製造業の品質検査とは? 種類や具体的な方法、 信頼・品質向上に繋がる3つの方法を紹介

製造業において、品質検査は顧客満足度を左右する重要なプロセスです。多くの工場長や生産ラインのリーダーは取引先や市場からコスト削減と納期短縮が求められる中で、良い品質を保ちながら、ニーズに応えるために日々努力しているのが現状でしょう。

 

品質検査は、製造業における品質管理業務の一部であり、製品の品質を直接評価する役割を担っています。検査タイミングによって受け入れ検査や工程検査、最終検査に分けられ、各段階で適切な検査を行うことで製造プロセス全体を通じて一貫した品質管理が可能になります。

 

また検査装置の自動化や検査記録のデジタル化、品質検査方法の動画マニュアル化を進めて、品質検査を正確かつ効率的に実施できるようになった事例も多くあります。

 

本記事では、品質検査の効率化と精度向上を両立させるための方法論に焦点を当て、品質検査の概要や具体的な検査方法、効率化するポイントを紹介していきます。食品製造や機械製造など、業界を問わず適用できる方法を解説します。

品質検査とは

品質検査は、品質管理業務の中の一つです。品質管理は主に工程管理と品質検査、品質改善」の3つに大別されますが、その中で「品質検査」は、製品が既定(性能やサイズ、重さなどの基準)に適合しているかを判断(確認)する工程です。

 

品質検査は、大きく分けて「外観検査」と「機能検査」の2種類があります。外観検査は、製品の見た目や形状、色彩などを目視やカメラを使って確認する方法です。傷や変形、異物混入といった外観上の不具合を発見するのに効果的です。

 

一方、機能検査は製品の性能や動作を確認する方法で、電気特性、耐久性、精度などを測定し、設計仕様を満たしているかを検証します。

 

2種類の品質検査を適切に実施することで、不適合品がお客様の手に渡るリスクを大幅に低減でき、結果として製品事故やクレームの防止につながり、企業の信頼獲得につながります。

 

しかし、品質検査の体制構築に過度にコストを掛けすぎると、製造費用と売上のバランスが崩れ、必ずしも企業の成長になるとは限りません。

 

従って、効果的な品質検査とは、製品品質の確保と経済性のバランスを取りながら、最適な検査体制を構築することにあります。

検査タイミングよる分類

品質検査は、その実施タイミングによって目的や対象が異なります。製造プロセスの各段階で適切な検査を行うことで、品質管理の効率と効果を最大化できます。検査タイミングによる品質検査の分類を以下の表にまとめました。

 

品質検査の名称

対象

目的

受け入れ検査

原材料や半製品

供給元から受け取った材料や部品の品質を確認して不良品の混入を防ぎ、製造プロセスの品質を上流から保証する

工程検査

仕掛品

製造過程の各段階で品質をチェックし、不良品の早期発見と工程の安定性を確保するとともに、問題の即時対応と品質のばらつきを最小限に抑える

最終検査

完成品

製品が全ての品質基準を満たしているか最終確認を行い、不良品の出荷を防止することで、顧客満足度の維持と企業の信頼性向上を図る

検査タイミングよる品質検査の分類

 

各タイミングで検査を実施することで、製造プロセス全体を通じて一貫した品質管理が可能になります。

 

受け入れ検査で原材料の品質を確保し、工程検査で製造中の問題を早期に発見・対処し、最終検査で製品の完成度を保証するという流れは、効率的で信頼性の高い品質管理システムの基盤となります。

受け入れ検査

受け入れ検査とは、外部から調達した原材料、部品、半製品などを生産工程に投入する前に行う品質チェックを指します。この検査の主な目的は、不適合品の混入を防ぎ、製造プロセス全体の品質を確保することにあります。

 

具体的には、寸法、外観、機能、性能などの項目を、サンプリングや全数検査によって確認します。食品製造業であれば衛生状態に問題はないか、異物が混入していないか、機械製造業であれば破損や変形、変色などの不具合はないかなども併せてチェックします。受け入れ検査を行うことで後工程での不良発生リスクを低減し、生産効率の向上にもつながります。

 

受け入れ検査を行う際の注意点として、以下が挙げられます。

 

  • 適切なサンプリング方法の選択
  • 明確な合格基準の設定
  • 供給元との品質基準の共有と協力体制の構築

 

上記の点に留意しながら受け入れ検査を実施することで、より効果的な品質管理が可能となり、最終製品の品質向上が図れます。

 

▶ 受入検査の具体的な方法と精度を高めるための方法の詳細はこちら

  製造業で重要な受け入れ検査とは?目的や確認項目、精度を高める4つのコツを紹介

工程検査

工程検査とは、仕掛品(製造途中の製品)の品質や規格適合性を検査し、製造プロセスの各段階で品質を確認することです。具体的には、寸法精度、外観、機能性能などを検査し、不良品の早期発見と製造工程の安定性確保を図ります。

 

この検査の主な目的は、不良品を早期に検出して対策を講じ、品質のばらつきを最小限に抑えること、そして最終製品の品質を向上させることにあります。

 

工程検査を効果的に実施するには、適切な検査のタイミングと頻度を設定し、統計的手法を用いて効率的にサンプリングを行うことが大切です。また検査基準を明確に定め、標準化することで一貫性のある検査が可能になります。リアルタイムでデータを分析し、問題に迅速に対応する体制を整えることも重要です。

最終検査

最終検査は、製品の外観、機能、性能、安全性などを総合的にチェックし、不良品の出荷を防ぐ役割を持った完成品の確認作業です。この工程は製造プロセスの最後の砦として重要な役割を果たします。具体的には、寸法測定、動作確認、耐久テスト、外観検査などを行い、製品が全ての品質基準を満たしているかを厳密に確認します。

 

最終検査の主な目的は、顧客満足度の維持向上、企業の信頼性確保、そして製品事故やリコールの防止にあります。また、この段階で得られた情報を製造プロセスにフィードバックすることで、継続的な品質改善にもつなげることも重要です。

 

最終検査を効果的に行うための注意点としては、検査基準の明確化と厳格な適用、検査員の高度な技能維持、適切なサンプリング方法の選択が挙げられます。

 

さらに、トレーサビリティの確保や、検査データの適切な記録・管理も重要です。これらの点に留意しながら最終検査を実施することで、高品質な製品の安定供給が可能となり、顧客からの信頼獲得につながります。

 

▶ トレーサビリティの概要とシステム導入時の注意点を解説した記事はこちら

  食品・機械製造業におけるトレーサビリティとは?メリットと活用例を紹介

品質検査の具体的な方法

品質検査にはさまざまな方法があり、製品の特性や生産規模に応じて適切な手法を選択することが重要です。主な検査方法として、以下のようなものが挙げられます。

 

  • 全数検査
  • 抜取検査
  • 間接検査
  • 無試験検査

 

これらの手法を適切に組み合わせることで、効率的かつ効果的な品質管理が可能となります。以下で詳しく解説します。

全数検査

全数検査とは、製造された全ての製品を一つ一つ検査する方法です。製品の外観、機能、性能などを漏れなくチェックすることで、不適合品の流出を最小限に抑えられます。全数検査は、不適合品を出さないという観点からは理想的な検査方法と言え、品質保証の面では最も信頼性が高い方法です。

 

しかし、全数検査には膨大な時間と費用がかかるという課題があります。製品一つ一つを丁寧に検査するため、生産性が低下してコストが増大してしまうため、一般的な製造プロセスでは全数検査は基本的に行われません。代わりに、効率的な抜取検査などが採用されることが多いのが現状です。

 

ただし、医療機器や航空機部品など、一つの不適合品も許されない重要な製品の場合は、全数検査の実施を検討する必要があります。製品の重要度、要求される品質レベル、コストなどを総合的に判断し、適切な検査方法を選択することが重要です。

抜取検査

抜取検査とは、製品ロットから一部のサンプルを抽出して検査を行い、その結果に基づいてロット全体の品質を判断する方法です。全数検査に比べて効率的で、時間とコストを節約できる利点があります。

 

JIS(Japanese Industrial Standards:日本産業規格)は、抜取検査を以下の3つに分類しています。

 

抜取検査の分類

詳細

​​計数値抜取検査

製品の良否を数えて判定する方法

100個のサンプルから不良品の数を数え、その数が基準値以下なら合格とする

計量値抜取検査

製品の特性値を測定して判定する方法

重量や長さなどの数値データを収集し、統計的に評価する

調整型抜取検査

検査の厳しさを過去の結果に基づいて調整する方法

良好な結果が続けば検査を緩和し、不良が増えれば厳しくするなど

JISが定める抜取検査の分類

 

これらの方法を適切に選択・組み合わせることで、効率的かつ信頼性の高い品質管理が可能となります。

 

とは言っても、検査記録を残す紙の帳表を用意するのにも時間が掛かると思います。そのような場合、紙の帳表の電子化を検討してみても良いかもしれません。検査記録のデジタル化により、月の検査書作成時間が33時間も削減できた事例と電子化システム「カミナシ レポート」の概要資料は以下のボタンからダウンロードできます。

間接検査

間接検査とは、メーカーなどの取引先が実施した検査結果を書面でもらい、それを正として受け入れ検査を省略する方法です。

 

間接検査のメリットは、検査にかかる時間とコストを大幅に削減できることです。また、専門的な検査設備が不要となり、受け入れプロセスが簡素化されます。

 

一方、デメリットとしては、取引先の検査精度に依存するため、品質管理の主導権が弱まる可能性があります。

 

間接検査は、長期的な取引関係がある信頼できる取引先や、高度な専門性を要する検査項目がある場合などに特に有効です。

 

ただし、重要な品質特性や安全性に関わる項目では、自社でも確認検査を行うなど、慎重な運用が必要です。取引先の品質管理体制を定期的に確認し、必要に応じて抜き打ち検査を実施するなど、バランスを取りながら品質管理業務の一部として活用しましょう。

無試験検査

無試験検査とは、実際の試験や検査を行わずに、過去の実績や信頼性データに基づいて製品の品質を判断する方法です。この方法は、長期間にわたって安定した品質が確認されている製品や、信頼性の高い供給元からの部品などに対して適用されます。

 

無試験検査は主に以下のような場合に活用されます。

 

  • 長期間にわたり不良品が発生していない製品の場合
  • 供給元の品質管理システムが十分に信頼できる場合
  • 製品の重要度が比較的低く、万が一の不具合が大きな影響を及ぼさない場合

 

ただし、無試験検査を採用する際は、定期的な品質確認や抜き打ち検査を併用するなど、慎重なアプローチが必要です。また、製品の重要度や市場の要求品質の変化に応じて、検査方法を適宜見直すことが重要です。

品質検査の性質「破壊検査」と「非破壊検査」

品質検査を実施する上で重要な性質として、破壊検査と非破壊検査という2つの性質があります。2つの性質の違いを理解することで、より効果的な検査方法の選択が可能となります。

 

 

破壊検査

非破壊検査

概要

実際に製品を使用/分解し、性能や耐久性などを確認する方法

製品は使用せずに検査する方法

・食品の細菌検査

・金属の引張強度試験 など

・X線検査

・超音波検査

・目視検査 など

メリット

製品の実際の性能を直接確認できる

製品を損なわずに検査できる

デメリット

検査対象が使用不可能になる

内部の詳細な状態を確認しづらい

 

破壊検査とは、製品を実際に使用したり分解したりすることで、その性能や耐久性を確認する方法です。例えば、食品の細菌検査や金属の引張強度試験などがこれに該当します。破壊検査は製品の実際の性能を直接確認できる利点がありますが、検査対象が使用不可能になるというデメリットもあります。

 

また、破壊検査の一種として、代用特性による検査があります。代用特性とは、直接測定したい特性の代わりに、それと相関関係のある別の特性を測定することを指します。例えば、製品の寿命を直接測定する代わりに、関連する材料の硬度を測定するなどです。この方法は、破壊により時間や費用など多額のコストが発生する場合などで用いられます。

 

一方、非破壊検査は製品を破壊せずに検査を行う方法です。X線検査、超音波検査、目視検査などがこれに該当します。非破壊検査は製品を損なわずに検査できる利点がありますが、内部の詳細な状態を確認しづらいという制限もあります。

信頼・品質向上に繋がる品質検査の方法

信頼・品質向上に繋がる品質検査には、以下の3つの方法が効果的です。


  1. 検査記録のデジタル化
  2. 品質検査方法の動画マニュアル化
  3. 検査装置の自動化・機械化

 

上記の方法を適切に組み合わせることで、品質検査の精度と効率を大幅に向上させ、品質管理システムの強化につながります。以下で詳しく解説します。

検査記録のデジタル化

食品製造業などでは、金属探知機以外の検査で人の手による作業が不可欠な場合があります。そのような場合、記録のデジタル化を進めることが、品質検査の信頼確保と正確性向上につながります。。

 

受け入れ検査や工程検査などの記録を紙で取っている場合、記録漏れや転記ミスが発生する可能性があり、品質検査が正しく行われたかどうかが疑われる事態に陥る恐れがあります。そのため、記録の抜け漏れをなくし、品質検査が確実に実施されていることを示す記録を残すことで信頼性を高められます。

 

群馬ミート株式会社では、従業員の健康チェックや検品記録、細菌検査、拭取り検査、落下菌検査などの作業記録をカミナシに移行しました。この取り組みにより、以下の成果を達成しました。

 

  • チェックシートやラベルの用紙削減:年間のチェックシート10,000枚以上、ラベル25,000枚以上を削減
  • 業務負担の軽減:ラベル発行の省略により1日約20分の業務時間を削減
  • 記入ミスの低減:チェックシートへの記入ミスや記入漏れがほぼゼロに

 

この事例から、検査記録のデジタル化が品質管理の信頼性向上や顧客満足度の改善にもつながることが分かります。簡単にデジタル帳票を作成でき、操作方法もすぐに覚えられる「カミナシ レポート」の概要資料は以下からダウンロードできます。

 

品質検査方法の動画マニュアル化

品質管理の効率化と精度向上には、設備や記録のデジタル化に加え、検査作業に関わる従業員の教育や参照用マニュアルの整備が極めて重要です。

 

しかし、現状では検査作業が昔ながらのKKD(勘・経験・度胸)に頼っていたり、ベテランスタッフにしかできない「属人化」が課題となっていることも少なくありません。これらの問題を解決する有効な方法の一つが、品質検査方法の動画マニュアル化です。

 

動画マニュアルには、内容を視覚的に理解でき、文字だけでは伝わりにくい細かな動作や手順が明確に伝えられるメリットがあります。また、全従業員が同じ手順を視覚的に学べるため、作業の標準化にも寄与します。新人教育の時間短縮と品質の向上も可能となり、外国人労働者にとっても理解しやすいツールです。

 

 

一方で、動画マニュアルにはデメリットも存在します。初期投資として時間と費用がかかる点や、頻繁な変更がある場合に都度撮影し直す必要がある点が挙げられます。また、視聴のためのデバイスや環境整備が必要となり、機密情報を含む場合はセキュリティリスクにも注意が必要です。

 

これらのメリットとデメリットを十分に考慮し、自社の状況に合わせて動画マニュアル化を進めることが重要です。

検査装置の自動化・機械化

品質検査におけるミスを減らし、精度を向上させる効果的な方法として、検査自体の自動化・機械化もあります。検査装置の自動化・機械化することで、人為的なエラーを最小限に抑え、一貫性のある高精度な検査を実現できます。

 

現代のAI技術の発展により、従来は人間の目に頼っていた検査作業も自動化が可能になっています。例えば、最終検査で行う「ラベルチェック」を画像認識機能のあるAI技術を使用することで、ミスを最小限に抑え確認作業ができます。

 

AI技術を活用した検査の自動化が、効率性、精度、安全性、そしてコスト面で大きな利点をもたらします。

品質検査を正しく理解し、正確な実施方法を自社に落とし込もう

本記事では、製造業における品質検査の重要性と具体的な実施方法、信頼・品質向上に繋がる3つの方法について詳しく解説しました。

 

品質検査は、製品の信頼性を確保し、顧客満足度を高める上で不可欠なプロセスです。品質検査には受け入れ検査、工程検査、最終検査(出荷検査)などその実施タイミングによって目的や対象が異なり、製造プロセスの各段階で適切な検査を行うことが重要です。

 

また品質検査の精度向上と効率化のために、検査装置の自動化検査記録のデジタル化品質検査方法の動画マニュアル化などを導入することで、品質検査の精度と効率を大幅に向上させられます。

 

重要なのは、これらの知識や方法を自社の状況に合わせて適切に落とし込むことです。製品特性、生産規模、人的リソース、既存のシステムなどを総合的に考慮し、最適な品質検査体制を構築することが求められます。

 

記事で紹介した方法を参考に、自社の品質検査プロセスを見直し、継続的な改善を図ることで、製品品質の向上と顧客満足度の増大、そして企業価値の向上につなげられます。

 

 

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