食品工場での異物混入対策とポイント|事例や発生時の対応方法まで解説

食品製造業では異物混入が要因となる製品回収や消費者信頼の低下など、深刻な問題を引き起こす可能性があります。このため、異物混入対策は食品工場の経営者や工場長にとって不可欠な検討事項といえるでしょう。

 

本記事では、全国10,000以上の現場の品質管理DXを支援するカミナシが、異物混入の要因別事例と対策、異物混入が発生した際の対応方法、そして異物混入を防ぐ仕組みの構築について解説します。

 

異物混入対策の重要性

食品製造業において、異物混入対策は極めて重要な課題です。異物混入が発生すれば企業の信頼性を大きく損なうだけでなく、消費者の健康や安全にも直結します。食品は直接人々の口に入るものであり、異物混入によって重大な健康被害を引き起こす可能性もあるのです。

もし異物混入が発覚した場合、企業は信頼を回復するために高いコストと時間を費やさなければなりません。製品の回収にもコストがかかりますし、製造ラインの停止は売上の低下に直結します。さらに、消費者からの信頼を損ねてブランドイメージが毀損されるため、消費者の購買意欲の低下による売上低迷にも繋がります。このように、商品回収などためのコストや売上低下による経済的損失は計り知れません。

したがって、異物混入対策をしっかりと行うことで上記のようなリスクを低減するとともに、もしも起こってしまった時のことを想定し、対応方法を検討しておくことが重要です。徹底的な品質管理と異物混入リスクの分析を通じて、原因を根本的に解消し、発生を防ぐ仕組みを構築することが必要になります。つまり、企業の未来を守り持続可能な成長を遂げるためには、異物混入に対する絶え間ない取り組みが不可欠なのです。

異物混入の要因別事例と対策のポイント

異物混入の要因は多岐にわたり、要因ごとに対策をしておく必要があります。ここでは食品業界において発生している異物混入の事例を解説するとともに、一般的な要因別対策について解説いたします。

どんな異物混入事例が多いか

平成28年12月~令和元年7月にかけて実施され、厚生労働科学研究データベースにて公開されている『全国における食品への異物混入被害実態の把握』の報告書によると、調査期間内でもっとも異物混入の報告件数が多かったのは「鉱物性異物-金属」でした。以降は「動物性異物-人毛」「合成樹脂類-その他樹脂」「虫-その他の虫」と続きます。

 

混同異物内訳

出展:全国における食品への異物混入被害実態の把握

 

また、食品の品目による発生件数は「調理済み食品」が52.2%と半数以上を占めており、圧倒的です。以降は「菓子類」「農産加工品」と続きます。

 

「調理済み食品」への混入が多い理由として、報告書内では

 

本調査において「調理済み食品」に分類される食品の幅が広いこと、「調理済み食品」が消費者に 提供されるまでには、例えば水産食品や 畜産食品と比べて工程が多く、異物が混 入する機会が増えることが可能性として挙げられる。

 

としています。

 

異物混入した食品分類内訳

出展:全国における食品への異物混入被害実態の把握


品目によって混入するものや製造工程の違いによるリスクの大小には違いが出てくるため、異物混入対策は自社の製造品目に合わせてしっかりと対策を打つことが重要です。以下では、一般的な異物混入の事例に合わせて対策方法を解説いたします。

 

原料が原因の異物混入と対策

食品工場においては、原料にそもそも異物が付着しているケースも多く見受けられます。具体的な事例として、供給業者が十分な品質管理を行っていなかったり、適切な検査が行われていなかった場合に原料に虫などの異物が混入することが考えられます。


また、全ての原料を細かく検査することが難しく、サンプルをピックアップして検査を行う場合もあるでしょう。検査対象であるサンプルには問題がなかったとしても、その他のものに付着してしまっているなどのケースも想定されます。

原料が原因の異物混入のリスクを低減するためには、入荷時の厳格な検査をするとともに、入荷前の原料の生産・保管の環境をしっかり確認しておくことが必要です。供給業者との信頼性の高い連携を築くことで、異物混入リスクを最小限に抑えることができるでしょう。

人が原因の異物混入と対策

発生しやすいものの一つとして、髪の毛の混入が挙げられます。例えば、食品製造の現場で働く作業員の方が適切に作業着を着用せず、髪の毛が製品に混入するといったケースが考えられます。こうした状況を防ぐためには、服装に関するルールを定めるとともに、従業員に清潔な作業環境を保つことの重要性を徹底的に説明し、適切な作業着の着用の教育を実施することが求められます。

また、着用方法の教育だけでなく、適切なチェック体制を構築することも重要です。近年では、身だしなみのチェックなどをタブレットや携帯で記録をし、より正確に情報を記録・蓄積できるサービスなども出現してきています。

施設・設備が原因の異物混入と対策

施設や設備における異物混入は、機械の部品が摩耗したり、設備の不具合によって異物が製品に混入する事例が考えられます。例えば、製造機器の経年劣化により、機械の一部が混入するなどのケースです。


機械の部品の劣化や摩耗による異物混入リスク低減には、これらの箇所を注意深く点検し、必要に応じてメンテナンスを実施することが求められます。もしも製造過程で機械の異常が検知された場合は速やかな報告と対応が不可欠です。組織全体での報告体制の整備や従業員へのトレーニングをすることで、効果的な異物混入対策が実現できるでしょう。

他にも、通気口などから工場内部に害虫・害獣が侵入し、異物混入リスクをあげてしまうなどの例も挙げられます。この場合には、工場施設の構造上の問題を特定し、見直す必要もあるでしょう。

異物混入が発生した際の対応方法

上記のような対策を行っていたとしても、異物混入を完全になくすことは極めて困難でしょう。よって、発生した時を想定し、対応策を検討しておくことも重要です。異物混入が発生した際、迅速に適切な対応をとることで、発生後の損失を最低限に抑えることができます。


以下では、どのように対応すべきかを解説いたします。

製品の回収と隔離

異物混入が疑われる場合、まず最初に全ての製品を即座に市場から引き揚げ、工場内で厳格に隔離します。この段階での速やかな回収が、被害を最小限に抑え、信頼回復の第一歩となるでしょう。回収した製品は徹底的な検査をし、異物混入の原因や程度を詳細に調査します。

製造ラインの停止と点検

製品回収と同時に製造ラインを即座に停止し、原因を探るための点検を実施します。製造工程における異物混入の原因を特定し、問題箇所を解決することがこのステップの目的です。また、点検を通じて製造ラインの全体的な強化策や改善点を見極め、将来的な異物混入リスクを軽減する方策を検討します。

原因の特定と是正

異物混入の原因を明確に特定するために、徹底的な調査が不可欠です。原料供給の段階から製造ラインまでの全プロセスを対象に、異物混入が発生する可能性のある箇所を特定しましょう。原因の特定は再発防止の基本です。特定された原因に対しては、即座に是正措置を講じ、再発防止策を徹底的に検討・実行し、従業員への教育やトレーニングを行うことが求められます。

消費者や関係者への説明・報告

異物混入が発生した場合、消費者や関係者への説明と報告が欠かせません。事態の透明性の確保と誠実なコミュニケーションをすることで信頼回復が可能になります。事故の原因や被影響製品の詳細な説明と対応策、および今後の品質管理強化に関する情報を提供し、信頼回復に全力を注ぎましょう。

品質管理体制の見直しと再発防止策の立案・実行

異物混入事故を教訓に、品質管理体制を徹底的に見直し、再発防止策を策定・実行しましょう。従業員へのトレーニングや品質管理プロセスの改善、デジタル技術の活用など、異物混入リスクを最小限にするための組織全体の取り組みが求められます。これにより、将来的な異物混入リスクを低減し、製品の品質と信頼性を向上させることが期待されます。

異物混入事故に対する組織全体の迅速で体系的な対応が、企業の信頼を守り、顧客満足度を高める鍵となります。品質管理の徹底と絶え間ない改善が、企業の長期的な成功に繋がることでしょう。

異物混入を防ぐ仕組みを作るには

ここまで、異物混入の事例や要因、発生した際の対応策について説明してきました。しかし、事故のリスクをできる限り低減し、未然に防ぐことがもっとも重要です。
以下では、異物混入事故を防ぐための仕組みを構築する方法を解説いたします。

異物混入対策の3原則

異物混入を防ぐ方法として『異物混入対策 3原則』があります。この3原則は、以下のようにまとめられます。

 

  • 入れない
  • 持ち込まない
  • 取り除く

 

まず「入れない」管理についてです。

 

これは製造機器の経年劣化などによる金属片などの混入防止に有効です。

機器の劣化やパーツの破損は、使用年数の経過によって必ず起こりうるものです。これに対処するためには、適切な管理と保守が不可欠です。製造機器の定期的なメンテナンスは、異物混入のリスクを軽減するための基本となります。

 

また、適切なメンテナンスのためには日々の点検業務が重要です。始業・終業点検などによって、毎日機器に異常がないかをチェックし、常に安全な状態で生産できているかをモニタリングしましょう。

 

次に「持ち込まない」管理です。

 

異物となりうるものを工場内に持ち込まないよう、ルールを制定することが基本となります。金属関連で代表的なものとしては、ホッチキスの芯や金属たわし、折刃式のカッターなどがあります。金属以外のものでも、できる限り異物になりやすいものは持ち込まないことが望ましいでしょう。例えばボールペンなどについているキャップなど、小さく落としても気づきづらいものなども異物混入の要因になりえます。

 

また、工場内でよく使用される紙の帳票なども破れた紙片が混入する可能性も考えられます。このような帳票については、IoT機器やタブレットなどでの記録に方法を変更することで、異物混入のリスクを低減することが可能です。

 

最後に「取り除く」管理です。

 

これは万が一製造過程で混入してしまった場合に、その異物を排除するための仕組みです。異物除去のための装置を工程内に配置し、完成品に異物が残らないようにしましょう。金属探知機やろ過装置、またカメラやAIを利用した異物除去装置も活用されています。自社の製品特性や製造環境に合わせた適切な仕組みを構築することが重要です。

コラム|デジタル活用により異物混入対策を強化できた事例

デニッシュパンの製造・販売などを手掛ける株式会社ボローニャFC本社では、製造現場での品質管理の記録を、従来の紙とボールペンによる記載から、タブレットを利用した記録に変更しました。

 

品質に関する問い合わせがあった際に、従来の紙管理では該当する記録を探し出すまでに時間がかかり、緊急性の高い問い合わせにスピーディに対応できないことを課題としてデジタルによる記録・管理に移行しました。

 

結果、過去の記録の検索性の向上だけでなく、紙の帳票の削減により、工場内でボールペンなどを使用する機会が減ったため、食品への異物混入のリスクも低減されていると語っています。

 

>ボローニャFC本社の導入事例

毛髪混入対策の4原則

毛髪に関しては4原則と言われることがあり、以下のようにまとめられます。

 

  • 持ち込まない
  • 落とさない
  • 留めない
  • 取り除く

 

「持ち込まない」管理については、建物内や工場内に毛髪の落下リスクを持ち込まないようにすることが基本となります。自宅での洗髪・ブラッシングによる毛髪の落下のリスクの低減を徹底するとともに、工場内に入る前には粘着ローラーやエアシャワーなどで着衣に毛髪が付着した状態で入らないようにすることが重要です。

 

「落とさない」管理については、身だしなみを徹底することによって実現することが可能です。衛生キャップのかぶり方や、作業着の着方のルール・周知を徹底し、適切な身だしなみであるかのチェック体制を整えることで、リスクを最小限に抑えることができるでしょう。

 

「留めない」管理については、床などに落ちてしまった毛髪を放置しないようにすることが基本です。工場の隅や壁際、製造機器の下などに留まりやすいため、日々の正しい清掃・洗浄が重要となります。

 

最後の「取り除く」管理については、前述の3原則と同様に、異物除去装置を配置することによって、異物の検知・除去を徹底することが重要です。

まとめ

異物混入の防止は食品製造業において絶えず注力すべき課題です。サプライチェーン全体の品質管理、製造プロセスの検査、従業員の教育、トレーサビリティの確保、そして消費者への情報提供とフィードバック受付の組み合わせにより、異物混入リスクを最小限に抑え、企業の信頼性を高めることが可能です。

 

適切な対策を行うことで、安心・安全で高品質な食品を提供し、消費者との信頼関係を築いていくことが重要です。

 

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