生産管理、製造管理、品質管理の違いとは?仕事内容や扱うシステムの違いなどを徹底解説

生産管理、製造管理、品質管理は、企業の製造プロセスを効率的に運営するために分けられた部門です。一見すると名前がよく似ているので混同されがちですが、3部門は異なった業務内容を担っています。

 

それぞれの違いをしっかり認識しておかないと、現場でまごついたり、思わぬミスを犯す可能性もあります。本記事では、この3部門の違いを分かりやすく解説いたします。

 

生産管理・製造管理・品質管理の違い

異なった機能は持ち合わせていますが、生産管理・製造管理・品質管理は相互に密接な関係にあります。それぞれの領域の大きさから違いについて説明します。

管理領域の大きさは、生産管理、製造管理、品質管理の順

生産管理は、製品の生産にまつわるすべての事項を管理します。そのため、管理領域は、購買管理・在庫管理・生産計画・工程管理・需要予測・品質管理など広範囲にわたる業務を管轄しています。

製造管理は、製品の生産における組み立て・加工のような製造現場の進捗管理や工程管理といった業務を管理します。そして、品質管理は製造される製品の品質を製造段階で管理します。

3つの管理領域を図で示すと下図のようになります。

生産管理、製造管理、品質管理の違い

具体例として、指定されたスペックのパソコンを1か月後までに1,000台仕上げて出荷するという工程で考えてみましょう。

指定スペックに必要な部品を、1,000台製造するために必要な数量だけ、適正な値段で入手した上で、顧客の要求する納期までに納入するには、いつまでに生産を終えなければいけないかの計画を作るのが生産管理の管轄領域です。

製造管理は、生産管理が作成した製造のスケジュールに則って、納期までに遅滞なく1,000台のパソコンを作り上げることがミッションとなります。

そして、品質管理は、出来上がった製品のスペックが要求水準を満たしているかどうかと、正常に作動するか否かをチェックします。

このように、生産管理の中に製造管理があり、さらにその中に品質管理があるという関係性になっています。

生産管理、製造管理、品質管理の具体的な仕事内容

生産管理、製造管理、品質管理の各担当者は具体的にどのような作業を行っているのでしょうか。本章では各担当者の業務を紹介することで、それぞれの機能の違いを具体的に解説します。

生産管理の仕事内容と1日の流れ

生産管理の仕事は、簡単に言ってしまえば、生産を円滑に行わせ、一定品質の商品を計画通りに生産させることになります。ただし、一口に生産を円滑に行わせるといっても、検討しなければいけない事項が多くあります。例えば

 

  • 対象製品の市場での需要はどの程度見込まれるか
  • 原材料が過不足なく納期通りに納入されているか
  • 作業に携わる人員は足りているか
  • 納期通りに必要な数量の製品が完成できるか
  • 出来上がった製品は予定通りに出荷出来るか

 

などの事項を常に注意深く見守って行かなければなりません。また突発的なアクシデント(交通状況による資材の納入遅れ、悪天候による停電など)が発生した際の対応も求められます。

 

マーケティング部門や調達部門などの社内の様々な部署や、社外の物流業者などとの折衝が多いのも生産管理業務の特色です。

生産物の種類や繁忙期であるか否かによって1日の仕事の流れは変化しますが、概ね午前中に製造現場の状況を確認して必要な資材を発注し、午後は午前中までの生産の状況を踏まえた上で、他部署との打ち合わせを行い、そこでの決定事項を翌日以降の製造に反映させるための調整などの業務を行っています。

製造管理の仕事内容と1日の流れ

生産管理が、資材の調達から、製品の出荷までを管轄するのに対し、製造管理は実際に製品を製造する過程に注力するのが業務となります。日々の生産遂行管理が最大の業務ですが、その他に、

 

  • 中長期的な生産体制計画の立案
  • 短期的な人員配置の調整
  • 作業環境の改善や製造器具の不具合発見・修理などの現場改善
  • 他部門や社外業者との調整

 

などの業務を行います。

1日の流れとして、基本的には始業時から当日の生産計画の確認や生産機械の立ち上げなどを行い、午前中はそのままの流れで現場近くに張り付いていることが多いです。午後は製造現場に立ち会う合間合間に他部署との折衝や、翌日以降の製造計画を立案したりなどを行います。

品質管理の仕事内容と1日の流れ

品質管理は、消費者が求める品質を安定的に維持するため、製造現場を管理する仕事です。具体的な業務内容は下記の通りです。

 

  • 品質評価とテスト
  • 品質管理システムの構築:
  • 問題の発見と改善
  • 従業員への品質トレーニング:
  • 品質データの収集と分析、文書の管理
  • 顧客からのフィードバックの品質への反映

 

製造の現場を見ながら、品質の維持向上に努めるのが主な業務です。トラブル発生の際は現状の報告を行うとともに、原因の究明と、不具合の解消に実際に携わります。

午前中は製造ラインに張り付いて製造状況に問題がないかを確認し、午後は製造された製品のサンプル調査を行う、というのが一般的な業務スケジュールになります。

生産管理、製造管理、品質管理を高めるプロセス

生産管理、製造管理、品質管理ともに、日々仕事していく中で、実行だけではなく改善も行わなければいけません。ここからは、それぞれの機能を高めていくためのヒントを提示します。

品質を優先して改善する

製品を生産するにあたり、重要とされているのはQ、C、Dの三つです。

 

QはQualityつまり品質で、顧客が求めている品質の製品、あるいはより高品質な製品を製造することです。CはCostつまり費用で、決められた予算内で製造すること、あるいは顧客により安い価格で提供することを指します。DはDeliverlyすなわち納期で、納期を守って製造すること、または顧客が必要なタイミングで製品を投入することを意味します。

この三つはどれも重要で、どの要素が欠けても、市場での力を失うこととなります。ですが、最優先すべきはQualityすなわち品質です。品質ファーストで優れた製品を作り続ければ顧客満足度が増し、購入者が増えていく事につながります。顧客が増え、購買量が増えれば生産量が増え、製造Costの低減に繋がり、顧客に、より安価で提供できるようになります。

 

ただし、品質にこだわりすぎて、高価な原材料を使って高い値段に設定せざるを得なくなったり、生産が増えすぎて納期に大幅な遅れが生じたりすれば、企業としての信頼を失うことになります。Qualityを優先しつつ、QCDのバランスを上手にとっていくことが必要です。

QCの7つ道具で課題を特定し改善する

改善をするためには課題を特定する必要があります。QC7つ道具とは、品質の課題特定に用いられる7つの方法です。それぞれの手法について簡単に説明します。

 

QCの7つ道具-1

①パレート図

パレート図は,「職場で問題となっている不良品や手直し、欠点、クレーム、事故等をその現象や原因別に分類してデータをとり、不良個数や手直し件数、損失金額等の多い順にならべて、その大きさを棒グラフであらわし,累積曲線で結んだ図」のことです。パレート図からは、棒グラフと折れ線グラフの組み合わせで一目でどこが一番の問題なのかが示されます。

 

②特性要因図
特性要因図とは、ある事象における要因と、特性と要因の因果関係を見える化することができる図です。 完成した図の形から、フィッシュボーン図とも呼ばれます。特性要因図を使うと、物事の因果関係が目に見える形で把握できますし、さらに抽象的な問題も具体化して考えることができるようになります。その結果、本当の問題がどこにあるかを見極め、それに対して効果のある解決策を考え出すことができるようになるのです。

③グラフ
2つ以上のデータの関係を見える化するために使用します。見える化することで、経時変化を知る、傾向を知る、数字(割合)の大小を比較するなどのことができます。

④ヒストグラム
データのばらつきや平均、偏りを視覚的に把握できます。例えばある製品の特性を特定したり、どの客層によく購入されているのかを明確にしたりすることが可能です。自分自身で問題を把握するとともに、他者にもわかりやすい形で問題点を共有することができます。

⑤散布図
2つのデータがあった時にその2つのデータの関係性を可視化して、関係性を把握し、示唆を得るために用いられます。2つのデータの関係性は相関関係といいます。相関関係とは、一方の特性が変化すれば他方も変化するような関係のことを言います。

⑥管理図
データの時間的推移を表したグラフに、中心線と上部・下部管理限界線を加えた図です。工程を管理状態(安定状態)に保つために活用する手法となります。あらかじめ収集したデータを使って作成することで、工程が安定な状態にあるかがわかります。

⑦チェックシート
チェックシートを使うと、日々の作業の実態(いつ誰が何を実行したのか)を正確に把握できます。このときに使われるチェックシートとしては、現場の機械の表示値を記録する帳票、度数分布調査用紙(ヒストグラムの元となるもの)などがあります。

生産管理、製造管理、品質管理で扱うシステム

先述したQCの7つ道具は、日々の製造記録のデータがきちんと揃っていればスムーズに効力を発揮します。

 

ただ日々の製造記録は、紙に書くことで残しておき、その後エクセル等のソフトに入力し、電子データにすることが一般的になっています。それでは、紙に書いたものを再度コンピューターに入力することになるため二度手間となる、打ち間違えが生じやすい、などの問題点がありました。

 

そこで登場するのがシステムを用いて、簡単に日々の業務をデータ化する方法です。本章では、それぞれの領域で使用するシステムを説明します。

生産管理が扱うシステム

生産管理は、会社の各部門に大きな影響力を及ぼす業務です。したがって、ERP(Enterprise Resorce Planning)に大きく関わってきます。ERPは企業資源計画と訳され、企業の「ヒト」「モノ」「カネ」といった経営資源を一元に管理し、企業全体の最適化を実現するための経営手法です。 そしてERPを実現するためのシステムは、ERPソフトと呼ばれ、生産、調達、在庫、販売、財務・管理会計、人事など企業経営に必要な機能がほぼすべて含まれます。

製造管理が扱うシステム

製造部門が必要とするのは、製造の効率を最大化するシステムです。この目的に合致するのはMES(Manufacturing Execution System)で製造実行システムを意味します。原材料や部品の在庫・工程進捗などをリアルタイムに把握し、業務効率化やコスト削減、品質向上につなげることができます。また、生産計画にもとづいた作業スケジュールの設計や、管理者への指示出しなども可能で、現場のニーズにあったシステムであると言えましょう。

品質管理が扱うシステム

品質管理は、製造現場の記録がミスなく行われているかをチェックし、トラブルが発生していた場合はいち早く認識し原因特定をしなくてはいけません。そこで必要になるのが、タブレットによるデジタル化です。紙ベースの記録からタブレットでの記録に変えることによって、データのヌケモレも回避でき、現場の状況を手軽にデータベース化できます。

まとめ

生産管理、製造管理、品質管理はお互いに深い関係があることもあって、混同されやすい機能ですが、それぞれ対象領域が違ったり、管理の方法も違っています。製造現場に携わる方は、そのすべてに精通することが理想ですが、まずはご自身が置かれている立場に最も必要な管理方法を確実に身につけましょう。高い品質の製品を製造し、出荷、販売するという目的は一緒です。

 

 

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