4つの工程が軸となるPDCAサイクル
計画・実行・評価・改善で構成されるPDCA。英語表記にすると、Plan・Do・Check・Actionで、各工程の頭文字を取って「PDCA(ピー・ディー・シー・エー)」と呼ばれています。
そんなPDCAの枠組みは「PDCAサイクル」と呼ばれ、各工程には異なった目的があるのです。ここでは、PDCAサイクル における工程の特徴や目的をそれぞれ紹介します。
1.計画を立てる「Plan」
計画を意味するPLANは、目標を設定し、その目標を達成するための仮説を立てて計画を作ります。計画を立てる際に最も重要なのが、今までの実績をはじめ顧客や競合などあらゆる情報を収集し、それらを元に具体的な計画を立てることです。具体性を追求するには、「5W2H」を意識して取り組むことが大きなポイントになります。
5W2Hとは、When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)How much(いくらで)という疑問詞の頭文字で構成された言葉です。計画を立てるときに、5W2Hを意識することで具体性を高めることができます。
2.実際に実行する「Do」
計画を立てたら、次は実行のDoに移ります。その名の通り、計画に沿って実際に運用することで問題点がないかを確認する工程です。実際に運用することで、計画を立てる段階では気付かなかった問題点を明確にすることができます。
実際に運用するときは、時間や数値など結果をデータとして記録しておきましょう。また、実際に運用した従業員の意見を参考にするのもおすすめです。記録した結果をもとに公正に判断できるので、次の工程である「評価」でも役立ちます。
3.評価を行う「Check」
計画通りに運用したら、その結果を評価するCheckの工程です。目標を達成できたかを確認することはもちろんのこと、問題点や改善点がなかったのかも合わせて確認していきます。
この際に実行の「Do」で記録したデータや従業員の声が役立ってくるはずです。また、主観的な判断にならないように良い面だけでなく、悪い面のデータや記録もしっかり評価していきましょう。
4.改善する「Action」
最後は、評価や検証した結果から改善点を見つけ、改善策を検討するActionの工程。時間をかけて立てた計画なので、それに固執してしまうケースも多いですが、当初の計画に固執せずに客観的な視点で判断するのが望ましいです。
当初の計画に固執してしまうと、改善点を解決できないまま運用することになるため、結果的にトラブルを招く原因にもなります。柔軟な視点で改善を行うことがとても重要です。
ISOにPDCAを導入するメリット
そもそもPDCAを取り入れるメリットはあるのでしょうか。ここからは、PDCAを導入するメリットについて解説します。
目標に向けてやるべきことが明確
PDCAを導入するメリットは、目標に向けてやるべきことが明確になることです。目標はいわば向かうべきゴールになるため、そのゴールに向けて何をすべきなのかを逆算して考えられます。
また、順序立てて計画も立てられるため、ムダな作業を省けるのも大きな特徴。また、ムダな作業が減れば残業代を最小限に抑えられるだけでなく、従業員の負担も軽減されるため、一人ひとりのモチベーションアップにも繋がります。
改善すべきポイントを把握しやすい
PDCAでは計画を立てて実際に運用するだけでなく、その結果のデータや従業員の声を聞いて問題点や改善点を追求していきます。そのため、何が原因でうまく運用できていないか、そのポイントを把握しやすいのです。
もし改善点があったとしても、計画を立てる段階で各業務の担当者も決まっているので改善の指示を出しやすく、すぐに対応してもらえます。業務だけでなく担当者の管理が容易なのも大きなメリットだといえるでしょう。
継続的に成長できる環境を整えられる
PDCAは、計画を改善してうまく運用できたからといってそれで終わりなわけではありません。企業が成長していくためには、PDCAサイクルを継続的に行い改善することが求められます。
PDCAを導入した当初は、枠組みを作るのに膨大な時間や労力がかかることもあるかもしれません。しかし、繰り返し行うことで計画から改善までの流れもスムーズになり、その結果、継続的に改善し続けられる体制を整えることができるのです。
PDCAを活用できる代表的なISO規格
PDCAは、ISO規格のマネジメントシステムを構築するときにも役立つ手法です。そこで、PDCAを活用できる代表的なISO規格を紹介します。
ISO14001(環境)
環境パフォーマンスを向上させるためのマネジメントシステムであるISO14001。環境パフォーマンスとは、組織が活動する中で発生する環境影響をどれだけ軽減できたかを示す指標のことです。近年は、地球温暖化や大気汚染など環境問題が深刻化しつつあります。
そのため、世界的にも環境問題に配慮する環境マネジメントシステムに大きな注目が集まっており、組織への導入を検討する企業も少なくありません。そんな注目を集めるISO14001の基本構造は、PDCAサイクルが土台になっているため、基準を満たすための継続的な改善が求められます。
▶︎ISO14001とは?初心者にも簡単にわかりやすく徹底解説
ISO9001(品質)
顧客満足度を向上させることを目的とした品質マネジメントシステムであるISO9001。マネジメントシステムの中でも最も普及している規格です。一般社団法人日本能率協会の調査によると、ISO認証取得状況の種目別では全体の約6割が取得済みと答えていることがわかっています。(出典:https://www.jma.or.jp/img/pdf-report/etc_2018-iso.pdf)
そんな人気を集めるISO9001では、認証取得の必要事項としてPDCAサイクルを運用することが求められているのです。また、ISO9001の目的である品質・サービス維持には継続的な改善が求められるので、取得後もPDCAサイクルを回して品質やサービス向上していくことが必要になるでしょう。
ISO45001(労働安全衛生)
ISO45001は、労働安全衛生におけるリスクを最小限にするためのマネジメントシステムです。労働災害による死亡や負傷が相次ぐなか、2018年3月に発行された新しいマネジメントシステム規格で、安全な労働環境を整えるための枠組みづくりが求められます。
そんなISO45001のマネジメントシステムを構築する際にもPDCAは役立つのです。まずは、労働現場における設備や作業手順の危険源を洗い出して最も危険を回避できる対策を検討します。しかし、どんなに安全でも作業効率が落ちると元も子もありません。そのため、PDCAを活用して業務効率を維持したまま安全な環境を作り上げていきます。
ISO27001(情報セキュリティ)
組織の情報資産を守ることを目的とした情報マネジメントシステムのISO27001。情報を守るだけでなく、従業員が使いやすいようにするための仕組みも構築できるマネジメントシステム規格です。情報化社会といわれる現代において情報の漏洩は大問題ですが、ISO27001を導入することで情報リスクの低減が期待できます。
そんなISO27001もPDCAサイクルの継続的な改善が欠かせません。情報管理において積極的な改善がなくなると、新たな脅威にも対応することは難しいでしょう。環境は日々変化しているため、その環境に合わせて絶えず見直しと改善が求められるのです。
ISO22000(食品安全管理)
ISO22000とは、衛生面を含む食品安全管理を実践することを目的としたマネジメントシステムのことです。食品衛生管理手法であるHACCPをもとに制定された規格で、食品安全のリスクを最小限に抑えて消費者の手元まで製品が安全に届けられる仕組みを構築していきます。
対象者はフードチェーンに関与するすべての組織なので関わる人が多いうえに、HACCPより厳しい条件が求められるのも大きな特徴です。そんなISO22000におけるマネジメントシステム規格では、組織全体のPDCAサイクルも要求しているため継続的に運用する必要があります。
まとめ
ビジネスの場でも活用されるPDCAは、ISOにおけるマネジメントシステムの構築にも役立つプロセスです。マネジメントシステムのなかには、要求事項としてPDCAが要求されることもあるため、該当する場合は継続的な改善が求められます。
初めて導入する際は、慣れない作業に時間がかかったり従業員に負担をかけたりする場合もあるでしょう。しかし、一度流れを掴めば計画から改善までスムーズに行えるようになります。
変化の激しい現代で企業が残っていくためには、絶えず見直しと改善が必要になるのです。ISO認証を検討中の企業はもちろんのこと、通常の業務で活用できる場面があるならPDCAのプロセスを取り入れてみてはいかがでしょうか。