ISO取得の意味とは?得られる効果と費用を解説
2020.11.01
2024.07.01更新
工場の外壁や看板などに、「ISO取得!」と大きく書いてある企業も多いです。このようにISOの取得は、企業にとってイメージアップのためのアピールポイントにできます。
今回は、ISOとはなんのことなのか、どんな規格がありどんなメリットがあるのか、またISO取得のための費用について確認していきましょう。
ISOとはなんのこと?
まずは前提知識として、ISOとはなんのことなのかを紹介します。
ISOは国際的に使われる規格を作っている
ISOとは世界中で通用する規格を作っている機関のことで、ここで制定された規格のことをISO規格と呼びます。
世界中で通用する規格がない場合、それぞれの国でバラバラのものを作ってしまうため、品質などが不揃いで輸出入がスムーズにできません。国際的に通用できる規格を決めたことで、製品やサービスの品質が世界中で同じレベルのものが提供できるようになり、国や地域が違う企業との取引がスムーズになりました。
もともとはイギリスが国家として品質保証のためのモデルを作り、非政府機関であるISOがそれを引き継ぎ世界中で通用する規格を作りだしたのが始まりです。
ISOの正式名称
ISOの正式名称は「International Organization for Standardization」で、日本語で訳すと「国際標準化機構」です。この正式名称から頭文字をひとつずつ取り、できた略称である「ISO」が、この組織を表す言葉としてよく使われています。ISOの本部はスイス・ジュネーブにありますが、そこで規格のすべてを決めているわけではありません。
規格の制定・改訂があったときには、2014年時点で世界165ヵ国の参加国が投票し、決定しています。もちろん日本もこの参加国です。
ISO規格の種類
ISOで決められている規格にはいろいろなものがあります。どんなものがあるか、その種類を大まかに確認していきましょう。
モノの規格
ISO規格は大きく分けるとモノの規格とマネジメントの規格の2種類。ISO規格のうち製品自体が対象となっているものがモノの規格で、マネジメントの規格は製品自体ではなく、組織の活動や環境を管理する規格です。
モノ規格で定められているのは非常口のマークやカード、ネジなど。非常口のマークはISO7010、カードのサイズはISO/IEC7810、ネジはISO68で定めています。全世界共通で基準があるためどの国の人に対してもわかりやすく、修理が必要になったときの代替品を用意する労力も抑えられるのです。
マネジメントのシステムの規格
マネジメントの規格には、一定品質にするためのものと環境管理があります。品質の管理システムの規格はISO9001など、環境の管理システムの規格はISO14001などです。
マネジメントシステムとは
マネジメントのシステムとはそもそも、目的を果たすため組織全体が適切な行動ができるよう管理する仕組みのことをいいます。手順や規定を決め、運用にあたって正しく指揮できるよう責任の所在や権限を決めるといった、目標達成に向けて取り組む仕組みを作るためにあるものなのです。
ISO取得企業になる意味と得られる効果
ISOを取得した企業になることの意味と、得られるメリットも確認していきます。
社会的信頼の獲得
ISO取得企業となる一番の目的は、会社として社会的な信頼を得られる点にあるでしょう。さまざまな取り組みをし、それを自社でアピールしたとしても、他者から見て信頼できるかは場合によります。
しかし「国際的な信頼性がある第三者機関に認められた」という事実は、ISO自体の信頼性も相まって高く評価できるポイントだとして見てもらえる可能性が高いです。「一定以上の品質のものを作れる技術やマネジメントのシステムなどがその企業にきちんと構築できている」と第三者に認定されることで、信頼性が高い企業であると内外に示すことができます。その結果として、顧客や取引先などの信頼獲得、ひいてはスムーズな取引などにつながるのです。
とくに欧米への輸出時に信用を得られる
ISO取得企業となるか否かで特に大きい変化は、欧米への輸出の際に相手からの信用を得られるかどうかになります。国際的な規格であるISOを取得すると、欧米などから信頼を得やすくなり、欧米との取引を考えているのであれば、ISO取得を目指すメリットはとくに大きいでしょう。
また、ISOの取得企業となるということは、ISOで制定されているシステムを会社に取り入れることでもあります。ISOはそもそも「国際的な標準化の規格」です。そのため、同じようにISOを取り入れている会社同士だと品質やもののサイズ、マネジメントシステム、用語などの互換性が高くなります。
「同じ品質、同じサイズ、同じ取り組みの仕方をしているものであれば、自社で使っているものが足りなくなった時に任せられる」と思ってもらえることもあり、取引先として選択肢に入りやすくなるでしょう。
問題点を発見できる
ISO取得企業となるメリットには、「問題点を発見しやすくなる」という効果もあります。
組織の人間だけでは、慣例となっていて気付けないこともあるものです。一定の基準を持っている第三者機関が見ることで、内部の人間だけではわからなかったような問題点も指摘してもらえます。
継続的な改善の効果
継続的に組織を改善し続ける効果があることもISOを取得するメリットです。ISO規格の取得審査は取得時だけではなく、定期的に行われます。そのためISOのシステムを取り入れて認証を受けたら終わりだとはならず、ずっと改善し続けられるように作られているのです。
ISO取得にかかる費用
ISOの取得企業になるとさまざまなメリットがありますが、ISOの認定を目指すにはコストもかかります。どのようなコストが必要なのか確認しましょう。
システム構築にかかる費用
まずはISOの規格にのっとったシステムを自社に取り入れることが重要です。そのため、基準にのっとったシステムを入れることで必要になる費用がかかってきます。
これはISOの取得企業となるためにかかる費用ではありますが、無駄になるものではありません。国際的に使われている、よく練られたシステムを企業内に取り入れることで、その企業独自の問題点や改善点もわかりやすくなります。
最初にそのシステムを構築したあとにも、何度も問題点などがないか確認しなおしてさらに改善を進めていくことに重点を置いているシステムです。ISOのシステムを取り入れることで、継続的な職場環境や品質の改善など、企業活動のために役立てることができます。
そのため、もし晴れてISOの取得企業となれたとしても、その後「とりあえずISOに認めてもらえたからいいか」と力を抜いてしまうのはもったいないこと。形だけではなく、きちんと自社のためになるようにシステムを活用していくことで、システム構築をする目的でかかった費用が企業にとって無駄ではないものだったことにできます。
コンサル会社に任せるか自社で取得か
ISOの取得企業となることを目指すのであれば、方法は2通りです。ISO取得のコンサルタント会社に任せる方法と、その企業の社員が勉強をして取り組む方法が考えられます。
この2つを比べたとき、一見社員が取り組んだほうが費用が安くなるように映りますが、社員が取り組んだ場合には、「ISOを取得するためにはどうすればいいのか」という部分から自分で調べていく必要があるのです。
この場合はISO取得に向けた取り組み方もわからないため、どうやればスムーズに目的が達成できるかが分からない状態といえます。経験豊富なコンサルタント会社に頼んだ場合よりもISO取得のための準備にかかる時間は長くなるでしょう。
ISOの取得にかける時間が長くなることは、コスト面で考えても悪い状態です。ISO取得の準備をしている時間はその分本来の業務ができない状態になっています。本来の業務ができなくとも、仕事をしている以上は給料を払う義務があるため、ISO取得に向けた業務の時間分を給料の支払いとして費用がかかっているため注意しましょう。
なお社員がISO業務をした場合には「社内にISOに詳しい人がいること」「日常の問題点を見直しやすいこと」といったメリットがあります。
ISO審査費用
ISOの審査には、ISOの登録料と第一段階と第二段階の審査料が必要です。規模によりその審査費用は変わるものの、最低限の規模でも30万~100万円ほどが相場で、場合によってはさらに審査員の交通費や宿泊費、諸経費などもプラスされます。
認定後にかかる費用
ISOの認証は有効期限が3年間ですが、晴れてISO取得企業となったあとにも費用がかかるのです。1年目と2年目に定期審査、3年目に更新審査があり、それぞれに審査費用が必要に。また企業自体が内部監査をおこなうためにかかる費用や、検査機器のメンテナンス、改善のための費用なども見込まれます。
定期審査や更新審査の費用
定期審査にかかる費用も更新審査の費用も、その企業の規模などにより異なるでしょう。目安の金額は、1年目と2年目の定期審査は最初の審査費用にかかった金額のおおよそ1/3、更新審査は2/3ほどです。
なお、定期審査の頻度も場合により変わることがあります。拠点数が多かったり従業員数が多かったりした場合には半年に1回の審査になる企業もあるため注意しましょう。
まとめ
今回はISO規格について、規格の種類やISO取得企業になる意味・得られるメリット、ISO取得企業となるためにかかる費用面などを紹介しました。
費用はかかるものの、ISOのシステムは国際的に通用する規格であり、社会的信用が得られることは大きなメリットです。またよく考えられたマネジメントシステムを自社に取り入れられること自体にも重要な意味があります。どうすることが自社にとってプラスとなる面が大きくなるのか考え、ISOの取得を前向きに検討してみましょう。
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