の講師などに協力することが登録の条件とされています。

 

またHACCP普及指導員の資格は3年ごとの更新制で、更新までに認定団体が実施するHACCP指導に関する研修の受講が必要です。

 

参考:HACCP普及指導員|公益社団法人 日本食品衛生協会

 

HACCPコーディネーター

HACCPコーディネーターは、組織のHACCPチームの一員としてHACCPを計画・運用・検証できる力がある者に与えられる資格であり、日本HACCPトレーニングセンター(JHTC)が認証しています。資格取得に必要な研修を通して、世界的標準規格であるCODEXに基づくHACCPを学べます。

 

資格取得と同時にコンサルタントとしてJHTCに登録されることも、HACCPコーディネーターの特徴です。JHTCから派遣されて、社外コンサルタントとしてHACCPチームに加わり、指導や助言を行うこともあります。

 

コンサルティングを通して食品業界の品質向上に貢献できるとともに、実地経験の積み重ねにより自身の能力を高められます。HACCPコーディネーターには上級資格もあるため、学びを深めてレベルアップを目指してもよいでしょう。組織のHACCPチームに所属する人や、食品業界でのキャリアアップを希望している人に向いている資格です。

 

受験資格はなく、事前のe-ラーニングと2日間の「HACCPコーディネーター養成ワークショップ」を修了し、申請書類を提出すれば資格を取得できます。HACCPコーディネーターの資格には3年の有効期限がありますが、3年間の取り組み内容をレポートにまとめ、申請書類とともに提出すれば更新できます。資格取得までのハードルが比較的低く、資格更新の手間があまりかからない点も、HACCPコーディネーターのメリットです。

 

参考:HACCPコーディネーターとは?|日本HACCPトレーニングセンター

食品衛生責任者

食品衛生責任者とは、食品衛生法により食品に関わる事業者に設置が義務付けられている人材です。各都道府県市の食品衛生協会が認証を行っています。食品衛生責任者は食品衛生法に則り、衛生管理の運営にあたります。さらにHACCPの「一般衛生管理」にも「食品衛生責任者の選任」の項目が含まれており、HACCPの導入・運用においても必要な資格です。

 

原則としてすべての食品関連施設で食品衛生責任者の配置が義務付けられており、あらゆる食品事業者が関係する資格といえます。とくに、組織のなかで先頭に立って衛生管理に努める人が取得するとよいでしょう。各地で開催されている食品衛生責任者を対象とした講習会に参加すれば、食品衛生管理に関する知見をアップデートできます。

 

すべての食品関連事業者に対してHACCPが義務化されており、小規模事業者でもHACCPの考え方を取り入れた衛生管理への取り組みが必要です。小規模事業者では、食品衛生責任者が主導して衛生管理の計画・実施を進めることが求められます。

 

食品衛生責任者の資格を取得するには、養成講習会を受講しなければなりません。講習会は計6時間に及びますが、食中毒の防止対策や衛生関連法規など、食品衛生の基礎を学べます。講習会の受講修了証の交付をもって、食品衛生責任者の資格取得とみなされます。

 

なお、調理師、製菓衛生師、栄養士などの資格をすでに保有している人は、講習会を受講する必要はありません。食品衛生責任者の資格に有効期限はありませんが、地域によっては講習会の受講が必須な場合があるので確認しておきましょう。

 

参考:食品衛生にかかわる資格|公益社団法人 日本食品衛生協会

【注意】HACCPの義務化と認証取得、HACCPの資格は全く別のもの

2021年6月からすべての食品関連事業者に義務化されているHACCPですが、資格を取得したから義務化に対応しているわけではありません。またHACCP関連の資格を取得したからと言って、認証が取得できるわけではないので、それぞれまったく別のものと考えましょう。

 

分類

やるべきこと/できること

必要なこと/もの

HACCP義務化

HACCPに沿った衛生管理

HACCPに基づく衛生管理

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理

HACCP資格

HACCPを導入・運用する能力があることの第三者機関による証明

HACCP管理者資格

HACCPリーダー

HACCP普及指導員

HACCPコーディネーター

食品衛生責任者

HACCP認証

HACCPに沿った衛生管理ができていることの第三者機関による証明

地域HACCPからの認証

業界団体HACCPからの認証

民間HACCPからの認証

HACCP義務化と資格、認証の違い

 

HACCPに関する制度として、資格以外にもHACCP認証が存在します。資格は個人に対して与えられるものですが、認証は組織や企業に対して付与されます。

 

すべての食品関連事業者に対して義務化されているのは、「HACCPに沿った衛生管理」への取り組みであり、HACCPに関する資格や認証の取得は義務ではありません。

 

ただし、資格や認証の取得にはメリットがあります。研修などで身に付けたHACCPの知識を活かすことで、取り扱う食品の安全性を高められます。資格や認証の取得は高水準な衛生管理が実施できている証明になるので、企業組織の信頼にもつながるでしょう。

 

なお、食品衛生責任者は、施設や店舗ごとに1名配置することが食品衛生法にて義務付けられているため、対象となる場所では、必ず資格取得者を置くようにしましょう。

必要に応じてHACCPに関する資格を取得し、適切な管理を実施しよう

食品業界のHACCP義務化に伴い、さまざまな関連資格が現れています。資格の取得によりHACCPの知識やスキルが身に付き、消費者や取引先にも食品の衛生管理が高いレベルで実施できていることをアピールできます。

 

資格と同様に数々のHACCP認証も存在しますが、HACCP義務化と資格、認証の取得は別物です。資格は必ずしも取るべきものではないため、よく検討して、必要であれば取得するようにしましょう。