危害要因分析とは?分析の方法をHACCPの基礎知識と合わせて解説
食品製造業
2021.01.07
2024.02.02更新
食品関係の仕事において、HACCPは知っておくべき基礎知識の1つです。しかし、まだ働き出したばかりの方の中には、いまいちHACCPについて知らない方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、HACCPの基礎知識を踏まえつつ、その上で大切な危害要因分析の方法まで紹介します。食品関係で働く上では重要なことであるため、この記事でしっかりと理解しておきましょう。
そもそもHACCPとは?
いきなり危害要因分析を説明する前に、まずは基礎知識であるHACCPについて知りましょう。この項目では、HACCPの基本情報や海外におけるHACCP事情などを紹介します。すでに知っている方は復習として読んでもらえれば幸いです。
HACCPの基礎知識
HACCPとはHazard Analysis and Critical Control Pointの略称で、日本語に訳すと「危害要因分析重要管理点」となります。具体的には、食品を製造する流れの中で危害を起こす要因を分析した上で、工程管理によって除去あるいは低減させ、衛生管理を継続的に改善及び維持していく手法です。
HACCP自体は宇宙での食事の安全性を確保する目的からスタートし、現在では国際的な食品衛生の基準として世界各国で用いられています。日本でも会社の規模を問わず、多くの企業が用いており、食品業界では欠かせない存在です。
義務化されたHACCP
「HACCPが大切なことは分かったけど、別に自分たちで意識していれば導入する必要はないのでは?」と思う方がいるかも知れませんが、それは間違っています。なぜなら、HACCPは義務付けられている手法だからです。
2020年6月、HACCPは義務化された手法となりました。これは改正食品衛生法改正案が衆議院で可決した影響であり、必ずHACCPを導入しなければなりません。なお、HACCPの対象としては食品製造業だけではなく、食品販売業や食料品製造業、冷凍・冷蔵事業なども当てはまります。
海外におけるHACCP事情
前述したように、海外でもHACCPを用いた衛生管理が行われています。
HACCPが生まれたアメリカでは、1997年から義務化がスタート。EUでも、2006年に義務化が始まりましたが、伝統的な食品製造方法のことも考えられた対策が講じられています。隣の国である中国の場合は、国外へ輸出する食料品に対してHACCPを義務付けました。
ここまで読んでいくと、日本のHACCP義務化が他の国と比べて遅かったことが分かります。
HACCPの7原則12手順
HACCPには7原則12手順というものがあります。これは、HACCPを導入すると決めた際にチームを組んで進めていく上で大切になりますが、具体的にはどのようなものなのでしょうか。
ここでは、7原則と12手順の2つに分けて紹介します。HACCPを知る上では重要なことでもあるため、必ず目を通しておきましょう。
7原則の内容
7原則は、名前どおり7つの原則があります。主なものを挙げると「危害要因分析の実施」や「重要管理点(CCP)の決定」、「モニタリング方法の設定」などです。
今回の記事で紹介する危害要因分析も7原則の1つとして含まれています。危害要因分析に関しての詳細は後ほど述べますが、それ以外の内容としては、「重要管理点(CCP)の決定」が危害要因を除去や低減する上で、特に重要な工程を決定するということ。もう一つの「モニタリング方法の設定」は、重要管理点(CCP)が正しく管理されているのか定期的にチェックすることです。
12手順の内容
12手順は、「HACCPのチーム編成」や「意図する用途及び対象となる消費者の確認」、「製造工程一覧図の現場確認」などです。12手順の中には上記で紹介した7原則も含められており、作業の後半部分で7原則の内容が求められます。そのため、手順1~5をきちんとしなければ、後半の7原則を進めることができません。
上記で紹介したように、7原則12手順というのはHACCPを導入する上で欠かせないもの。だからこそ、きちんと把握しておかなければなりません。特にこれから導入する方は、しっかりとチェックしておきましょう。
HACCPと危害要因分析
この項目では、HACCPに含まれる危害要因分析について紹介します。一見すると難しそうに思えるかもしれませんが、非常に重要な部分であるため、できる限り分かりやすくしました。
初めて聞く方もすでに知っている方も、ぜひ読んでみてください。なお、項目の後半では、危害要因分析で得られる利点について紹介しています。
危害要因分析の基礎知識
危害要因分析というのは、製造している製品の中に残ってしまう恐れのある危害要因を全て明るみに出す作業のこと。もし危害要因分析がきちんとされていなければ、危害要因が残ったまま消費者へ届けられてしまうことになり、クレームの原因につながってしまうかもしれません。
また、HACCPの基本的な部分ということもあり、危害要因分析があいまいなままだとHACCPの計画自体が頓挫してしまう恐れもあります。
3つの危害要因
製品から洗い出す危害要因には、主に3つの種類があります。
1つ目は生物的危害要因であり、サルモネラ属菌やボツリヌス菌、ノロウイルスなどが対象です。菌やウイルス以外にもアニサキスや顎口虫などの寄生虫も含まれています。
2つ目は化学的危害要因です。化学的危害要因は「カビ毒」「重金属」「食品添加物」「農薬」の4種類に分かれおり、それぞれ内容が異なっています。例として「重金属」を取り上げるならば、ヒ素やメチル水銀、クロムなどです。
3つ目は物質的危害要因です。物質的危害要因は異物混入によって生じるものであり、上記の様に特定の物があるわけではありません。なお、異物混入に関する情報は、一般財団法人食品産業センターのHACCP関連情報データベースからダウンロードできます。
分析することで得られる利点
危害要因分析で得られる利点としては、製品に隠れた危害要因を全ての従業員が共有できたり、万が一トラブルが起きた場合にスムーズな対応ができたりするといった点です。特に危害要因を全ての従業員が共有できることは、会社全体の衛生意識が向上にもつながることであり、危害要因との関わりが少ない部署まで情報を共有できます。
危害要因をどのようにして分析するの?
最後の項目では、危害要因の分析方法を紹介します。どのように分析していくのか知ることで、さらにHACCPや危害要因分析のことへの理解が深まるでしょう。こちらもぜひ最後まで読んでみてください。
まずは製品説明書・製造工程図の作成から
まず行うことは、製品説明書・製造工程図の作成です。正しく分析する上では欠かせない存在であり、話し合いや現場との確認などを通じて作っていきます。製品説明書・製造工程図に含める内容としては、製品の基本情報だけではなく、ターゲットとしている消費者や調理方法、原材料の保存期間や工程などです。
原材料や工程のチェック
製品説明書と製造工程図を作成したらしっかりと中身を確認し、原材料や工程に危害要因がないかチェックしましょう。
危害要因をチェックする流れとしては、まず製品の各工程に隠れた危害要因がないか、製品説明書と製造工程図に基づいて調査。その後、予測できる潜在的な危害原因を、どのくらい起こりやすいのか明確にします。最後に、それぞれの危害要因をどうすれば管理できるのか検討し、明確な結果を出して終了です。
まとめ
この記事では、HACCPの基本情報から危害要因分析の方法まで紹介しました。食品業界において重要なHACCPは奥が深いものであり、その中でも危害要因分析は基本とされるものです。そのため、食品業界で働き始めた方は、このことを頭に入れて仕事で活用していきましょう。この記事で、HACCPの危害要因分析についての理解を深めてもらえれば、幸いです。
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