【比較表で解説】品質保証(QA)と品質管理(QC)の違いとは?具体的な業務内容や範囲、責任対象を説明

製造業やサービス業において、品質管理と品質保証は頻繁に耳にするものの、その違いを正確に理解している方は意外と少ないと思います。両者は密接に関連しながらも、異なる役割と目的を持っています。

 

品質保証と品質管理の違いは、責任対象と業務範囲、業務内容が主にあります。品質管理と比べて、品質保証の方が期間や業務範囲において圧倒的に長い視点での品質保持を目指しています。しかし、企業によっては品質保証部の中に品質管理課が入っているパターンやその逆もあり、品質保証と品質管理の隔てがないことなどさまざまな様式で存在します。規模が小さい会社では、明確にわけていないこともあります。

 

本記事では、一般論としての品質管理と品質保証の違いや具体的な業務内容について例を挙げながら詳しく解説します。記事を通じて、品質保証と品質管理の違いを正しく理解し、より効果的な品質管理システムの構築に向けた新たな視点を得ていただければ幸いです。

品質保証(QA)と品質管理(QC)の違い

品質保証(QA:Quality Assurance)と品質管理(QC:Quality Control)の違いは、主に責任対象と業務範囲、業務内容です。



 

品質保証(QA)

品質管理(QC)

責任対象

顧客

製品

業務範囲

設計から製造、出荷後の顧客対応

製造

業務内容

・品質方針や目標

・品質マネジメントシステムの構築

・製品検査(不良品の発見と排除)
・工程管理

品質保証と品質管理の違い

 

品質保証の責任対象は、市場に出た製品を実際に使用する顧客です。製品の使いやすさや性能、出荷後の製品に対するクレームなど、ユーザー視点での品質に責任を負います。これに対して、品質管理の責任対象は、製造工程で生産される製品です。製品が出荷基準を満たしているか検査を行い、市場に製品を出すまでの品質に対して責任を持ちます。

 

また品質保証の業務範囲は、製品やサービスの全ライフサイクルに及びます。つまり、設計段階から製造、出荷後の顧客使用時まで、長期的かつ広範囲にわたります。一方で、品質管理の業務範囲は、主に製造プロセスや個々の製品に焦点を当てており、より短期的で具体的です。

 

品質保証の業務内容、予防的なアプローチとして組織全体の品質システムの設計と運用に関わり、品質方針の策定や品質目標の設定、品質マネジメントシステムの構築などが含まれます。対照的に、品質管理の業務内容は、主に製造現場や個々のプロセスなど、より実務に沿ったものに限定されます。具体的には、製品検査や工程管理、統計的品質管理などが主な業務となります。

 

重要な点は、品質保証がユーザー視点での業務であるのに対し、品質管理は主に作り手視点での業務だということです。品質保証は顧客満足度の向上を最終目標とし、品質管理はその目標を達成するための具体的な手段を提供しています。このように、品質保証と品質管理は異なる役割を持ちながらも、相互に補完し合う関係にあります。

品質保証とは

品質保証とは、製品の企画段階から販売後まで、顧客が満足できる品質を担保し、企業の信頼性を高めるための組織的活動のことです。設計段階から顧客サポートまでの全プロセスを対象とし、問題を事前に防ぐことに重点を置いた予防的なアプローチを取ります。

 

品質保証の特徴は、単に最終製品の検査だけでなく、品質に影響を与える可能性のある全ての要因を事前に特定して管理することを重視します。これには、品質方針の策定、品質目標の設定、品質マネジメントシステムの構築、品質監査の実施、継続的改善活動の推進などが含まれます。

 

また、品質保証は組織全体の取り組みとして位置づけられ、経営層から現場の従業員までの全ての階層が品質に対する責任を持ち、品質文化を醸成することが求められます。これにより、組織全体で一貫した品質意識を持ち、より高い品質レベルを達成することが可能となります。

品質保証の具体的な業務内容

品質保証は、工程全体の品質マネジメントシステムの構築を担う重要な役割を果たします。その業務は多岐にわたり、組織全体の品質向上に寄与します。

 

具体的には、品質方針・目標の策定や品質マニュアルの作成、品質監査の実施、顧客クレーム対応、継続的改善活動の推進などです。以下の表で具体的な業務内容をまとめました。

 

業務内容

詳細

品質方針・目標の策定

・組織の品質に関する基本的な方針を定める。

品質マニュアルの作成

・品質管理システムの運用方法や手順を文書化し、社内で共有する。

品質監査の実施

・定期的に品質管理システムの有効性を評価し、改善点を特定する(内部監査と外部監査の両方をむ)。

顧客クレーム対応

・顧客からの苦情や要望を分析し、製品やサービスの改善や再発防止策の立案を行う。

継続的な改善活動の推進

・PDCAサイクルで、品質管理システムの継続的な改善をする。

品質教育・訓練の計画と実施

・従業員の品質意識向上と技能向上のための教育プログラムを企画し、実施する。

サプライヤー管理

・原材料や部品の供給元の品質管理状況を評価し、必要に応じて改善を要求する。

品質コストの分析

・品質関連コストを分析し、効率的な品質管理活動を推進する。

・予防コストと失敗コストのバランスを最適化する。

品質保証業務の詳細

 

品質保証に関する業務を通じて、品質保証部門は組織全体の品質レベルを向上させ、顧客満足度の向上と企業価値の増大に貢献します。品質保証の活動は、製品やサービスの品質を直接的に向上させるだけでなく、組織の品質文化を醸成して長期的な競争力の強化にも寄与します。

品質管理とは

品質管理とは、製品やサービスの品質基準を満たすために、製造プロセスや提供プロセスを監視して管理する活動です。主に製造現場や個々のプロセスに焦点を当て、不良品の発見と排除、製造プロセスの安定化、品質の均一性確保を目的としています。具体的には、製品検査、統計的品質管理、工程管理などの手法を用いて実施されます。

 

品質管理の特徴は、実務に沿った具体的な取り組みであり、製品検査、統計的品質管理、工程管理などの手法を用いて、製品やサービスの品質を直接的に管理します。これにより、品質のばらつきを最小限に抑え、一定水準以上の品質を維持することが可能です。

 

品質管理は、製品やサービスの品質を直接的に管理して改善することで、顧客満足度の向上と企業の競争力強化に貢献します。また、現場レベルでの継続的な改善活動を通じて、従業員の品質意識向上や技能向上にも寄与し、組織全体の品質文化の醸成に重要な役割を果たします。

品質管理の具体的な業務内容

品質管理は、製造工程の内容や結果を確認、見直し、改善を担当する重要な役割を果たします。この活動は製品やサービスの品質を直接的に管理し、向上させることを目的としています。

 

具体的には、製品検査、工程管理、統計的品質管理、不良品分析、改善活動の推進などです。以下の表で具体的な業務内容をまとめました。

 

業務内容

詳細

製品検査

・完成品や中間製品が規格に適合しているかを検査する

・不良品の発見と排除を行う

工程管理

・製造プロセスの各段階を監視し、品質に影響を与える要因を管理する

・作業手順の遵守状況を確認する

統計的品質管理

・データを収集・分析し、品質のばらつきや傾向を把握する

・管理図や各種統計手法を用いて品質を管理する

不良品分析

・発生した不良品の原因を調査、分析し、再発防止策を立案・実施する

改善活動の推進

・QCサークル活動などを通じて、現場レベルでの継続的な品質改善活動を推進する

計測器管理

・品質管理に使用する測定機器の精度を維持・管理する

・定期的な校正を行う

作業標準の作成と更新

・品質を確保するための作業手順や基準を文書化し、必要に応じて更新する

品質データの記録と報告

・品質に関するデータを正確に記録し、定期的に報告書を作成する

・トレーサビリティの確保も行う

品質管理業務の詳細

 

品質管理に関する業務を通じて、品質管理部門は製品やサービスの品質を直接的に管理し、改善していきます。品質管理の活動は、不良品の発生を防ぎ製品の均一性を確保することで、顧客満足度の向上と企業の競争力強化に貢献します。

 

また、現場レベルでの継続的な改善活動を通じて、従業員の品質意識向上や技能向上にも寄与し、組織全体の品質文化の醸成にも重要な役割を果たします。

品質保証と品質管理の連携で安定した品質の製品・サービスを!

本記事では、品質保証と品質管理の違いや具体的な業務内容について詳しく解説しました。両者は異なる役割を持ちながらも、製品やサービスの品質向上という共通の目標に向かって機能しています。

 

品質保証は組織全体の品質システムの設計と運用を担当し、長期的かつ予防的なアプローチを取ります。一方、品質管理は製造プロセスや個々の製品に焦点を当て、より直接的に品質を管理します。この両者の連携が重要であり、それぞれの連携によって安定した品質を保ち、顧客の期待に応える製品やサービスを生み出すことが可能です。

 

品質保証と品質管理の効果的な連携により、以下のようなメリットが得られます。

 

  • 問題の早期発見と解決
  • 継続的な品質改善の実現
  • 顧客満足度の向上
  • コスト削減と生産性の向上
  • 企業ブランドの強化

 

これらのメリットを適切に享受するために、双方での取り組みを理解しながら、実務を遂行しましょう。

 

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