出荷検査とは?確認項目や工程検査・最終検査との違い、具体的な方法を紹介

 

 

出荷検査(出荷前検査)とは、製品を出荷する前に行う品質検査のことです。取引先へ製品を納品する直前に実施する品質の最終確認であるため、出荷検査は不良品の流出防止に重要な役割を果たします。

 

本記事では、出荷検査とは何かを説明した上で、出荷検査の目的と確認項目、具体的な検査方法について解説します。検査のポイントや注意点なども紹介するので、出荷検査の精度を高めて製品品質を向上させたい方はぜひ参考にしてください。

出荷検査(出荷前検査)とは

出荷検査(出荷前検査)とは、製品を出荷する前(製品を納品する直前)に製品が基準に適合していることを確認し、取引先や消費者に製品を届けても問題ないか最終的に判断する品質検査の1つです。

 

出荷検査の前には、入荷した原材料や資材が品質基準を満たしているかを確認する受入検査、生産途中の製品についてその時点での品質を確認する工程検査、製造工程を終えた後の完成品に対して行う最終検査があります。

 

出荷検査は、それらの検査でも漏れた不適合品や製造後に劣化した製品を排除し、不良品の流出を防ぐ最後の防波堤となる役割を担います。

 

出荷検査と工程検査、最終検査との違いは、検査のタイミングと目的が挙げられます。以下の表でわかりやすくまとめました。

 

 

出荷検査

工程検査

最終検査

タイミング

最終検査後

製造過程

製品完成後

対象

出荷前の完成品

仕掛品

完成品

目的

・最終検査後の劣化した不良品の流出を防ぐため

・不良品データから原因を追求し、製造工程を改善するため

・製造過程の各段階で品質をチェックし、不良品の早期発見と工程の安定性を確保するため

・問題の即時対応と品質のばらつきを最小限に抑えるため

・製品が全ての品質基準を満たしているかを確認するため

・不良品の出荷を防止し、顧客満足度の維持と企業の信頼性向上を図るため

出荷検査と工程検査、最終検査との違い

出荷検査の目的

的確な出荷検査を行うには、その目的を理解しておくことが大切です。出荷検査は次の2点を目的に実施されます。

 

  • 最終検査後の劣化した不良品の流出を防ぐため
  • 不良品データから原因を追求し、製造工程を改善するため

 

最終検査後の劣化した不良品の流出を防ぐため

出荷検査における最も重要な目的は、不良品の流出を防ぐことです。不良品が取引先に渡ってしまうと、相手からの信用が低下するだけでなく、消費者にけがや食中毒などの危害を与える可能性もあります。

 

製品完成後に行われる品質検査は、最終検査と出荷検査の二つです。納品前に出荷検査を行うメリットは、最終検査までに見逃された不良品に加え、最終検査後に劣化した製品も排除できることにあります。この劣化には、人的劣化と経時的な劣化の2種類があります。

 

人的劣化とは、人の手により発生する劣化を指します。具体的には、製品の運搬や梱包の際に生じる傷や変形、製品保管中の定期的な在庫確認時などに手が触れて生じる外的損傷などがあります。

 

取り扱いに細心の注意を払っていたとしても、製品を傷つけてしまうリスクは拭い切れません。従って、出荷検査において、異常がないかを慎重に確認する必要があります。

 

経時的な劣化(経年劣化)とは、時間の経過により発生する劣化を意味します。具体的には、製品に使用されているプラスチックの変色、鉄のサビ、ねじの緩みなどが該当します。

 

経時的な劣化は避けられない現象ですが、劣化の予測は比較的容易です。そのため、経時的な劣化が起こりやすい箇所をピンポイントで確認すれば効率よく検査できます。製品の完成から出荷までの期間が短い場合は、検査の重要度を下げてもよいかもしれません。また、製品の保管環境を整えることで、経時的な劣化のスピードはある程度抑えられます。

 

このように最終検査に合格した完成品でも、その後の取り扱いや素材の劣化により不良品になる可能性があります。的確な出荷検査を行い、不良品が取引先や消費者のもとに渡るのを防ぎましょう。

不良品データから原因を追求し、製造工程を改善するため

出荷検査の目的は不良品の流出を防止するだけでなく、不良品の情報を集めることで原因を突き止め、製造工程を改善することにもあります。

 

製造工程を見直し、不良品の発生率そのものが低下すれば、取引先や消費者に不良品が渡るリスクを低減できます。不良品数が減少すれば、無駄な作業や破棄される製品が減り、コスト削減も期待できるでしょう。

 

不良品を取り除くことだけが、出荷検査の役割ではありません。不良品が発生した原因にも目を向けてデータを蓄積し、その傾向から不良品が発生する原因を明らかにして、不良品の数や発生率の低減につなげましょう。

 

デジタル化された帳表であれば、通知機能による記録漏れの防止や、加工しやすい形(任意のExcelフォーマット)での出力も可能になります。帳票の電子化を検討中であれば、カミナシ レポートをご検討ください。以下のボタンから概要資料がダウンロードできます。

 

出荷検査で確認する項目と具体的な方法

出荷検査で確認する項目は、食品製造業と機械製造業で異なります。それぞれの主な検査項目の例は以下のとおりです。

 

  • 食品製造業
    • ロット情報
    • 外観
    • 賞味期限やアレルゲンなどの印字内容
    • 保管されていた温度
    • 味を確認する官能検査
    • 大腸菌やカビを調べる微生物検査
    • pHや水分量などを調べる理化学検査
  • 機械製造業
    • ロット情報
    • 製品の寸法(サイズ)
    • 傷やサビの有無
    • ねじの緩みやはずれ
    • 製品の変色や変形
    • 梱包材の傷、変形、汚れ
    • 製造過程で発生する可能性のある不良

 

その他、製品単位以外でもロットごとや箱ごとなどで、製品名や出荷先、出荷年月なども出荷検査で確認することも重要です。

 

これらの項目を確認するため、出荷検査では主に次の4種類の検査が実施されます。

 

  • 目視検査
  • 標準サンプル品との比較検査
  • 寸法検査
  • 梱包状態検査

 

ただし、すべての検査を実施する必要がない製品もあるため、製品の特徴や予測できる不良内容から判断して、適切な検査方法を選択しましょう。

目視検査

目視検査とは、主に傷、汚れ、サビ、変色、変形、印字ミス、製品内への異物混入などの有無などを確認する人の目で製品を見て確認する検査です。最も一般的な検査方法とされています。

 

目視検査は特別な機材を必要とせず、人員がいればすぐに実施できます。一方で、人の感覚に頼る作業であるため、どれほど慎重に行ってもミスや見落としを防ぐことは非常に困難です。

 

目視検査を行う環境の照明が暗かったり、検査員の疲労が蓄積されていたりすると、検査精度に影響が出ることがあります。また検査員の判断基準に違いがあり、検査結果にばらつきが生じる場合もあります。目視検査でのミスや見落としを防ぐには、作業環境の改善、適切な休息を確保できる作業時間の管理、判断基準の標準化とトレーニングが必要です。

 

目視検査は目で見て確認する作業であるため、照明は重要なポイントです。照明の目安がわからない場合は、JIS規格で定められている照度基準を参考にしましょう。

 

目視検査で判断が難しいケースについては、良品や不良品の見本となる画像や動画を用意するとよいでしょう。目視検査の際に写真や動画で記録を残し、後の検査で判断に悩んだときに利用するのも方法の一つです。

 

現場で作業する従業員が困らないように、動画マニュアルを導入して、目視検査の方法の確認や精度向上を目指す企業も増えてきています。動画マニュアルの詳細は以下のページより資料がダウンロードできます。

 

標準サンプル品との比較検査

標準サンプル品との比較検査とは、規格通りに作成されたサンプルと生産ラインで製造された製品を比較して、異なる部分がないかを調べる検査です。

 

標準サンプル品との比較検査は目視検査の一環として実施される場合もあります。標準サンプル品を用いると、見た目に加えて製品の触感や動作音などの比較も可能になり、製品を標準サンプル品に近づけることで品質の安定が期待できます。

 

比較検査の精度を高めるには、複数の標準サンプル品を用いることが有効です。標準サンプル品が複数示されていると、許容範囲が明確になり、微妙な違いを判断できるようになります。検査員ごとの判断基準のばらつきの是正にも役立つでしょう。

 

標準サンプル品との比較検査では、チェックリストを作成して検査を行うと効率的に作業を進められます。また、標準サンプル品との比較検査も人が行う作業であるため、ミスや見落としは起こり得ます。ダブルチェックを実施して、ヒューマンエラーの低減を目指しましょう。

 

さらに、標準サンプルに加えて限度見本と不良見本を用意することで、検査精度の向上を図れます。限度見本とは、良品の品質的な限界、つまり「ここまでは良品」といえる基準を示した製品サンプルです。一方で、不良見本は「ここからは不良品」という不良品の基準を示した製品サンプルを指します。

 

製造の際、仕上がった製品にブレが生じることは多々あります。中にはブレの幅がわずかであり、良品と不良品の判断が難しい場合もあるでしょう。このわずかなブレの良し悪しを検査員個人の判断に任せていると、製品品質が安定しません。

 

そのため、品質の均一化を目的に用いられるのが、限度見本と不良見本です。標準サンプルに加えて限度見本と不良見本があれば、検査員ごとの判断基準のばらつきを抑制できます。

 

その上、これらの見本は無駄な不適合品の低減にも役立ちます。規格の数値との誤差はあっても、機能に問題はない製品は少なくありません。限度見本と不良見本で許容できる誤差の範囲を示すことで、不適合とされて無駄になる製品数を抑えることも可能です。

寸法検査

寸法検査とは、製品の寸法を測定して、あらかじめ設定された交差内に収まっていることを確認する検査を指します。寸法検査では、ノギスやマイクロメータ、ダイヤルゲージなどの測定器、画像測定機や三次元測定機などの検査機械を使用して寸法を測定します。

 

ノギスやマイクロメータ、ダイヤルゲージなどを使用する場合、人が測定器を手に持って計測しなければなりません。そのため、測定器を製品に当てる位置や角度により結果に違いが出る可能性があります。

 

また測定箇所が多い場合は、結果を得られるまでに時間がかかります。これらの課題をクリアするには、測定手順を標準化し、検査員の技術力を高めることが必要です。

 

一方で、画像測定機などの検査機械を用いると、高精度な結果を迅速に得られます。ただし、導入にコストがかかり、操作や保守には専門的な知識と技術が求められます。

梱包状態検査

梱包状態検査とは、梱包が適切に行われているかを確認する検査のことであり、製品を取引先へ無事引き渡すために重要な検査です。

 

梱包状態検査では、外箱に傷や汚れ、変形がないか、製品が緩衝材で適切に保護されているか、配送中に製品が動かないように固定されているかなどを確認します。製品に取扱説明書や付属品を同梱する場合は、必要なものがそろっているかも梱包状態検査時に確認することがあります。

 

緩衝材は、多く使えばよいというわけではありません。緩衝材や梱包材の過剰使用はコストの増加につながります。そのため、梱包状態検査では、製品の特性に合わせて緩衝材や梱包材を適切に使用できているかも確認します。

 

とくに、輸出品の場合は外箱の破損が発生しやすいことから、十分な強度を備えた外箱や、機能性が高い緩衝材を使用するといった工夫が必要です。

出荷検査を確実に行い、不良品の流出を防ごう

出荷検査は、取引先に製品を納品する前に行う最後の品質検査です。品質検査は原材料の受け入れ時や製造工程、製品完成時にも行われます。しかし、これらの検査で見逃されていた不適合品や製品完成後に劣化した不良品を排除するためは、出荷検査は欠かせない工程です。

 

不良品を引き渡してしまうと、取引先からの信用を失うばかりか、消費者に危害を与えるリスクも生じます。出荷検査により得られた不良品のデータを製造工程の改善に役立てれば、不良品の発生そのものを低減させることも可能です。出荷検査で不良品を確実に排除して、自社の信頼性を高めましょう。

 

電子化帳票システム「カミナシ レポート」を使えば、出荷検査の効率化や標準化も進みます。記録の入力は、選択式や写真での撮影、フリーテキストなど出荷検査の項目に応じて自由にカスタマイズできます。以下のボタンから概要資料がダウンロードできます。

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