ヒヤリハット報告書の基本 | 重要性や作成のポイントを解説

製造業に携わっている方の多くは、「ヒヤリハット」という言葉を耳にする機会があるのではないでしょうか。ヒヤリハットとは、仕事中に事故や災害には至らなかったもののヒヤッとするような事象のことです。

 

ヒヤリハット自体は些細な出来事ではあるものの、放置することで重大なリスクに繋がると考えられています。そのためヒヤリハットは放置せずに、報告書として共有することで、改善に繋げていくことが必要です。

 

この記事では、そんなヒヤリハットの報告書について分かりやすく解説します。なぜ報告書が重要であり、どのようなポイントに注力すべきかについて詳細に取り上げていきますので、最後までぜひご覧ください。

 

ヒヤリハット報告書とは

ヒヤリハット報告書とは、ヒヤリハットに遭遇した当事者が、その状況や原因、対策などを記載して共有するための文書のことです。

 

一般的に、以下のような項目をヒヤリハット報告書として記入して提出します。

 

報告者

[報告者の氏名]


報告日時

[報告日時]


発生場所

[ヒヤリハットが発生した場所]


事象の概要

[ヒヤリハットの概要を簡潔に説明]


詳細な説明

[ヒヤリハットが発生した状況や詳細な経緯を記述]


影響の程度

[ヒヤリハットがもたらす可能性のある影響を評価]


原因の特定

[ヒヤリハットが発生した原因や要因を特定]


即時の対応策

[ヒヤリハットへの即時の対応策を記述]


再発防止策

[同様のヒヤリハットが再発しないようにするための改善策を提案]


関係者への連絡

[関係者への報告や連絡が必要な場合、その内容を明記]


報告者の連絡先

[報告者の電話番号やメールアドレスなど連絡先情報]


承認

[報告書を承認する上司や責任者の署名と日付]

 

ヒヤリハットは「危ないことが起こったが、幸い災害には至らなかった事象のこと」で、一見すると些細な出来事のように思えますが、なぜヒヤリハットを報告することが大事なのでしょうか。

「ハインリッヒの法則」とヒヤリハットの関係

ヒヤリハットは重大な事故につながると考えているのが「ハインリッヒの法則」です。ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒによって提唱されたこの法則は、「1:29:300の法則」としても知られています。

 

この法則によれば、重大な事故が発生する前に、軽微な事故やヒヤリハットが29回、さらにそれよりも軽微な違反や異常が300回発生するとされています。

 

ハインリッヒの法則

 

つまり、ヒヤリハットは事故の前兆と見なされ、これを適切に報告し対処することで、より深刻な事故や障害を未然に防ぐことが期待されるのです。

ヒヤリハット報告書の作成ポイント

効果的なヒヤリハット報告書を作成するには、いくつかのポイントがあります。

 

  • 速やかに報告書を作成する
  • 5W1Hを意識してまとめる
  • 専門用語は使わない
  • 第三者の目線で書く

 

ここでは効果的な報告書の作成に必要な4つのポイントについて解説していきます。

ヒヤリハット発生後は速やかに報告書を作成する

ヒヤリハットが発生した場合、速やかな報告書の作成が不可欠です。

 

即座に状況を文書にまとめることで、対策の迅速な実施が可能となります。報告は後回しにせず、すぐに報告するように心がけましょう。

5W1Hを意識してまとめる

ヒヤリハット報告書の作成において、5W1Hを意識してまとめることが重要です。

 

何が、いつ、どこで、誰が、なぜ、そしてどのようにヒヤリハットが発生したかを明確かつ詳細に記載します。発生した事象や異常の特定、発生時の状況、関与した従業員、原因の特定、報告書作成の背景や手順など、これらの要素を的確に整理し、報告書に取り入れることで、後から見返した際にもわかりやすい報告書となります。

専門用語は使わない

ヒヤリハット報告書の作成において、専門用語は使わないようにしましょう。

 

報告書は取引先など様々な関係者が見る可能性があります。特定の職種や業界の専門用語は避け、一般の人が容易に把握できる表現を心がけることが大切です。

主観ではなく第三者の目線で書く

主観ではなく第三者の目線で書くことも必要です。

 

報告書は客観的な情報と事実に基づき、なるべく感情や主観的な意見を排除しましょう。これにより、誰がみても客観的な事実から起こった事象を理解しやすくなるでしょう。

ヒヤリハット報告書の実施フロー

ヒヤリハット報告書の実施フローには大きく4つのステップがあります。

 

  • 当事者が報告書を作成する
  • 責任者・安全担当者がチェックする
  • 関係者で対策を検討する
  • 社内周知をする

 

4つのステップを通じて、社内でPDCAを回せる体制作りを行いましょう。

当事者が報告書を作成する

まずは当事者が報告書を作成します。先ほどの速やかに報告書を作成する、5W1Hを意識してまとめるなどのポイントを押さえて報告書を作成しましょう。

責任者・安全担当者がチェックする

報告書の次のステップでは、責任者と安全担当者がチェックを担当します。報告書の内容を確認し、どんなヒヤリハットが起こったのか、対処法は間違っていなかったのかなどを確認します。この段階で、法令や規制に適合しているかどうかもチェックされます。

 

責任者と安全担当者のチェックにより、報告書が組織の方針や基準に沿っていることが保証されます。また、追加の改善策の提案なども行われることによって、報告書が再発防止策に効果的なものになるようなサポートになります。

関係者で対策を検討する

関係者で対策を検討する過程では、報告書の内容に基づき関与者が協力して問題に対処します。関係者の多様な視点や専門知識が結集され、包括的で再発防止策が導き出されることが期待されます。

社内周知をする

報告書の結論が得られた後、社内周知が不可欠です。これは関係者や従業員に対して、問題とその解決策について周知をして実行を促します。

定期的な会議や社内ポータルを活用すると、組織全体が同じ情報にアクセスでき、対策の理解と実行がスムーズに進みます。

ヒヤリハット報告の定着のためにできること

ヒヤリハット報告を定着させるためには、まず報告しやすい雰囲気や体制を整えることが重要です。従業員が安心して報告できる文化を醸成しましょう。報告書の簡易化も欠かせず、分かりやすく具体的な情報提供を心掛けましょう。

同時に、報告の目的や重要性を明確に伝え、従業員に積極的な参加も必要です。過去の報告の成功事例やその成果を社内で積極的に公開することで、報告が実際に組織に与える影響や改善の具体例を示し、ヒヤリハット報告が組織全体に浸透するようにすることが大切です。

報告しやすい雰囲気や体制をつくる

報告しやすい雰囲気や体制を構築するには、従業員が心理的なハードルを感じないような環境を整える必要があります。オープンなコミュニケーション文化を日頃から構築し、報告者が安心感を抱くことが重要です。匿名性を保証し、報告者のプライバシーを守るための仕組みも検討しましょう。

また、報告者への感謝や評価を示すことで、積極的な報告行動を繋がります。加えて、上層部からのリーダーシップや積極的な関与も必要です。従業員が問題を正直かつオープンに報告しやすい状態を築くことが、組織全体の安全な環境構築につながります。

報告書の簡易化

報告書の簡易化は、情報の効果的な伝達を促進する重要な手法です。冗長な表現や複雑な構造を避け、わかりやすく整理されたフォーマットを採用します。具体的で要点を押さえた情報提供を心掛け、専門用語や複雑な言葉を極力排除します。

図表やグラフの活用も効果的で、視覚的な要素を導入することで理解が容易になります。読者が手間なく情報を吸収できるようにし、簡潔で明快な報告書は迅速な意思決定や行動へとつながります。これにより、組織内での報告書の理解度が向上し、問題解決が迅速かつ的確に行われるでしょう。

報告の目的や重要性を従業員に明確に伝える

報告の目的や重要性を従業員に明確に伝えることは、積極的な参加と協力を引き出す上で不可欠です。明確な目的を伝えることで、従業員はなぜ報告が求められているのかを理解しやすくなります。

また、報告が組織全体の安全や改善にどれほど貢献するかを示すことで、従業員は自身の行動が組織に与える影響を実感しやすくなります。透明性を保ち、従業員が自身の貢献を意識できるような環境を築くことで、報告意欲が増し、問題への迅速な対処や持続可能な改善が実現されます。

報告の活用事例を社内で公開する

報告の活用事例を社内で公開することは、従業員にとって学びの機会となります。成功した報告が実際に問題解決や改善にどれほど貢献したかを具体的に共有することで、従業員は自身の報告が組織全体に及ぼす影響を理解しやすくなります。

これにより、報告の意義や重要性が浸透し、他の従業員も積極的に報告に参加しようという気概が生まれます。さらに、公開された活用事例は組織内でベストプラクティスとして共有され、持続可能な安全文化の醸成に役立つでしょう。

まとめ

この記事では、ヒヤリハット報告書を作成することの重要性、そして報告書を作成することで得られる利益について詳しくご紹介しました。

ヒヤリハット報告書の基本を理解し、従業員が安心して報告できる環境を整えることが安全文化の向上につながります。また、報告の重要性を従業員に明確に伝え、成功事例を公開することで、組織全体での積極的な報告意欲が生まれるでしょう。

組織はヒヤリハット報告を通じて学び、改善し、危険を未然に防ぐ手段として積極的に取り組むことが重要です。報告者と組織全体が協力し、共に成長することで、より安全で健全な労働環境が確立され、重大な事故の防止に繋がるでしょう。

 

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