OPRPとは何?|定義やPRP・CCPとの違いを「やさしく」解説
食品製造業
2020.08.20
2024.11.07更新
食品を安全に提供するためのルール。いわゆる、食品安全マネジメントシステムに関する国際規格の1つに「ISO22000」が存在します。
ISO22000を構成する用語としてHACCP(ハサップ)などが挙げられますが、これは食品・飲食に携わる方であれば一度は聞いたことがある言葉でしょう。
他にもOPRP、PRP、CCPといった用語がありますが、その中身は少々複雑です。
この記事では、OPRPに焦点を当てて、どんな方でも理解できるように「やさしく」解説していきます。
衛生管理を3分類に分ける
ISO 22000(食品安全マネジメントシステムに関する国際規格)は、お店が食品を安全に提供できるようにすることを目的としたルールです。フードチェーン(製造~販売)に関わるすべての組織を対象に「一般的衛生管理」をマネジメントしています。
ISO22000のマネジメント方法は、ハザード(危害要因)を減少、除去することです。ハザードを減少、除去する工程(衛生管理)は3種類に分けられます。
まずは、その3つがどのようなものか見てみましょう。
①PP・PRP:一般衛生管理の基礎レベルで管理できるもの
②OPRP :一般衛生管理の中でも特に重要に管理するもの
③CCP:最も重要な重要管理点
ここで、みなさんが気になっているOPRPが出てきましたね!
簡単に説明すると、PRPとOPRPは「環境からハザードを減少させるためのルール」であり、CCPは「食品からハザードを除去するためのルール」ということになります。
ですが、これでは分かりにくいので、ここからは「PRP」「CCP」と対比しながら「OPRP」を詳しく見ていきましょう。
OPRP(オペレーションPRP)とは…?
OPRPとは「Operation Prerequisite Program」の略称で、「食品安全衛生上、致命的なハザードを与えるわけではないが重点的に管理しなければいけないもの」、そのためのルールのことです。
さあ、まだまだ分かりにくいので、もう少し、噛み砕いて詳しく見ていきましょう!
OPRPを知る前に
実はOPRPを説明するためには、まず「PRP」と「CCP」について知っておく必要があります。
PRP(前提条件プログラム)とは
PRP「Prerequisite Program」とは、食品安全衛生上におけるハザードを減少させるための「最低限のルール」のことをいいます。このルールには「5S活動」
・整理
・整頓
・清潔
・清掃
・躾
と呼ばれるものや、5S活動に「洗浄」「除菌」を加えた7S活動などがあり、これがPRPに当てはまります。PRPとはどんなルールなのか、具体的な例で見ていきましょう。
とある食品製造工場では、安全な食品を製造したいと思っており、いかなる作業工程でもハザード(危害要因)が発生しないように徹底しているとします。そのため、この工場の作業レーンでは充分な人数で、食品に異物が入っていないかを実際に手も動かしながら目視しています。そのため異物が入ることはまずありません。
ですが、例えばこの作業レーン自体がまったく清掃されていなければどうでしょうか?異物こそ入っていなくても、知らず知らずのうちにウイルスなどが混ざってしまっていることも考えられます。
このように、作業工程でいかにハザードが発生しないよう注意していても、工場自体が清潔に保たれていなければ意味がなく、衛生管理を行う上では「前提」というものが必要となります。つまり、PRPとは「環境からハザードを減少させる『前提』をマネジメントしているルール」のことなのです。
ですが、先ほど記述したように、これはあくまでも「最低限のルール」であり、それを本当に行ったか、行っているのかどうかのチェックや記録が必ずしも必要というわけではありません。そのため、規定通りに必ず安全か?という検証も、PRPというルール上ではできないのです。
CCP(重要管理点)とは
その一方で(PRPが「最低限のルール(前提)」であることに対し)、CCPは明確に管理基準が定められた「制限の強いルール」です。
CCPは「Critical Control Point」の略称で「重要管理点」のことを指します。このCCP(重要管理点)以降は、作業工程の中でハザードを管理できなくなるため最も重要な工程になります。
では、もっと分かりやすく、具体的にCCPというルールを見ていきましょう。
例えば、食品製造の中で加熱という工程があるとします。加熱には食中毒の原因となる細菌を死滅させることのできる効果があるため、加熱の工程のある食品ではこれがCCP(重要管理点=ルール)となることが多くあります。
加熱がCCPとなる場合は、具体的に75℃〜の温度管理で加熱殺菌をされているか?というように具体的に基準となる数値を決め、それをもとに「食品からハザードを除去」することが求められます。また、上記のようにCCPが「食品からハザードを除去するルール」であるのに対して、PRPは「環境からハザードを減少させるルール」とも言えます。
▶ CCPを詳しく紹介した記事はこちらからご覧ください。
CCPとは何?HACCPとの関係性や意味を「分かりやすく」解説
では、OPRP(オペレーションPRP)とは?
では、OPRP(オペレーションPRP)とはなんなのでしょうか?ここまで理解できたらもう簡単です。「OPRP」とは、先ほど紹介した「PRP」と「CCP」の中間に位置するルールなのです。
OPRPとPRPの違い
OPRPとPRPには「環境からハザードを減少させるルール」という共通点があり、「モニタリングの有無」という大きな違いがあります。
モニタリングとは、「その場で分かる科学的管理手段を用いて、しっかりとチェックしましょう」ということです。
例えば、先ほどのPRPの時に挙げた、作業レーンを参考に考えてみましょう。極端に説明すると、PRPというルール上では、工場側が『しっかりとレーンを清掃をしているので、細菌はいません』と主張してしまえば、問題ありません。
ですが、OPRPというルールでは『レーン上にいる細菌の量は500以下なので大丈夫です』というように、しっかりと科学的根拠を持って示す必要があるのです。つまり、PRPが明確な規定がないルールであることに対し、OPRPでは管理基準を定めて、より厳しく管理されるといった違いがあります。
OPRPとCCPの違い
「OPRP」とは「PRP」と「CCP」の中間に位置するルールと解説しました。では、ここからは「OPRP」と「CCP」の違いを見ていきましょう。
「OPRP」と「CCP」の違いには、①どの地点からハザードを減少・除去しているのか、②許容限界の有無という2つの違いがあります。
■どの地点からハザードを減少・除去しているのか
どの地点からハザードを減少・除去しているのかは簡単です。CCPが食品からハザードを減少・除去しているの対し、OPRPでは先ほど紹介した作業レーンの例のように、作業環境という地点でルールを設け、ハザードを減少させています。
■許容限界の有無
では、許容限界の有無とはなんでしょうか?これも先ほどの例を参考に解説してみましょう。CCP(重要管理店)とは「制限の強いルール」であり、加熱がCCPとなる場合は75℃〜の温度管理で加熱殺菌をされているか?というように、具体的に基準となる数値が決められています。1℃でもこの温度から外れていたら、それはルール違反となり監査では認められません。つまり、『これくらいであればまぁいいか』という許容限界が制限されているのです。
一方で、OPRPではこの許容限界が制限されていません。先ほど、OPRPの例で、工場の作業レーンの細菌量の話をしました。これをもう少し具体的に見ていきましょう。工場では、原則レーン上の細菌量は500以下でなければならない基準となるルールは設けています。
ですが、仮にレーン上の細菌量が600だったとしても、工場側が『これくらいならまぁいいか』と判断してしまうと、それはルール違反ではないのです。
このように、OPRPとCCPには「許容限界の有無」という違いがあります。
OPRP(オペレーションPRP)のまとめ
最後に、誰でも分かるように「やさしく」OPRPについてまとめています。
忘れてしまったという時には、これを思い出しましょう!
誰でも分かる!OPRPとは?
「OPRP」とは、「PRP」と「CCP」の中間に位置する、作業環境からハザード(危害要因)を減少させるためのルールです。
PRPが数値などの「根拠のない曖昧な基準でハザードを減少させるためのルール」であることに対し、OPRPでは「モニタリング」というオペレーションを設け、科学的根拠を用いてハザード減少に努めます。オペレーション+PRP故の「OPRP」です。
また、OPRPが作業環境からハザードを減少させるためのルールであることに対し、CCPは最終的に食品からハザードを減少・除去させるためのルールです。CCPは「最終的に食品から」ということもあり、強く制限されたルールで、OPRPとは違い管理基準の許容限界が存在します。OPRPとは違い、CCPの場合は少しでも定められている管理基準から外れたら「ルール違反」となるのです。
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