品質管理部の仕事内容とは?食品業界と他業界の違い、業務のポイントなどをわかりやすく解説

品質管理部は、製品の品質を確保し維持するために企業内で設けられる部門です。品質の安定した製品をお客様にお届けするために、最も重要な部署であるといっても過言ではありません。

それでは、お客様に安全・安心で質の高い製品を提供するため、品質管理部は何に気をつけて仕事をすれば良いのでしょうか。

 

本記事では品質管理部の業務内容や適切に業務を行うためのポイントについて詳説いたします。

品質管理部の仕事内容とは?

品質管理部は、お客様に安全・安心で質の高い製品を提供することがミッションです。そのために品質管理が行うべき仕事内容は広く多岐に渡りますが、以下にあげる3つをチェックすることが主な仕事内容となります。

 

  • 原料や部品、資材
  • 製造工程
  • 最終製品

原料や部品、資材

まずは製造に使用する原料や部品、資材について検査します。どんなものであれば製品としてOKなのか、基本的には規格などが設けられているため、その規格に合致しているかを検査して確認します。

 

検査の手法はさまざまですが、寸法の測定や理化学試験などを行い、「製造に使用して問題ない」ことを確認します。

 

また、原料や部品、資材の供給者(サプライヤー)に対して行う、実地監査や書類監査などの供給者の管理も品質管理部が行います。

製造工程

決められた製造工程で間違いなく製造が行われているか、不具合が起きていないかを確認します。

 

検査の種類はさまざまですが、あらかじめ設定している管理基準から離れていないかなど、目視確認やサンプリング(抜き取り)をおこなって検査を行います。

 

このときの検査で基準から外れていた場合、速やかに原因を突き止めて対処しなければなりません。原因特定後の作業員への教育なども品質管理部の仕事の一部です。

最終製品

製造が終了し、製品になったものを検査します。製品にはそれぞれ規格や基準が定められているため、その規格や基準に合致しているかを検査して確認します。

 

検査項目は製品によって異なり、外観検査、物理学試験、理化学試験、微生物試験など多くの種類の検査があります。

 

検査が全て終了後、検査結果と製品が完成するまでの一連の記録などを今一度確認し、品質の適否判定を行い、出荷の可否を決めます。市場に出すかどうかの最終判断の場でもあるため、非常に重要なポイントです。

 

業界別の品質管理部の特徴

どのような分野の業界であっても、安全・安心で高い品質を提供することがメーカーとしての使命です。

しかし、求められる安全・安心品質は異なり、それを保証する業務内容も異なってきます。本章では食品業界、医療業界、自動車業界それぞれに求められる品質管理業務の特徴を解説します。

食品業界の特徴

食品業界における品質管理は「安全」と「味」を保証することが重要です。そのためには衛生管理や温度管理に注意する必要があります。実際に行う仕事内容は以下のようなものがあります。

工場設備と作業員の衛生管理

作業員の頭髪検査や工場設備の殺菌といった衛生管理対策の他、手洗いなど、日頃の衛生対策が徹底されているかの確認などを行います。「作業前には20秒以上、手を洗うこと」のようなルールを作り、マニュアルとしてまとめます。

食品の安全性や品質の検査

製品の味や安全性が基準を満たしているか、物理的検査(異物が混入していないか)、化学的検査(残留農薬や添加物、微生物や放射線などが含まれていないか)、官能的検査(味は大丈夫か)などでチェックします。

最適な製造工程の設計・整備

異物や食中毒菌の混入を防ぐため、工場内の環境を清潔に保ち、適切な温度記録などの製造フローを検討し、施策を実行します。その際はHACCPなどの基準に則った記録が必要になります。

 

医療業界の特徴

医療器具や薬品など、人命に直結する製品は、国際規格などの厳しい基準に基づく品質が求められます。医療系の品質管理は、医薬品や医療機器の生産プロセスの中で、原材料から製造段階、最終製品の出荷後にいたるまでのすべての工程で、安全性や有効性をチェックする役割を担っています。実際に行う仕事内容は以下のようなものがあります。

医療機器の管理

医療機器の品質管理は医療機器に特化した品質マネジメントシステムであるISO13485などのガイドラインに沿って行われます。品質システムの構築や適切な文書管理、ISO13485との適合性調査、外注先から納品される品物の検査などが主な業務内容です。

各種試験の有効性と安全性の試験や確認

薬品製造に関しては、前出の原料受入試験や、品質試験、製品試験の他に、品質に影響を及ぼす可能性の大きい製造段階での品質確認、または製造工程が適切に作動していることの確認のために実施される工程内試験があります。こうした各種の試験が有効であることを確認し、証明するのも品質管理部門の重要な役割です。

製品出荷試験

出荷試験は、最終製品を対象とした規格試験で、その品質が薬事承認された規格に適合しているか否かを確認します。

試験結果報告書などの文書作成

各種試験の結果については、貴重な知的財産として慎重に保管しておく必要があり、この文書の保管も品質管理部門の業務です。

自動車業界の特徴

自動車は身近な存在であるがゆえ、人命にかかわるトラブルがおこることも多い製品です。エアバッグの不具合で尊い人命が失われる事故が発生したのみならず、そのエアバッグのメーカーはリコールの費用や多額の補償金を課せられ、ついには経営権を他の企業に譲渡せざるを得ない状況にまで追い込まれました。こうした事態を受け、自動車製造業では以前にも増して厳しい品質管理が求められています。実際に行う仕事内容は以下のようなものがあります。

サプライチェーン管理

サプライヤーから供給された原料や部品メーカーから納品された部品が定められた基準や規格内にあるかを検査によって検証します。先に挙げたエアバッグの例などはこの時点での検査が不十分であったがゆえに起こった事故です。定期的にサプライヤーや部品メーカーに対して、品質監査という形で正常に品質管理が行われているかをチェックすることも品質管理の業務に含まれます。

車両の安全性テスト

最終的な安全性テストが欠かせません。衝突試験や耐久性テストなどが行われ、その結果が法規制に基づいて報告されます。

品質管理部と他部署の関係性

品質管理部は、品質の製品の司令塔というべき部署であり、製造関連部署のみならず、営業部などの部署とも密接な関わりがあります。各部署の業務内容と、品質管理部の関係性についてした表にまとめましたので、ご覧ください。

 

品質管理部と他部署の関係性

安心・安全な製品を出荷するのは当たり前で、そこから一歩踏み込んでより良い製品を作り上げる、あるいは製造工程をよりよくしていくのが品質管理部の仕事だと言えるでしょう。

品質管理部の設置のポイント

強力な品質管理部を設置することは、製品の不具合やそれに伴う顧客からのクレームを招かないための最良の自衛策ですが、それ以上に「安全・安心できる製品を世に送り出す」という製造業の根本的な理念を担保するものです。

 

検査のための設備の充実はもとより、優秀な人材を配置した上でしっかりとした仕組みで業務にあたることが必要です。この章では品質管理部を設置する際のポイントを解説します。

品質管理体制図の作成をする

最初に作業の全体像を把握するために品質管理体制図を作成しましょう。品質管理体制図を作成し社内に共有することによって、製造の全体的な流れと各部門が担当する品質保証の役割を理解しやすくなります。なお、品質保証部門は組織として独立させておくことで、製造部門とのなれ合いや癒着の防止につながります。

管理する項目の明確化をする

原材料の受入から完成品の出荷に至る工程の中で、品質に影響を与える可能性のある要因をすべて列記しましょう。また生産時の作業の過程についても一つ一つ書き出しましょう。そしてその中から改善方法や見直すべき過程を抜き出して項目化し、要注意管理点として明確化します。管理する項目を明確化することで作業者にも注意点が具体的に伝わるので、管理漏れがなくなり、安定した品質管理工程を作り上げることができます。

作業のマニュアル化をする

作業員個人による作業レベルのばらつきを防ぐために、具体的な作業をマニュアル化します。このマニュアルを用いることで安定した品質の製品を常に生産できることになります。また、急病やトラブルなどで製造ラインの人員に欠員が生じた場合も、代わりに従事する作業員にそのマニュアルを見せることで、普段通りの製造が可能となります。

振り返り分析をして改善できる体制を作る

上記のような体制を構築したうえで、より良い品質管理体制を作り上げていくためには、定期的な振り返りと現状の分析が必要です。振り返り分析のフレームワークとしては「KPT法」を用いるとよいでしょう。KPT法とはもともとシステム開発の分野で用いられていた方法で「Keep(成果が出ていて継続すること)」「Problem(解決すべき課題)」を洗い出し分析した上で、具体的な改善策としての「Try(次に取り組むこと)」を検討するという流れで行われます。この三つの要素の頭文字を取って「KPT法」と呼ばれています。

技術の進歩や、顧客のニーズの変化により、今までは最適であった品質管理方法も、定期的にアップデートしていく必要があります。特に不具合が生じていなくても、定期的に工程や製品を見直していきましょう。また、見直しに必要なデータは紙で管理するのではなく、データとしてまとめておくと便利です。すぐにデータにアクセスすることが可能ですし、気づいたことをその場で入力できるので、後で報告書などを作成する手間が省けます。

まとめ

製造業を生業とする企業の最も大きな役割は、安心・安全かつ高品質な製品を世に送り出すことです。こうした企業における品質管理部は、文字通り製品の品質を保証する、最も重要な部署です。

品質の保証のみならず、様々な知見や知識、現場の工夫などが集積する部署でもあり、企業の成長に大きな役割を果たすことも期待できます。実際には製品の不具合や工程上のミスを見つけることが主な業務となるため、ネガティブな印象を持たれがちですが、品質保証部の充実は、円滑な企業活動の礎になるとともに、企業が成長するヒントを数多く見つけることにもつながります。

部署のメンバーは企業全体を牽引していく部署であるいう認識を持って業務を遂行することが大切です。

 

 

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