【令和6年度版】HACCP導入で使える補助金一覧。上限額や対象、申請期間まとめ

HACCP(Hazard Analysis Critical Control Point:危害要因分析重要管理点)とは、原材料の受け入れから、保管、加熱、冷却、包装、出荷までの製造工程におけるリスクを分析し、安全を確保するために事前に対策し、実施した内容を記録をする衛生管理方法です。しかし、その導入と運用には設備投資、従業員教育、文書作成など、様々な面でコストがかかります。

 

そこで本記事では、国や地方自治体が提供している補助金制度を活用することで、コストを最小限に抑えながら、HACCPの導入・運用をして、衛生管理を実施する方法を紹介します。

 

事業規模や業種に合った具体的な補助金情報、申請要件、申請方法などを解説するので、HACCPの導入時にコスト面で不安を感じている方は、ぜひ最後までお読みください。

 

HACCPに関する補助金一覧

HACCPに関する補助金は、「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備緊急対策事業(HACCPハード事業)」「IT導入補助金」「ものづくり補助金」の3つがあります。

 

HACCP導入を検討している食品関連事業者にとって、補助金の存在は大きな助けとなります。HACCPの導入や運用に関連する補助金は、主に国(省庁や委託された機関)が運営しています。このような補助金は、事業者の規模や目的に応じて選択できるため、自社に最適な支援を受けることが可能です。

 

以下の表で、主要なHACCP関連補助金制度の概要をまとめました。申請期間は直近のものを記載していますが、年度によって申請期間が異なるので、最新情報は各公式サイトでご確認ください。

 

補助金名

対象事業者

補助対象

補助率

上限額

申請期間

申請方法

食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備緊急対策事業(HACCP

ハード事業)

食品製造事業者、食品流通事業者

HACCP対応の施設・設備の整備費

1/2以内

5億円

令和6年8月5日~9月5日

オンライン申請

IT導入補助金

中小企業・小規模事業者

ITツール導入費(HACCP関連ソフトウェア等)

1/2以内

450万円

直近の締切:令和6年8月23日

(残り2回募集予定)

オンライン申請

ものづくり補助金

中小企業・小規模事業者

生産性向上のための設備投資(HACCP対応含む)

1/2または2/3

3,000万円

令和6年3月21日まで(次回は未定)

オンライン申請

【終了】HACCP支援法

食品製造事業者

HACCP導入に係る設備投資

-

負担額の80%以内または20億円のいずれか低い額

令和5年6月30日まで

指定認定機関に申請

HACCPに関する補助金一覧

 

各制度の特徴や申請条件を比較し、自社に適した補助金を見つける参考にしてください。

【農林水産省】食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備緊急対策事業(HACCPハード事業)

農林水産省が推進する食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備緊急対策事業(HACCPハード事業)は、食品産業の輸出拡大を目指すために申請できる補助金制度です。この事業は、食品製造事業者や流通事業者がHACCP等の国際基準を満たす施設整備を行う際に支援を行なってくれます。

 

主な目的は、輸出向けHACCP等の認定取得や輸出先国の衛生規制に対応するための施設整備を後押しすることです。

 

申請期間は通常、年度初めに設定されますが、令和6年度は令和6年8月5日〜9月5日となっています。食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備緊急対策事業の補助金は、HACCP対応の製造ライン構築、衛生管理設備の導入、検査室の整備などに活用できます。

 

対象となるのは、食品製造事業者や食品流通事業者、およびこれらの事業者で構成される団体です。補助金の交付額は対象経費の1/2以内で、上限額は最大で5億円となっています。

 

申請には、GFP(Global Farmers/Fishermen/Foresters/Food Manufacturers Project:食品輸出プロジェクト)への登録と事業実施計画書、収支予算書、施設の図面、見積書、輸出計画書などの書類の提出が必要です。その他にも公募要領で指定される書類の提出が求められる場合があります。

 

GFPへの登録は、1社につき1アカウントのみとなっています。また登録完了まで1週間ほど掛かるので、補助金の申請をすることを決めたら余裕を持って登録を完了させておくと良いでしょう。

 

なお、食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業へ申請する前に内容の確認や相談を受けている都道府県(東京都や埼玉県など)もあります。都道府県で窓口があれば、そこへの相談や申請をしてみるのも良いかと思います。

 

詳細は以下のページをご確認ください。

参考:食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業|農林水産省

【独立行政法人中小企業基盤整備機構】IT導入補助金

IT導入補助金は、経済産業省が推進し、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する制度で、中小企業・小規模事業者のデジタル化を支援することを目的としています。この補助金は、業務効率化やデータ活用、顧客獲得などのためのITツール導入を後押しし、生産性向上を図ります。HACCP対応のソフトウェアも対象となるため、食品関連事業者にとって有益な制度です。

 

申請期間は年度ごとに設定され、通常複数回の公募が行われます。直近の締切は令和6年8月23日であり、残り2回募集予定です。この補助金は、業務システムの導入、クラウドサービスの利用、セキュリティ対策などに幅広く活用できます。

 

対象となるのは、中小企業・小規模事業者、一般社団法人、一般財団法人、特定非営利活動法人です。ただし、医療法人、社会福祉法人、学校法人等は除外されます。

 

補助金の交付額は、IT導入支援事業者が提供するITツールの導入費用の1/2以内で、補助上限額と下限額は年度や類型によって異なります。一般的な類型では、補助上限額が30万円から450万円程度、補助下限額が5万円から150万円程度となっています。

 

申請には、gBizIDプライムアカウントの取得が必須です。その他、事業計画書、会社の履歴事項全部証明書、賃金台帳等の証憑類、導入するITツールの概要資料なども必要です。申請はすべてオンラインで行われ、IT導入支援事業者のサポートを受けながら進められます。

 

詳細は以下のページをご確認ください。

参考:IT導入補助金|独立行政法人中小企業基盤整備機構

【中小企業庁】ものづくり補助金

ものづくり補助金は、中小企業庁が主導するものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の通称で、中小企業・小規模事業者の革新的な製品・サービス開発や生産プロセスの改善を支援し、生産性向上を促進することを目的としています。HACCP対応の製造ライン整備にも活用できるため、食品製造業者にとって重要な支援策です。

 

申請期間は年間で複数回設定され、各回の具体的な期間はものづくり補助金事務局のポータルサイトで公表されます。この補助金は、新製品・新サービス開発、生産プロセスの改善、DX化、グリーン化など、幅広い取り組みに使用できます。

 

対象となるのは、中小企業者および特定非営利活動法人です。ただし、特定非営利活動法人の場合は、一定の要件を満たす必要があります。

 

補助金の交付額は、事業の種類や企業の規模によって異なります。一般型では補助上限額が750万円から1,250万円、グローバル展開型では3,000万円となっています。補助率は中小企業で1/2、小規模企業者・小規模事業者で2/3となっています。

 

申請には、gBizIDプライムアカウントが必要です。また、事業計画書、収支計画書、直近の決算書、設備の見積書、その他事業計画に関する補足資料などの提出が求められます。申請はすべてオンラインで行われ、電子申請システムを通じて書類を提出します。

 

詳細は以下のページをご確認ください。

参考:ものづくり補助金総合サイト|全国中小企業団体中央会

【終了】HACCP支援法(食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法)

HACCP支援法は、1998年に制定されて2023年6月30日まで運用されていた食品事業者向けの支援制度です。この法律は、食品の製造過程の管理の高度化を促進し、食品の安全性の向上と品質管理の徹底を図ることを目的としています。

 

本法に基づく支援は既に終了していますが、長年にわたり日本の食品産業のHACCP導入を後押ししてきた重要な制度です。この法律のもと、事業者はHACCP導入に必要な施設整備や機器の導入に対する支援を受けることができました。

 

対象は、食品の製造または加工を行う中小企業者です。HACCP導入のための施設整備等を行う事業者が、事業計画を作成し、主務大臣の認定を受けることで支援を受けられる仕組みです。

 

支援内容には、株式会社日本政策金融公庫による低利融資、食品流通構造改善促進機構による債務保証、農林漁業信用基金による債務保証などがあります。融資の上限額や金利は、事業の内容や規模によって異なりますが、通常の融資よりも有利な条件で資金を調達することができます。

 

申請には、事業計画書、会社の登記簿謄本、直近の決算書、施設の図面、見積書などが必要です。また、HACCP導入による効果の見込みや、導入後の運用計画なども求められています。

HACCPに関連する補助金を活用して、衛生管理の質を上げよう

HACCP導入は食品事業者にとって避けて通れない課題ですが、その実施には少なからぬコストがかかります。しかし、本記事で紹介したさまざまな補助金制度を上手に活用することで、経済的負担を軽減しながら高度な衛生管理体制を構築することが可能です。

 

国レベルでは食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備緊急対策事業が、施設整備や設備導入を幅広くサポートしています。IT導入補助金はHACCP関連のソフトウェア導入に活用でき、ものづくり補助金は生産ラインの改善など、より大規模な設備投資にも対応しています。

 

HACCPに沿った衛生管理の徹底は、食品の安全性向上だけでなく、事業者の信頼性向上や新規市場開拓にもつながります。補助金を活用することで、初期投資の負担を軽減しつつ、長期的な競争力強化を図ることが可能です。補助金制度を賢く活用し、より安全で信頼される食品製造・流通の実現に向けて、一歩を踏み出しましょう。

 

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