品質保証(QA)とは?品質管理(QC)との違いや目的、体制を強化する方法を紹介
食品製造業
2024.08.29
2024.08.29更新
品質保証は、製品やサービスの品質を担保し、顧客の満足や安心を確保するために行う企業活動です。製品の不具合を未然に防ぎ、問題発生時には迅速に対応することによって、製品や企業への信頼が高まります。、事業の持続的な成長のためには、顧客の期待に応えるような製品やサービスの提供が必要なので、アフターフォローを含む品質保証も重要視されます。
この記事では、品質保証と品質管理の違い、品質保証活動を行う目的や具体的に行うべきこと、品質管理体制を強化するための方法を解説します。自社の品質保証体制が抱えている課題の解決にも、ぜひお役立てください。
品質保証(QA)とは?
品質保証(QA:Quality Assurance)とは、製品の企画段階から販売後まで、顧客が満足できる品質を担保し、企業の信頼性を高めるための組織的活動のことです。アフターフォローを含む製品ライフサイクル全体における品質を担保するため、原材料や製品を分析・評価、顧客対応も含まれます。
日本品質管理学会では、品質保証は以下のように定義されています。
顧客(2.2)・社会のニーズ(2.6)を満たすことを確実にし,確認し,実証するために,組織が行う体系的活動
品質保証の考え方は、製造業をはじめあらゆる業種で取り入れられています。業種別の品質保証活動の例は以下のようなものがあります。
業種 |
品質保証活動の例 |
製造業 |
原材料管理、設計検証、生産工程管理、アフターフォロー |
ソフトウェア開発 |
コードレビュー、ユーザビリティテスト、ユーザーサポート |
飲食業 |
従業員や店舗、食材の衛生管理、トレーサビリティ |
アパレル |
素材の選定、サプライチェーンの管理 |
業種別の品質保証活動の例
品質保証の目的
品質保証の目的は、製品が顧客が期待する品質を担保し、顧客満足度を向上させ、企業の利益や価値、信頼性などを高めることにあります。
近年、品質に関する問題が明るみになる機会が増え、顧客の製品に対する品質や安全性の確保に対する要求も大きくなっています。品質保証活動により品質を上げられれば、多くのユーザーから支持を集め、市場優位性を長期的に確保できます。そのため品質保証は、企業の成長にも大きく貢献します。
品質保証(QA)と品質管理(QC)の違い
品質保証と混同されやすいのが品質管理です。
品質管理(Quality Control:QC)とは、消費者(買い手)が満足・要求する製品・サービスを生み出すために、原材料や部品の検査、製造工程の確認、完成品の事前・事後対策をおこなうことです。品質管理は、消費者に一定以上の水準の製品・サービスを提供し、売上を拡大することを目的とし、製造~出荷までを対象とした活動です。
品質保証と品質管理はどちらも品質の向上に関わりますが、活動の目的と範囲が異なります。
品質保証は、製品販売後の顧客対応や品質改善なども対象とする活動であり、問題の発生防止や発生時の対応、顧客の要望を汲み取った製品・サービス開発を目的としています。一方、品質管理は製品生産工程に対象を絞り、不適合品の製造・出荷の防止、品質水準の維持などを目的に行います。
品質保証 |
品質管理 |
|
責任範囲 |
製品開発~アフターサービス |
製造~出荷 |
責任対象 |
顧客 |
製品 |
活動目的 |
・品質問題の発生防止 ・信頼性の確保 ・顧客要求に基づく品質改善 |
・不適合品の製造や出荷の防止 ・品質水準の維持 ・製造工程の改善 |
品質保証と品質管理の違い
品質保証と品質管理は異なる業務ですが、どちらの業務も兼任しているしている担当者の方もいます。
適切な品質保証活動を行うことのメリット
適切な品質保証活動を行うことで企業は、主に3つのメリットが得られます。
- 顧客満足度の向上
- 社会的信頼性の獲得
- 経営効率の向上
顧客満足度の向上
品質保証は、顧客が納得する品質を担保するだけでなく、顧客が製品に求めているニーズを把握し、製品の企画や設計、製品の改善につなげていく活動です。
品質保証活動が適切に行われると、顧客の要望を製品・サービスに反映できるので、満足度の向上に繋がります。
社会的信頼性の獲得
品質の担保や消費者の安全を確保するため、法律や国際基準で、製品が満たすべき要件を明確にしています。
例えば、国際標準化機構のISO(International Organization for Standardization)では、国際的な取引をスムーズにするために、世界各地の製品やサービスなどの品質基準を「ISO規格」として制定しています。
制定は、日本を含むISOの参加国169か国(2023年時点)で決められており、ISOを取得・維持するためには、ISO規格の種類に応じた要項を満たし、年に1~2回実施される維持審査や、3年に1回更新審査を受ける必要があります。
国際的な基準を満たした品質であることを、ISOの取得・維持によって証明できるため、顧客の信頼感に繋がり、社会的な信頼性の獲得に繋がります。
経営効率の向上
品質保証活動により、適切に原材料や製造工程の管理が実施されれば、不良品の発生を最小限に抑えられます。その結果、原料や時間のロスが抑えられるため、コスト削減につながります。
また、質の高い製品を提供することで、製品やブランド価値の向上、リピーターの獲得などにつながるため、企業経営の効率向上も期待できます。
品質保証担当が行うこと
品質保証担当は、商品企画から製造後まで、顧客の期待に応えるために様々な活動を行います。製造業において各フェーズごとに行う活動内容の例は以下の通りです。
フェーズ |
活動内容 |
商品企画 |
顧客ニーズを分析し、求められる品質を満たす製品の企画 |
開発・設計 |
プロセス管理と設計品質の評価、規格基準の決定 |
原材料や製造工程の構築・確認 |
原材料の安全性、製造工程の品質のチェック |
品質検査 |
完成品に対する品質保証(外観検査・機能検査) |
顧客対応 |
製品出荷後の活動(問題発生の原因究明、調査結果から原材料や製造工程の変更などの実施) |
品質保証担当が行うことの例
企業に品質保証担当を置くときにあると良いスキルや知識、資格
品質保証活動では、客観的な事象や事実をもとに、製品の問題点や改善点を見つけ出さなければなりません。品質保証担当者を配置する際には、以下のスキルや知識、資格があると良いでしょう。
- 製造プロセスの理解
- 標準規格や法規制の知識
- 品質保証に必要な分析力
製造プロセスの理解
商品の企画や設計、製造において発生するトラブルの原因追求や対策を考えるには、製造プロセスの理解は必須です。特定のプロセスだけでなく、製造工程全体の理解が重要です。
製造工程全体を理解するためには、いきなり全ての詳細を理解しようとするのではなく、まずは全体のおおよその流れを把握し、する。大枠の理解ができたら、各工程の詳細を把握するのが良いでしょう。ように、少なくとも2段階で行う必要があります。
大枠の流れを理解するために、製造プロセスには、主に下記の9つのステップがあることを念頭に入れておくと把握しやすくなります。
- 顧客の要求、製品・サービスに対するニーズ
- 企画
- 開発
- 材料の仕入れ
- 加工
- 組立て
- 検査
- 製品の完成
- 納品
大枠の流れが理解できたら、各工程の現場視察や責任者へのヒアリングなどを通じて、詳細(仕入れ先の情報や、加工にかかる工数、検査の項目、ミスが生じた際の連絡経路など)を把握するようにします。
標準規格や法規制の知識、専門資格
品質保証において直接スキルの証明に使用される特定の資格はありません。しかし以下のような品質管理や標準規格、法規制などの知識を身につけておくと業務をスムーズに進められるでしょう。
- QC検定など、品質管理に関する知識やスキル
- ISO9001などの品質マネジメントシステムの関連する国際規格などの知識
- HACCPやGMPなど、自社の事業に関わる法規制などの知識
QC検定は品質管理のスキルを評価する資格ですが、その学習範囲の中には品質保証の考え方が含まれています。担当者が品質に関する体系的な知識を身につけるのに有効です。
品質保証では、製品の企画段階で法律や規格の基準を満たしているかの判断を行うため、品質に関わるHACCPやGMPなどの法規制や、ISO 9001など国際的な標準規格の知識も求められます。また、法改正の際には、品質保証担当者がマニュアルの更新などを行うなどの対応を行わなければならないため、最新情報のキャッチアップも必須です。
品質保証に必要な分析力
品質保証活動で問題点や課題を把握し、改善へとつなげていくには、分析力が必要です。収集したデータからどのような事実があるのかを導き出すため、以下のような分析手法が品質保証に活用されています。
- 統計的手法を用いて日々の不良品数から製造工程との相関関係を見つけて改善する
- 不良要因をチェックリストで集計したものを用いて、人や機械、材料、作業方法のどこに問題があるか明らかにし工程の見直しを行う
- 生産工程から収集したデータを分析して工程の無駄を発見し、生産ラインの作業効率を改善する
品質保証体制を強化する方法
顧客満足度を高めて事業の持続的成長を目指すには、品質保証は欠かせません。しかし、品質保証活動による改善が進みにくい、業務が属人化しているなどの課題を抱えている企業もあるでしょう。自社の品質保証体制を強化するために、有効な方法を紹介します。
迅速な対応ができるよう品質情報を一元管理する
品質に関する問題が発生した場合、迅速に対応を行えば、大規模リコールや対応コストの増大を避けられます。誠実な対応ができれば、顧客不満も幾分抑えられるでしょう。結果として、企業の信頼性の毀損を最小限に留められます。
迅速な対応を行うには、品質保証担当者が品質に関わるすべての情報にアクセスできるよう、一元管理が有効です。工程内の不具合情報や購入品不適合情報といったデータだけでなく、会議の議事録やファイルなども含め、品質に関わるすべての情報を集めておくことで、解決に必要な情報解析にかかる時間を短縮できます。
DXやAIを活用し品質保証の精度・効率性を高める
品質保証の精度や効率性を高めるには、DXやAIの活用も有効です。
例えば、生産工程の監視や不良品の要因分析にAIを活用すれば、分析の精度を高めつつ、業務負担の軽減に役立ちます。また、DX化により検査結果のデータ化・見える化などを含めた検査工程を自動化することで、作業効率の向上も期待できます。
加えて、DXやAIを活用すれば、効率化だけでなく業務の属人化も防げるというメリットもあります。製品ライフサイクルにおける問題を分析するには、前提として業務に関する知見やノウハウも必要ですが、DXやAIのサポートを利用することでスキルのカバーも可能になります。
正確性・客観性を確保するために第三者検証を活用する
第三者検証とは、関係者以外の第三者が、製品に対する要求事項が満たされているかどうかを確認することです。ソフトウェア品質保証活動の一環で、内部では気づきにくい不具合などを発見できる、信頼性を担保できるなどのメリットがあります。
近年では、製造業においても公開データの透明性と正確性を確保するために取り入れられるようになっています。
品質保証により企業・製品の信頼性を高めよう
品質保証は、商品企画から製造後までの品質を保証する活動で、顧客からの問い合わせや問題発生時の対応、要望のヒアリングから製品・サービスの改善など多岐にわたります。対応の速さと正確性を高めることで、顧客満足度や製品・企業への信頼性を高められます。
顧客の品質に関する要求が厳しくなる中、品質保証活動の重要性はますます高まっています。品質保証部門の強化を図り、自社の競争力を強化しましょう。
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