QC7つ道具とは?覚え方や具体的な使い方をわかりやすく解説【QC検定資格保持者が監修】
食品製造業
2020.09.23
2024.10.21更新
「QC7つ道具」とは、品質管理に利用する数値データを用いた代表的な7種類の手法をまとめた総称です。QC7つ道具を活用すると、製造工程や製品品質に関する問題が見える化され、改善を効率的に進められるようになります。
本記事では、QC7つ道具に含まれる7種類の手法それぞれについて詳しく解説します。手法の特徴だけでなく具体的な使い方も紹介するので、QC7つ道具を用いて自社の品質管理レベルを向上させたい方はぜひ参考にしてください。
QC7つ道具とは
QC7つ道具とは、主に数値データを用いて製造工程や製品品質の管理・分析・改善を行うための、7種類の統計的品質管理手法の総称です。
製造業において、品質管理は顧客満足や生産効率、コストに関わる重要な業務です。QC7つ道具を活用すると、製造現場で得られるさまざまな数値データを分析し、具体的な課題を発見することが可能になります。
分析により浮き彫りになった課題の解決に努めれば、製品品質の均一化による顧客満足度の向上、生産効率の改善、不良品削減によるコストダウンが実現できます。QC7つ道具でまとめられている統計的品質管理手法は、以下の7つです。
- チェックシート
- グラフ
- パレート図
- 特性要因図
- ヒストグラム
- 散布図
- 管理図
ちなみに、QC7つ道具の覚え方として知られているのが、「サンチェ監督引っ張れそう」という語呂合わせがあります。QC7つ道具の各手法を覚える際は、、この語呂合わせで思い出してみてください。
さん:散布図
ちぇ:チェックシート
かん:管理図
とく:特性要因図
ひっ:ヒストグラム
ぱれ:パレート図
そう:層別・グラフ
語呂合わせには、先に紹介したQC7つ道具には含まれない「層別」という項目が入っています。層別をQC7つ道具に含めるか含めないかは、書籍やサイト、考え方によってことなります。
層別とは、基準に従ってデータを分けることであり、例えば、作業員に関するデータであれば男女別、年齢別、経験年数別などで分けることを指します。
また、上記のQC7つ道具とは異なる「新QC7つ道具」もあります。古い/新しい考え方というわけではなく、それぞれ統計的品質管理の手法です。
- 親和図法
- 連関図法
- 系統図法
- マトリックス図法
- アローダイアグラム
- PDPC法
- マトリックスデータ解析法
QC7つ道具と新QC7つ道具の違いは、前者は数値データを扱うのに対し、後者はほぼ言語データを使う品質管理手法になっている点(マトリックスデータ解析法のみ、数値データを扱う品質管理手法)です。
新QC7つ道具は、言語データを図や表にまとめて可視化することで、数値化が難しい問題や課題の分析を図るものです。加えて、従来のQC7つ道具は主に製造現場で利用されるのに対し、新QC7つ道具は設計や企画、営業、事務などのより幅広い部門で活用されている点でも異なります。
QC7つ道具の目的別の使い方
QC7つ道具は、それぞれ異なる目的で使用されます。QC7つ道具を使用目的で分類すると、次のようになります。
- 現状把握や課題の発見:チェックシート、グラフ、ヒストグラム、管理図、パレート図
- 課題要因の発見:特性要因図、散布図
- 効果の確認:チェックシート、グラフ、ヒストグラム、管理図、パレート図
例えば、品質に見られるばらつきが正常なものか異常なものか判断したいときは、管理図を利用した品質のモニタリングが有効です。その結果、ばらつきが異常なものであると判明し、その原因を解明する際には、特定要因図を用いて要因を整理します。そこで見つかった複数の原因に対して、改善の優先順位を決めるために、パレート図を使い、どの要因から対処すべきかを決めます。
上記のようにQC7つ道具は、ある手法単体で活用するのではなく、現状把握から要因の特定、効果の確認など組み合わせて使うことで効果を発揮します。ここから、それぞれの品質管理手法と具体的な使い方を説明します。
チェックシート
チェックシートとは、あらかじめ設定した項目に沿ってデータを記入する表です。大きく点検(確認)用と記録(調査)用の2種類に分けられます。
点検(確認)用チェックシートは、現場で働く従業員が作業や点検を行う際、抜け漏れを防ぐ目的で使用するものです。そのため、作業や点検において確認すべき内容を項目に設定して使用します。
一方で、記録(調査)用チェックシートは、管理者がグラフやヒストグラム、管理図、パレート図など、他のQC7つ道具の図表作成に必要なデータを収集する目的で使用されます。そのため、データの活用を念頭に置いてチェックシートを設計することがポイントです。
紙のチェックシートであると、水や油などでの劣化や記入の抜け漏れが発生するため、電子化を進める企業も多くなっています。チェックシートの電子化で確実且つ効率的に記録を取りたいとお考えであれば「カミナシ レポート」をご検討ください。
チェックシートの具体的な使い方
点検(確認)用チェックシートは、主に機械や器具などの点検や検査、原材料の温度確認、湿度管理、従業員の体調チェックなどで使われます。例えば、食品製造における従業員の衛生管理では次のようなチェックシートが使用されます。
点検(確認)用チェックシートはすばやく記入ができて、また記入後も内容をすぐに理解できるように、◯や×などの簡単な記録方法を取り入れるとよいでしょう。
氏名: |
◯日 |
◯日 |
◯日 |
◯日 |
下痢、嘔吐などの体調不良がない |
||||
同居する家族に下痢、嘔吐などの症状がない |
||||
手指に傷がない |
||||
爪を短く切っている |
||||
指輪やマニキュアをしていない |
||||
作業着、履き物、マスクが清潔である |
||||
手洗い、消毒を実施した |
||||
評価が×の場合の処置内容 |
点検(確認)用チェックシート「個人衛生管理チェックシート」の例
一方で、記録(調査)用チェックシートは、不良品の発生数や要因などの記録を取る際に使われます。例えば、機械を使用した製造現場では次のようなチェックシートが使用されます。
記録後のデータ集計がスムーズに行えるように、項目を大まかにまとめておくとよいでしょう。また、「正の字」や「Tally mark(タリーマーク)」と呼ばれる4本の縦棒と1つの斜め線で記入し、ひと目でトータルの数がわかるように「合計」の欄を設置するなどの工夫があるとよいです。
対象 | 詳細項目 |
◯日 |
◯日 |
◯日 |
◯日 |
◯日 |
合計 |
機械 |
汚れ |
||||||
キズ |
|||||||
へこみ |
|||||||
位置ずれ |
|||||||
未加工 |
|||||||
人・方法 |
操作ミス |
||||||
材料切れ |
|||||||
材料 |
材料の汚れ |
||||||
材料のキズ |
|||||||
材料の変形 |
|||||||
その他 |
その他 |
||||||
合計 |
- |
記録(調査)用チェックシート「不良品数チェックシート」の例
グラフ
グラフとは、数値の比較や変化を把握しやすくするために、データを視覚的に表したものです。
データをグラフ化することで、傾向や関係性を読み取りやすくなり、数値の増減や周期性、相関などが認識できます。なお、QC7つ道具の中の散布図やヒストグラム、パレート図もグラフの一種です。
よく用いられるグラフと使用目的は次のようなものがあります。
- 棒グラフ:項目に分けたデータの大小や、時系列に並べたデータの増減を把握する
- 折れ線グラフ:時系列に並べたデータの変動や傾向を見る
- 円グラフ:全体に占める比率を把握する
- 帯グラフ:比率を比較する
- レーダーチャート:評価項目のバランスを見る
上記のようにグラフにはいくつかの種類があり、それぞれ使用目的が異なるため、適切に使い分けることが大切です。
グラフの具体的な使い方
QC7つ道具としてよく用いられる5種類のグラフについて、それぞれの具体的な使用例を紹介します。
棒グラフは、工程別の不良品発生数、日・週・月といった期間別の不良品発生数、製造現場や工場別の生産量などの比較に使われるグラフです。
折れ線グラフは、不良品や生産量などの推移を時系列で把握できます。複数の折れ線グラフを一つのグラフ上に並べ、項目ごとの推移や傾向を比較することも可能です。
円グラフや帯グラフは、不良品の工程別要因、製造現場や工場別の生産量などの構成比を把握する際に使われます。複数の円グラフや帯グラフを時系列に並べると、比率の変化を読み取ることもできます。
レーダーチャートは、機械や器具の特徴や性能などを項目ごとに点数化し、総合的に評価する際に使用されるグラフです。複数のレーダーチャートを重ねると、点数の比較が容易になります。
パレート図
パレート図とは、項目別の数値を棒グラフで、項目別の数値が全体に占める割合(累積率)を折れ線グラフで表したもので、全体の数値から影響度の高い項目を見つけるために使用します。重大な要因を明らかにして、優先的に改善すべき事柄を決定するために使用されます。
パレート図は、パレートの法則(80:20の法則)と呼ばれる、全体の数値の大部分は、構成する一部の要素が占めているとした法則に基づいて考案された分析図法です。
パレート図を活用すれば、限られたリソースを優先的にどこに投資すればいいかがわかるようになります。
パレート図の具体的な使い方
パレート図を使用すると、品質改善のために優先的に解決すべき問題や課題を把握できます。
不良品発生数の削減を目指す場合、まずは記録用チェックシートで収集した不良品の要因別発生数を棒グラフで示し、その要因別発生数が全体に占める割合(累積率)を折れ線グラフで表してパレート図を作成します。
作成した図を確認し、全体に占める割合が高い要因から改善に着手すると、不良品発生数を効果的に減らせるでしょう。
万が一、着手すべき要因への対処法が複数存在したり、対処法が明確にわからなかったりする場合は、特定要因図で要因を細分化するなどして、改善箇所を明らかにします。
問題や課題の改善に取り組んだ後は同様にパレート図を作成し、改善の前後で比較して、改善方法の有効性や数値的な効果の程度を振り返りましょう。
特性要因図
特性要因図とは、特性(結果)に至るまでの要因を大中小の項目ごとに書き出し、因果関係を視覚化して、特性に大きく影響するものを明らかにする手法です。
特性が魚の頭の骨に、大小の要因が頭につながる体の骨のように見えることから、フィッシュボーン図やフィッシュボーンチャートと呼ぶこともあります。
特性要因図を効率的に作成するには、まず大きな要因を4M(Man:人、Machine:機械、Method:方法、Material:材料)に分け、次にそれぞれに関係する細かな要因を挙げるとよいでしょう。
特性要因図は、目的別に管理用と解析用の2種類があります。管理用は予防を目的とし、管理が必要な項目を洗い出すために使用されます。解析用は、すでに発生している問題の要因を明らかにする目的で使用されるものです。
特性要因図を作成するときは目的を明確にし、管理用と解析用のどちらの図を作るのかを決めましょう。
特性要因図の具体的な使い方
特性要因図は、問題や課題の要因を洗い出し、効率的な改善を図るために着手すべき項目を決める際に用います。特性要因図を作成する際は、特性に関わる要因をできる限り多く提示することが大切です。そのため、特性要因図の作成にはブレーンストーミングやなぜなぜ分析が利用されます。
ブレーンストーミングは、複数人でアイデアを出し合う発想法です。特性要因図の作成においてブレーンストーミングを行う際は、何に対する要因を洗い出すのかを明確にすることが大切です。他の参加者の意見を非難せず、とにかく数多くの要因を挙げるように努めることで有意義な議論になるでしょう。
なぜなぜ分析とは、発生した問題の原因を探る分析手法です。問題に対して「なぜ」と問いかけを繰り返し、原因を深掘りすることで根本的な原因を追求します。なぜなぜ分析も、対象となる問題を具体的に設定することが重要です。複数の原因が考えられる場合は、それぞれの原因について問いかけを繰り返してみましょう。
ヒストグラム
ヒストグラムとは、データのばらつき(標準偏差)や平均、かたより(歪度)を視覚的に把握するために数値を一定の範囲ごとに区切り、棒グラフにまとめた図(度数分布図)です。
ヒストグラムを作成すると、データのばらつきや分布状況、ピーク値などを把握できることから、品質の安定性に対する評価や問題点の考察に役立ちます。
ヒストグラムは横軸の取り方が重要です。数値を区切る範囲が広すぎると多くのデータが同じ範囲に含まれてしまい、反対に範囲が狭すぎるとグラフがでこぼこした形になる傾向があります。どちらの場合も知りたい情報を把握しにくくなるため、適切に範囲を区切ることが大切です。
ヒストグラムの具体的な使い方
ヒストグラムは、数値として定められている品質規格に対して、どの程度のばらつきがあるかを知るために用いられます。
例えば、重量規格に対して、実際の製品ではどの程度のばらつきが生じているかを把握する際にヒストグラムが使われます。
ヒストグラムでは、グラフの形状からデータの特徴を読み取ることも可能です。ヒストグラムの代表的な形状は、次の6種類です。
- 左右対称型
- ふた山型
- すそ引き型
- 離れ小島型
- 歯抜け型
- 絶壁型
左右対称型のヒストグラムでは、中央付近のグラフが最も高く、数値が左右均等に減少し、バランスよく分布しています。ヒストグラムにおける一般的な形状であり、データを分析しやすいことが特徴です。他の形状のヒストグラムになった場合、左右対称型に近づくように数値を調整していきます。
ふた山型のヒストグラムでは、データがふたつのグループに分かれて、グラフ上にふたつの山が見られます。この場合、二つの山の間付近のデータが誤っている可能性があるため、ヒストグラムのもとにした集計データを再確認しましょう。
すそ引き型のヒストグラムでは、データの分布が一方に偏り、すそを引いたような形状になっています。この形状では、平均値と中央値の乖離が問題になることがあります。集計データの数値に上限、または下限が設けられている可能性があるため、データの集計範囲を広げることで左右対称型に近づくはずです。
離れ小島型のヒストグラムは、外れ値の発生により、データの大きなグループ以外に小さな島のようなグループが見られます。このヒストグラムでは、外れ値によって平均値が影響を受けてしまいます。離れ小島型の形状になった場合は、データの収集ミスや不良品の発生が疑われるため、集計データを見直して外れ値を除外しましょう。
歯抜け型のヒストグラムは形状がでこぼこしており、きれいな山を描いていません。この場合、横軸に設定した範囲の区切りが細かすぎる、またはデータの総量が少ない可能性があります。区切りの範囲を広く設定し直したり、データを追加して総量を増やしたりして、左右対称型の形状に近づけましょう。
絶壁型のヒストグラムでは、データの分布が一方に極端に寄っており、グラフにも絶壁のような形状が見られます。データが選別されている可能性があるため、測定方法やデータの選定方法を見直しましょう。
それぞれの特徴から、データの不備やばらつきの原因を突き止め、製造工程の改善に努めましょう。
散布図
散布図とは、一つの事象に対する二項目のデータに、相関関係があるかを調べる際に用いられる図法です。二項目をX軸とY軸にとり、グラフ上に打った点の分布状況を見て、二項目の相関関係を考察します。
散布図の点の相関関係には、主に次の3種類のパターンがあります。
- 正の相関
- 負の相関
- 相関関係なし
正の相関では、点の分布が右上がりの形状になっており、二項目はX軸の数値が増加するにつれてY軸の数値も増加する関係にあります。
一方で、負の相関は点の分布が右下がりであり、二項目はX軸の数値の増加に対してY軸の数値は減少する関係性です。
点の分布がまばらで、X軸とY軸の数値の増減に法則性が見られない場合、二項目に相関関係はないと考えられます。
散布図を用いると二項目の相関関係の有無を調べられますが、因果関係、つまり原因と結果の証明にはならないことに注意しましょう。また、外れ値の存在にも注意して、全体の傾向を把握するように努めることが大切です。
散布図の具体的な使い方
散布図が利用されるのは、製造温度と完成品の強度の関係を把握したり、加工時間と不良品数の関係性を確認したりするときなどです。
例えば、製造温度と完成品の強度の関係を見る場合、X軸に製造温度、Y軸に完成品の強度の指標を置きます。
集計したデータをグラフ上に点として並べ、点の集合が示す傾向を見て、もし製造温度が高いほど、完成品の強度も強くなるなどの正の関係が見られた場合は、顧客が求める強度になるような温度を管理点として設定し、記録を取り、その強度になるように維持します。
散布図の作成必要なデータを漏れなく取得するには、カミナシ レポートで記録の電子化を進めるのがオススメです。通知機能で記録漏れをなくし、選択式の記録で記録ミスもなくなり、見たいデータもすぐに見つかります。
管理図
管理図とは、品質や工程における管理状態の安定性を判断する手法です。
目標値となる中心線(CL:Center Line)をグラフの中央に置き、その上側に規格の上限となる上方管理限界線(UCL:Upper Control Limit)、下側に規格の下限となる下方管理限界線(LCLLower Control Limit)を配置します。
横軸にデータを取得した時間や日付を、縦軸に不良品数などを配置し、集計データを折れ線グラフで表すことで、限界線を超えている点が視覚的に明らかになります。
また、管理図にはいくつかの種類があります。機械を使用して測定できる重量や寸法などの計量値を用いる場合はXbar-R管理図を、数量を数えて測定する不良品数などの計数値を用いる場合はnp管理図やp管理図を使いましょう。
管理する対象や集計するデータなどに応じて、適切な管理図の種類を選ぶことが大切です。
管理図の具体的な使い方
管理図は、製造工程の異常を監視する際だけでなく、ドリルなどの工具の交換時期を把握するためにも活用されます。
製造工程をモニタリングする際は、製品規格の上限と下限を決め、それぞれUCLとLCLに設定しましょう。
集計データをグラフに表すと、規格外品が発生しているタイミングを確認できます。限界線を超えたときに起こっている事象を調べ、規格外品が発生する原因を究明し、問題の改善につなげます。
管理図を使用した製造工程の監視により、異常をすばやく発見できるようになります。横軸にロット番号を振ると、限界線を超えたロットの製品を出荷しないなどの対応を取ることも可能です。
管理図を活用しながら改善を続けることで、品質のばらつきが縮小されるでしょう。
QC7つ道具を使って、日頃の記録を品質管理・改善に役立てよう
QC7つ道具を使うと、品質管理の現状把握や課題の発見、原因の追求、改善効果の検証が容易になります。
製造現場では日々さまざまな数値データを計測していますが、単にデータを眺めているだけでは、その中に潜んでいるリスクや問題点などに気付けません。QC7つ道具を活用して日々記録しているデータを分析し、自社の製造工程の見直しや改善につなげましょう。
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