HACCPとISO22000、FSSC22000の違いとおすすめの認証について
食品製造業
2020.08.19
2024.02.29更新
食の安全性に関する国際基準には様々な種類がありますが、特に注目されているのがHACCPとISO22000、FSSC22000です。そこで、今回はこの3つの違いや、おすすめの認証について紹介していきましょう。
HACCPについて
HACCPは食品製造・加工現場における衛生管理に関する国際基準です。まずは、HACCPについて解説していきます。
HACCPとは?
HACCP(ハサップ)は、食に関する事業を行っている場合に、異物混入や食中毒といった衛生管理上のリスク発生を防止するための管理手法です。国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関であるコーデックス(食品規格)委員会によって設定された国際規格で、日本国内でも大手企業を中心に導入が進んでいます。
HACCPを導入するには7つの原則と12の手順に従って工程ごとに危害要因(健康被害を与えるリスク)を抽出。すべての工程においてリスクを洗い出し、それぞれの対応について検討して継続的に管理するためのモニタリングや検証方法を決定していきます。
HACCPを導入するメリット
HACCPを導入することで得られるメリットは大きく2点あります。
・従業員の衛生管理意識の向上
HACCPを導入するうえで、食品の製造における全てのプロセスにおいて危害要因を抽出します。その過程で、従業員もどれだけ多くの危害要因が潜んでいるかを理解できるようになるでしょう。また、導入にあたっては従業員の教育やマニュアルの作成も求められるため、HACCP導入前に比べると従業員の衛生管理意識が向上します。これにより、食中毒や異物混入などのリスクを減少させることが可能です。
・衛生管理上の問題が生じた場合の迅速対応が可能
HACCPでは食品の製造過程における危害要因をすべて抽出し、その対応策についてもあらかじめ決定しておきます。その結果、食中毒や異物混入などの衛生管理上の問題が生じた場合にも、事前に決められた対応策に従って速やかに対応することが可能です。また、製造過程をすべてモニタリングすることも求められるため、問題終結後の検証も容易で、再発防止策を講じることも容易になります。このように、事故のリスク減少と実際に問題が発生した場合の迅速対応が可能な体制を構築できるのがHACCPのメリットです。
ISO22000、FSSC22000について
食に関する国際基準としては、他にもISO22000やFSSC22000が挙げられます。ここではそれぞれの認証について解説していきましょう。
ISO22000について
ISO22000は、食品安全管理を実践するためのマネジメントシステムの国際規格です。マネジメントシステムとは、組織の品質や環境を管理するための規格を意味しており、食品の品質そのものではなく、食品を製造する事業者の食品安全管理体制が適正であるかを認証します。
また、対象は食品を製造する事業者だけでなく、食料の生産者や輸送業者、一次生産工場や流通先の飲食店まで、一連のフードチェーンに関わる全ての組織です。
FSSC22000について
FSSC22000は、GFSIが認証する国際規格です。GFSIは世界中の食品安全専門家が集まり、国際的な小売企業や食品メーカー、フードサービスといった企業が協働して食の安全に取り組むことを目的に組織されました。
FSSC22000はISO22000の取得に必要な内容に加えて「ISO/TS22002-1」または「ISO/TS22002-4」と「FSSC独自の基準」を統合した国際規格です。したがって、ISO22000の取得後にISO/TS22002-1またはISO/TS22002-4の実施と、FSSC独自の基準を満たす必要があるため、紹介した3つの認証の中では最も難易度の高い認証といえるでしょう。
HACCPとISO22000、FSSC22000の違い
HACCPとISO22000、FSSC22000の概要を理解したところで、それぞれの違いについて解説していきましょう。
HACCPは衛生管理の手法
HACCPは衛生管理の手法なので、導入すると「誰が」「何をする」という事業所ごとの対応が明確になります。製造工程のすべてにおいて衛生管理の手法を構築するため、その内容は事業所によって異なり、それぞれの事業所でHACCPの策定が必要です。
HACCPは事業所ごとに最適な食品衛生の管理手法を確立し、安全な食品を提供することが目的の制度であることから、後述するISO22000とFSSC22000と比べると個別具体的に対策を講じる必要があるのが特徴です。
ISO22000とFSSC22000はマネジメントシステム
ISO22000とFSSC22000はマネジメントシステムなので、HACCPのように一つひとつの工程において適切な管理が行われているかを認証するのではなく、管理体制そのものが適切であるかを認証します。
特に問題が発生した場合の報告や事後検証など、一連の問題に対して組織としてどう対処する仕組みを構築しているかが認証のポイントです。
HACCPとISO22000、FSSC22000のどの認証を取得すべきか
今回紹介したHACCPとISO22000、FSSC22000は、取得することで事業者の食の安全に関する衛生管理体制が整っていることをアピールできる認証です。そこで、この3つの中でどの認証を取得すべきかを解説していきましょう。
まずはHACCP認証を取得する
食の衛生管理に関する国際的な認証を取得することで、事故のリスク減少や企業価値の向上を目指すのであれば、まずはHACCP認証の取得をおすすめします。ISO22000とFSSC22000はHACCP基準の衛生管理が求められるため、これらの認証はHACCP対応を行っていない状態では取得することが難しいでしょう。
したがって、食に関する国際的な安全管理の認証の取得を希望する場合にはHACCPの取得に取り組んでいくことをおすすめします。
事業を大規模展開するならISO22000、FSSC22000の認証取得も
食品の製造・加工だけでなく、原材料の生産や流通など、自社でフードチェーンを完結していく場合にはHACCPだけでなくISO22000やFSSC22000の認証取得を目指すと良いでしょう。
これらの認証は、一事業所だけでなく、フードチェーン全体の食品衛生上の管理が適正であると認証するものなので、事業を大規模展開していくのであれば有効な認証といえます。
まとめ
今回はHACCPとISO22000、FSSC22000の違いについての解説でした。
また、それぞれの認証についても、HACCPは事業所の食品衛生管理の手法が適切であるかを認証。ISO22000とFSSC22000は事業所だけでなく、フードチェーン全体が適正な食品衛生管理体制を構築しているかを認証することを解説しました。
ISO22000やFSSC22000はHACCPへの対応が前提となっているため、食の安全性に関する国際基準の取得を希望する場合には、まずHACCP認証の取得から取り組んでいくと良いでしょう。
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