FSSC22000 Ver.6とは?追加要求事項や変更点をわかりやすく解説

食品安全マネジメントシステムの国際規格FSSC 22000は、2023年4月にVer. 6として大きく改定されました。この改定は、食品業界のグローバル化と新たな食品安全リスクへの対応を見据えた重要な変更となっています。

特に注目すべきは、食品安全に関する品質管理の対応強化や設備管理、食品ロス・廃棄物など、グローバルな食品サプライチェーンにおける新たなリスクへの対策が具体化された点です。

海外展開を視野に入れている食品製造企業にとって、このFSSC22000 Ver. 6への対応は、国際競争力を維持・強化する上で避けて通れない課題といえます。すでにFSSC22000の認証を取得している組織は2025年3月末までに移行を完了する必要があり、新規取得を目指す組織は、新バージョン(FSSC22000 Ver.6)での認証取得が求められます。

本記事では、FSSC 22000 Ver. 6の主要な変更点と、その実務的な影響について、認証取得を検討される企業の皆様にとって必要な情報をわかりやすく解説します。

 

改定されたFSSC22000 Ver.6とは

2023年4月、国際食品安全イニシアチブ(GFSI:Global Food Safety Initiative)の要求事項に対応する形で、FSSC22000の大幅な改定が発表されました。この改定により、従来のFSSC22000 Version 5.1からFSSC22000 Version 6(以下、Ver.6)への移行が行われました。

 

FSSC22000は、食品安全を取り巻く環境の変化や新たなリスクに対応するため、定期的な改定が行われています。今回のFSSC22000 Ver. 6では、特に以下の点について要求事項が強化・追加されました。

 

  • 食品安全に関する品質管理の体系化
  • 製造設備の維持管理に関する具体的な基準
  • 食品ロスや廃棄物管理の具体的な手順
  • 認証機関とのコミュニケーション方法の明確化

 

移行スケジュールについては、2024年4月1日から新バージョンのVer. 6に基づく審査が開始されています。既にFSSC22000 Ver. 5.1の認証を取得している組織は、2025年3月31日までに移行審査を完了させ、FSSC22000 Ver. 6に更新する必要があります。この移行期間中に、既存の認証を維持しながら、新しい要求事項への対応を進めることが求められます。

 

When will audits against Version 6 commence?(バージョン 6 に対する監査はいつ開始されますか?)

Audits against Version 6 commenced as of 1 April 2024, and V5.1 audits are no longer possible. Upgrade audits against FSSC 22000 Scheme V6 shall be completed by 31 March 2025.(バージョン 6 に対する監査は 2024 年 4 月 1 日から開始され、V5.1 監査はできなくなります。FSSC 22000 スキーム V6 に対するアップグレード監査は、2025 年 3 月 31 日までに完了する必要があります)

引用元:FSSC 22000 Version 6 FAQ|FSSC 

FSSC22000の主な変更点や追加事項(要求事項の詳細)

FSSC22000 Ver. 6の詳細な要求事項については、公式サイトから日本語訳をダウンロードできます。ここでは、特に重要な追加要求事項と変更点について、以下の4つに分けて解説します。

 

  • 新たな追加された要求事項
  • 削除された要求事項
  • カテゴリーとサブカテゴリ―の変更
  • 審査の認証・認定機関に対する要求事項の変更

新たな追加された要求事項

FSSC22000 Ver.6では、食品安全マネジメントシステムをより効果的に運用するため、新たな要求事項が追加されました。FSSC財団が公開している公式文書に基づき、主要な追加要求事項を以下の表でまとめています。

 

項目

詳細

食品安全および品質文化

・経営層による食品安全・品質文化の確立と維持

・従業員の理解度評価と継続的な改善

・具体的な行動指標の設定と定期的なレビュー

・コミュニケーションの有効性評価

品質管理

・製品品質に関する具体的な目標設定

・品質指標のモニタリングと分析

・製品仕様との適合性確認手順の確立

・是正処置の有効性評価

設備管理(フードチェーンカテゴリーFIIを除く全カテゴリ)

・設備のリスク評価に基づく管理計画の策定

・設備性能の定量的な評価と記録

・メンテナンス記録の体系的な管理

食品ロスおよび廃棄(フードチェーンカテゴリーIを除く全カテゴリ)

・食品ロス削減目標の設定と実施計画の策定

・廃棄物の分別管理と削減施策の実施

・削減成果の定期的な評価

コミュニケーションの要求事項

(認証を受けた組織が認証機関に対する要件)

・重大な食品安全インシデント発生時の3営業日以内の報告

・製品リコール/リワーク時の速やかな通知

・法規制違反の報告体制確立

FSSC22000 Ver.6で追加された要求事項

 

注目すべきは、FSSC財団の公式文書でリコールや生産停止が必要とされる緊急事態が発生した際に、3営業日以内に認証機関に通知しなければならないと記載されている点です。

 

組織は以下の事象または状況の開始から3営業日以内に認証機関に通知し、緊急事態への準備及び対応プロセスの一環として適切な対策を実施しなければならない:

a)FSMS、認証の合法性及び/または完全性に影響を与える重大な出来事。これには、不可抗力、天才、人災(戦争、ストライキ、テロ、犯罪、洪水、地震、悪意のあるコンピュータのハッキングなど)の結果として、食品安全性、または認証の完全性を脅かす状況が含まれる。
b) 認証の完全性が危険にさらされる、及び/または財団の評判を落とす可能性のある深刻な状況。これらには以下が含まれ、それらに限定されない:

・公的な食品安全事案(例えば、公的リコール、回収、災害、食品安全問題の発生など)。
・食品安全問題の結果として規制当局から課される措置で、追加モニタリングや強制的な生産停止が必要とされるもの。
・法的手続き、起訴、不法行為、過失。並びに
・不正行為及び汚職

 

引用元:FSSC-22000-Scheme-Version-6_Main-changes_JA_Issue-1.1-1|FSSC

 

これらの新要求事項は、より透明性の高い食品安全マネジメントシステムの構築を目指すものであり、グローバルな食品サプライチェーンにおける信頼性向上に寄与することが期待されています。

削除された要求事項

FSSC22000 Ver. 6への移行に伴い、Ver. 5.1から一部の要求事項が削除されました。これは、規格の簡素化と実効性の向上を目的としたもので、以下の表で主な削除項目をまとめています。

 

項目

詳細

製品の処方(フードチェーンカテゴリD)

動物の健康に悪影響を及ぼす恐れのある成分の使用を管理するための手順を準備しなければならない

輸送及び配達(フードチェーンカテゴリFI)

汚染の可能性が最小限にとどまるような条件下で製品が輸送、配達されるようにしなければならない

 

これらの要求事項が削除されたのは、ISO 22000やISO/TS 22002シリーズの基本要求事項で、既にカバーされているためです。

 

これらの要求事項は削除されただけなので、該当する項目の管理が不要になったわけではありません。基本となるISO規格やその他の技術仕様書の要求事項に基づき、適切な管理を継続する必要があります。

カテゴリーとサブカテゴリ―の変更

FSSC22000 Ver. 6では、食品産業の実態により即した認証範囲を定義するため、カテゴリーとサブカテゴリーの体系が見直されました。主な変更点について、以下で具体的に解説します。

 

まず、動物生産に関するカテゴリーAが削除され、新たにC0(動物一次転換)が追加されました。C0には家畜や狩猟肉の一時収容、屠殺、内臓除去、一括冷却、一括凍結、魚の一括冷凍などが含まれます。

 

次に、植物製品の前処理を対象としたBIIIが新設されました。収穫された植物に対する洗浄消毒やトリミング、選別、等級分け、束ね、冷却、ワックスがけ、保管、梱包などの処理が含まれます。また、ペットフードに関するDIIaおよびDIIbはカテゴリーC(加工食品)に統合されました。

 

さらに、仲介業や取引、電子商取引は新たにFIIとしてカテゴライズされ、物理的な取り扱いがなくてもフードチェーンの一部として適用されることになりました。最後に、輸送および保管に関するGIとGIIはカテゴリーGに統合されています。

 

これらの変更により、以下のような利点が期待されます。

 

  • 認証範囲のより正確な特定が可能
  • 業態に応じた適切な要求事項の適用
  • 審査の効率化と質の向上
  • グローバルサプライチェーンにおける相互理解の促進

 

既存の認証取得組織は、移行審査の際に自社の事業領域が該当するカテゴリー/サブカテゴリーを改めて確認し、必要に応じて認証範囲の見直しを行いましょう。

審査の認証・認定機関に対する要求事項の変更

FSSC22000 Ver. 6では、認証の品質と信頼性をさらに高めるため、認証機関および認定機関に対する要求事項が見直されました。これらの変更は、認証を取得する組織には直接的な影響は少ないものの、審査の質と一貫性を確保する上で重要な意味を持っています。

 

認証機関に対する主な変更点として、審査員の力量要件が強化されました。特に、食品安全文化の評価能力や、デジタル技術を活用した遠隔審査の実施能力など、現代の食品産業が直面する課題に対応できる専門性が求められるようになっています。また、審査報告書の品質向上を図るため、より詳細な記録要件が規定されました。

 

認定機関については、認証機関の監視体制がより厳格化されています。具体的には、認証機関の審査パフォーマンスの評価基準が明確化され、認定の継続に関する判断がより透明性の高いものとなりました。また、重大な不適合が発見された場合の対応手順も、より具体的に規定されています。

 

注目すべき変更点として、以下が挙げられます。

 

  • 認証決定者の力量要件の具体化
  • 審査工数の算定方法の見直し
  • 食品安全インシデント発生時の対応手順の強化
  • 認証機関の不適合管理プロセスの改善

 

これらの変更により、認証を取得する組織は、より質の高い一貫性のある審査を受けることが期待できます。認証を取得する組織は、変更を踏まえて審査機関とのコミュニケーションをより円滑に進めるための体制整備を検討しましょう。

FSSC22000を運用・取得し、新規開拓を進めよう

FSSC22000 Ver. 6への移行は、食品安全マネジメントシステムの新たなステージを示すものといえます。記事で解説したように、食品安全文化の醸成から具体的な設備管理、さらには食品ロス対策まで、現代の食品産業が直面する課題に対応するための要求事項が体系的に整理されました。

 

ここで重要なのは、FSSC22000の基盤となっているISO22000の要求事項です。ISO22000未取得の企業においては、まずISO22000の要求事項を参考に、自社の食品安全マネジメントシステムの基盤を固めることをおすすめします。具体的には、HACCPの適切な運用、前提条件プログラムの整備、マネジメントレビューの実施など、基本的な要素から着実に取り組むことが重要です。

 

▶ ISO22000の要求事項や取得までの流れを解説した記事は以下からご覧ください。

  ISO22000とは?HACCPとの違いや要求事項、取得までの流れをわかりやすく解説

 

一方、すでにISO22000を取得している企業においても、現在の運用状況を今一度見直す良い機会です。特に、Ver. 6で強化された要求事項との関連で、以下の点について再確認することをおすすめします。

 

  • 食品安全文化は組織全体に浸透しているか
  • 設備管理は予防保全の観点から適切に実施されているか
  • 食品ロス削減の取り組みは体系的に管理されているか
  • 認証機関とのコミュニケーション体制は整備されているか

 

確実な実施と記録管理でFSSC22000を取得し、新規開拓と既存企業からの信頼向上に励みましょう。

 

▶ FSSC22000の要求事項と認証取得の流れ、メリットは以下の記事で解説しています。

  FSSC22000とは? メリットや要求事項、認証取得までの流れ・費用を解説

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