農場がHACCP認証を取得するメリットと導入のプロセスを解説
食品製造業
2020.09.23
2024.01.25更新
HACCPは食品衛生管理に関する国際基準で、2020年6月からは食に関する全分野での導入が決定されました。これに伴い、農場でもHACCPを導入する必要があります。
しかしHACCP導入にあたって、具体的にどのような取り組みをしていけば良いか分からない場合もあるでしょう。そこで今回は、農場がHACCPを導入するメリットやプロセスについて解説していきます。
HACCP認証とは
まずは、HACCPの意味やHACCPが導入された経緯について紹介していきましょう。
HACCPは国際的な衛生管理基準
HACCPは、1960年代にアメリカで提唱された衛生管理基準です。食品の国際化によって、食品がどんなプロセスで製造・流通しているかの把握が難しくなる昨今、食の安全性を確保するためには仕入・加工・流通・消費のプロセスを把握するシステムが求められるようになりました。
これに対して国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機構(WHO)の合同機関である食品規格(Codex)委員会からHACCPの導入が推奨されています。現在では各国でHACCPを基準とした食品管理システムが導入されており、HACCPは国際的な衛生管理基準として普及が進んでいるのです。
2020年6月にHACCP導入が義務化
日本でも食品衛生法の改正により、2020年6月からはすべての食品業者にHACCPの導入が求められるようになりました。この背景には食の安全に対する関心の高まりや、食品生産に関する安全基準を国際化することがあります。
食品業者がHACCPに対応しているかどうかは、保健所の定期的な立ち入り検査や営業許可更新の際にチェックし、HACCPに対応しておかないと食品業者として営業ができなくなる可能性があるため十分に注意が必要です。
農場HACCPについて
農場HACCPとHACCPには、どんな違いがあるのでしょうか。ここでは、農場HACCPの概要について紹介していきましょう。
農場HACCPは飼養衛生管理に関する認証
農場HACCPは、2009年から農林水産省が導入を推奨していた独自の衛生管理システムです。これは、「畜産現場における飼育衛生管理向上の取組認証基準」と呼ばれ、家畜の衛生管理や体調管理を基本として畜産飼養の安全性を確保します。
今回、食品衛生法の改正に伴って農場がHACCPを導入する場合、この農場HACCPを導入することで法律に対応できるため、家畜を飼養している場合には農場HACCPを導入しておきましょう。
家畜伝染病防疫体制の構築を目的に設立
農場HACCPが導入された背景には、「食品の安全確保」が挙げられます。特に畜産農場は、動物を飼育することから他の農産物に比べると伝染病や食中毒の発生リスクが高く、他の食品以上の衛生管理が必要です。
また、鳥インフルエンザやBSE、豚コレラなど、一度発病すると全国規模の問題に発展することが多く、畜産業界に大打撃を与えます。
農場HACCPは基準以上の飼養衛生管理体制のある農場を認証するため、認証を取得することで伝染病の発病リスク軽減や安全性・生産性の向上が期待できるというわけです。
農場HACCP導入のメリット
導入が義務化されているHACCPですが、農場がHACCPを導入するメリットについて紹介していきましょう。
品質の証明と生産性の向上
農場がHACCPを導入するメリットは、品質の証明と生産性が向上することです。HACCPは国際基準に沿った安全衛生管理システムなので、消費者に対して製品が国際品質であるとPRできます。
HACCPによって家畜の健康データを定量的に記録することで、体調の変化や問題が発生した場合の原因解明に役立ち、記録したデータを分析して生産性向上に役立てることも可能でしょう。
法令遵守と海外進出への対応
2020年6月から食品衛生法の改正によりHACCPが法令化されました。農場HACCPは食品衛生法で法令化されたHACCPであると見なされているので、農場HACCPを導入することで法令遵守の経営体制を確立できます。
農場HACCP導入のプロセスと費用
農場HACCPはどんなプロセスで認証されるのでしょうか。ここでは導入プロセスと費用について解説していきましょう。
農場HACCP認証機関での導入プロセス
農場HACCPを導入するためには、認証機関である「農場HACCP認証協議会」の認証を受ける必要があります。農場HACCPを導入するプロセスは大まかに以下の通りです。
- 認証機関への申請
- 文書審査、現地審査
- 認証機関による判定
- 認証書交付
- 維持審査と交付審査
農場HACCP導入の費用
農場HACCP導入のための審査費用は公開されていませんが、「総合衛生管理HACCP認証」の取得費用が30万円なので、この金額がHACCP認証に必要な金額の基準となるでしょう。
審査では基本的に2名の審査員が農場まで来て審査を実施しますが、審査に要する交通費は実費で請求されます。また、HACCP認証には申請書をはじめ多くの書類を作成する必要がありますが、書類作成をコンサルティング会社などに委託をすると50万円から100万円の費用が必要です。
申請書の作成方法を独学や自治体などの指導を受けながら学ぶことも可能ですが、学ぶために要する期間や自分で書類を作成する労力費用対効果を考えて検討すると良いでしょう。
まとめ
HACCPは食品衛生管理に関する国際基準であり、食の安全に対する関心の高まりや食の国際化によって世界中で普及が進んでいます。
農場で生産する乳製品や肉は、伝染病が発生すると全頭処分など農場の経営にとって致命的なダメージを追うことになるでしょう。
農場HACCPの導入によって、より高い安全性を確保することが、農場を守ることにも農場の価値を向上させることにもつながります。今回の法改正を機に、積極的にHACCPの導入に取り組んでいきましょう。
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