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JFS-B規格とは?Cとの違いや取得企業例、監査・認証までの流れ、ポイントを紹介

作成者: カミナシ編集部|2024.08.08

HACCPを取得した後にさらなる品質向上と信頼獲得を目指す企業にとって、JFS-B規格は次なるステップとして重要な選択肢となっています。しかし、JFS-B規格とは具体的に何かやHACCPとの違い、取得のメリットなど、疑問点も多いと思います。

 

本記事では、食品製造業の品質管理担当者やHACCPチーム、工場長、経営層の方に向けて、JFS-B規格の概要から取得のポイント、運用時の注意点まで分かりやすく解説します。

 

JFS-B規格の導入を検討されている方、あるいは既に取得済みで効果的な運用に悩んでいる方にとって、本記事が実務に役立つ情報源となれば幸いです。

JFS−B規格とは

JFS-B規格とは、一般財団法人食品安全マネジメント協会(Japan Food Safety Management Association:JFSM)が開発・運営する食品の安全管理の取り組みを認証するもので、「HACCPに基づく衛生管理」に対応し、国内取引を前提とする企業が多く取得する規格です。

 

そもそもJFS規格は食品業界の多様なニーズに応えるため、JFS-A規格とJFS-B規格、JFS-C規格、JFS規格(フードサービス)、JFS規格(フードサービス・マルチサイト)の5つの規格が用意されています。

 

この内、JFS-A規格、JFS-B規格、JFS-C規格の3つが食品製造業を対象とし、JFS規格(フードサービス)、JFS規格(フードサービス・マルチサイト)の2つは飲食店や給食施設などを対象とした規格となっています。

 

JFS-B規格は、食品安全管理の進化に合わせて定期的に更新されています。2021年8月に行われた改訂では要求事項の追加や修正が施され、Ver.3.0へとアップデートされました。

JFS−B規格を取得している日本企業は2,400件以上

JFS-B規格の重要性と信頼性を示す一つの指標として、取得企業数があります。JFS-B規格を取得している日本企業は2,400件を超えており、食品業界全体でJFS-B規格が注目されていることがわかります。

 

多くの消費者に親しまれている食品メーカーもJFS-B規格を取得しています。例えば、調理パン、惣菜、生菓子を製造している「プライムデリカ」や、食肉製品、冷凍食品(加熱後包装)、タレ類、野菜類(包装後加熱)を製造している「フレッシュデリカ」などが挙げられます。このようにJFS-B規格の取得は、消費者の信頼を高めるだけでなく、業界全体の食品安全基準の向上にも貢献しています。

JFS-B規格を含むJFS規格の要求事項は、3つの構成要素から成り立つ

JFS-B規格を含むJFS規格の要求事項は、食品安全を包括的に管理するために3つの重要な構成要素から成り立っています。

 

  1. 食品マネジメントシステム(FSM)
  2. ハザード制御(HACCP)
  3. 適正製造規範(GMP)

 

上記3つの要素は食品安全マネジメントの異なる側面をカバーし、相互に補完し合うことで効果的な食品安全システムを構築しています。ここでは、それぞれの構成要素について詳しく解説します。

1.食品マネジメントシステム(FSM)

食品マネジメントシステム(Food Safety Management System:FSM(S))は、HACCPとGMPを効果的に運用し、管理するための仕組みとして機能します。

 

FSMでは、組織の食品安全方針の策定や文書化、経営者の責任明確化を行います。さらに、資源の管理、教育・訓練プログラムの実施、内部監査の実施も含んでいます。製品の設計・開発プロセス、サプライヤー管理、アレルゲン管理、食品防御、フードフラウド対策などもFSMの重要な構成要素です。

 

特筆すべきは、FSMが継続的改善を重視している点です。不適合への対応や是正処置、マネジメントレビューを通じて、システムの有効性を常に検証して改善していくことが求められます。このアプローチにより、組織は常に変化する食品安全の課題に柔軟に対応し、高い水準の食品安全を維持できます。

2.ハザード制御(HACCP)

ハザード制御(HACCP:Hazard Analysis and Critical Control Point)は、食品安全管理の要となる体系的なアプローチであり、食品の製造過程で発生しうる生物学的、化学的、物理的ハザードを特定し、予防・除去・低減するための方法です。HACCPは、7原則12手順に基づいて実施されます。この体系的なプロセスにより、食品安全上の重要な管理点を特定し、効果的な管理を行うことが可能です。

 

まずHACCPチームの編成から始まり、製品説明書の作成、意図する用途の確認、製造工程一覧図の作成とその現場確認を行います。そして、危害要因分析、重要管理点(CCP)の決定、管理基準の設定、モニタリング方法の設定、改善措置の設定、検証方法の設定、文書化と記録保持の手順を踏みます。

 

HACCP7原則12手順を忠実に実施することで、食品製造プロセスの各段階で潜在的な危害を特定し、効果的な管理が可能となります。

2.適正製造規範(GMP)

適正製造規範(GMP:Good Manufacturing Practice)とは、食品の安全性と品質を確保するための基本的な衛生管理の規範です。GMPは食品製造において安全で高品質な製品を一貫して生産するための土台となります。

 

GMPの具体例は多岐にわたります。敷地管理や施設・設備の適切な設計は、交差汚染を防ぎ、効率的な作業流れを確保できます。従業員の衛生管理・教育は、人為的な汚染リスクを最小限に抑えます。また、整理整頓(5S)の実践は、作業環境の清潔さ維持と作業効率の向上に貢献します。

 

GMPを厳格に守ることで、食品製造プロセス全体を通じて一貫した衛生管理が可能になり、製品の安全性が向上し、品質のばらつきを抑えられます。さらに、食品安全関連の事故やリコールのリスクを大幅に低減し、消費者の信頼獲得につながります。

JFS-BとJFS-Cの違い

JFS規格は、HACCPを含む包括的な食品安全マネジメントシステムですが、JFS-B規格とJFS-C規格には重要な違いがあります。

 

JFS-B規格は「HACCPに沿った衛生管理」の中でも小規模営業社等が実施すべき「HACCPに基づく衛生管理」を含む内容になっており、多くの食品事業者にとって採用しやすい規格です。一方、JFS-C規格はJFS−B規格より高度な要求事項を含んでいます。

 

JFS-BとJFS-Cの主な違いは、対象者やHACCPとの類似性、国際的な規格か、要求されることの多さなどがあります。以下の表に違いをまとめました。

 

項目

JFS-B

JFS-C

対象

中小規模の食品製造業者

大規模または国際的な食品製造業者

HACCP対応

HACCPに基づく衛生管理

より高度なHACCP運用

国際的な規格か

国際的に認められていない

国際的に認められ、GFSIも承認済み

要求事項の数

比較的少ない

多岐にわたる

 

JFS-Bは、多くの日本の食品事業者にとって取得のハードルがそこまで高くなく、法令順守と基本的な食品安全管理を確実にしてくれるものです。そのため、自治体/地域HACCPの廃止に伴い取得を検討している企業も多くなっています。一方、JFS-Cは国際的な取引を行う企業や、より高度な食品安全管理を目指す企業に適しています。

JFS-B規格を取得する流れ

JFS-B規格を取得するには、いくつかのステップに分けて進めます。まず準備段階では、社内体制の構築、現状分析、規格の理解に取り組み、組織全体でJFS-B規格への理解を深め、取得に向けた基盤を整えます。

 

次のシステム構築段階で行うのは、現状とJFS-B要求事項とのギャップ分析と必要な文書の作成です。特にHACCP計画の策定は重要で、7原則12手順に基づいて丁寧に行います。

 

システム運用段階に入ると、従業員教育や試験運用を通じて新しいシステムを組織に浸透させます。内部監査を実施し、システムの有効性を確認しながら改善点を洗い出します。

 

認証審査では、JFSMに登録された認証機関を選び、申請をして現地審査を受けます。指摘事項があれば適切に是正措置を講じます。

 

審査に合格すれば認証を取得できますが、そこで終わりではありません。認証取得後も、年1回の定期審査や継続的な改善活動を通じて、食品安全管理システムの効果向上が求められます。

JFS-B規格を取得する際のポイント

JFS-B規格の取得をスムーズに進めるためには、2つの重要なポイントがあります。

 

まず、JFSMが提供するガイドラインを徹底的に理解し、自社の現状との差異を明確にすることが不可欠です。この差分分析に基づいて、具体的な改善計画を立案し実行することで、効率的に規格要求事項を満たせます。

 

もう一つは、日常的な記録管理の重要性を認識し、実践することです。すべての関連記録をすぐに参照できるよう整理し、定期的な振り返りを行うシステムを構築します。このようなシステム構築により問題の早期発見と迅速な対応が可能となり、継続的な改善サイクルを確立できます。

ガイドラインを良く読み込み、自社との差分を見つけ、改善する

FS-B規格取得の鍵は、ガイドラインを深く理解し、自社の現状との差異を明確にすることです。まず、JFSMが提供する詳細なガイドラインを熟読し、各要求事項の背景にある考え方と具体的な事例を把握します。ガイドラインの記載事項を自社の現状と照らし合わせることで、要求事項と自社の取り組みとの間にある差分を特定できます。

 

差分分析の結果、不足している点が明らかになった場合は、具体的な改善計画を立案し実行に移します。例えば、文書化が不十分な手順があれば、手順を整備した上で従業員への教育訓練を実施するなどの対策を講じます。

 

一方、既に要求事項を満たしている項目については、さらなる最適化の余地がないか検討します。特に、記録の管理方法や保管状況、定期的なレビューの仕組みなどを詳細にチェックし、より効率的で確実な管理体制の構築を目指しましょう。

日常的な記録をすぐに見返せるようにし、振り返りを常に行えるようにする

JFS-B規格の効果的な運用には、日常的な記録管理と定期的な振り返りが不可欠です。記録管理や振り返りは単なる形式的な作業ではなく、食品安全管理の核心を成す重要な活動です。

 

記録をいつでも見返せるようにすることで、逸脱の発見やムダな業務の排除ができます。

 

他にも記録をすぐに見返せるようにする理由は、以下のようなものが挙げられます。

 

  • トレーサビリティの確保
  • 傾向分析
  • 教育訓練への活用
  • 監査対応の効率化
  • 継続的な改善活動

 

このように、記録の適切な管理と活用は、JFS-B規格の要求事項を満たすだけでなく、組織全体の食品安全文化を醸成し、持続的な改善を促進する強力なツールとなるのです。JFS規格やHACCPよりも上位の認証の取得をしている企業が行っている7つの活動をまとめた資料は以下からダウンロードできます。あわせて参考にしてみてください。

 

JFS-B規格取得の際に役立つ「自己チェックリスト」

JFS-B規格の取得を目指す企業にとって、一般財団法人食品安全マネジメント協会(JFSM)が提供している「自己チェックリスト」は非常に有用なツールです。自己チェックリストは、FSM、HACCP、GMPの各要求事項に沿って、具体的な取り組み事例を確認できるようになっています。

 

自己チェックリストのFSMの項目では、「食品安全の方針」に関して、経営者が食品安全の方針を明確に定め、文書化し、全従業員に周知しているかを確認する内容が記載されています。

 

またHACCPの自己チェックリストでは、「危害要因の分析」の項目があり、製品や工程に関連する潜在的な危害要因を洗い出し、その重要性を評価しているかを確認できます。

 

GMPの自己チェックリストには、「従業員の衛生管理」に関する項目があり、従業員の健康状態の確認や適切な作業着の着用、手洗いの実施などが適切に行われているかをチェックします。

 

自己チェックリストを活用することで、企業は自社の現状を客観的に評価し、JFS-B規格の要求事項との差異を明確にできるので、活用してみてください。

HACCP導入の次はJFS-B規格を取得を!

本記事では、JFS-B規格の概要、その重要性、そして取得プロセスについて解説してきました。JFS-B規格は、HACCPを基盤としつつ、より包括的な食品安全マネジメントシステムを構築するための有効なツールです。

 

食品安全マネジメントシステム(FSM)、ハザード制御(HACCP)、適正製造規範(GMP)の3つの要素を掛け合わせることで、より強固な食品安全管理体制が実現します。

 

JFS-B規格取得のメリットとしては、食品安全レベルの向上による消費者信頼の獲得、国内外での競争力強化、そして体系的な管理による業務効率の改善が挙げられます。一方、取得の際の注意点としては、全社的な取り組みが必要であること、継続的な改善活動が求められることを認識しておくべきでしょう。

 

JFS-B規格の取得は、単なる認証の獲得以上の意味を持ちます。組織全体の食品安全文化を醸成し、継続的な改善サイクルを確立することで、持続可能な食品安全管理を実現する機会となるのです。HACCP導入を完了したら、次のステップとしてJFS-B規格の取得に挑戦し、さらなる飛躍を目指しましょう。

 

JFS−B規格の取得の参考になる資料を以下からダウンロードできます。食品事故を防ぎ、品質向上のために売上を伸ばす企業が行っている活動を7つに絞ってまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。