点検表の電子化で得られる5つのメリット。業務効率化・標準化できた3つの事例を紹介

点検表は製造業や建設業、飲食業、運輸業などの幅広い業界で日常的に使用されています。その目的は、設備や機器のトラブルを防ぎ、業務が安全に遂行できることを確認することにあります。従って、正確な記録を確実に残し、必要に応じてすぐに参照できるように管理しておくことが大切です。

しかし、点検表を紙で管理している場合、抜け漏れや記録ミスに気づきにくいことや、記録の管理に手間がかかるといった問題が発生します。そのため、紙で運用している点検表を電子化(デジタル化)する企業も少なくありません。

そこで本記事では、紙の点検表の課題を明らかにした上で、点検表の電子化により得られるメリットを解説します。さらに、点検表の電子化により業務改善に成功した企業の事例も紹介するので、点検表の電子化を検討している方はぜひ参考にしてください。

 

紙の点検表を使用する上でよく挙がる課題

点検表には、食品・機械製造業の工場において機器や設備に不備や異常がないか確認するために使用する設備点検表、物流・運輸業界で運転手が車両の安全性を確認するために用いる日常点検表、エネルギー・インフラ業界で定期的に設備の状態を確認するために使われる保守点検表などがあります。

 

これらの点検表を紙で記録、管理している場合、次のような問題が発生します。

 

  • 点検表の管理に手間がかかり、業務効率が低下する
  • データ分析に時間を要し、迅速な改善が難しい
  • 点検漏れや記入ミスにより、事故リスクが高まる
  • 点検後、報告書を提出するために事務所に戻る無駄な移動時間が発生する
  • 手書きのため内容確認や転記時にデータ入力に時間がかかり、ミスが起こりやすい
  • 点検表をもとにした報告書作成に手間がかかる

 

点検表は業務を安全に行うために欠かせないものですが、紙で運用している場合は、業務効率を低下させ、事故リスクを高める要因になることがあります。そのため、点検表を紙から電子化(デジタル化)する企業が増えています。

点検表を電子化することで得られる5つのメリット

点検表の電子化により得られる主なメリットは、次の5つです。

 

  1. 正確なデータを確実に残せる
  2. 記録の抜け漏れがなくなり、確認や承認時の手間が減る
  3. 場所を問わずに、現場の情報を管理できる
  4. 管理者への提出、確認、承認などが効率化できる
  5. 記録が楽になり、記録者の負担が減る

1.正確なデータを確実に残せる

点検表を電子化することで、記録者による記載方法のばらつきや点検表の紛失がなくなるため、信頼性の高いデータを確実に蓄積できます。

 

手書きで記録する紙の点検表では、記録者により記載方法が異なることがあります。例えば点検項目に問題がない場合でも、丸を記入する人がいればチェックマークを付ける人もいるでしょう。また、文字が読みにくかったり、書き間違いがあったりすると正確性に欠けるため、点検表本来の役割が果たせません。

 

記録を重ねて点検表の量が膨大になれば、管理に手間がかかったり、必要な情報がすぐに見つからなかったり、さらには点検表を紛失してしまったりします。

 

しかし、点検表を電子化すると記入方法が統一され、記録の紛失も防げるため、正確なデータを確実に残せます。また、電子化された情報は検索も容易になり、必要な記録をすぐに検索して、閲覧することも可能です。その結果、取引先からの要求や、規格・認証取得時の監査にもスムーズに対応できるようになります。

2.記録の抜け漏れがなくなり、確認や承認時の手間が減る

電子化された点検表には、エラーメッセージ表示やアラート通知などの警告機能が備わっており、記録の抜け漏れや記入ミスなどのヒューマンエラーを防止できます。結果として、管理者の確認作業の負担が軽減されます。

 

紙の点検表では、記入欄がずれていたり未記入の欄があったりしても見落とされがちです。しかし点検表を電子化して、未記入の欄や記入ミスがある場合にエラーメッセージを表示し、記入時間に通知するように仕組み化すれば、記入漏れがなくなります。結果的に管理者も確認や承認作業もスムーズに行えます。

 

過去のデータがすべて保存されていれば、万が一トラブルが発生した場合でも迅速に原因を特定し、被害拡大の阻止や再発防止策の立案などの素早い対応が可能になります。そのため、点検表の電子化はトレーサビリティの向上にも貢献します。

3.場所を問わずに、現場の情報を管理できる

点検表を電子化すると、デジタルデバイスでいつでも、どこでも簡単に情報の閲覧や管理ができるようになります。

 

紙の点検表を使用している場合、管理者が内容を確認するためには、点検表を保管している場所まで足を運ばなければなりません。他の工場や外出先で点検表の内容を確認したい場合もすぐに閲覧できず、業務が滞ることがあります。

 

点検表を電子化すると、スマートフォンやタブレット、パソコンなどの各種端末からデータにアクセスできるようになります。管理者は、場所を問わずに点検記録を確認できるため、点検表の保管場所へ移動する時間や費用を削減にもつながります。

 

加えて、複数人が同じ記録を同時に確認できるため、情報共有がスムーズになります。その結果、異常の早期発見や迅速なトラブル対応も可能になります。

4.管理者への提出、確認、承認などが効率化できる

点検表を電子化すると、現場で点検内容を入力し、ボタン一つ押すだけで管理者への提出までが完了します。そのため、記録者が管理者のもとへ足を運び、点検表を提出して承認を得る手間が削減できます。

 

紙の点検表の場合、記録者は現場で記入した点検表を管理者のもとへ持参し、承認を得なければなりません。現場責任者や部門長など複数の管理者が関わっていれば、点検表の承認を得るのに多くの時間が割かれてしまいます。

 

一方で、電子化された点検表では、作業場ですぐに提出でき、管理者は任意のタイミングで確認や承認ができます。点検表を提出したり、承認を待ったりする時間を本来の業務に充てることで、長時間労働の解消や生産性の向上が期待できます。

 

電子化された点検表は、承認プロセスのスピードアップにも寄与します。そのため、トラブル発生時の迅速な対応や改善が可能になります。

5.記録が楽になり、記録者の負担が減る

点検表が電子化されると記録作業が簡略化され、記入にかかる手間や時間が少なくなり、記録者の負担が軽減されます。

 

情報の統一性を担保するため、点検表では項目ごとに決められたフォーマットでの記入が求められます。電子化された点検表であれば、入力項目を選択式にすることで、情報の統一性を保ちながら入力作業の簡略化が可能です。

 

テキストで入力する際も、テンプレートを活用すれば入力時間を短縮できます。スマートフォンやタブレットで撮影した写真をそのまま点検記録として残せることも、電子化のメリットです。

 

また、点検表に判断基準となる画像や図を添付することで、現場に慣れていない記録者でもスムーズに点検作業を行えるようになります。判断基準が統一されて記録者によるばらつきがなくなり、データの正確性が高まることも期待できます。

点検表の電子化で業務効率化・標準化できた3つの事例

ここからは、点検表の電子化により、業務の効率化や標準化に成功した企業の事例を3つ紹介します。自社で使用してる点検表の電子化を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

紙の点検表を電子化し、承認時に発生していた行列を解消

株式会社キンレイは、金属線をねじり合わせたケーブルやハーネスなどを作るための機械「撚り線機」を製造する企業です。

 

同社では、始業時に行うフォークリフトなどの使用前点検に紙の点検表を利用していました。点検表は管理者の承認が必要であるため、毎朝の点検後、管理者の前には点検者の行列ができていました。承認作業だけでも1日あたり75分もの時間がかかっており、承認待ちの時間と管理者の確認作業に毎日多くの時間が費やされていました。

 

そこで、承認にかかる時間を削減して業務をスムーズにスタートするため、同社は点検表の電子化に踏み切りました。

 

点検表を電子化した結果、毎朝の承認待ちの行列が解消され、点検後すぐに業務を開始できるようになりました。以前までおこなっていた、紙の点検表の印刷や配布、回収がなくなったことが大きな成果です。

 

さらに同社では、電子化のメリットである写真による記録も活用しています。逸脱状況を写真で記録に残すことで、管理者も状況を正確に把握できるようになり、トレーサビリティの向上にもつながっています。

 

点検表の電子化は、無駄な時間の削減や業務の効率化を実現しただけでなく、企業全体のデジタル化を進める足掛かりにもなりました。同社は90年以上の歴史を持つ企業であり、経営者は古い業務スタイルに固執することへの危機感を抱いていました。しかし、点検表の電子化の成功を契機に、スマートファクトリー化に向けて前向きに取り組み始めています。

運転手が記録する日常点検表を電子化したことで、従業員の安全への意識が高まる

鴻池運輸株式会社は、国内外の物流サービスや製造・サービス業の請負業務などを担う総合物流企業です。

 

同社は、トラックの日常点検に紙の点検表を使用していました。物流業界では人材不足が慢性化しており、同社でもトラックドライバー未経験者の採用を増やしていましたが、車両の状態を判断するには経験が必要であり、ドライバー未経験者には点検が困難でした。

 

また、ドライバーが乗車するトラックは日々変わり、常時稼働している車両もあるため、車体の擦り傷のような詳細な情報の共有が難しいことも課題でした。車両に不備があっても口頭で報告されており、紙の点検表は形骸化していました。

 

そこで同社は、点検表の電子化をしました。電子化された点検表には、チェックすべき箇所を分かりやすく示した写真やイラストを添付し、新人でも点検業務を行えるように工夫しています。

 

さらに点検表の電子化により、月1,000枚程度使用していた紙が削減され、点検表の承認や管理に必要な手間もほぼなくなりました。従業員からは「もう紙の時代には戻りたくない」という声まで上がっています。

 

電子化による最も大きなメリットは、従業員の意識の変化です。点検内容を写真とともに簡単に記録できるようになり、情報の閲覧も容易になったことで、日常点検の重要性が正しく認識され、安全に対する意識も向上しました。点検表の電子化による成果を踏まえ、同社では他の業務についても順次デジタル化を進めることを検討しています。詳しい内容は以下の資料をダウンロードするとご覧いただけます。

 

紙の点検表ではできなかった写真挿入の電子化を実現し、ミス防止へ

株式会社ジェイテクトエレクトロニクスは、車載用電子機器やFA制御システムなどを製造販売する企業です。同社ではデジタル技術を活用した省力化を進めており、その一環として工場で使用する点検表の電子化に取り組みました。

 

同社は、印刷、掲示、回収、確認、保管など、紙の点検表の管理に関わる業務負担を課題として挙げていました。さらに点検表の保管スペースの不足や、環境への配慮から紙の削減が望まれたことも、点検表の電子化の後押しになりました。

 

初物終物点検表や製造設備点検表などの電子化により、さっそく製造アイテム分類1つあたり約500枚の紙を削減につながっていますさらに点検表の管理業務も省略され、業務の大幅な効率化に貢献しました。

 

中でも、電子化により点検表への写真挿入が可能になったことは、業務効率化に大きな影響を与えています。点検表に写真を加えることで、チェックすべき箇所を確認しながら点検作業を進められるようになりました。そのため、異常の正確かつ詳細な報告と情報共有が可能になり、ミスやトラブルの防止につながっています。

 

同社では省力化のさらなる推進を目的に、今後は点検表だけでなく、作業マニュアルや指示書なども電子化を進める予定です。

 

点検表の電子化で業務効率化と標準化を両立を

点検作業は安全な業務の遂行に欠かせないものです。しかし、紙の点検表での記録や管理は、業務効率を低下させ、かえって事故リスクを高める可能性もあります。業務効率の低下を防ぎつつ、点検作業の効果を最大限に引き出すには、点検表の電子化を進めることが重要です。

 

点検表の電子化は記録作業や承認プロセスを簡略化し、情報の共有や検索を容易にするため、業務の効率化につながります。さらに、統一されたフォーマットやテンプレートを活用し、点検表に判断基準を示す写真や図を加えることで、点検作業の標準化も進みます。

 

本記事で紹介した事例のように、点検表の電子化に取り組んでいる企業は少なくありません。点検表をデジタル管理している企業は、電子化のメリットを実感しています。点検表を電子化して、業務の効率化と標準化を実現しましょう。

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