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ISO22000とは?HACCPとの違いや要求事項、取得までの流れをわかりやすく解説

作成者: カミナシ編集部|2020.09.23

ISO22000とは、食品安全を確保するための国際規格です。食品の安全リスク低減はもちろん、従業員の意識向上や販路拡大などを目的に、食品に関わるさまざまな組織がISO22000の認証取得を進めています。

 

認証取得を目指す組織は、ISO22000で定められた要求事項に沿ってマネジメントシステムを構築・運用することが求められます。認証取得には多大な労力と時間が掛かりますが、ISO22000認証により得られるメリットは少なくありません。

 

本記事では、ISO22000を概要や取得の目的、要求事項の詳細、認証取得までの流れを説明します。

ISO22000とは?

ISO22000とは、食の安全を確保するための衛生管理手法であるHACCP品質マネジメントシステムを定めたISO9001食品に起こり得る危害を管理するPRP(前提条件プログラム)O-PRP(オペレーション前提条件プログラム)回収(リコール)を含む、フードチェーンに関与するすべての組織(食品製造業およびそのサービス供給者を含む)を対象とした食品安全を確保するための国際的な規格です。

 

また、ISO22000はFSMS(Food Safety Management System:食品安全マネジメントシステム)に関する国際規格の一つです。FSMSとは、消費者に安心安全な食を提供するために、安全に関わるリスクを低減させる仕組みを指します。

 

ISO22000は、食品の製造・加工から、包装、保管、輸送、販売など、食品が消費者に届くまでのすべての工程、つまりフードチェーン全体において安全な食品を提供するための仕組み作りを規定したものです。したがって、ISO22000は食品を扱うあらゆる組織を対象としています。食品製造業者だけではなく、食品包装材メーカー、輸送業者、小売業者、飲食店などもISO22000の対象に含まれています。

 

ISO22000の要求事項を満たしていると認証機関に認められた組織は、ISO22000認証を取得できます。ISO22000認証の有効期限は3年で、期限を延長するためには更新審査を受けなければなりません。認証を取得してから更新審査を受けるまでの期間も、年に1回のサーベイランス審査(維持審査)が必要になります。

 

ISO22000には、日本で2021年6月からすべての食品関連事業者に対して完全義務化されたHACCPが内包されています。ISO22000がHACCPと異なるのは、基本的な衛生管理や具体的なリスク管理、問題発生時の対応がマネジメントシステムとして追加されている点です。

 

さらにISO22000は、品質マネジメントシステムに関する国際規格であるISO9001も一部内包しています。両者の違いは、規格の目的と対象となる組織の範囲にあります。

 

ISO22000は安心安全な食を提供するための規格ですが、ISO9001は製品やサービスの品質を向上させて、顧客満足を高めることに焦点を置いたものです。加えて、ISO22000は食品に関わる組織が対象である一方、ISO9001は顧客に製品やサービスを提供するあらゆる組織を対象としている点でも異なります。

ISO22000を取得する目的

ISO22000を取得する目的は、国際規格に基づいた食品安全マネジメントシステムを組織全体で構築・運用し、食品の安全を確保することです。

 

万が一、提供した食品に問題が発生した場合、消費者の健康に害を与えるおそれがあります。健康に直接悪影響がない場合も、消費者からの信頼が失われて、ブランドイメージが低下することは免れません。さらに、商品回収や損害賠償なども大きな負担になります。食品安全マネジメントシステムの構築・運用により食品の安全性が高まれば、これらのリスクを回避できます。

 

また、ISO22000の要求事項を満たすには、プロジェクトチームや現場だけではなく、組織全体でマネジメントシステムの構築・運用に取り組まなければなりません。したがって、ISO22000の取得は従業員全体の食品安全に対する意識の向上にも寄与します。加えて、認証取得を目指す過程で作業手順の見直しや業務の改善に取り組むと、生産性が高まる効果も期待できます。紙の帳票を電子化し、ISO22000を取得したカメヤ食品株式会社は、管理職の残業維持感が三分の一以下に繋がっています。

 

消費者や取引先に対する食の安全性のアピールにも、ISO22000の認証取得は有効です。ISO22000の認証は、組織として食品安全マネジメントシステムを構築し、食のリスク低減に継続して取り組んでいる証明になります。したがって、認証取得により食品安全に対する企業の取り組みが評価され、消費者や取引先からの信頼が高まるでしょう。

 

さらに、ISO22000取得は販路拡大にもつながります。ISO22000は国際的に認められた規格であるため、認証を取得していれば海外の企業に対しても食品の安全性をアピールできます。企業の取引条件としてISO22000取得が求められるケースも増えており、今後のビジネスチャンス獲得に認証取得が有利に働くことが予想されます。

ISO22000の要求事項(取得の際に求められること)

ISO22000認証を取得するには、規定された要求事項を満たす必要があります。要求事項の概要は以下のとおりです。

 

ISO22000の構成

内容

詳細(具体的に求められること)

1.適用範囲

-

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2.引用規格

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3.用語及び定義

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4.組織の状況

4-1.組織及びその状況の理解

4-2.利害関係者のニーズ及び期待の理解

4-3.食品安全マネジメントシステムの適用範囲の決定

4-4.食品安全マネジメントシステム

組織内外の状況や利害関係を理解したうえでの課題の整理と明確化
マネジメントシステムの適用範囲の決定
課題解決までのシステム構築

5.リーダーシップ

5-1.リーダーシップ及びコミットメント

5-2.方針

5-3.組織の役割、責任及び権限

経営層による食品安全方針の表明

組織体制の確立と役割の明確化

6.計画

6-1.リスク及び機会への取組み

6-2.食品安全マネジメントシステムの目標及びそれを達成するための計画策定

6-3.変更の計画

リスクと機会の明確化

目標設定と、それを達成するための具体的な計画作成
問題発生時の対処計画作成

7.支援

7-1.資源

7-2.力量

7-3.認識

7-4.コミュニケーション

7-5.文書化した情報

環境の整備、人材の確保、従業員の教育、コミュニケーションなどによる支援体制の構築
組織内外に示すための文書化

8.運用

8-1.運用の計画及び管理

8-2.前提条件プログラム(PRPs)

8-3.トレーサビリティシステム

8-4.緊急事態への準備及び対応

8-5.ハザードの管理

8-6.PRPs及びハザード管理プランを規定する情報の更新

8-7.モニタリング及び測定の管理

8-8.PRPs及びハザード管理プランに関する検証

8-9.製品及び工程の不適合の管理

衛生管理の前提となる計画の策定

製品の経路を追跡できるシステムの確立

リスク要因となる工程の管理
不適合製品を出さないための計画策定
不適合製品が出た場合の対応策の作成

9.パフォーマンス評価

9-1.モニタリング、測定、分析及び評価

9-2.内部監査

9-3.マネジメントレビュー

評価指標の設定

評価指標に基づく運用の評価

自社内での運用状況のチェック
経営層による運用状況の確認・評価

10.改善

10-1.不適合及び是正処置

10-2.継続的改善

10-3.食品安全マネジメントシステムの更新

不適合に対する是正処置
是正処置の有効性の評価

ISO22000の要求事項と詳細

ISO22000の認証取得までの流れ

ISO22000認証の取得と維持は、主に次の三段階に分かれます。

 

  • システムの構築と運用
  • 認証取得のための二段階審査
  • システムの運用と認証の維持

 

それぞれの段階について、次から詳しく解説します。

システムの構築と運用

ISO22000認証を取得するためには、要求事項に沿って食品安全マネジメントシステムを構築・運用し、食品安全のPDCAサイクルを確立させる必要があります。

 

組織としてISO22000の認証取得を目指すことが決まれば、まずは中心となって認証取得を推し進めるプロジェクトチームを編成しましょう。次に、食品安全マネジメントシステムの適用範囲や方針、目標を決定します。

 

ISO22000認証の取得は、組織で一丸となって取り組むことが求められます。そのため、経営層が従業員に対して認証取得の意思を表明し、組織全体で取り組もうとする前向きな雰囲気を作ることも大切です。

 

食品安全マネジメントシステムの構築では、まず食品の取り扱いにおいて最低限守るべきルール(前提条件プログラム)をまとめましょう。

 

例えば、工場の清掃や廃棄物の処理など、衛生管理に関わる基本的な事項が該当します。次に食品に起こり得る危害を分析し、リスクを低減するために管理すべき項目や、管理手段を決定します。

 

このとき、品質基準を満たさない不適合製品が出た場合の対処方法や是正処置、回収手順なども決めておくことが大切です。取り組むべき作業手順やルールが決まれば、マニュアルとして文書化します。また、必要に応じて施設設備や作業環境の整備、従業員への教育も実施しましょう。

 

食品安全マネジメントシステムが構築できたら、現場での運用に移ります。あらかじめ策定したマニュアルに沿って運用し、あとから確認できるように日々の取り組みの記録を残します。そして、運用する中で手順やルールに不都合があれば見直して改善するサイクルを繰り返しましょう。

 

ある程度の期間運用できたら、内部監査を行います。内部監査とは、食品安全マネジメントシステムが要求事項を満たしているか、組織の目的や目標に適合するものであるかを自社内で評価するものです。

 

さらに、内部監査の結果を踏まえてマネジメントレビューを実施します。マネジメントレビューとは、経営層が食品安全マネジメントシステムの活動を振り返り、成果や課題などを確認して見直しを図る取り組みのことです。

 

内部監査とマネジメントレビューで不適合を指摘された場合は、原因を除去して再発を防止する是正処置を行いましょう。

認証取得のための二段階審査

食品安全マネジメントシステムを運用し、内部監査やマネジメントレビューが完了したら、いよいよISO22000の認証登録審査に入ります。

 

ISO22000認証の審査は二段階で構成されています。ファーストステージ審査(一次審査/文書審査)で行われるのは、食品安全マネジメントシステムの構築状況の確認と、次の審査に向けた情報収集です。

 

ファーストステージ審査では、マニュアルや手順書がISO22000の要求事項を満たしているかが確認されます。また、審査員による現地確認が行われるケースも少なくありません。

 

次に、セカンドステージ審査(二次審査/現地調査)が実施されます。この審査では、ファーストステージ審査で提出された書類をもとに現地審査が行われます。現地審査に関わるのは、認証取得に関わるプロジェクトチームや経営層だけではありません。

 

現場で働く従業員も、食品安全マネジメントシステムに関する日々の活動について質問されることに留意しておきましょう。その場で間違わないように回答できれば完璧ですが、適切な対応方法が書かれている掲示物の前へ移動し、監査員/審査員に説明する、もしくは上司に確認して作業指示を仰いでいると説明するなどの対応でも問題ありません。

 

審査の結果、組織の食品安全マネジメントシステムがISO22000の要求事項を満たしていると認められた場合、登録証が発行されます。なお、登録審査で不適合を指摘されても、有効な是正処置を取れば認証を取得できます。

 

ISO22000の食品安全マネジメントシステムの構築から認証取得までに掛かる期間の目安は、約1年です。期間の長さは組織の規模やコンサルタントの有無により変わりますが、長期的なプロジェクトであることを前提に取り組みましょう。

システムの運用と認証の維持

ISO22000認証は3年の有効期限があります。認証を維持するためには、認証機関により3年に1度実施される更新審査を受けなければなりません。また更新審査を受けない年でも、年1回のサーベイランス審査が実施されます。

 

更新審査やサーベイランス審査では、食品安全マネジメントシステムの有効性と、前回審査で指摘された箇所が改善されているかが確認されます。

 

ISO22000は、認証取得後もPDCAサイクルを回して、食品安全マネジメントシステムを運用し続けることが重要です。マネジメントシステムの構築段階から、長期に渡る運用を見越した計画を立てることが大切といえます。

ISO22000の取得に向けて、システム構築と運用の仕組み化を進めよう

ISO22000を取得するには、人材や環境の整備、衛生管理のルール決め、危害分析、リスク管理のマニュアル化など、さまざまな準備が必要です。さらに、食品安全マネジメントシステムの運用にも手間が掛かります。

 

一方で、認証取得に向けた作業工程の見直しや従業員の教育は、生産効率の改善、食品安全に対する意識の向上などにつながります。そのほか、消費者や取引先からの信頼性の強化やビジネスチャンスの創出など、組織にとっても多くのメリットが期待できるでしょう。

 

ISO22000認証は、一朝一夕で取得できるものではありません。食品安全マネジメントシステムの構築・運用に腰を据えて取り組み、組織で一体となってISO22000認証取得を目指しましょう。